笑ってください。私はもう笑えないから。


1 :ハジメ :2008/01/31(木) 23:30:05 ID:ncPiWHx4

別のところで書いていたんですが、こっちの方が書きやすいことに気づき(汗汗)
見直しとかしません。てけとーに書いていきます。
ツッコミとか頂けるとひじょーに喜びます。単純なので。

ちょいとニヒリズムな女の子のおはなしです。


9 :ハジメ :2008/01/31(木) 23:40:10 ID:ncPiWHx4

8

 図書室で借りた本を抱え、教室に入ろうとするといつもどおり私への非難が飛び交っていた。
 妄想癖、淫乱、キモイ、何考えてるのかわかんない、自分勝手、などなど。
 何考えてるのかわかんない、というところはどうも首を傾げたくなる。人の考えなど、わからないからこそ人間関係が上手くいくのに。
 そういったピーチクパーチクうるさい非難も、私が盛大にドアを開けて入ると一グループが一瞬私の姿を振り向いて止まった。そして何事も無かったかのように、「ねえねえ、昨日のドラマ見た?」という話を始める。
 思慮が浅い。
 私はそうとしか思えなかった。

 席につき、さっそく図書室の本を読み始める私に遠慮会釈なく話しかけるかがり。
「美雪、あいつらガキっぽいよね」
 彼女たちに聞こえないよう小さい声で私の背後から耳打ちする。そんなこと、誰より「その他」たちが一番よく知っている。
「バレてないとでも思ってるのかな。悪口言う奴に限って、自分が悪口言われたらキレるくせにさ」
「それがいわゆる棚上げってやつだよ、かがり。人はみんな自分の犯した罪を記憶していないもんだからね。積年の恨みとか言って刺されたって、当人は何も覚えちゃいない」
「あーあ、日本も終わりだねえ」
「終わってないさ。これが普遍的な光景なんだから、まともな頭の人間の方が異質扱いされる」
 かがりは私の机の上に座り、足を組んで頬をぷうっと膨らませた。中学時代からこの素行について何度か注意したことがあるが、一向に机に座る癖を直す気配がないのでもう諦めている。

「それより、教職室で竹河先生が呼んでるってさ」
「誰を?」
「かがりを」
「やだなあ、竹河のやつ、どうせまた進路の話だよ。もううんざりだって」
「いいんじゃない、もう折れても。国立も私立も変わんないって」
「変わるよ。私、国立みたいなセコそうな雰囲気の大学、行きたくないもん。ああいうのは頭がよくて、なおかつでかい目標をかかげてる高校生が行けばいいんだって」
「まあ何でもいいけど、とりあえず行ってきたら。大学なんて教師に強制されて決められるもんじゃないから。話は適当に流して最後、私立にしますって言ったら教師なんて止められないよ」
 だといいけどね、とぼやいてかがりは机から飛び降り、教室から走って出て行った。私は本から一度も目を上げず、彼女を見送ることもしなかった。


 どれだけ世間の専門家や教育者が「現代の学校の人間関係は複雑で、なおかつ深刻だ」と高らかに提唱しようとも、彼らは何も知らない。学校という独裁政治の現状を知っているのは誰より「その他」だ。ちなみに「イジメられっこ」は自分を被害者としか捉えられず一方通行な意見になりがちなので、現状を把握しているとは言いがたい。
「その他」は「イジメグループ」でも「イジメられっこ」でもない、いわば傍観者であるぶん客観的で非保守的な解釈が出来るので、場合によってはイジメグループを庇護することもある。「その他」が「その他」と分類されるのは、あくまで「圧倒的多数の意見」とは違うマイノリティーな思考力や意見を持っているからであって、「その他」の主張が一方の弁護に回るようでは独裁政治は安定しない。
 その他は「その他」たるべし。どちらかに混ざってはならない。

 かがりは頭がいい。見かけはバカだけど、考えることは一端の女子高生以上だ。とても二年生に見えない。
 だからこそ「あいつ変わってる」としてその他へカテゴライズされてしまったのだ。ぶりっ子、意見がずれてる、価値観が違う、そういった理由で。
 私の場合、どうせ無表情だからだとか感情が表に出ていないとか、それこそ何を考えているのか分からないとか、そういう危険物取り扱い表記をすべきものとしてその他へ放り込まれたのだろう。腫れ物を触るように扱われるのは若干不快だが、こちらが応じない限り接点を作らされることもないので楽なポジションである。
 他の女たちが私をどう見ているか。そんなこと分かりきっている。
 変わってる、言い方がおかしい、ませてる、表情ない、ノリが悪い、ダサい、人を見下してる感じがする、何を考えてるのか読めない、周りに合わせようとしない。
 例のごとく全て正解なのだが、私はそれをよしとしている。誰かに合わせようとは思わない。いくら日本が右へならえ社会でも、私は人と同じ服を着て同じものに興味を持ち、本音と建前で彼女たちに接しても何もメリットはないと分かっているからだ。
 例えそれが身を滅ぼすことに繋がっても、元々人生に目的など持たない私はそれを受け入れている。
 死ぬことに意味はない。あるのは生の消滅というだけだ。

 若干型破りで何にも混じることのない私とかがりはどうにかこの学校で生き残っている。所詮は長い人生の三年しか過ごさない場所だ、卒業するとなっても思い入れなど何もない。
 意味などないのだ。
 全てのものに意味を求めることが間違っているのだ。
 私はそう確信している。


 チャイムが鳴り、女たちは一斉に自分の席へ座る。教室のドアが開き先生が入ってくると、委員長が声をかけ全員で起立をする。お願いします、と声を揃えて頭を下げると、先生はいきなり黒板にテストの概要を書き始めた。
 かがりがまだ戻ってきていないのに。


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