一人旅


1 :中人◆WYmroVkc :2007/07/04(水) 00:38:27 ID:onQHxJz3

行く当ても無い旅にでた貴方。行く先々で会う人々。そんな事がありましたら、私に一つ教えてくださいな。


2 :中人◆WYmroVkc :2007/07/04(水) 00:39:41 ID:onQHxJz3

「道」

 窓から差し込む光が太陽光から月光へと変わったころ、椅子に座っている人が目を覚ました。
「もうこんな時間か。昼寝にしては寝すぎたかのしれないね」
 月の光だけが部屋を照らしている中、その人は静かに微笑んだ。
 その人は月の光が入ってくる窓を眺め、ぽつりと呟いた。
「分からない。言葉がわからない」
 その人は窓を眺めたまま、考え込むように瞼を閉じた。
 じばらくして瞼を開けた。そして、こう呟いた。
「探しても出てこない」
 また、その人は瞼を閉じた。
 周りが月光で照らされる中、その人は瞼をゆっくりと開きながら、呟いた。
「出てこないなら、旅に出よう。探している言葉に出会うまで」

 翌日
 広い草原に一人の人が、歩いていた。

「道」

 無くした言葉がわからない
 どれだけ探すも出てこない


 これから私は旅に出る
 無くした言葉に出会うまで


 旅はいつもここから始まる
 旅はいつも今日から始まる


3 :中人◆WYmroVkc :2007/07/08(日) 23:40:10 ID:onQHxJz3

「風」

 私はしばらく歩いていると、そよ風が向かいからやって来た。
「やあ。こんにちは」
 その風はまだ、私が知っている風である。
 何度も会って通り過ぎていった風である。
 私が知っている風が来るたびに、ぼんやりとした思い出を連れてきて、急ぐ気持ちを連れて行く。
「そんなに急ぐことは無いよ?」
 私がそう言っても、風は聞かずに駆け抜けてしまう。
 急ぐ旅でもないのに、たまには私と話し合おうよ。
 私はそう思いながら、先をも知らぬ道を歩いて行った。

「風」

 旅の始めは面白い
 まだ知る風と良く出会う


 あわい思い出持って来て
 はせる思いを持って行く


 まぁ待てそんなに早まるな
 たまには私と語ろうよ


4 :中人◆WYmroVkc :2007/07/18(水) 14:24:49 ID:onQHxJz3

「橋」

「ねえ、」
 後ろから子供の声がした。立ち止まって振り返ってみると、10にも満たないぐらいの子がいた。
「なに?」
「これ・・・・・」
 そう言ってポケットから出したのは、自分のハンカチだった。
 私はそれを受け取って、
「ありがとう」
 と、言った。
 それから少しその子と話して、再び歩き出した。
「また会おうね」
 私がそう言うと、その子は笑顔で、
「うん!」
 と言って、私とは別方向に走って行った。
 少し微笑みながら、私は歩いて行く。

「橋」

 小さなきっかけ大きな友情
 深まる出会いはにわか雨


 小さな思い出大きな宝
 経てば出会いは快晴だ


 人の行き来に良い橋を
 心と心に良い橋を


5 :中人◆WYmroVkc :2007/07/21(土) 13:04:45 ID:onQHxJz3

「涙」

「やあ」
 そういって目の前に現れたのは、『きゅうゆう』だった。
「そういえば、ここの生まれでしたね。あなたは」
「ええ」
 なぜ、現れる。あの日から私は逃げたはずだ。
 なぜ、喋り出す。あの日から話すのはやめたはずだ。
 そう思っていても、しゃべりだすことが出来ない。
「今日は随分と荷物が多いね」
「今日でこの町から離れるものでね」
「そうか・・・」
「あ。でも、家は残してるよ。良かったら使ってくれないかな」
 そうか、頑張れよ。
「私には、あなたに優しくしてもらう事はやめたはずだ」
「・・・そうでしたね。忘れてました」
「いや、いい。気持ちだけ受け取るよ」
「そうですか。さようなら・・・・・・」
 そう言って私に背を向けて去って行く『きゅうゆう』の背は、どこか、悲しい雰囲気がでていた。
 私は少し、考えていたが、また歩き出した。嬉しい気持ちがまたくるまで・・・・・

