☆第5回!GAIAクリスマス企画☆


1 :ありか :2008/12/24(水) 10:56:47 ID:ommLziV4

 メリークリスマス!!!イブですけどね。
 
 知っている人は知っている企画が、今年もやってきました。
 『第5回!GAIAクリスマス企画』です。
 詳しいことは小説ラウンジのほうに書いてあるので、興味のある方はそちらを見てください。
 基本的にはいろいろな方がお題に沿ってお話などを書いていくという、いま流行のオムニバス!(ぇ)です。
 まるでクリスマスプレゼントなのです!
 参加していない方も、ぜひぜひ楽しんでいってください。
 ちなみにジャンルはファンタジーになってます。クリスマスじたい、ファンタジーですからね。しかし、内容がファンタジーということは100%分かりませんのでお願いします。 

 サンタ役の皆様、よろしくお願いします!
 子供役の皆様、お待ちどうさまでした!

 では、一足先にメリークリスマスです♪


2 :ありか :2008/12/24(水) 11:00:10 ID:ommLziV4

雪のおまじない?

 寒い季節。世間一般、世界各国ではほとんどこの季節を冬!と呼ぶだろう。表記は英語になったりヘブライ語になったりドイツ語になったりもするけれど。
 と、いうわけでそんな寒い時期。そして時刻は夕暮れ時。高校生たちはクラスのホームルームが終わり、各自部活動へ向かったり帰路へ向かったりしている。
 そんな中、二つの影が屋上からグラウンドを眺めていた。
 二人ともおなじみの学ランに身を包んでいる。
「寒くない?」
 そのうちの一人……眼鏡をかけた方の学生がもう一人の学生に聞く。
「ううん、大丈夫」
 二人はぴったりと体を寄せ合っていた。
「あ……雪」
 眼鏡のほうがその言葉に空を見上げる。なるほど。チラチラと小さな雪が舞い降りてきている。その勢いはかなり弱いから、このぶんでは積もることは無いだろう。眼鏡のほうはそう思ったが、隣で嬉しそうに雪を見つめている彼を見て、その言葉を飲み込んだ。
「雪、好き?」
「うん。藤宮は嫌い?」
 彼の黒い髪が、振り向いて眼鏡のほう―――藤宮の頬をかすめた。それが少しくすぐったく、藤宮リュウキはくすりと笑う。
「な……なに?なんで笑う?」
「や……別に」
「なんだよぉー」
 少しほっぺを膨らませ、ふたたび空を見上げ、そして手を空に伸ばした。雪が、彼の手のひらに降りた。
「あ」
「どうしましたか?」
 リュウキは声をかける。
「思い出した。おまじないなんだけどさ」
「へえ」
 立ち上がると、彼は再び空に手を伸ばし、雪を手のひらに取る。そしてそれを優しく包み込んで―――
「溶けるまでに、願いをいえるとかなうって」
 そっと手を開くと、そこにはあまりにも小さな雪粒すぎて水滴も残っていなかった。
 それを見て、彼は悲しそうな、泣きそうな顔をして笑った。
「成功したこと無いけどね」
「……ユヅキさん」
 リュウキは立ち上がり、手を伸ばした。そして雪を手のひらにのせ、ユヅキの目の前に持ってくる。そっと手のひらを包んで、目を閉じ―――

「ほら」

 残っていた。
「あ、すごい」
「僕は手が冷たいんです。だから雪も溶けませんよ」
「わー、寒いって言ってたねー」
「はい」
「ところで……なにお願いした?」
 ユヅキは下からリュウキを覗き込んだ。
「それは……」
 リュウキはそっと手を伸ばし、今度は空ではなくユヅキの頬に触れる。冷たい手に、一瞬ユヅキの体が強張るが、リュウキの目を見つめて優しく微笑む。
 OKのサイン。
 リュウキはユヅキに顔を近づけていく。
 その距離10センチ。カウントダウン開始―――

 が

「てめえらああああああああああああああああああああああ!!!」

 リュウキの頭部にジャストミートで黒板けしが当たった。結構いい音が屋上に響き渡る。
 そこに立っていたのは黒いセーラー服の似合う女子高生。手にはまだもうひとつの黒板けしが握られている。
 彼女の顔にはまさに青筋、らしきものがたっていた。
 鬼にも負けないぐらいの形相で、風貌には全くそぐわない蟹股で屋上に足を踏み入れ、ずんずんと二人の元に近付く。そして頭をおさえているリュウキの襟元をつかむ。
「てめえ!!」
 彼女はリュウキの顔面に黒板けしを押し当てる。
「あ、ジュウ!」
 ユヅキは口を押さえる。リュウキは左手でなんとかガードしていた。
「いちゃつくなって言ってただろ!!変な噂が!!」
「変な噂って……」
 リュウキは黒板けしを押しのけた。
「だから屋上でやってるでしょう」
「やんなって言ってんだ!」
 ジュウと呼ばれた彼女は、組み合う形でリュウキとにらみ合う。
 それを隣で見ていたユヅキはしばらく見つめていたが、すぐに
「もう!いちゃつかないで!!」
 ジュウとリュウキの間に入った。入ったのだが、力が強かったのか、ジュウは後方へ吹っ飛ばされた。
「あ!」
 二人はジュウのほうを見る。
「ちょっ……!てめ、ユヅキ!」
「わわ、ごめんごめん。この体、やっぱりまだ力加減が難しいから」
「あはは」
「笑うなリュウキ!」
 ジュウは起き上がる。そして悔しそうに自分の体を見て、そしてため息。

「俺だって……女の体なんか慣れねぇよ!」

 今から一ヶ月前。
 とある事情で入れ替わってしまった、女、ユヅキと男、ジュウの中身。
 それ以来、この事情を知るのは当人他数名。元に戻る方法を探しているが、一ヶ月たった今もその方法は分からない。
 こうして、入れ替わりの間は不自然無いように振舞うことを規約として学生生活を送っているのだが……

