ろくときゅぅ〜王様と私と犬〜


1 :壱哉 :2007/03/30(金) 22:26:02 ID:xmoJm7zG

ある日王様と出会った"私"

その王様は偉そうで自分勝手でとにかく人間としての再教育を必要としていた

果たして"私"はそんな王様を無事更正させることが出来るのか!

(現代小説です。)


2 :壱哉 :2007/03/30(金) 22:26:51 ID:xmoJm7zG

〜序章〜


「おじちゃん!見て。ママに買ってもらったの。」

「おじちゃんじゃない!忠信兄さんと呼べ!」

まだ新居に引っ越す前、

確かいい歳をして実家暮らしをしていた

そんな腐った人間をさらに腐らせるような春の日差しがまぶしい昼だった。

姉にそっくりな憎たらしい姪っ子に手渡されたのは一冊の絵本。

「あー…おそらとわんこ?」

「あのね、お空にね犬が飛ぶの。」

「意味がわからん。理解できん。」

クレヨンで書かれた下手なのか上手いのかわからない絵に

さらに意味がわからない言葉がポツポツと浮かんでいる。

コレを書いた作者は恐らく精神が病んでいるに違いない。

そうでなければ、こんな超人的なストーリーを思いつくわけが無い。

もし、そうでないなら。

単なるバカで非常識人だ。

「大体、犬が空なんか飛ぶかって話だ。」

「でも、この本のわんこは飛ぶよ?」

「作り話だ。あれだぞ、埋蔵金と同じくらい作り話だ。」

「そうなの?」

「当然だ。なら聞くが、お前は犬が飛んでるところを見たことがあるか?」

「ないよ。」

「だろう。しゃべってるところを見たことがあるか?」

「ううん。」

「ほらみろ。つまり絵本なんてくだらないということだ。」

姪がそうなんだと納得しながら

絵本を片手に母親の所へ駆け出していった。

その絵本の作者、恐らくだが病んでいる作者の名前は

のじまいふみ

そう書かれていた。


3 :壱哉 :2007/03/30(金) 22:29:13 ID:xmoJm7zG

1〜王様のと私の出会い。ワンコも忘れずに〜

「雨、雨降れ降れ〜っと…。」

倒れるほど空腹だった腹を満たそうと

買い物に出かけたはいいけれど

雨の上に、愛犬に強請られた散歩も重なり

空腹をさらに増加させてしまった。

でも、買い物したものを運ぶのに必死で

いつの間にか空腹という事を忘れていた。

「あら。お財布ですよ。」

雨に打たれた豪勢な皮の財布。

「あ。お名前と住所が入ってますよ。チャム。」

中には財布と名刺とカードが入っている。

どうやらかなりのお金持ちの財布のようだ。

足元で小さな柴犬がこちらを可愛い黒目で見上げている。

「ね。お届けしましょうね。」

書かれていた住所は意外と自分が住んでいる近所で

そこへ向かって一人と一匹は歩き出す。



「こーんばんわー!」

たどりついたところは、高級マンション。

自分の住んでいるところとは全く違う。

「社長さん…とか?」

外に待たせてきたチャムが心残り。

雨に打たれないところには置いてきたが。

もしかしたら可愛くて誘拐されるかもしれない。

最悪、野良犬と勘違いされて……

「おい。人の家の前で何してんだ。」

「あ!」

「ドロボウか?」

雨でびしゃびしゃにぬれた、

白いシャツを着たサラリーマンが

怖い顔をして仁王立ちしている。

腕の中には、子犬。

「あー!チャム!」

「お前の犬か。外に出しっぱなしにするな。いじめられてたぞ。」

「え、イジメ…?」

「だから、俺が救った。感謝しろ。ドロボウ。」

「ドロボウじゃないですよ。」

彼からチャムを奪い取ると、よしよしと頭を撫でる。

クンクンと鼻を鳴らしているところから

やはり怖かったのだろう。

「で、何のようだ。」

「そうそう!これ、貴方の財布じゃないですか?」

「あ、俺の。」

皮の財布を手から奪い取って、失礼にも確認して

さっさと家へ入ろうと鍵を取り出した。

なんだか失礼だとむっとしていると

ぴたりと手を止めて、何だよと小さく唸った。

「何でも無いです!」

なんだかムカムカして、

この人の顔を二度と見たくないと自分の家へと

駆け足で帰った。

その人の玄関に傘を忘れて、濡れながら。


4 :壱哉 :2007/03/30(金) 22:30:23 ID:xmoJm7zG

2〜王様に飲ませるコーヒーなんて無い!はず…〜

「酷い酷い男の人だったよね。」

チャムはブルブルと体を震わせながら、

ヒーターの前へと座り込んだ。

バスタオルで頭を拭きながら

チカチカと留守電が光っているのを見つけて、

何の電話かはわかっているから、恐る恐るボタンを押した。

(何やってるんですか!依史さん!〆切!)

「げ…仙道さんだ。」

(絵本、出しませんよ!)

「それは困るなぁ。食費とかいろいろ…」

(ちゃんと原稿送ってください!)

