((笑))


1 :琥珀 :2006/12/30(土) 13:53:34 ID:PmQHz4V3



笑っている
微笑んでいる、を通り越して

笑っている
そりゃもう大爆笑だ



何故だか解らないけれど、
皆が僕を見て笑っている

僕も、少しだけ笑ってみせた


2 :琥珀 :2007/01/04(木) 02:25:45 ID:PmQHz4V3

定理。



霙止まりだろうといわれていたのに、
どう気が変わったのか、ぱさぱさとした軽い粉になった。




「センセ」
「…………」
「寒いですね」
「…………」
「…………」


ここ数日降り続いていた雨は、僕だけではなくセンセまで不機嫌にさせる。
溜め込んでしまったレポートを一気に片付けていたら、
思っていたより空は暗くなり、街を往く人の数も減っていた。
傘は忘れたし寒いし、一体どうしようかと眉間に皺を寄せていると
センセが偶然僕の前を通りかかった。


「コンビニで買ったほうがよかったですかね?」
「……勿体無い」
「そうですかね。バス、もうすぐ来ますしね」
「…………」
「…………」


特に話すこともなく。かといって会話の無いこの空間が居心地好いわけでもなく。
小さく溜息を零すと白い気体になって消えた。
それは何を指し示すわけでもなく、ただ自然に、当たり前のように溶けて消えた。
何故だろう。そんな小さなことがとてつもなく狂おしく思えた。
何故消えてしまうのだろう。本当に、消えてしまわねばならなかったのか。
人の死に似ていてそれは本当に自然に、
存在したかどうかさえわからないほど、突然現れ何事も無く消えてゆくのか。

僕も、いつか――――……。



「今を、見つめなさい」
「……え……?」
「遠い目をするな。お前にそんな余裕などないだろう」
「……はい」


頭の上に雪を積もらせて。
そんなことを言えるような。




嗚呼、貴方みたいになりたい。





くすり、と隠れるように笑った。


3 :琥珀 :2007/01/04(木) 18:38:30 ID:PmQHz4V3

perfect!!


人が何に熱を注ごうが構わない。
けれど営業妨害だけはしないでくれ。

――……今日もポテトチップスだけが売れる。




「合計で1050円です」


無精髭をはやした脂っこい中年男は無言でぴったり1050円を払い、
ふっくらといい感じに肉ののった大きな手でそれを抱え込んだ。
男が手にする百円ショップと印刷されたビニール袋には
溢れんばかりのオマケカード付きポテトチップスが詰め込まれている。
そして“いつものように”駐車場の一角を陣取り、
そこで買ったばかりのポテトチップスの袋を開ける。


「先輩っ」


先月からアルバイトで来ている眼鏡のサワダ君が俺に小さく耳打ちする。
視線はあの中年男に向けられ、心なしかサワダの眉間には皺が寄っていた。


「またですよっ。いいんですか?」
「うん。まぁ、他の客に迷惑になってないからいいんじゃないか?」
「でもーっ。……なんか気持ち悪くないですか?
 よくあんなポテチ食えんなぁ。胃もたれしないんスかね」
「そういう……体質なんだろ。あれだろ?あれが欲しいんだろ。えっと」


以前一度だけ耳にしたカタカナで始まるキャラクターの名前を言おうとした瞬間。
駐車場から耳障りな高音が鳴り響いた。
たっぷり5秒は鳴り響いた後、それはすすり泣くような情けない声に変わった。
何事かと店内からそっと覗いてみると、男が脂でテカった顔を更に大粒の涙で濡らし、
オマケのカードを空の方へ掲げて泣き叫んでいる。


「なっなんスか!?」
「お前ちょっと行って来い」
「え。あ、あああやだっスよ!!先輩行って来てくださいよ」
「お前俺に行かせる気か」
「じゃぁここは公平にじゃんけんで」

じゃーんけん、ぽん。


戦場へ向かう兵士のように、その時のサワダ君は勇ましく見えた。
ぐすん、と泣き真似をしてみせると眼鏡を外して俺に手渡した。
俺はその腹を括った潔い姿に不覚にも涙がこぼれそうになる。