「俺だって我慢しているんだから、俺の格好でお願いだからいちゃつかないでくれ!!」
 リュウキとユヅキ、そしてジュウは小さい頃からの幼なじみであった。高校へあがるとともに、ユヅキのほうからの告白でリュウキと付き合うことに。
 この二人が、事あるごとにやたらと一緒にいたがる。そりゃあ付き合っているのだから当然と言ったら当然だ。
 しかし、入れ替わってしまった現在。
 その図は、リュウキとユヅキではなく、リュウキとジュウがいちゃついているようにしか見えない。噂が立つのも時間の問題。
「リュウキ!お前は嫌じゃないのか?中身どうあれ、見た目男なやつといちゃついたり……その、き、き――――」
「キス?」
 なんの恥ずかしさも出さずに答えるリュウキ。逆にジュウと、ユヅキのほうが赤くなる。
「別に平気ですよ。ユヅキですから」
「……」
 さらに赤くなるユヅキ。しかし見た目は男。
「こら、恥ずかしがるな!見た目は俺なんだから……」
「う、うるさいなあ。いいじゃん別に……付き合ってるんだから。それに、そっちだってもっといちゃこけばいいんだよ。女同士なんだし、私たちよりも人目を気にしなくていいじゃん」
 その言葉に、ジュウは『うっ』と言葉に詰まる。そして大きくうなだれる。
「あはは。ユヅキ、ジュウのほうは……」
「言うな。良いんだって、別に。俺のほうが常識ある彼女持っているから……」
「?」
 首をかしげるユヅキをリュウキは引き寄せ、耳打ちをする。
「ジュウ、イコさんに女同士はいやって言われたんだよ」
「……あの子らしい。どうりで私たちがくっついてるの邪魔してくるんだ」
「うるせぇ!!」
 しっかり聞こえてました。
 そのとき、
「あ、ここにいた」
 ジュウと同じ黒いセーラー服を着た少女が屋上の扉をあけた。
「イコ!」
 短い黒髪の少女、イコは3人の姿を確認すると扉をしめる。
「イコ!!」
 ジュウはさっきよりも大きな声で叫ぶ。その声に、イコはいやそうに顔だけを出した。
「そのメンバーに加わりたくない」
 ストレートパンチ。
「そ、そんな事いわないで、な」
「私を変態にしないで」
 アッパーはいりました。ジュウがKO負けです。
「まま、そんな事言わずにちょっとおいでって」
 ユヅキはすばやくイコの手を引っ張り、屋上の中に招き入れる。
「せっかく雪も降ってるんだし、ちょっと雪見でもしようよ」
 スマイル。
 イコの顔が、寒さからかちょっと赤く染まる。

 屋上。
 4人影が、空を見上げている。おのおの様々な思いを込めながら、雪を見つめていた。
 この学校ですこし噂の4人組。

 ある人は、彼女を『雪の女王』と呼ぶ。
 ある人は、彼を『嘘つき』と呼ぶ。
 ある人は、彼ら彼女らを『ただの幼なじみ』と呼ぶ。
 ある人は、彼ら彼女らを『魔法使い』と呼ぶ。

 もうすぐクリスマスというこの季節。
 奇跡はやってくるかな?なんて期待してしまうけれど、彼女はそれを口には出さなかった。
 早く普通に戻りたい。そう思っているけれど、いつも言っていることだからあえて彼女は口に出さない。
 手を握りたい!そう言ったら怒られるから絶対に口には出さない彼。
 そんな全員の気持ちを、分かっていながら彼は何も言わない。


                                   おわり

                          遼さんへ! ありかサンタより


3 :月見人 :2008/12/25(木) 01:50:44 ID:nmz3rmz7

先生と雪だるま

 気持ちいいくらいに晴れ渡った冬空の下。昨夜の大雪が嘘のようにも思えるけれど、道の隅に山積みにされた雪がそれを否定する。我が家でも、今朝は雪かきに追われて大変だったが、今日という日を彩る装飾だと思えば、そう悪い気はしないものだった。

 冬のひんやりとした外気と、盛りを過ぎた太陽からくる日差しに心地よさを感じていると、不意に名前を呼ばれ、振り返る。視界にはいるのは、めぼしい遊び道具のない、単純に広いだけの町営公園。今日は半分以上が雪に埋もれているが、人はいつも以上にいるようだった。

「おーい、こっちだこっち」

 公園の隅にあるベンチに座った男性がこちらに手を振ってきている。顎まで隠しているウィンドブレイカーとニット帽で顔の判別がしづらいのだが、その声には覚えがあった。片手を振り返しながら、連れ(・・)の手を引いて、公園へと足を踏み入れる。

 お知り合いですか、と連れは聞いてくる。 

「担任の大垣(おおがき)先生」

 まだ三十代の若い先生で、授業では世界史でお世話になっている。この近くに住んでいることは知っていたけれど、こうして学校の外で会うのは初めてだ。

「こんにちは。お子さんのお相手ですか?」

 言いながら、その隣に腰掛ける。連れもそれに習った。木製のベンチは、雪こそかかっていなかったものの、氷のようにひんやりしていて、身体が震えてしまった。

「だったんだけどね。友達のグループが来て、一緒に行ってしまったよ。折角雪が降ったんだから、たまには一緒に遊ぶのもいいかと思って出てきたものの」

「ふられちゃいましたか」

「ふられちゃったんだ。僕にはどうも、父親の威厳というものが足りないらしい」

 参ったねと、先生はいつもと変わらない笑顔を浮かべた。

「ところで、そちらはどなたかな? 少なくとも、僕の受け持つクラスの子ではないけれど……恋人ですか」

 僕の連れを見て、先生は茶化すように言った。

「従妹ですよ。都市部の女学園に通ってるんですけど、それにはウチに住んだ方が色々と都合が良くて。……いえ、こう見えて結構信用されてるんですよ? 僕は」

 初めまして、と連れが頭を下げる。少し声が縮こまっているのは、初対面の相手に緊張しているからか。
 先生も同じように挨拶を返す。こちらは堂々としたもので、はきはきとした声だった。職業柄、それは当たり前と言えば当たり前だが。
 知り合いの子が、違う学校の先生と挨拶を交わすというのは、少し違和感があって、面白いものだ。

「ところで。そこの雪だるま、先生が作ったやつですよね」

 うん? と、先生は僕の指した方を見る。ベンチの横――僕から見て先生を挟んだ向こう側――にいる、なかなかに立派な雪だるまが一体。頭の赤いバケツを含めて二メートルはありそうだ。
 雪玉が三段重ね。雪だるまよりはトーテムポールのように見えるそれは、なんというか、大垣先生らしい雪だるま(スノーマン)だ。

「ああ。息子と一緒に作っていたんだが、さっき言ったとおり途中で飽きられてしまってね。そのままにしておいても良かったんだけど、作りかけというのも可哀想な気がして」

 隣の連れは、僕にだけ聞こえるくらいの小さな声で歓声を上げた。

「そういう経緯(いきさつ)にしては、随分と手が込んでるじゃないですか。どこの雪だるま職人が作ったんですか、ってくらいに綺麗だ」

「雪だるま職人。それはいい」

 なにやら気に入ったようで、先生は声を上げて笑った。くすり、と……これは反対側からの笑い声か。

「いや、本当は、なんとなく作る気でいたんだけどね。色々と考え事をしながらやっていたら、いつの間にか」

「会心の出来になってしまった、と」

 基本的に、雪玉を転がすだけで出来てしまうから。でも、考え事をしながらでもこれだけ綺麗な球体になるというあたり、先生の几帳面さが窺えるというものだ。

「でも、そうですね。小さな子どもからすれば、雪だるま作りというのは退屈なのかも知れませんね」

 遊び盛りの子どもにしてみれば、例えば雪合戦のような、激しく動き回れる遊びの方が面白く感じるのかも知れない。

「そうなのかな。僕は好きだったんだけどね、雪だるま作りは」

「まあ、家でゲーム浸りしてるよりはマシじゃないですか。こういう日は外で、そう、同年代の子達と遊ぶのだって、悪いことじゃないはずですよ」

 先生は首を傾げて短く唸った。

「確かにね。真っ当に育ってさえくれれば、僕はそれで満足だから。だけど……ああ、難しいね、子育てというのは。子どもの扱いにはもう慣れてきていたつもりだったのに。高校生と小学生じゃ、別の生き物なのかな」