散らばった室内。

とりあえずパソコンを立ち上げて、椅子に腕を組み

唸りながら、額を机にこすりつける。

「何も出ないなー。何も。」

外は雨が止んで、少し晴れてきたようだ。

はぁとため息をつくと同時に、

ピンポーン

と誰かがやってきた。




「チェーンもかけないのかよ。」

「……いきなり押しかけてなんですか。」

それはさっきの嫌な彼だった。

扉を開けると、ドロボウだったらどうするよと怒鳴り

家の中へ無理矢理入り込んだ。

入るなり、汚い汚いと連呼して

私が座っていた椅子に座ると、

こちらをじっと見つめた。

「な、何ですか?」

「お茶。」

「……コーヒーでいいですか。」

「結構。あ、ブラックで。」

なんて嫌な人。

チャムもなんだか嫌いなようで、私の足元にぴったりと寄り添っている。

それでも一応はお客だから、

最近貰った一番いい豆を引いてコーヒーとして出した。

「うまい。ところで、さ。」

「はい……。」

「どうして俺がここに来たのか疑問に思わないのかよ。」

「あ!」

「どんくさ。どうせそのどんくさなら気がついてないんだろ。」

机に何かをどさりと置くと、彼はコーヒーを再び口に含み

うまいと言った。

「お財布…。」

「落ちてた。こういうのをミイラ取りがミイラになるって言うんだな。」

「………。」

「初めてこのことわざ使ったぞ。」

「……何ですか。」

「何ですかって何が?」

「お礼はコーヒーでいいですよね。」

「別にいいんじゃないか。」

「じゃあ、私にもお礼。」

彼は少し嫌そうな顔をしたが、

名刺を出して、これでチャラとわけのわからないことを言い出した。


5 :壱哉 :2007/03/30(金) 22:31:15 ID:xmoJm7zG

3〜王様の本名発覚。意外と和風。〜

「コーヒー美味しかった。有難う。おい、何でそんな顔する。」

「は、え?」

「目が丸くなってるぞ。お前、何考えてる。」

「あ、えっと。あ!いえいえ。」

「ごまかすな。」

どうぞと靴へらを差し出すと

少し気分がいいのか、その王様はありがとうと胸を張って笑った。

「また来る。」

「は?」

「コーヒーうまい。また来る。」

こちらの都合も聞かないで、それだけ告げると

さっさと扉を開けて出て行ってしまった。

なんて、自分勝手な俺様だろう。

「王様みたいな人だった。」

貰った意味の無い名刺をじっと見つめて

ため息をつくと、ぐぅっとお腹がなった。

「ご飯食べようか?」

気がつけばもう昼時で、

何か腹に入れておかないとお腹がなって仕方ない。

急いで支度をしようと台所へ向かうと

ピンポンとチャイムがなった。

今日は一年分の客が来る日らしい。

「はい。」

「俺。」

扉を開けると、さっきまで居たあの俺様が

顔を出した。

「チェーン付けとけって。俺でよかったけどさ。」

「すいません…。」

ぐっと押し入ると、勝手に上がり始めて

何かを探し始めた。

「知らないか?財布。」

「財布?いいえ。」

「ここかと思ってたんだけどなぁ。」

「でも、こちらにはありませんよ。」

くるくると探し回ると、首をかしげた。

「また道端で落としたかな。」