「サワダ君!君の事は忘れない!決して忘れないぞ!」
「はぁ……サワダ、行っきまーす!」


靴が地に当たる力強い音と共にサワダ君は戦場へと旅立った。
男の周りには異変を感じた客が次々と集まり、
しかし異常なほどに涙と汗と鼻水を撒き散らす物体に近づけないでいる。
そのせいでなのか小さなミステリーサークルが出来上がっていた。
その人ごみの中をペコペコと頭を下げながら掻き分け、
サワダ君は店内にいる俺の位置からは見えないところまで埋もれていってしまった。
正直なところ、店としては客とのトラブルは控えたい。
が、しかし。営業の邪魔をされちゃたまったもんじゃない。


「ママー。これ買ってぇ」


ふと我に返り声のするほうに目を向けると、
小さな男の子がお菓子のコーナーでお母さんのスカートを引っ張っていた。
そして男の子の手の中には、あのオマケカード付きポテトチップスが。


「衛ちゃん。お菓子ならお家にたくさんあるでしょう?」
「えーだって、カードが欲しいんだもん。まだゴギャステフポ星人持って無いもん。
 ゴギャステフポ星人はね、悪者なんだけどすっごく強いんだよ。かっこいいの」


ご……ごぎゃ?
それってもしかしてもしかすると。


「せんぱーい!」
「あ、どうした?」
「なんかー、ご……ごぎゃすぽなんとか星人が当たったとか」


そのなんとか星人は超レアカードで、
そのカードさえ手に入れば中年男のコレクションは全て揃うわけだったらしい。
……というのはもっと後になってから聞いた話で。


「なんか喜んでますよー?うわっきたねっ。鼻、鼻水がっああぁああぁああ!!!!」


男は所謂アニメヲタクだったのだ。
そして今、最後の一枚を手にした男は世界の主導権を握ったような
勝ち誇った気分に浸っているのだ。ありとあらゆる液体を飛ばして。


「ふっ……あははははっあはは!!おめ、であはっとうございます!!ははっ」


馬鹿馬鹿しい、と腹の底から限界まで大声を出して笑った。
傍から見ればくだらないのかもしれないが、男にしてみれば世界征服に似ているのだ。
結局は世の中価値観で、それで生き様も変わるのだと。

なんだ。そんなもんなのか。


幸せそうな男を見て、確かに心の奥に暖かいものを感じた。


4 :琥珀 :2007/01/09(火) 22:48:50 ID:PmQHz4V3

the apple of sodom


欲しい欲しい、と醜く足掻いてもそれを手にすることが出来ないのは。
夢は夢だと冷たく突き放す彼の仕業だったりそうじゃなかったり。




――……一番欲しいものは何?


ふと。
遠い日を想った。誰かが呟く声を聞いた。

苦しければ苦しいと言え。
泣くのならば声を上げて泣け。
それさえも拒むのなら。



「望むことは諦めたわ。たとえ手に入れたって、
 私にはその正しい使い方も保存の仕方も知らないから」



それさえも拒むのなら、いっそう消えてしまえ。





「お望み通り」






その方が、貴方も僕等も楽だから。


5 :琥珀 :2007/01/18(木) 23:24:04 ID:PmQHz4V3

マトリョーシカ


何で笑っているの?


何がそんなに楽しいの?


私はこんなに苦しいのに



太陽が眩しいから?
風が唸っているから?
出口が見つからないから?
私が泣いているから?



私はこんなに苦しいのに


何がそんなに楽しいの?


何で笑っているの?






                   ねえ。
                      教えてよ。


6 :琥珀 :2007/01/22(月) 21:46:52 ID:PmQHz4V3

れっとぞーん



『だいじょうぶだよ』

きみのヒトコトが、ほんとうにおもくて。
むりしてわらわないでよ。
そんなの、せつないだけ。




どうしたの?

…………。

ぼくは、どうしてあげられるかな?

……そばにいてくれればいいよ。

それだけ?

それだけで、わたしにはじゅうぶんだよ。

じゃぁずっとそばにいてあげようか?

ううん。だいじょうぶ。すこしだけ、すこしだけでいいよ。

どうして?