「あはは。先生、相当手こずってますね」

「かも知れない。けどそこで笑うのはどうかと思うぞ」

「う。いや、済みません」

 謝るけれど、顔はまだ緩んでいる。それは別に、ふて腐れたような先生の顔が面白いからじゃなくて。
 嬉しいのだ。新しいことを前にして立ち止まり、悩む、その姿が。

 小さい頃、“学校の先生”というのは、誰しも少なからず怖い存在だった。自分では何一つ敵いっこない大きな人達。歩いていく僕らを怖い顔で監視する、従わなくてはならない人達。
 その認識が間違っていたとは、今でも思わない。だけど、『怖い存在』として、進んでいく道の先で仁王立ちしている人より、僕たちの少し前にいながら、歩調を合わせて、一緒に歩いていく人……そんな教師の方が、僕は好きだ。
 大人は、僕らにとって未知の世界にいるような気がするけれど、自分と同じように苦悩する姿を見せてくれると、ずっと身近で、分かり易くて、親しみやすく感じられる。手を引いてくれる人がいた方が、僕たち子どもはより安心して、前に進むことができるのだ。

 肩を軽く叩かれて、顔をそちらに向ける。困ったように笑うその顔を見て、自分たちが外出した理由を思い出す。

「先生。僕たち、そろそろ行きますね。実は今、今夜うちでやるクリスマスパーティの買い出しに行く途中だったんです」

「ああ、それならそうと言ってくれれば良かったのに。引き留めて悪かったね」

「あ、先生も来ませんか? 大歓迎ですよ」

「有り難いけど、遠慮しておくよ。帰ったら仕事が山程残っているから」

 それは残念、と肩をすくめてみせる。もっとも、パーティに来るほとんどが学生だから、どのみち先生はあまり楽しめなかったかも知れないけれど。

 僕らが立ち上がり、先生もそれに続いた。

「それじゃあ。また来年も、よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」

「あと、先生。そんなに心配しなくても、お子さんはきっと、親思いのいい子に育ちますよ。なんたって、先生の子ですから」

「はは、そうだといいんだけどね」

「雪だるまも、また誘ってみましょうよ。やっぱりこういうのは、一度完成させてみないと、良さが分からないものですから」

 そうして、最初と同じように手を振って、僕らは公園をあとにする。一つ強い風が吹いて、寒さは更に深まったようだった。

「ねえ」

 連れに声を掛ける。はい、と微笑みかけてくれた。

「今度一緒に、雪だるまを作ろう。二人で、先生の雪だるまに負けないくらい、大きくて立派な雪だるまをを」

 だって。雪だるま作りは一人でするものじゃないから。それぞれの雪玉を、大切な人と共に、心を込めて作る、その過程をこそ、楽しむものだから。

 もう一度、はい、と。彼女は優しく、笑っていた。

                          ありかさんへ 月見人サンタより


4 :夕咲 紅 :2008/12/25(木) 06:41:31 ID:WmknkmLA

雪の思い出


 むかしむかし、あるかみさまによっていのちをあたえられたゆきがいました。

 ゆきは、かみさまにひとびとをしあわせにするようにいわれました。

 ふしぎなちからをさずかったゆきは、かみさまのいいつけどおり、ひとびとをしあわせにするためにそのちからをつかいました。

 そのけっかが、そのひとにとってほんとうによかったのかもわからずに……



「今年の冬は本当に冷えるな……」
 悴んだ手を擦り合わせて温めながら、俺は一人寒空の下そんな言葉を漏らした。
 世間全体がクリスマスムード一色の中懸命に働き、ようやく仕事が終わったのがつい30分前。空は暗くなっているものの、周囲のイルミネーションによって視界はすこぶる明るい。
 クリスマスイヴの22時。俺が彼女と待ち合わせをしている時間だ。
 今の時間は21時半。待ち合わせ場所が会社の近くじゃなかったら完全に間に合わない所だった。いやまあ、待ち合わせに間に合う距離だったからこそ残業させられたんだけどな。
 なんて考えていると、ポケットの中にある携帯が震え出した。取り出そうと手を突っ込んだ時には振動が止まった為、メールが来たのだと判断する。
「やっぱりな」
 何となく誇らしげな気持ちになりながら、携帯を開く。
 メールは妹からだった。簡潔に纏めれば、今日のデート頑張れって内容だ。
「ったく、余計なお世話だっての」
 そう言ってはみるものの、ちょっと嬉しいと言うか気恥ずかしいと言うか……
「司君!」
 少し離れた所から、聞き慣れた声に名前を呼ばれた。携帯をしまい声のした方に視線を向けると、そこには腰程まで伸ばした黒髪の女性がいた。顔立ちは整っているが、幼い感じもする。白いロングコートを着ていて、軽くその端をはためかせながら小走りで近づいてきた。
 俺の目の前まで辿り着くと、深呼吸をして息を整える。
 高神季更。俺――神樹司の恋人だ。
「早いじゃないか」
「司君ならもういるかなって思って」
 そう答えながらはにかむ様に微笑みを浮かべる季更。
「もし俺がいなかったらどうするつもりだったんだよ?」
「その時は近くのお店で待ってたと思う」
 少しだけ怒った様に聞いた俺の言葉に、それが心配からくるものだと気付いたのか申し訳なさそうに言葉を返してきた。
「まあそれが妥当か」
「うん。と言うより、私の中では司君がいないって事があり得なかったんだけどね」
「それは買いかぶり過ぎだ」
 何となく照れくさくてそっぽを向くと、季更が近づいてくる気配を感じて直ぐに視線を戻す。
「手、冷たいね」
 俺の手を両手で包む様に取り、そんな言葉を呟く。
「まあな」
「結構待ってた?」
「そんな事はないさ。それより、季更の手まで冷たくなる前に早く移動しようぜ?」
 とは言っても、目的地も外なんだけどな……
「そうだね」
 俺の言葉に頷き、名残惜しそうに手を離す。
 どこか寂しそうな季更の目を見て、俺は何も言わずに季更の手を取った。
「――ありがとう」
 片手だけだけど、それでも手を繋いだ右手は温かい。季更も同じ様に感じてくれたのだろう。嬉しげな微笑みを浮かべながらそう言った。
「行こう」
 俺はその行為がさも当然だとばかりに何も言葉を返さず、歩き出す事を促した。
「うん」
 季更が頷き足を動かし始めるのに合わせ、俺もゆっくりと歩き出す。
 俺達が向かう目的地は、ここから歩いて30分くらいした所にある公園だ。昔は幼稚園があったその場所は俺と季更の思い出の場所で、今年のクリスマスはそこで少しの間でも良いから時を過ごそうと言う話になった。どちらが言い出したかは覚えていない。だけど、俺も季更も止めようとは言い出さなかった。


