「たとえば もう僕はあれほど好きだった
オナニー(自慰)をやめてしまったんだ。
何万回もやってきたからね。
でも、倦きたんじゃないんだ、
自らを慰めるとゆう行為が
目的化しているのに気がついたんだ。
こんなまぬけなことってないよな、
AV女優・エロアニメで興奮していたのに、
今は もう、興味がないんだ。」
山口喜一くんの風呂敷
風呂敷のなかに猿が入った
はじけたサイダー缶が入った
梅干しが入った
ボインが入った
風呂敷を手に男が行く
母といもうとが行く
昇れる太陽と
果てしない濁流と
いかれた代弁者と
むさぼり続ける俗人が
風呂敷をつつんでいる
尻と鼻の穴に詰まった滓をそのままに
男の咽が母をよばう
風呂敷の魂で
知識は目立たぬ捨石
風呂敷のなかに手帳がのこった
鉛筆箱がのこった
枯がらしの涙がのこった
日々のたよりの乏しさがのこった
風呂敷を後に母が行く
あばた面と
さげすまれた狐狸と
乳くさい子らの世話と
この国の性的窮状が
風呂敷をつつんでいる
昨夜のほとりのかがり火いいのまま
母の腕が恒常旗を執る
風呂敷の薄闇で
知識は地を這う虫けらの如く
君の濡れた雫が
後宮の弦につたわりて落つ
味のまろやかな滴りが
ぼくへの褒美となる
山口くんの風呂敷