「ミイラ取りがミイラですね。」

「……うるせ。」

少しすっきりしたと笑うと、その人は私の頭を指でぴんとはじいた。

「ぼ、暴力反対ですよ!」

「お前が不気味に笑うから、除霊してやったんだよ。」

「もしかして、そういうの見えるんですか?」

「アホか。嘘だよ。」

その男の人はぐるりと部屋を見渡し

とどめのように”汚い”と呟くと

本棚を少し茶色が混じった目で見つめた。

「そういえばお前、作家か何かなのか?」

「あ……はい、えっと。絵本を。少々。」

「絵本か。」

戸棚に入っていた、今まで書いていた絵本を

一冊一冊手に取ると、ふぅんと興味なさそうに読む。

「子供が居ないのに、絵本なんか書けるのか?」

「そ、それは偏見ですよ。」

「そうか?」

彼はまたふぅんと適当に促す。

「のじまいふみ。本名?」

「そうです。野島の野は野原、ひょっこりひょうたん島に衣ににんべん、史は歴史。」

「……あぁ、なんとなく判る。」

「さっき貰ったんですけど、この名刺…。」

「大切にしろよ。」

「い、いらないんですけど。」

「何で?」

「普通いらないと…あ、えっと松下…なんて読むんですか?」

そこには、松下忠信と書かれていた。

「ちゅうしん?」

「アホか。ただのぶ。」

そうかそうかと頷く私にまるでとどめを刺すかのように

アホか

と低い声で呟いた。


6 :壱哉 :2007/04/01(日) 00:18:22 ID:xmoJm7zG

4〜私ってば召使い?〜

彼は本当にやってきた。

それも毎日。

私が締め切りに追われていても、

コーヒー

そう言う。

何様ですかと一度おびえながら聞いてみると

”王様?あ、俺様。”

さらりと茶漬けのように答えられた。

もう、口答えすら面倒。

「もう、豆差し上げますから。」

「嫌だ。めんどくさいから。」

「もう!じゃあ毎日来るのは止めてください!」

「俺、コーヒーは毎日飲む派だからさ。」

話が通じない。

この人たぶんどっか別の国から来た人だ。

そこの一番偉いわがままな王様だ。

「……何してる。」

突然、横から手が伸びてきて

書いていた原稿が目の前から消え去った。

「あ!返してください。」

「何?我がまま王子と魔法使い?」

「……返してください。」

「どんな話なんだよ。んー、まだ書きかけ?」

「返して!」

書きかけの原稿を掴むと

勢いよく引っ張った。

びりびりと少し音を立てたが、

無事に全部戻ってきた。

「そんなに向きになるなよ。」

「……一応、仕事道具なんです。」

「一応ねぇ。」

コーヒーを早く飲み終わって、帰って欲しい。






「じゃあ、また来る。」

「……お願いなんで、もう来ないでください。」

「どうして?」

首をかしげて、わからんなぁと唸っている。

「俺、なんか邪魔してるか?」

「してます。相当。」

「ふぅん。まあいい。また来る。」

「ちょ!」

来るなと言ってるといいかけたが

バンと扉が閉まって彼が見えなくなってしまった。

「酷い人。」

ワンワンとチャムが吠える。

チャムもあの人が嫌いなようだ。

「次は絶対居留守使ってやる。」

締め出し作戦だ!