 雪が人の願いを叶える。
 かつて、そんな物語が語り継がれる場所があった。
 今はもうないその場所こそが、俺と季更の出会った雪之丘幼稚園。そして今は、ある団地の中にある児童公園になってしまっている。
 雪が願いを叶えるなんて話、おそらく今となっては誰も信じてはくれないだろう。しかし、この場所では本当に雪が願いを叶えてくれた。
 どんな条件があったのかは分からない。だけど確かに、雪は願いを叶えてくれた。ただし、願った人間の一生を糧として。
 願った人間は深い眠りに着く。その眠りの中で一生を過ごす事になる。つまり、願いが叶ったかどうかを本人は知る事が出来ない。それでも確かに、雪は願いを叶えてくれた。


 公園のベンチに腰かけ、俺と季更は途中の自販機で買ったホットコーヒーで少しでも暖を取ろうと試みる。そのくらいで暖かくなりはしないが、飲まないよりはマシだ。
「ここにも来るのも久し振りだね」
「ああ。俺なんて就職してから来たのはこれで二回目だよ」
 かつて雪に願いを叶えて貰い昏睡状態だった俺を救ってくれたのが、俺と季更の恩師でもある雪之丘幼稚園の先生だった芹丘小夜美さんだ。事故で命を落としてしまいもう会う事は出来ないが、就職が決まった時にこの場所に挨拶にきた。墓がここにあるわけじゃないけど、俺にとってこの場所こそが先生との唯一の接点があった場所と言えるからだ。
「私も同じ」
「そうか……まあ、考える事は一緒って事かな」
「そうだね」
 俺も季更も、この場所に気軽には足を運べないと言う事だろう。何の変哲もない公園だけど、俺達にとっては特別な場所だから……
「あ――」
 感傷に耽っていると、季更がそんな風に声を上げた。
 その理由に、俺も直ぐに気がついた。
「雪……」
「うん」
 クリスマスイヴの夜に降る雪。
 それはきっとロマンチックなものなんだろう。だけど俺は、雪を見ると思い出してしまう。雪が見せた、夢の世界を……
 それは決して悪い思い出ではないと思う。だけど、良い思い出だとも言い切れない。あの夢の世界を思い出す度に、胸が切なくなる。
「この雪は普通に雪なのかな?」
「どうだろうな? 少なくとも、今の俺の願いを叶えてくれる気はないみたいだけど」
 まあ、雪に叶えて欲しい願いなんて今はないから反応がないのかもしれないけど……いや、そうじゃない。例え願いがあったとしても、もう雪が俺の願いを叶えてくれる事はないと思う。確証はない。けど、なぜかそう確信が持てる。
「生きていく上で必要な願いは、自分の力で叶えるしかないって事だな」
 雪に頼りたいわけじゃない。前に一度願いを叶えて貰っているからこそ思う。俺達は、自身の力で生きていくしかないんだって。
「季更」
 今日この日と決めていた。だからこそ真剣な声で、俺は隣りに立つ季更の名前を呼んだ。
「どうしたの?」
 不思議そうに俺を見つめる季更。真っ直ぐに視線を合わせ、バレない様にポケットからある物を取り出す。
「手、出してくれるか?」
「え? うん」
 やはりどこか不思議そうな顔で、それでも俺の言葉を聞き入れてくれる。
 俺の目の前に差し出された両の手の上に、俺は小さな箱を置いた。
「これって……」
「クリスマスプレゼント。って言いたい所だけど、それ以上の物かな」
「開けて良い?」
「ああ」
 俺が頷くと、季更は包装紙を綺麗に外して中身を取り出す。
 中身は小さな紙の箱。その中にはメッセージカードと、指輪の入った箱が入っている。
 その中身を見て、季更は何を渡されたのか理解した様だ。驚いた表情を浮かべている。
「季更……俺と結婚してくれ」
「――うん」
 季更の身体をそっと抱き締め、俺達はそっと口付けを交わした……


 遼さんへ。夕咲サンタより


5 :月見人 :2008/12/25(木) 19:30:20 ID:nmz3rmz7

演目「クリスマスって何?」

「『クリスマスは私の為にある! 我を称えよ! 我を崇めよ!』」

 グッ、と。握り拳を作って竜之介は言った。普段の、異様なまでに間延びした口調と違うのが、変におかしく思えた。

「……って台詞を言わせたいんだよねぇ。どーかなぁ、秀斗ー」

 そしてすぐ元に戻ったのだ。一応、演劇部部長としての資質はあった、ということなのだろうか。

「どう、って言われてもなぁ。なに、お前、商業化したクリスマスに警笛を、みたいなことを言いたいわけ?」

「そーゆーわけじゃあないんだけどねぇ。だってホラ、折角、この現代社会にイエスキリストが復活する! って面白ーい設定なんだからさぁ、こう、インパクトのある台詞をねぇ、言わせたいワケだよ」

 シナリオ案やら何やらがびっしりと書かれた手帳を振り回しながら、竜之介は心底楽しそうに言った。とりあえず、学校の図書館では静かにすべきだ。

「インパクトねぇ。まぁ、あるとは思うけどさ。それで、そう言ったあとはどうなるんだ?」

「んー、どうなるってー?」

「だからさ、クリスマスは自分の為のものだ、ってキリストが言うんだろ? そのあと、他の登場人物――現代人は、どういう反応をするのか、どういう台詞で返すのか、って話だよ」

「えーっとーねぇー」

 竜之介は再び手帳に目を落として、

「『てめぇの時代は終わってんだよクソジジイ!』」

「喧嘩売ってんのか」

 ゲンコツを落としてやった。うん、軽い音だ。俺は満足していた。

「うー、いったいなぁ。じゃあ、どーしろってんだよぅ。嗚呼その通りですキリスト様!  商業主義者は火(あぶ)りだ! とか言えばいいの?」

「それもやめとけ。商店街の藤間爺に殺される」

「あー……」

 仏の藤間と言えば、このあたりで知らない奴はいない。既に二世紀に渡って生き続けながら、未だに自らの立ち上げた酒屋で現役を誇る最強の爺様。ヤツの鬼の顔に睨まれた愚か者は、人知れず闇に葬られるのである。

「でもさぁ、それじゃあ八方塞がりじゃんよぅ。キリストさん活躍できねぇじゃんさぁ」

「活躍しなくていいんだよ。っていうかしてくれるな。だいたいさぁリュウ。クリスマスのそういうトコ突くのはタブーだろ、普通。たかが高校のクリスマス会でやる劇なんだ、無難に恋愛モノでもやっときゃいいだろうが」

 竜之介は項垂れて、しばらく唸っていた。少し言いすぎたかと、俺も言い淀んで、黙っていた。

「なあ。なんでキリストなんか出そうと思ったんだよ」

 竜之介の視線が上がって、上目伝いにこちらを見た。

「そりゃあ、まあ、面白いと思うよ。毎度毎度手が込んでるし。実際に見てみなきゃわかんねぇけど、きっと、誰も見たことないような劇になる。だけど、そのネタじゃなきゃ駄目ってワケじゃない。拘る必要なんかどこにもないだろ」

