月読Rewrite sideB


1 :一八十 :2009/09/13(日) 21:21:17 ID:ocsFuctm

 月読rewriteのsideBです。

 sideAと一緒に読んでください。


2 :一八十 :2009/09/13(日) 21:21:51 ID:ocsFuctm

 時と言う概念は実に不正確なもので、
 一般に我々が見ている時間は、その本流から外れている。
 時間の本流とは、連続したものであるが、
 我々が規定している時間とは、断続的なものである。

 ――俺の能力は、そこに依存する。

 通常、人間は、一つの時間軸しか認識することが出来ない。
 しかし、俺は2つの時間軸を認識し、乗り換えることが出来る。
 一つは、我々がいう時間。もう一つは、連続した本流。
 俺は、本流に移動し、時間を止めることが出来る。
 本流は、時間に対し強い影響力を持つのだ。

 さて、俺はこれまでに何人の俺を殺してきただろうか。
 その数は、すでに記憶にはない。
 ただ一つ俺が覚えているのは、これだ。
「全ての世界に存在する自分を殺せば、最強の力が手に入る」

 時間と本流は、ずれている。
 そして、
 そのずれかたのパターンによっていくつもの世界が存在する。
 また、その世界には、それぞれ自分と同じ存在が在り、
 それらを殺すたびに、自分の能力が強化されるらしい。
 俺は、ある筋からその情報を得たとき、
 半信半疑ながらも高揚を抑えることが出来なかった。
 すでに最強たる俺の能力が、更に強化される。
 これは、興味深いことではないか。

 俺は、早速その実践に取り掛かった。
 一人目を殺したときに、その話が真実であると知った。

 ――これは、いい。
 その後も、俺は自分を殺し続け、
 そして、今、最後の一人に至った。

 だが、その一人が思わぬ強敵だったのだ。


3 :一八十 :2009/09/15(火) 22:23:08 ID:ocsFuDVe

 新月の夜。俺とそいつは初めて出会った。
 崩れかけた工場跡に、そいつはいた。
 地下へと続く階段の上で、無防備に闇を覗いている。

「あぁ。すこし早いな」
 普段の遭遇よりも早い。
 俺がこの世界に現われてからまだ1日も経っていない。
 その意味を込めた呟き。そして、宣戦布告。
 俺は、言葉と同時に、そいつの背中に蹴りを入れる。
 脊髄を穿つように、脚を一本の槍のように。
 必殺の蹴りは、しかし、間一髪のところで回避された。
 蹴りは確かに当たっているが、受身を取るには充分すぎた。
 階下で、鈍い音が聞こえる。
 だが、そいつはまだ生きているに違いない。
 俺は、ナイフを構え、
 左目に意識を集中しながら、階段を下りていく。

「ふむ。いやどうも、参ったね。コイツは本物だ」
 そいつは、ダメージを受けながらも立ち上がった。
 こちらの与えたダメージが弱すぎたのか、
 それともそいつがタフなのか。
 どちらにしても、そいつがこの世界の俺であることは間違いない。

「ここ数日、雑音が入ると思えば、こんな早くに会うとはな」
 俺は、感嘆と狂喜の声を上げる。
 そいつは、俺の声に反応して、俺から距離を取ろうとした。
 軽い失望。他の世界の俺と同じような反応だ。
 だが、その失望は、すぐに歓喜に変わる。

「まさか、見えているのか。いや、だとしたら向かってくるか」
 そいつは、この暗闇の中、
 あたかも見えているかのように奥のフロアへと進んでいく。
 落ちている廃材や、複雑に入り組んだ地形をものともせずに。
 そいつは奥の部屋へと入ろうとしているようだった。

「とはいえ、この奥の部屋に行くのであれば、簡単に詰まれる」
 接近戦では俺に分がある。
 ましてや、相手にはそれなりのダメージがある。

「さて、どうする気だ?」

 俺は、じりじりと距離を詰める。
 そいつは思ったとおりに奥の部屋へと入った。

 俺は、光に照らされる直前に能力を発動した――。


4 :一八十 :2009/10/03(土) 21:15:08 ID:ocsFuDVe

 横たわるのは、紛れもなく俺の姿。
 俺は、最後の俺を殺した。
 まもなく、全ての能力が俺の元に入る。
 その筈だった。
 だが、何時までもその時は訪れず、代わりに景色が揺らいだ。

 再び固定された世界には、倒れた俺はいなかった。
 俺一人がただ立っている。
「なんだ、これは?」
 俺は、反射的に月を見た。
 やはり変わらずに新月。
 時間は経っていない。
 しかし、目の前の光景だけが決定的に違う。
「あいつの能力なのか……。だが、どういう理屈なんだ?」

 俺は、一先ずこの場所を後にする。
 今日殺せなかったならば、明日殺せば良い。
 ただ、それだけの話だ。

「いいね。俺の攻撃を一度でも避けたのはお前がはじめてだ」


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