「涙」

 どうしてお前は現れる
 どうしてお前はしゃべりだす


 去り行くお前は固めます
 土と思いをこの場所に


 悲しい気持ちよ、さようなら
 嬉しい気持ちよ、また明日


6 :中人◆WYmroVkc :2007/07/26(木) 15:30:36 ID:onQHxJz3

「闇」

 しばらく歩いていると、周りはもう、夜になっていた。
 家を少し探し歩いてていると、家ではなく、大きな木を見つけた。
 私はそこへと駆け込み、幹の根元に腰を下ろした。
「・・・・・静かだな・・・・・」
 少し周りを見ていたが、すでに誰もおらず、いたのは、静寂と虫の声だけだった。
 今日も宿無しか、と思いながら、私は眠りについた。
 今日も最初の気持ちを忘れずに・・・・・・

「闇」

 旅のつかれでひとやすみ
 木陰に入ってひとやすみ


 気がつきゃ童はもう居ない
 気がつきゃ静寂虫の声


 今日も宿無し闇と寝る
 周り消しても初心は消さぬ


7 :中人◆WYmroVkc :2007/07/31(火) 16:41:49 ID:onQHxJz3

「夢」

「夢」

 男は言った。
「そんなもの見つかるわけが無い。儚いものだ」
 私は言った。
「それは違う」
 男は、少し考えてから言った。
「なぜ、お前は、見つからないものを信じるのだ?」
 私は言った。
「見つからないものを信じないのですか?」
 男は、俯いてから言った。
「信じているだけでは生きて行けない」
 私は言った。
「あなたは、信じないで生きているのですか?」
 男は、俯いたまま何も言わなくなった。
 更に私は言った。
「最初はあなただって持っていたはず。私は今でも持っています」
 そしてそのまま、私は場を去った。

「夢」

 儚き夢だと人は言う
 私は違うと人に言う


 どうして信じると人は聞く
 どうして信じぬと人に聞く


 それでは生きれぬと人は言う
 それで生きているのかと人に聞く


8 :中人◆WYmroVkc :2007/08/10(金) 16:46:27 ID:onQHxJz3

「幻」

 手の平に乗っている小さなバッジ。
 昔は、思い出がたくさんあったバッジ。
 旅に出るときに気が付いたら持っていたバッジ。
 だけど、今では思い出のバッジもただのゴミ。
 思い出が詰まったバッジを投げ捨て、何も喋らず走り出す。
「・・・・・・・・・・・・」
 捨てたバッジも全て信じて静かに目を閉じる。

 "まだ行ける"

 ずっとは行けないけど走る勇気はまだあります。

「幻」

 幼き日集めた宝は何時の日か
 魔法が切れてゴミの山


 私は無言で走り出す
 全てを信じて目を閉じる


 まだ行ける
 走る勇気はまだあります


9 :中人◆WYmroVkc :2007/08/14(火) 22:34:01 ID:onQHxJz3

「光」

 自分が輝いている事に気付いたのは何時からだろう。
「それは自分以外の周りの人が輝くことを止めたときだ」
 自分が小さく輝いていても、周りが明るく輝いていて気付かない。
 闇となる人がいるから光となる人がいる。
 夢を打ち砕かれて絶望を知った時に現実を知る。
「砕かれても夢は存在するもの」
 現実を知った時、自分を照らす光は何処を指すのだろう。
「わからない。でも、指すところに行っても損はしないだろう」
 そして、行った先には何があるのだろう。