意気込んではみたけれど、

来ないと少し寂しいかもしれない。

もうそれくらい日常。

「なんか、召使いの辛さがわかってきたような。」

次回はそんな苦労人の話にしようと

強く心に決めた。


7 :壱哉 :2007/04/01(日) 21:13:44 ID:xmoJm7zG

5〜お姉さん登場。本当に兄弟?〜

「あ、」

「何だ。」

日曜日。

休日だというのに、シャツを着込んだその人は

私があげた声に反応した。

何度帰ってくれと願っても

帰ってくれない彼に対して、もう半分諦めていた。

注意することをやめて、ため息をつきながら

その王様と共存する道を選んだのだ。

「砂糖が無い。」

「別に。俺ブラックだし。」

「貴方がよくても私はいけないんです。」

「ふうん。」

「買ってきます。」

「じゃあ、俺も付き合う。」

何の気まぐれだろうと横目で確認すると

それがばれてしまったのか、"何だよ"と太い声がした。

「傘持って行きましょうね。雨降るかもしれないから。」

「アホか。」

手から傘が消えると、

私の右手が引っ張られて靴も履いていないのに

外へ出されてしまった。

「く、靴だけは履かせてください。」

「なんだ、ドンくさいな。」

彼は何も考えないでそうしているのかもしれないけど

私はドキドキしっぱなしだった。

ずっと右手が握られていたからだ。



「砂糖だけでいいのか?」

「……はい。」

「何だ、熱でもあるのか?顔が赤いぞ。」

「赤くなんか無いですよ。」

いい加減離して欲しい。

なのにずっと握られて繋がれている。

この人はきっといろんな女の人にこうしているから

それが自然なのだろう。

そうだ、たぶんそうだ。

きっと前世はホストだ。

でも、そんな昔にホストなんてあったんだろうか。

「何難しい顔してる。俺に惚れたか?」

「ち、違います。意味がわかりません!」

「仕方ないな。今日は俺がおごりで、ケーキでも買ってやるか。」

「え?」

「確か美味しいやつあるんだよな。」

砂糖を片手に、ズルズルと引きずられて

裏路地に連れ込まれた。

何かいやらしいことをするのかと、ドキドキしながら着いていくと

少しこじんまりした綺麗なケーキ屋さんが目の前に現れた。

「恵子ー!」

「あ、あらら。珍しい!」

「ほら、何でもいいぞ。選べ。」

「えと、えっと…。」

「彼女?」

ショップの店員さんらしき人が

カウンターから私の顔をニコニコしながら見ている。

「可愛らしい。前まで付き合ってた嫌な女じゃないのね。」

「恵子。」

「ごめんごめん。正直きつかったもの。」

とても美人で背が高く、髪を綺麗に束ねたその女性は

王様の前の彼女のどのあたりが嫌いだったかを挙げ始めた。

「傲慢で、自分勝手で、妙に自信家で、人の気持ちをわからない人。あ、これアンタだった。」

「おい、恵子。」

心の中で盛大な拍手を彼女に送った。

王様は不機嫌そうに唸ると、また不機嫌そうな声で

「おい、決めたか?」

と、私に聞いてきた。

「あ…えと…えっと、モンブラン?」

「聞くな。俺に。」

「お勧めはティラミスよ。旦那のティラミスは世界一なの。」

「じゃあ、ティラミスに。」

その人は嬉しそうにケーキを取り出して、

袋につめている。

その姿を彼はじっと見て楽しそうに笑っている。

「まさか、彼女…さん?」

「まさかって何だ。違う。姉。」

「え…えぇー!」

その姉が苦笑いをしているのが判った。

あぁ、やっぱり何度もきっとそういわれているんだろう。

お姉さんまでで人としての何かが止まってしまったのだろうと

勝手に納得してみた。


8 :壱哉 :2007/04/02(月) 22:38:45 ID:xmoJm7zG

6〜王様、見直される〜

「やっぱ、似てないのかな?」

お姉さんは苦笑いをしている。

その傍らでは忠信さんが顔を膨らして

ティラミスをつつきまわしている。

「よく言われるのよね。」

「……そうなんですか?」

「そうそう、性格がまるで違う!とか。」

「そうですね。全くその通りです。」

「おい。」

とても低い唸るような声で叫ぶと、

お姉さんの前に仁王立ちをした。

「何だよ。そっくりだろうが。」

