久しぶりに、本気で最後まで小説を書いてみたいと思いました。
どこまでやれるか分かりませんが、少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひおつき合いください。
もう一度バイオリンを弾いてほしい。
それだけがわたしの願いだよ。
「茜は、バイオリン好き?」
お兄ちゃんがわたしの顔を覗き込む。
子ども用の小さな楽器をかまえ、一音一音、一生懸命に音を出す。
「茜、音楽っていうのは、人の心を動かしてくれるんだよ」
「人の心を?」
「そう。音楽は、人を感動させてくれる。幸せな気持ちにもしてくれる。時には泣かせてしまうことだってある
んだよ」
「すごいなぁ」
「だろ? だからお兄ちゃんは、少しでも、誰かを幸せな気持ちにしたくて、こうしてバイオリンを弾くんだ。
わたしは……。
お兄ちゃんに笑っていてほしいからバイオリンを弾く。
バイオリンを弾くお兄ちゃんが大好きだから、わたしもバイオリンを弾くんだ。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「わたし……バイオリンが好きだよ」