 竜之介は、何か、難しい顔をしていた。まさか、特に理由もなく言ってたなんてオチじゃないだろうな、と思った矢先、竜之介は口を開いた。

「ねぇ秀斗ー」

「ん」

「クリスマスって何?」

 一瞬言葉を失って、まじまじと竜之介の顔を見た。それが、今にも泣き出しそうに歪んだ顔で、ギクリと肩が震えた。

「……そりゃあ、アレだろ。キリストの誕生日で、それを祝う日だ。あとは、サンタクロースが来る日だ、とか、商業目的でどうたらこうたら、とか……」

「うん、いっぱいあるの。じゃあ、どれが本物なの?」

 本物は、元々の意味なのだから、キリストの降誕祭のことだろう。そう告げると、竜之介は深々と眉間に皺を寄せた。

「でも、僕らは、そんなの祝ってないよ。間違ってるよ。なんで、可笑しいって思わないの? 僕だって、神サマ信じたりはしてないけど、でも、変だって思うよ」

 今度はきっと、俺の方が難しい顔をしていただろう。目の前の男が、あまりに真剣だったから。

「劇はね、言い争いなんだ。キリストと、他の登場人物との。キリストが、クリスマスは自分のためにあるー、って言って、他のみんなが、そんなの関係ないんだー、って言う。結局、結論は出ない。それで最後は、観客に、こう問い掛けるの。『クリスマスって何?』って。それで、幕を下ろすの」

 そこまで一気に言って、流石に疲れたんだろう、溜め息を吐いて、背もたれに寄りかかった。

「駄目かなぁ、秀斗ー」

 空気感染したかのように、俺も無性に溜め息が吐きたくなっていた。いかにもウンザリしたような顔を取り繕って、席を立った。

「おい竜之介。キリストの誕生日はいつだ」

「え。クリスマスでしょ。二十五日」

「違ったらどうする」

「……違うの?」

「違うらしい」

「はぇぇ!?」

 竜之介の素っ頓狂な声に、周囲の視線が一斉に集まった。

「正確なトコはわかんねぇらしい。どっかの偉い誰かがその日に決めたんだと」

「マジっすか。ってゆーかちょっと、どこ行くのさ秀斗ってば、ねぇ」

「帰る」

 鞄を背負う。いい加減日も落ちそうな時間だったし、暗くなる前に帰りたくなるのが心情というモノだ。

「お前が任されたことなんだ、お前が決めればいいよ。それだけしっかり考えてりゃ十分だ。本番じゃ、思う存分暴れてやれ」

「……でも、反感買うかも、って」

「正しいことなんか誰にも分かんねぇんだ。それなら、何を信じるかなんて自由だろ。文句がある奴がいたら、自信を持って言ってやれ。小さな親切ありがとう、ってな。じゃ」

 軽く手を振って帰ろうとする俺を、竜之介は鞄の端を掴んで引き留めた。また、小難しい顔して。

「ねえ。秀斗」

「ん」

「クリスマスって何?」

 さっきも言っただろう、と言い掛けて、思い直した。あれは、言ってみれば、単なる一般論だったから。

「そうだな、知らない。俺は知らないよ、そんなの。どうでもいい。興味ない。誰かの誕生日が祝いたいなら、勝手にやればいい。金儲けしたいならそれでいいし、プレゼントが欲しいならそれでいい。だから、興味ないって吐き捨てるのも、分からないってわめくのも、さ。……なあリュウ、俺の意見に文句があるか?」

 竜之介はうんともすんとも言わずに、ゆっくりと手を離した。



 ――そして今日が、そのクリスマス。竜之介率いる演劇部の、晴れ舞台である。
 あれきり、竜之介が劇の件を俺に相談してくることはなかったけれど。次の日にはまた、ヘラヘラとした顔を恥ずかしげもなく晒していたのだから、問題はなかったようだ。

 あれだけ真剣に考えていた人間が仕上げた物語だ。きっと、色んな意味で物凄い演劇が見られるだろう。

 舞台の幕が上がる。そこには、学生服を着た男女数名に混じって、明らかに場違いな、ボロボロの布きれを着た変人が、一人――

「クリスマスは私の為にある!」


                          夕咲 紅さんへ 月見人サンタより


6 :テラー :2008/12/25(木) 23:25:44 ID:WmknQ4VD

雪だるまの探し人(前編)

 とりあえず、僕は最初に自分の目は病気なんじゃないかと思った。次に脳に何か障害があって、幻覚が見えているんじゃないかと思った。
 何せ人通りがまったくない路地で、歩く雪だるまに出会ったからだ。
 しばらくお互い見つめあったまま動かなかった。が、突然雪だるまが「あっ、やべ」といって逃走し始めた。
 この路地はじいちゃんばあちゃんが多数住む家が並んでいて、その中のひとつが僕の家である。そして、雪だるまが逃走していった方向は行き止まりだったりする。
 って思ってたら、案の定すごい勢いで雪だるまが引き返してきた。
「あなたは何も見ていない〜、何も見ていない〜」
 どこから取り出したのか、ひもがくくりつけられた5円玉を僕の目の前で揺らしながらそういった。
 特に暗示にかかってない僕を見て、雪だるまは5円玉を体内に突っ込んでこういった。
「まあ、落ち着けよ」
「お前がな」
 なんか、すごい疲れる雪だるまだ。
「いや、マジで今日見たこと忘れてくれ。頼む、頼むから」
「こんな強烈にインパクトのあるできごとなんて、忘れたくても忘れられないんだが」
 地面に顔をこすりつけ(ちょっと顔が崩れていってる)土下座する雪だるまに、僕はそういった。
「そうか、忘れてもらえないか。ならば仕方ない」
 ゆっくりと立ち上がった雪だるまの顔は、やっぱり3分の1くらい崩れていた。
「悪いが、お前には死んでもらう!」
 そういって、雪だるまは僕に殴りかかってきた。いきなりのできごとで、僕はただ呆然としているだけだった。気がつけば、僕の眼前に雪だるまの拳が見えていた。
 やばい!
 そう思って、僕は咄嗟に顔をかばうように腕を突き出し、目を瞑った。

 ゴバッ!