わたしはつよいこだよ。いまだけで、だいじょうぶ。



彼女が何を背負って。何を想いながら。一体何処へ向かうのか。
10年経った今でさえ、僕には解らないけれど。

あの日と同じ言葉の重さ。偽りの笑顔。


「大丈夫だよ。さぁ、行こう」


7 :琥珀 :2007/01/24(水) 17:42:40 ID:PmQHz4V3

人の感じ方はそれぞれ。だから面白いのでしょう?



ぱしゃん。
水のはねる音。

すー。
風の通る音。

こつこつ。
街を往く足の音。

ひらひら。
桜の散る音。

とんとん。
扉を叩く音。

ぺら。
本を捲る音。

かちん。
ナイフとフォークの音。

「      」
貴方の笑う音。


8 :琥珀 :2007/01/31(水) 17:34:45 ID:PmQHz4V3

昼下がり。


時には。

目に見えなくても支えになるの。
例えば。夢だとか、貴方の言葉だとか。



「ねぇ、もう授業終わったで?」
「……ぬぁー……」
「寝不足?ちゃんと昨日寝たん?」
「寝たよ。寝たけど眠いの」
「…………」
「…………」
「ねぇ」
「うん?どないした?」
「夢を見たよ」
「へー。どんな?」
「貴方に殴られる夢」
「……そりゃヤな夢でございますこと」
「ねぇ」
「なんや」
「イイ夢が見たい」
「無茶苦茶な」
「そうだよね」
「じゃぁさ」


戯言。
そう。所詮、ワガママ。


「こうすればええやん」
「は?」
「聞いてなかったんか?」
「あ、ごめん」
「だから。紙に見たい夢を書くんやって。それを枕の下に置いて寝る」
「何それ」
「おまじないや」


くだらない。
そう鼻で笑いながら、私は再び夢の中へ足を踏み入れた。





貴方が出てきてくれれば、それでいいのだから。


9 :琥珀 :2007/01/31(水) 18:42:13 ID:PmQHz4V3

変わらないもの。変わってほしくないもの。


自分が弱ってるときって、優しさを求めちゃいません?




今年は雪降らないのかな。

……なんて本当にどうでもいいことを思った。
雪降るなら降るでさっさと降ってほしいな。
出来ればバイトの無い日。まぁ、もうすぐバイトも辞めるけどさ。

視界がクリアに映されない。
それでも解ることは、思ったより天井が白いってことぐらいで。
隅の方に黒い染みを見つけた。500円玉ぐらいの丸い染み。
今にも途絶えてしまいそうなか細い意識を、それを見つめることでなんとか繋いできた。
もうじき友人がお見舞いに来てくれる。
友人にはこんな情けない姿見せたくないから。
だから、だからさ。

それでも意識は離れていく。俺の気持ちなんか知らないで。



懐かしい唄が聞こえた。
その唄は、暖かくて、とても憎かった。



「サワダ?目ぇ覚めた?」
「……あれ……俺、寝てた?」
「うん。大丈夫かい?」


俺の知らぬ間に現れた友人は、兎の形に切った林檎を小さく齧った。
「サワダも食べるー?」と一匹俺に差し出してくる。

なんだか。なんだかさ。


「辛そうだね。顔色悪いよ」
「ああ。ていうかお前、塾平気なの?」
「んー?大丈夫じゃないと思うけど。まぁいいんじゃない?」


なんだか。くそう……。


「……サワダ?」


あーあ。あー……変わってないな。

昔から何も変わってない。
風邪を引くのはいっつも俺で。
そのたんびにお前がお見舞いに来て。
そのたんびに習い事すっぽかして。
そのたんびにお前が怒られて。
そのたんびに、お前は。


「気にすること無いよ。僕の意思でお見舞いに来たの。君は悪くないさ」


俺は悪くないって。
笑うんだろう?


「お前塾行けよ」
「サワダ、もうすぐ春だよ」
「おい」
「春が終わったら夏だよ」
「解ってるよ!つか、おい!」
「そしたら海行きたいね」
「…………なぁ」


何言ったって、お前は引かないんだろう?