「光」

 輝くことに気づかない
 まわりが明るく気づかない


 闇があるから光となる
 絶望を知って遂に知る


 照らす光は何所を指す
 照らす行く先何がある


10 :中人◆WYmroVkc :2007/08/16(木) 20:13:45 ID:onQHxJz3

「人」

 私はこれまで出会った人々のことを思い出した。
「ありがとう」「うん!」
 最初は不安がっていたが、最後には笑顔で別れたあの子。
「そうですか」「さようなら・・・・」
 あの日から私に優しくする事をやめたのに、また、しようとした『きゅうゆう』
「夢は存在するもの」「損はしないだろう」
 自分より暗い人を見て、励ましてくれたあの人。
 思い返すと、自分は優しさに触れていた。

 暖かいな・・・・・

 多くの人に出会って知った。
 これが自分の形なのだと・・・・・・・・・・・・・・

「人」

 多くに人に出会い知る
 心のかたち人生観


 触れる肌には暖かさ
 優しい行為に暖かさ


 多くの人に出会い知る
 自分のかたち人生観


11 :中人◆WYmroVkc :2007/08/21(火) 02:12:29 ID:onQHxJz3

「生」


 私はしばらく歩いていると、見知った道に出た。
「ここまで来たのなら帰りますか」
 帰るまでにこれまでのことを思い出していた。

 始めは道に迷った時に、知らない風に聞いていたな・・・・
 橋を渡った後は後悔で涙を流した時もあった。
 闇に包まれて眠った時はあのことが夢に消えたことがあったな。
 昔の幻を振り切り未来への光を見た。

 ・・・・・・・・・・そうか。この旅は、自分にとって人生だったんだな。
 それが、無くした言葉だったと。

 気が付けば私は家の前にいた。
 鍵穴に鍵を差し込み、中に入った。
 中は変わらずいつもの部屋だった。
 私は何も言わず部屋に唯一ある椅子に座って、言葉を思い出していた。
「・・・・・・・・・・ふふ・・・・・・・」
 そして、静かに眠りについた。

生」

 「道」に迷いて「風」に聞く
 「橋」渡りて「涙」する


 「闇」に包まれ「夢」に消える
 「幻」振り切り「光」見る


 この旅こそが我が「人」「生」
 無くした言葉はここにあり


12 :中人◆WYmroVkc :2007/08/22(水) 17:39:14 ID:onQHxJz3

「あとがき」

 久々に親友の家に行ってみた。
 いつも変わらない家、ドアをノックしてみた。
「………」
 応答が無い、またドアをノックしてみた。
「………」
 少し心配になって来た。
「・・・入るぞ?」
 ドアはしっかりと役目を果たしており、音も無くスッと開いた。
 何処にいるか探してみると、ある部屋で椅子に腰掛け死んでいる様に眠っていた。
「はあ・・・・・・・・」
 起きるまで待つかと思いつつ台所に行くと、小さな日記が机の上に置いてあった。
 親友だしいいかと、その日記を読んでみた。
「……………………」
 日記に書いてあったのは、旅の記録であった。
 様々なことが書いてあったが、一番最後には、『無くした言葉ここにあり』と綴られていた。
「やあ、来てたのかい?」
「あ、ああ」
 日記を置いた直後に後ろから声を掛けられたので少し驚いた。
「いや、自分で書いてたけど、他人に見られるのは恥かしいね」
「あ、すまん」
「大丈夫。まあ、旅に出ている間に来なくて良かったよ」
 振り向いた時に、照れくさそうに笑っていたので、安心した、怒ってなくて良かった。
「ん?そうだ。旅に出てみなよ」
「え?」
 突然、旅に出なと言われて言葉が出なかった。
「一人旅さ。出てみたら意外と良い事があるかもしれないよ?」
 ふむ旅行か、悪くないな。
「分かった。いこう」
「ん?そうか。頑張れよ。私はいつもここにいるからな」
「ああ」

・・・・・・さて、行きますか。

「あとがき」

 この物語はここまでです
 しかし旅は続きます


 そう、次の旅はあなた自身
 素敵な言葉が待ってます


 もしも良い言葉を見つけたら
 風にひとつ詠ってください

            Fin


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