「違いますよ。全然。お姉さんの方がよく人間が出来てらっしゃる。」

「依史!」

「ま、それが事実よね。」

「そうですよねー。」

ふと、横を見ると、本棚に見覚えのある本が刺さっていた。

それは確か私が一番最初に書いた絵本だったような。

「あ、何で絵本って思ってる?私、この人の大ファンなのよね。」

「それ、書いたのこいつだよ。」

「え?」

「あ、えっと、野島…依史です。」

「あら!本当?サイン頂戴。ここにね。書いて。」

サインなんて初めて求められた。

だから少し驚いた。




「まあ、しばらく通ってやってくれ。」

「ティラミス美味しかったです。」

「そうだな。」

忠信さんは何かが不満のようだ。

ずっと腕を組んで唸ったままだ。

「どうかしたんですか?」

「……彼女だって言われた。心外だ。」

「すいませんでした!私なんかで!」

「そうだな。魅力的だとは思うけど、俺にとってはいまいちだ。」

少し驚いた。

そして次には恥ずかしさがやってきた。

魅力的だなんて今まで誰にも言われた事は無かった。

だから、びっくりだ。

さらにこの王様に言われたことがさらにびっくりだ。

「どうした。」

「い、いいえ。えっと、コーヒー飲みに寄りますか?」

「おう。そうする。」

いつもよりちょっと彼に近寄って

家へ向かって歩きだした。


9 :壱哉 :2007/04/04(水) 21:56:56 ID:xmoJm7zG

7〜お誘いは前もってしましょう〜

それは新しい絵本が出来上がって

ほっとため息をついていた頃の話だ。

突然電話が鳴り響いてびっくりした。

原稿の催促なら違うはずだし、お友達からのお誘いの電話なら携帯に入るはずだ。

なら、一体誰が?

「もしもし。」

(早く出ろ!)

「あ、忠信さんか。」

嫌なやつから電話がかかってきた。

「何か用事ですか?忙しいんです。用件は?」

(忙しい訳ないだろ。締め切り終わってすぐなのに。)

「何で知ってるんですか…。」

(この前そういってたじゃないか。)

あぁ、いつの間にか自分のプライベートを彼に教えていたらしい。

もしかしたら勝手に調べたのかもしれないけれど。

「で、何ですか。」

(お前、今夜開いてるか?)

「こ、今夜?」

(ん。パーティーに付き合ってほしいんだけど。)

パーティー。

頭の中をいろいろな妄想が回る。

まさか彼は私のことが好きなのか?

彼女だって紹介する予定なのか、一体なんだ。

(どうした。)

「い、いいですよ。いいですよ。パーティーですね。」

(今日の6時くらいに迎えに行くから。)

「は、はい!」

私は笑って電話を切った。

少しだけ嬉しくなって飛び上がった。

なんだかんだで結局私のことが好きなんじゃない。

ざまーみろ。

絶対振ってやる。

「なんか、忠信さんに似てきたな…歪んできたのかな。性格。」

はあとため息をついた。




「お前、それで行くのか?」

「はい。」

珍しく正装をしている彼が私を上から下へと舐めるように見ると

ため息をついて、手をまた引っ張り歩き出した。

「行くぞ、着替えかってやるから。」

「え、いや。これじゃ駄目なんですか?」

「ジーパンってどうなんだ。どんだけカジュアルだ!」

「む、だってこれが一応一張羅で。」

「おかしいだろ。」

高級そうな外車に私を押し込めて

どこかへ連れ去られて

今度は高級そうなブティックに押し込めた。

「とりあえずドレス。黒でいいや。着せてやってくれ。」

あれよあれよという間に私は脱がされさまざまなものを着せられ

彼の前に立たされた。

「素材は悪くないからな。いいんじゃないか?」

「お色はこれで?」

「ん。カードでいいか?」

「はい。」

「依史。髪の毛下ろせ。そっちの方がいい。」

「あ、はぁ。あのお金。」

「いい、おごり。」

くしゃくしゃと髪の毛をされて

鏡の前に立たされると、スリットで右足が出ている自分に

少し恥ずかしくなった。


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甘辛流小説家ギルドGAIA
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