世界樹を統べる者


1 :ヘタレ草 :2010/09/26(日) 21:50:31 ID:m3kntkzJ

どもっゝ へタレ草っス!

何か急にガチの戦闘モノを書きたくなったので、解りずらい駄文ですが書いてみました〜。

いつまで続くかわかりませんが、テスト品か何かだと思って、
しばしの間、あっしのわがままにお付き合いしていただければありがたいっス。


2 :ヘタレ草 :2010/09/26(日) 21:52:42 ID:m3kntkzJmn


この世には、知らないことやよくわからないことがたくさんある。

この物語は・・・、少し病弱ながらも平凡な日常を送っていたとある少女が、
片思いの相手を振り向かせるために、努力した結果、
知らなかった世界を知ってゆくというものである。


3 :ヘタレ草 :2010/09/26(日) 22:02:41 ID:m3kntkzJmn

最強×最弱



現在の時刻は深夜零時を10分ほど過ぎた頃で、季節は春。

河原に沿うように、土手には桜の木が等間隔でいくつも植えられている。

この年は例年よりもだいぶ暖かかったので、その影響でか、三月の上旬にも関わらず、
それらは全て満開に咲き乱れており、街灯の淡い光でうっすらと照らし出された夜桜が、

幻想的な雰囲気を醸し出しており、その光景を見た者は感嘆し、
思わず足を止めずにはいられないほどである。


・・・が、その河原では、現在、二名の小学校くらいの
背丈の男女が殴り合いの喧嘩をしていた。


否、喧嘩という表現には少々誤認を生じさせてしまう。


どちらかといえばワイヤーとかを用いた、アクション映画のシーンのような、
激しい戦闘と表現したほうが的確かもしれない。


もっとも、これは映画の撮影とかではないので、カメラとかの撮影機材などは一切ない。


次に河原で現在、戦闘を繰り広げている男女のことについてもう少し深くふれてみるが、


男の子のほうはフードの様なものをかぶり、まるで正体を隠しているかのように、
全身黒づくめであるが、激しい動きのなかで時折、袖などから体の一部がみえるが、
包帯などをしており、どうやら全身をケガしているようである。


続いて女の子のほうはというと、何かのキャラクターのプリントが全身に入っている、
ピンク色のいかにも女の子が着るパジャマ姿で、男の子の攻撃を全て左腕でガードしている。

・・・というよりかは、正確には左手が少女のことを守っていると表現したほうが正しいのかもしれない。


この二人の関係は、同じ小学校に通うクラスメイト同士で、男の子の名前は萩裏 夜一(はぎり やいち)で、
女の子の名前は真田 雫(さなだ しずく)といい、雫はあることがきっかけで夜一に片思いしており、
つい最近告白して、即行でフラれたの相手に、現在何故か襲撃を受けているのだ。



いや、理由はおそらく夜一の攻撃から雫のことを守っている(?)
左手では? と、夜一からの襲撃を受けた当初は、あれこれ思考を巡らせる
余裕が雫にはあったのだが、今はというと・・・、


 
「はっ!」

夜一は素早く踏み込んで、全身の体重を乗せた右の拳をやや前傾姿勢で雫の腹に叩き込む。

「ぐっ!!」

夜一と雫の声とは明らかに違う、もう一つの呻き声が聞こえたかと思うと、
まるで豪速球がキャッチャーミットに収まったかのように【バシッ!!】 
という豪快な音が河原中に響き渡り、

「ちっ」・・・・・・「ひきゃっ?!」

夜一が舌打ちしながら視線だけで確認すると、左手でしっかりと拳を受け止めていた。

・・・が、夜一の強烈な一撃は左手が受け止めたので、雫にはダメージは届いてはいないのだが、
繰り出された拳から発生した衝撃波の様なものまでは防ぎきれず、それが雫の全身に伝わって、
雫の体が後方に吹っ飛んでいた。 




