俺は死んじゃった。最愛の彼女を残して。
結婚の約束もしてたのに。内定も取れていたのに。
つまんない事故だった。誰の役にもたってない。
死んじゃったから自己満足にもならない。彼女を悲しませただけ。
悔いが残りまくってるからユーレイになったことに驚きはしない。
ユーレイになれてよかったとも思う。
神さまには、感謝すればよいのか恨めばよいのかわからないけど、
もし会えたらこう言うよ。「サンキュー」って。
神さまに対してはだいたいそのくらいの気持ちでいる。
ユーレイになってから俺はずっと彼女を見守ってきた。
彼女には俺が見えない。さみしくもあるけど良いこともある。
お風呂を覗けるとかね。すぐ見飽きたけど。
けど腋の処理をしているところは見たくなかったな。
俺は彼女に腋毛が生えるなんて思わなかったよ。
生えるとしてもチューリップとかそういうかわいらしいものだと思ってた。
はは。
でも俺がほんとうに見たくなかったのは彼女が泣いている姿。
夜中に、まっくらな部屋のなかで、声も出さずに泣くんだ。
俺のTシャツに顔をうずめて。
でも俺はユーレイだからなにもしてあげることができない。
◆
これはユーレイである俺の恋の話だ。