「あ」
 変な音とともに、雪だるまのマヌケな声が聞こえた。
「あ」
 何事だ、と目を開いてみたら、雪だるまの腕が吹っ飛んでいた。
 腕は枝で出来ているものだと思っていたが、どうやらこいつはご丁寧にほぼすべてのパーツが雪で出来ているようだ。
 雪だるまは、残ったもう片方の手で自分の手(の残骸)を拾った。「やっべ、これどうすんだよ……」とかいっている。
 こいつの自業自得だが、ちょっとかわいそうに見えてきた。
「おい、ちょっと動くなよ。戻してやるから」
 僕はそういって、雪で出来た腕を雪だるまに無理やりくっつけた。ちょっと力を込めすぎて、体の方も崩壊してしまった。
「あ! こら! お前オレを殺す気か!?」
「うるさいな、ちょっと黙ってろ。すぐ直してやるから」
「そーっとしろ、そーっと! 雪の体はデリケートなんだからな!」
 僕はなるべく慎重に雪を体にあてた。雪だるまの修復って、重労働だということを学んだ。

「ふいー、よかったよかった。なんとか元に戻ったわ、ありがとよ」
 なんか前より形はいびつになったが、雪だるまの修復が完了した。
「お、そうだ。ついでだから聞きたいことがあるんだ。オレさ、人探しにきたんだよ」
 雪だるまに訪ねられる人ってどんなやつだ。その人はよほど顔広いんだな。
田島(たじま)和樹(かずき)ってやつなんだが、お前知らない?」
 僕でした。
「本人です」
「なんだと? お前が田島くんだったのか……へぇ、ほう……」
 なんか体の隅々まで凝視(?)されてるんだが、何なんだよこいつ。
「あ、そういや自己紹介がまだだったな。オレは岡崎ジローだ、よろしくな」
 名前があったのか。しかもジローか、イチローとかサブローもいるんじゃないだろうな。
「で、なんで僕を訪ねに来たんだよ。僕は、雪だるまに知り合いなんていないんだけど」
「おう、そうじゃないんだ。ちょっと知り合いに、お前に会いたがってるやつがいるんだ」
 雪だるまの知り合いか、一体誰だよ。
「ずーっと『田島くんに会いにいかなくちゃなあ』、『田島くん、寂しがってないかなあ』って言ってたからさ、そこまで言うなら会わせてやりたいなー、と」
 案外、こいついい雪だるまかもしれない。
 でも、誰だろ。僕に会いたがるような人なんているのか?
「で、誰なんだよ。僕に会いたがってるって人は」
岡崎(おかざき)かなみっていう人なんだが、覚えある?」
「……かなみか」
 あまり思い出したくない名前だった。僕が、昔付き合っていた彼女だ。
「なんだよ、嫌そうな顔してるな? かなみ様となんかあったのか?」
 様付けしてるのか、こいつ。
 口に出してツッコむ気力がないので、僕は心のなかでそう思った。
 岡崎かなみ。昔、喧嘩してしまってから一度も会っていない。何より、少し事情があってかなみには会いたくない。
「なあ、頼むよ。ちょっとだけでもいいからさぁ」
 ジローに促される。確かに、会いたくない反面ほんの少しでいいから今のあいつを見たいと思っている。
「……じゃあ、ちょっとだけ」
「よおおおおおおおおおっし! そう来なくっちゃな!」
 僕が答えると同時に、ジローは僕の手を掴んだ。
「ちょ!」
「行こう、今行こう、すぐ行こう!」
 僕は、ジローに引きずられながら彼女に会いに行くことになった。もちろん、途中でジローの腕がすっぽ抜けて修復作業に発展したけど。


7 :テラー :2008/12/25(木) 23:28:57 ID:WmknQ4VD

雪だるまの探し人(後編)

「で、かなみに会うということでお前に引きずられたわけだけど……」
 僕らは、何故か幼稚園にいた。
「なんで幼稚園なんだよ」
「え、だってかなみ様ここにいるし。ここ、オレの家だし」
 お前、ここの生まれだったのか。というか、そんなことはどうでもいい。
「何故会う場所に、職場を選んだ」
「そりゃお前、この時間帯は普通に勤務中に決まってるじゃないか」
 そりゃそうだが。そもそもなんでこの時間帯を選んだんだか。
 というか、門の前で幼稚園を見つめる男と雪だるまの2人組みって結構やばいな。なんか、園児たちも外でお遊戯してるし。完全に僕たち変質者なんじゃ?
 そんなことを考えていた時だった。

「かなみせんせー!」

 園児たちの口から、彼女の名前が出た。
 一瞬、体が震えた。それから、僕は園児たちの方を見た。建物から、誰かが出てくるのが分かる。
「かなみ……」
 そこに、かなみの姿があった。最後に会った時より、大人びていてきれいになってる。
 唐突に目頭が熱くなってきた。もう涙なんて出ないものだと思ってたけど、そんなことないんだな。
「会ってよかったろ?」
「お前は、かなみを僕に会わせたかったのか、僕をかなみに会わせたかったのかどっちだよ」
 若干ずれてる気がしたので、僕は涙を隠すためにも一応ツッコんでおいた。
 それからしばらくして、園児たちはみんな帰っていった。かなみはしばらくしてから、私服姿に着替えて出てきた。
「よし、尾行しよう」
「ストーカーじゃないか」
 なんかやる気満々のジローに、僕は軽くチョップを食らわした。顔が崩れた。
「ああああああああ!! オレの顔がああああああ!」
 ジローは、急いで地面にボタボタと落ちた雪を拾い始めた。コンタクトを探してるみたいにも見えるが、そもそもこいつはどこで物を見てるんだろうか。
「くっ! だがこのままでは、かなみ様を見失ってしまう! 相棒、行くぞ!」
 ジローは、破片を手に持ったままかなみの後を追った。誰が相棒だ、誰が。

 かなみを追ってから、もう30分は経っている。しかし、まだかなみは歩くのをやめない。
「おっかしいな、かなみ様の家はこんなとこじゃないはず」
 何故お前がかなみの家を知っているんだ。
「どこに向かってるんだろう……あっ」
 突然、かなみがどこかへ入っていった。僕は、かなみが入っていった場所を見上げる。
「お寺、だな」
「かなみ様、寺になんの用があるんだろう」
 不思議に思いながらも、僕たちは後を追って寺の中へ入っていった。
 かなみは、寺に隣接されている墓場へと向かっている。
「……まさかな」
 ほんの少しの心当たりがある。それに、少しだけ期待してしまう。
 僕たちは、かなみの少し後ろを歩いていく。そしてかなみは、僕が思っていたある墓の前で止まった。
 その墓には、こう書いてある。

