Spring Vacation


7 :ちゅら :2011/07/11(月) 22:19:18 ID:PmQHLio4YG

 4月8日。カレンダーに大きくマルが書かれている。新学期が始まる日だ。あと一週間
で、学校
が始まってしまう。そう思うと憂鬱だ。今年の冬休みだってそうだった。あと何日かで学
校が始まる
と思うと胸が痛んだ。どうして3学期は乗り越えられたのかはわからない。強いて言え
ば、自らに
暗示を掛けたから、乗り越えられたのか。さあ今度はどうだろうか。どうかあの二人とは
違うクラス
になりますように。そう祈るほかない。
 
梢が和真と交際するようになってから、彼女は大きく変わった。今まで何をするにして
も、私に
相談しなければ行動できなかったのに、今の梢は堂々としている。この前のライブ会場で
会った時も
そうだった。私を見る目が明らかに違っている。上から見下ろすような視線、私を蔑んで
見ている
に違いない。

「これまでいつも葵を追いかけてきた、何もかも。葵についていけば、何でもうまくやっ
て来れた
んだから」
 入学式の時、梢はこう言った。友人からこう言われるとは考えていなかったので、私は
面食らった。
葵は私をそう捉えていたんだ。そして梢はこうも付け加えた。
「これからは葵に頼ってばかりじゃいけない。私も葵に頼られる存在にならなきゃ。そう
でないと
友人とは言えないでしょう。私高校に入ったら、しっかりするんだ。ちゃんと見ていて
ね」
 力強く梢は宣言した。私は非常に戸惑った。今までの関係で特に不満はなかったから。
梢が変
わるのはいいとして、それは果たして二人の関係が良い方向に向くのかと。

 梢は率先して私をグイグイ引っ張った。ショッピングでは雰囲気のいい店を探してく
れ、私を
連れて行ったり、ネットで流行しているホームページを紹介してくれたりと、明らかに積
極的に
なった。私はこれを肯定的に捉えた。
 ちょうどその頃私も転機を迎えていた。高1の5月であった。同じテニス部の和真から、
交際
を申し込まれたのだ。突然のことで私は驚いた。中学の時から和真とは友人であったけれ
ど、
まさか告白されるとは考えていなかったのだ。このことはすぐに梢に相談した。

「私、男子から告白されたの」
「すごいすごい。それで相手は誰?」
「安藤和真。ほら同じテニス部の」
「ああ、安藤なんだ。良かったね……」
 私はすっかり舞い上がってしまっていて、細かな梢の表情に気づいていなかった。とに
かく
梢に話を聞いてほしかったのだ。
「どうしよう。告白受け入れた方がいいのかな?」
「いいんじゃない。葵は安藤のこと嫌いなの?」
「いや、そういわけじゃないけど。あたし告白されたの初めてだから、よくわからなく
て」
「嫌いだっていう表情には見えないけど」
 梢に確認したことで、私は和真と交際することを決めた。和真はとても喜んでくれた。

 和真との交際はけんかが絶えなかったけど、とても楽しかった。私が和真と付き合うと
同時に大切にしたのが、梢との時間である。せっかく梢が積極的になってくれたのだ、断
るわけなんていかないし、私も彼女との時間を大切にしたかった。
「ねえ、今日も相談に乗ってよ」
「また恋愛相談?」
 ファッション雑誌を片手に、今度どこ行こうかと梢と思案しているところだった。
「ねえ、聞いてよ。梢しか話せないのよ」
 初めは話を真剣に聞いてくれたのだけれど、話す内容が同じになってきて梢はうんざり
して
いる様子であった。それでも私はお構いなく、相談し続けた。
「私にはケンカしているようには見えないけどね。順調ってことでしょう?」
「そうなのかな。ねえ、梢は好きな人いないの?」
 私の話ばかりしていても仕方ないので、今度は梢に尋ねてみた。
「えっ?」
 梢は固まった。どうやら図星のようだ。
「ねえ、誰なのよ」
 さらに梢は固まった。
「私は叶わぬ恋だから」
「もしかして先生とか?」
「さあ。これだけは葵にも話せないよ」
「そう、叶うといいね」
 梢は黙って話をファッション雑誌の話に戻した。彼女の淡々とした仕草が印象的だっ
た。


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