哀しくて優しいお話〜送者〜(続)


1 :空宮 彼方 :2008/02/23(土) 18:37:17 ID:onQHtFrH

諸事情がありまして・・・新たにここから連載します(泣)
以前のものはそのまま残してありますので、最初から読みたい方は哀しくて優しいお話〜送者〜をお読みください。


4 :空宮 彼方 :2008/12/22(月) 20:18:46 ID:onQHtFrH

愚かな自分が嫌で、汚い自分が疎ましくて。
そして何より、紫苑のためにと思ったつもりで、実は己のことしか考えていなかった自分が憎らしくて仕方が無い。

そんな自分に耐え切れずに涙を流していた藍璃は、急に体が暖かいものに包まれたのを感じた。
驚いて見開いた藍璃の視界に映るのは、真白と茶。
体で感じるのは、自分より少し低い体温と、少し早い鼓動。

遅れながら、藍璃は自分が紫苑に抱きしめられていることを理解する。
けれど、自分と同じ位の外見の男の子に抱きしめられたのに、恥ずかしさも、逆に嫌悪感も感じない。
感じたのは、涙が止まってしまうほどの安堵感と、今まで欠けていたものが戻ってきたような充足感。

自分を抱きしめている少し低めの体温はまるで穏やかな春風のようで、藍璃は自分のささくれ立った心が凪いでいくのが分かった。
そのまま藍璃は、目を閉じて紫苑に体を預ける。
涙の後を残す頬もそのまま、今の今まで泣いていたことすら意識の外に追いやって。

ただただ、自分の心の赴くままに。







一方、藍璃を抱きしめた紫苑も、自身の行動に戸惑いを覚えつつも、藍璃から体を話すことが出来ないでいた。
記憶にある限り、人にまともに触れたのはこれが初めて。しかし、確かに穏やかになっていく自らの心を、紫苑は自覚している。

自分の腕の中にいる藍璃の体からは、少女らしく自分より少し高めの体温が伝わってくる。
その暖かさは紫苑に、まるで優しい木漏れ日の中に居るかのような錯覚をもたらした。


紫苑の胸を満たすのは、抑えきれない、泣きたいほどの歓喜。「帰ってきてくれた」という思い。

この思いが、手からぽろぽろと零れ落ちていく先程の夢の残像によるものであることは何となく理解できている。
それでも、今の紫苑にそんなことは関係なかった。

今まで感じていた、自分の半分が欠けているかのような感覚。
その感覚は今や露のように消え、今紫苑が感じているのは、深い深い充実感。
まるで、ずっと失っていた半身を取り戻したかのような。

周りの状況も何もかも消し去って、紫苑はただ、この何物にも変えがたい甘美な感情の中に居た。


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