「だから早く元気になってよ。バイトしてお金貯めるんでしょ?」
「……もうすぐ貯まるよ」
「そっか。楽しみだね」


そうやって笑うから。
何だかどうでもよくなっちゃうんだよ。


お前がいると、面白くて、楽しくて、嬉しくて。
本当にどうしようもない。


10 :琥珀 :2007/02/17(土) 18:38:57 ID:PmQHz4V3

大笑い



ははっ。あははっははははは!!

なんだってお前っ、はは、そんな醜い姿になっちまったんだい?

あははは、あはははははっ。

いやー実に愉快だよ。お前あはは、お前にはそれが一番似合ってるよ。

素敵だねえ。アカデミー賞並みだよ。くくっ……あははは!!

あー苦しい。息が止まりそうだよ。くっ……くく……もうだめ。笑っちゃう。

本当によく似合っているよ。お前にぴったりだね。

一緒にタンゴでも踊ってくれませんかー?あはははははっ!!

はははは。

はは……あはは。






あー。疲れた。


11 :琥珀 :2007/02/28(水) 16:51:16 ID:PmQHz4V3

色あせない。いつまでも。


なんだろう。

胸の奥の方で音をたてて。
御用の方はインターホンを押してください。
御用でない方は――……。




「しっかしまー……あれだ。今日は絶好の洗濯日和だ」


なーんて家事なんて一切手伝わない私が零した。
さっきからシーツに包まったまま動かない彼に向けて。
何か音を発していないと、彼は何処かへ消えていってしまいそうで。
見えない闇に帯びる私の鼓動だけが、ただ絶えることなく続いていた。

泣くか、と聞いたら彼は小さく身じろいだ。
平均的な男子よりも少しだけ、少しだけ弱い彼はよく泣いた。
彼を知った当初はうじうじしたさっぱりしない奴だと思っていたが、
彼を知れば知るほどそんなことはどうでもよくなった。
そんなことより、自分の知らない間に彼が消えてしまうんじゃないか。
突然何処かへ行ってしまうんじゃないかと不安で胸が締め付けられる。
彼を守ると決めたあの日から、私は見えない敵と戦っていた。


「修一」


呟くように彼の名を呼ぶ。
聞こえたのか聞こえてないのか、彼はこっちを向いてくれなかった。
またぎしり、と音をたてて胸が締め付けられる。

いつか冗談交じりに彼に言ったことがあった。
「あんたふらーっと消えちゃいそうだよね」と。
すると彼は一瞬ぽかんと口をあけた後、柔らかく笑ってくれた。

――……大丈夫だよ。


「修一」


もう一度彼を呼ぶ。
彼の黒い髪がちらりと、白いシーツから覗かせた。
貴方の大丈夫のヒトコトが、どんだけ重いことか。
そんな言葉はいらないから。
形に見える、何かをちょうだい。


「私、あんたがいないとやってけないんだよ」


掠れた声に、誰かが笑った。
胸の奥で、誰かが音をたてて笑った。


――……知ってるよ。




「……っ」


そんな声が聞こえた気がしてふと顔を上げる。
けれどそこにあったのは、皺の無いシーツと春の知らせ。








   『 知ってるよ。キミが強がってることも。僕のこと好きなことも。 』


12 :琥珀 :2007/05/02(水) 19:07:26 ID:PmQHz4V3

あんちゃん、


あんちゃん。夏が来るで。

せやな。もうすぐやな。

でもその前に「つゆ」が来るんやろ?

せや。雨がぎょうさん降るんやで。

嫌やな。

ジメジメするな。

なぁ、あんちゃん。

なんや。

「つゆ」が終わったら、向日葵取りに行こうな。

蝉とちゃうんか?

蝉もや。でもあんちゃん、蝉より向日葵の方が好きやろ?

そうやけど。

じゃぁ向日葵取りに行こうや。

わかった。約束やで。

うん。約束や、あんちゃん。





「あんちゃん」


あの時空から降ってきたのは何だったのか。
今でも鮮やかによみがえる、太陽の花と大切な者の笑顔。


「あんちゃん、向日葵咲いたで!」


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.