『田島家之墓』

 それは紛れもなく、僕の墓だった。
「やあ、田島くん。久しぶりだね」
 墓に話しかけるかなみ。
 そう、僕は死んでいた。かなみと喧嘩したその日に、交通事故で。
「なるほど、かなみ様もお前に会いにきてくれたじゃないか」
「ああ、そうだな」
 僕とジローは、しばらくかなみを見守ることにした。
「今日はクリスマスだよ。私の友達、みんな彼氏と遊びに行くんだって。私もデートしたいのに、田島くんったらずっと土の中なんだから」
 まあ、今お前の後ろにいるけどな。
「そうだ、最近幼稚園の先生にも慣れてきたよ。ずっと夢だったから、先生になるの。田島くんにも応援してもらったからさ。これからも頑張っていける気がする」
 お前の夢、小学校の先生じゃなかったか?
「田島くん……会いたいよ」
 かなみの声が震えてきた。
「無理だって分かってても、私待ってるよ。今年のクリスマスだって、サンタさんに『田島くんに会いたいです』って頼んだんだから」
 無茶な頼みに、サンタさんも困ってるんじゃないか。
 何故か知らないが、僕の体も震えはじめた。
「待ってるってよ」
「できることなら、今すぐにでも彼女に抱きつきたい気分だよ」
 僕は鼻を啜りながら、ジローに言った。
「おう、じゃ抱きついてこいよ」
「うん……へ?」
 何を言って――そこまで言いかけたとき、僕は思いっきり背中を叩かれた。初めて会った時のへなちょこパンチじゃない、ずっしりとした重い一撃だった。
「痛っ!」
 僕は地面に倒れた。全身が痛い。
「くっ、何すんだ……あれ?」
 僕が文句を言おうと立ち上がると、そこにジローの姿はなかった。
「おい、ジロー?」
 辺りを見渡す。だが、呆然とこちらを見るかなみ以外に姿はなかった。
 いや、待てよ。かなみが、こっちを見ている?
 僕は、かなみと視線があった。間違いなく、かなみは僕を見ている。
「かなみ?」
「た、田島くん?」
 知らず知らずに、お互いがお互いに向かって歩き始めていた。
「田島くん、田島くん!」
 かなみが駆け出して、僕に抱きついてきた。僕は、それを受け止める。
「かなみ」
「田島くん! 会いたかっ、ひっく、ずっと、会いたかった……」
 ボロボロと涙を流すかなみを、僕はそっと抱きしめてやった。
「僕も、会いたかった。それで、ずっとあの日のことを謝りたかった」
「わた、私も、謝りたかった。ごめ、ごめんね」
「僕こそ、ごめん。今までも、ずっとつらい思いさせてきて」
 それから、僕らはしばらく抱き合っていた。
 かなみの体を、ぬくもりを、僕はずっとかみ締めていた。
 少しすると、かなみは眠ってしまった。まるで子供のような寝顔で。
「ただでさえずっと仕事続きだったのに、こんだけ涙流せば疲れが一気に出ちゃうだろうな」
「ああ、そうだな」
 いつの間にか現れたジローを尻目に、僕はかなみをおぶった。
「明日になるまで、お前は普通の人間でいられる。まあ、このままドロンしたいってならそれでいいが」
「ああ、かなみを家に連れて帰ったら僕も自分の世界に帰るよ。死後の世界ってやつに」
 僕は、かなみの家に向かうべく歩き出した。
「まあ、頑張れよ。オレはもう帰るぜ」
 そういって、ジローは別方向へと行こうとする。
「ちょっと待てよ」
「ん?」
「お前さ、結局何者なんだよ」
 ジローは、ほんの少しだけ悩んだあとこういった。
「ただのお節介な雪だるまだよ」
 そういって、いつの間にか赤い服を着た男になっていたジローは、手を振って去っていった。
 お前さ、その格好どっからどう見てもサンタクロースじゃないか。変装するなら最後までしろよな。
 僕は、心の中でだけそうツッコんだ。

 ありかさんへ、テラーサンタより


8 :雨やかん :2008/12/26(金) 21:56:29 ID:mmVcn4kc

12月のマイサンタ

『サンタはね、お父さんなんだよ?』
『で、来年はもうプレゼントはないからね?』

そんな台詞と共に4歳の朝を迎えてから、早くも10年以上が過ぎた。
俺の名前は雨宮。雨宮 月斗。実家…寺。

そう、寺だ。クリスマスといういわばキリスト教徒のためのイベントなどもってのほか!という先祖代々の教えに基づいて、俺はクリスマスにずっと縁のない生活を送ってきた。

いや、俺としては別にそこまでこだわる必要はないと思うんだけどな?だって、家の宗教が仏教だろうがなんだろうが普通にクリスマスとかしてんじゃん?ケーキとか食べて美味しいとか言ってるじゃん?友達とクリスマスパーティーに出かけて、メリークリスマース!とか乾杯するじゃん?

やったこと無い。一度も。全く。欠片も。

ぶっちゃけ、羨ましいと思う。別に、17にもなってサンタからのプレゼントが欲しいなんて言うつもりは無い。けれど、友達と祝って遊ぶくらいのことは許してくれないだろうか?

そんな俺の10年にもわたるお願いを両親はようやく聞き入れてくれた…俺の弟のために。
今年12になる弟は、嬉しそうな笑顔で昨日は部活で苦楽を共にした友達とパーティーに出かけていった。その表情を見て、俺も何となく幸せになった。俺が出来なかったことを、弟が出来るのは兄貴として良かったと安心できる。そこはいい。

跡継ぎの兄貴は、大学で一人暮らしという利点を利用して彼女とデートしたらしい。こっちは弟として羨ましい、かつ妬ましい。

で、俺はと言うと。

年末の寺をなめてはいけない。敷地は広い。加えて、先ほど上げた理由で兄と弟がいない以上、年末の負担は全て俺に回ってくる。つまりは、どこの家でもやる大掃除だ。ちなみに、俺の家はこの大掃除を1週間以上かけて行う。

兄貴は、遠い大学でいない。
弟は、部活でいない。

坊主も走るから師走とはよく言ったものだ。俺はここ数日、いない兄弟の分まで必死になって働いて、友達の誘いも両親の負担を考えれば全て断るしか無く、ようやく一通りの作業が終わった今日。

時計のデジタルは無上にも12/26という日にちを示していた。

『その、今日ぐらい休んでいいわよ?』
『すまんな。毎年…』

兄も弟もクリスマスを楽しく過ごし、俺だけが孤独に過ごしたということに気付いた両親が俺にそう言ってくれたのは嬉しいが、さすがにこの状況で休みをもらっても正直微妙だ。友達はクリスマス終わって家でのんびり。さすがにこの状況で『俺、クリスマス祝ってないから一緒に祝おうぜ!?』なんて…微妙を通り越してイタすぎる。

「だー…ちっくしょー…毎年とはいえ、さすがに兄弟一人だけ仲間はずれだと応えやがんなぁ…」

そんな愚痴をこぼした俺を許して欲しい。町に出てきても、もはやどこにもクリスマスの装飾は無い。側を通り過ぎる子供は、多分今朝に枕元に置かれていたであろうおもちゃを友達同士で見せ合っている。


9 :雨やかん :2008/12/26(金) 22:38:29 ID:mmVcn4kc

サンタクロースは奇跡を起こす

どのぐらい歩いただろう?にぎやかだった商店街を抜け、俺は結局自分の家の近くにある公園までやって来ていた。
12月26日。俺がサンタがいないと知って、それでも諦めきれずに毎年やっている行動が…これだ。

「一日遅れてメリークリスマス。今年も、お疲れ様だな、ジゾー?」

その名の通り、地蔵である。俺が唯一、クリスマスを一緒に祝う相手と言っていいだろう。イタイやつとか思わないでほしい。子供の頃、友達が祝っている姿を見続けて、羨ましくて何度も泣いていた俺にとって、毎年この日の一番の親友なのだ。

ただ、いつもと違うのは…そんなジゾーの反対側の道路で何やら工事現場のおっちゃん達が何やら話し合っていたことだ。おいおい。まさか、最近やってる道路拡張とかでジゾーを撤去するとかじゃねーだろうな?冗談じゃない。それなら俺はジゾーを自力でどこかに運ぶぞ?

