夏日、時々-寒心


1 : :2007/07/27(金) 11:57:53 ID:nmz3m4W4



    『この世の全ての人に幸せが訪れますように。』



   今年の七夕の短冊に、この願いを書いた人は何人居るでしょうか。

  人の幸福を願える、強い強い人。

  でもこれは、自分が辛い思いをしたことをよく分かっているから。

  辛い思いを超えた時ほど、人は他人を思いやれる。

  だからこんなにも心の清い願いを書けるんだと、そう思う。

  

   10代だって、真剣に人を愛せる。

  ううん、年なんて関係ないかもしれない。

  だって人を愛せるのは結局は心の問題だから。

  みんなみんな、本当は強いんだよ。


  





         だから、泣かないで?








       大丈夫、貴方の味方はたくさん居るから。



  
  


2 : :2007/08/03(金) 18:59:35 ID:mcLmm4m4

『愛商人』



初めまして。私、『愛商人(あいしょうにん)』と申します。

 
貴方の大好きだった人のお話、聞かせて頂けませんか―…?


悲しくも嬉しくも愛しくもあった、貴方の大好きな人のお話を…


ただし『大好きだった人』限定でございます。


え? 話をして何になるのかって?


いえいえ、ただ私は少しだけ魔法をかけて差し上げようと思いまして。


お話頂いたお礼に貴方の大好きだった人を素敵な想い出に変えて差し上げます。


そして新たな気持ちになれるよう、少しだけ魔法を――…


3 : :2007/08/03(金) 19:22:12 ID:mcLmm4m4

あたしの大好きだった人はね―chapter1 さつき―


「あたしの大好きだった人は、もうこの世にいないんです」

 目を潤ませながら話し始めた1人の少女。
彼女は18歳。話し始めたのは、高校3年生秋の出来事―…

『おいこらさつき!! てめぇ待ちやがれ!』
『いや―!』
 夕暮れの影は校舎に向けて伸びてゆく。
誰も居ない校庭で、2人の走る音だけが響いている。
「おらっまたお前人のノートにラクガキしやがって!」
「寝てるほうが悪いの!」
笑い合いながら走り回るさつきの腕を掴み、少年は自分へと引き寄せる。
「足で俺に勝てると思うなよ!」
「ずるいじゃん陸上部!」
そういいつつも捕まって嬉しそうな顔をするさつき。
少年も笑いながら小さな身長のさつきを見下ろしていた。
「…全く、もうやるんじゃねーぞ」
少年はノートでさつきの頭を小さく小突く。
「…それ一応、手紙なんだけど! いい加減気づけ!」
「は?」
少年はそう言うとノートをめくる。
「…あっ」
初めのページからずっとめくって行くと、小さな文字が書かれていた。
「ず、っ、と、だ、い、す、き…」
「ちょっと口に出さないでよ!」
さつきはノートを奪い返し自分の胸に引き寄せる。
「……マジ?」
「…」
夕暮れのおかげでさつきの顔が真っ赤だと言うことは気づかれていない。
「…ははっ。サンキュ。明日の地区予選で勝ってくるから、そしたら返事してやるよ」
少年は笑いながらさつきの腕を掴む。
「もう! 何よそ…」
そして言葉を言いかけたさつきの唇に、少年の唇が静かに重なった。
「れ…」
さつきは何が何だか分からなかった。
「まっいい返事期待してろよ! じゃなっ」
そして手を振りながら、少年は走り去る。
「…馬鹿―!!」
さつきは顔を真っ赤にしながら、少年の背中を見送った。
「……最後の大会…頑張って…」
そしてポツリと呟いた。
 しかし、その夜だった。
『さつき? 今交差点で事故があって――…』
友人からの電話はさつきの頭を真っ白にした。
「え―…」
『陸上部の子が巻き込まれたって――』
その瞬間、携帯電話は床に投げ出された。


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甘辛流小説家ギルドGAIA
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