「あの…何か、工事っすか?」
「ん?いやな。そこのお地蔵様だけどよ。毎年毎年、一人でかわいそうだってことでな。今度、もう一体別のところで一人だった地蔵を並べてやることにしたんだ。」
「…マジ、すか?」
「おおよ。しかも、その地蔵は女性を奉った地蔵だからな。奥さんが出来れば淋しくねーだろ?」
「…そっか、ジゾーよ。お前も来年からは一人じゃねーんだな…良かった、じゃ、ねーか…はは、はははは…あーっはっはっはっは!うわああああああああああんっ!?」
「おう、兄ちゃん優しいな――――って、おい!兄ちゃん!?……何で、泣きながら走り去ってんだ、あの兄ちゃん…?」




俺の居場所は何処にもない。信じていた友にも祝福の風が吹いた今、俺はもはやあそこには立ち寄れない。ふっふっふ…友を祝福すら出来ないなんて、俺はなんて醜い男なんだ。ああ、畜生…クリスマス…お前は、俺を孤独にしないと気が済まないのか?

「…幸せになれよぉ…ジゾー…!」
「…いや、何を言ってるのさ、月斗?」


顔を上げると赤と白で彩られた服を着た女の子がいた。


「…えーっと、サンタさん。外国から来られたんですか?もう日本は26日ですが。」
「ちゃんと分かってるから。」
「スウェーデンだと時差があって大変ですね?」
「いや、サンタはスウェーデン出身じゃないと思うけど…というか、月斗。また泣いてたの?」
「…ジゾーにな、奥さんが出来たんだよ…」
「…取り残されたんだね。」
「言わないでくれ…俺は、俺はっ…ジゾーを友として祝福してやるんだっ…!」

この目の前にいるミニスカサンタ。俺の高校の友達で、名前を日比野ミズキという。多分、俺が一番仲の良い女だ。とある事情から、俺がクリスマスを祝えないのを知ってしまったやつ。初めてジゾーの側で泣いているのを見たときなど、こいつは俺の気が触れたのかと本気で心配したらしい。

「はぁ…ねえ、この後だけど…時間、ある?」
「あるぞー、ジゾーの邪魔は出来ないからな。俺には孤独を過ごすしか―――って、そういやミズキ。お前、なんでサンタの格好なわけ?」
「っ!い、いいから行くよ!私の家に!」
「へ?ちょ、お!おい!引っ張るなー!?」



で、俺はというと…現在日比野家。その二階。さらに場所を絞るなら、そのミズキの部屋の前に立たされている。連れてきた本人は『少しここで待て!』と部屋の中に入っていった。何をしてるんだろうか…?

「…い、いいよー…」
「あのな、ミズキ。一体何をして――――…え?」

部屋は暗かったけど、明るかった。
暗いのは当然だ。だって、ミズキの部屋の窓という窓に暗幕が貼り付けられて外の光は全く差し込んでこないようになっているんだから。
それなのに明るいのは…その部屋の壁一面にイルミネーションが輝いているからに他ならない。これ、本来なら庭の木とか家の外壁とかに貼り付けるやつ?


そしてそのイルミネーションが描いているのは『Merry Christmas』の文字。


「…これ、って…」
「メリー、クリスマス…月斗。」
「ミズキ…い、いやいや。あのな?嬉しいけど、さすがにほら?もう26日だぜ?えっと、だから、その…」
「25日、だよ。」
「へ?」
「今日は、25日だよ…少なくとも、この部屋の中は。」

何を言ってるんだ?25日は昨日の23時59分59秒を持って終了している。だから、今日は―――

「ほら。」
「…おい、これって。」
「あれも。これも。あと、携帯も。」

ミズキが差し出してくれたのは、目覚まし時計だった。‘12月25日23時59分59秒の時点で電池が抜かれて止まっている’。
他の時計もそうだ。壁時計も電池を外されているのか26日1秒前で停止している。腕時計はガラス板を外されて長針と短針が重ならないように小さな何かの欠片で止まっている。携帯は…こいつ、電池パック抜いてやがる!?

「…だから、ここは今…まだ12月25日だよ。」
「み、ず…き…」
「いつもクリスマスに泣いてた月斗。いつもクリスマスを諦めてた月斗。いつも、クリスマスを家のために頑張ってた月斗。…良い子にしてた人のところにはね?サンタクロースが来るんだよ。」

サンタクロース。
それは、クリスマスの夜に奇跡の贈り物をしてくれる優しい存在。

「月斗…メリークリスマス。」
「…ああ。ミズキ。メリー…クリスマス…」

サンタクロースなんていない?馬鹿なことを言うなよ。俺の目の前にいるこいつが、サンタ以外の何だって言うんだ?

俺にこんなプレゼントと奇跡を運んできてくれた、こいつを…さ?


10 : :2008/12/27(土) 20:56:30 ID:scVcznr7

代理サンタ

あなたはサンタを信じますか?信じませんか?


僕のいとこに小2になりながらも、いまだにサンタの存在を信じている女の子がいました。
僕は「サンタなんてこの世にいないよ!!」と言いたかったのですが、その子の夢を壊さない為にもその言葉を胸の奥にしまいました。


そして、いよいよ寝る時間。僕は今年、その子の母親に頼まれてサンタの役をすることになったのです。
その子は布団の中に入り、サンタが来るのを待ち受けていました。
11時に布団に入ったのに、12時がすぎてもまだ起きています。
いつもは10時には寝ているのに、こんな時間まで起きているということは、よほどサンタに会いたいんだな、と思いました。

そして、その子の母親からこっそりプレゼントを受取りました。
とてもかわいらしいリラッ○マの人形と手紙をいれた、箱です。
ついでに手紙は、「サンタより」と書いておきながらも、僕が書きました。


さあ、3時頃。もうもうその子は絶対に寝ている時間です。
僕はこっそりとその子の枕元に近寄りました。大声で笑いたいのをこらえて。

案の定、その子はぐっすりと眠っていました。
僕は小声で「メリークリスマス」と言って、すやすやと眠っているその子の顔の横にプレゼントを置いておきました。

おしまい



後日談

次の日、僕が起きるとその子はとても喜んでいました。
そして、僕に自慢をし、プレゼントを見せてくれました。
しかし、ただ1つだけ、僕にはどうしても忘れられない言葉を聞きました。

「このプレゼントが入っていた箱に、飾りがついてたんやけど、この飾り、何度かお家でみたことがある!!」

僕はどきっ、としました。確かにそれは、その子の母親が家においてあった飾りをつけたものなのです。
僕は、てきとうに、「サンタも同じのを持ってただけじゃない?」といってごまかしましましたが、その子は「そうかな?」と少し考えましたが、僕のいったことで納得をしてくれたようなのでよかったです。

そのあと、この事をその子の母親に話したところ、「えっ!!そんなことがあったの・・・。クリスマスに使おうと思ってずっと前から隠しておいたのに。でも、サンタ役をしてくれてありがとう。助かったわ。」

僕は苦笑しました。子供の記憶はあなどれないと・・・。


というわけで、来年にプレゼントをあげようと思っている方は、くれぐれもプレゼントには気をつけてください。



  テラーさんへ。遅刻サンタ遼より


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.