雫の体は地面から30pほどの高さを1mくらい舞ってから、

「きゃうっ!! ・・・いった・・・」

お尻から地面に落ちて、お尻をさすりながらも素早く起き上ろうとしたとき、

「来るぞ!」「・・・え?」

目の前には物凄い速さで顔面めがけて蹴りを放つ夜一の左足が迫ってきていた。

夜一は吹っ飛んだ雫を追って、その着地点まで素早く移動し、追いうちの蹴りを放っていたのだ。


雫にはその動きが全く見えていないので、反応なんてできなかったのだが、左手は違った。

「ぐおっ!」  「!」
「・・・あ!」

左手からまた謎の声がしたかと思うと、今度は左の肘でしっかりと夜一の蹴りを受け止めていた。


「ちっ・・・うらああっ!!」

だが夜一はガードされて、停止状態から構わず、まるでサンドバックを
無理やり蹴り上げるように、雫ごと左腕を蹴り飛ばした。


「ふぁあああ―――!!!?」

雫は今度は地上から生えている雑草に触れそうなくらい、すれすれの高さを、
上下の感覚が全く分からなくなるほどの激しい回転を全身にかけられながらすっ飛んで行く。


「さっさとくたばりやがれ」

夜一が冷酷な言葉を放った直後、雫が頭から地面に叩きつけられそうになったが、

「ちっ・・・なめるなああっ!!!」 「ひゃぁう?!」

三度、左手が素早く反応して、地面に手をつくと、雫の体にあらゆる方向に
かかっていた力を消し去り、逆立ち状態から曲げた肘の屈伸運動だけで、
その場で真上に3mくらい跳び上がり、空中で体制を立て直していた。

「なっ!?」

「はわ?」

雫・・・というよりかは、左手の動きとその対応に思わず感嘆の声をもらす夜一に少し遅れ、
自分自身が今どうなっているのか分からず、不安げな声をもらす雫だったが、

すぐに降下の感覚に襲われ、落ちていることを認識したときには、

「ったいぃい!!!?」

既に地面に両足がつき、偶然ながらもうまく着地したかと思いきや、
その衝撃に耐えきれず、後方に体が傾き、再び尻もちをつきかけたところで、
左手が少し背の高い草を掴んで、雫の転倒を阻止してくれた。

 
「はぁ・・・はぁ・・・うう痛いよ・・・」


雫は半ベソを掻き、しゃがみ込んで両足をさすりながら、
もう動けないという意思表示を示していた。

実際のところは勝手に動き回る左手の強い力と、夜一からの攻撃に体が耐えきれず、
振り回されたり、吹っ飛ばされているだけで、全然動いていないのだが・・・。

こんな感じの戦闘がかれこれ20分ほど続けられていたので、
とてもじゃないが、まともにこの状況を考えてい余裕なんてなかった。


「ちっ・・・やはりこの体はもろすぎて戦いづらいか・・・」
それに対して、左手から不快そうな呟き声がした。

もちろんここ声の主は雫でも、夜一のものでもない。


この声は雫の左手の手のひらに突然現れ、獣のような鋭い牙の生えた
口から発せられており、手の甲には眼力のある目が1つ大きく見開かれていた。


       
「ちぃっ・・・しぶとい野郎だ・・・」
「いくらこっちも深手を負っているとはいえ、
そんな雑魚にとりついたのを殺れねぇとはな・・・」

夜一が苛立たしそうに雫のことを睨みつけて、呟いていると・・・、


「腐っても流石は魔王ってところ・・・、いや獣王と呼んだほうがいいかね?」

後方から声がして、首だけ振り向くと、ノートパソコンを手にしたメガネの男の子と、
左腕を骨折しているのだろう、包帯とギブスで固定している傷だらけの少年が土手の上に立っていた。


「ちっ・・・お前らずいぶんとトロいじゃねえか・・・あ?」

うっとおしいのが、やっと来たかというような感じで、
相変わらず悪態をつきながら夜一が2人に喧嘩文句を吐くと、

「いや、待てって言ったのに夜一が勝手に一人で突っ込んでいったんだろ」

骨折している男の子は呆れ顔しながら小さく息をつき、

「流石は戦闘狂の一族だな」

夜一の言動に慣れているのか、メガネの男の子は顔色一つ変えず、淡々と言葉を返す。


この2人は夜一と同級生で仲はあまり良くないみたいだが、よくつるんでおり、
骨折している男の子の名前は千波 草二(せんば そうじ)で、
メガネの男の子の名前は神影 智鶴(みかげ ちづる)である。


「はんっ うるせえな・・・、俺はあれをブっ殺せりゃ何でもいいんだよ」

夜一は2人から目をそらし、再び雫の方に殺気交じりの視線を向けながら指をさす。

「いや、殺すって、その子は人間じゃないか! そんなことしたら先生に・・・」

夜一の冗談を一切感じさせないない物騒な発言に、
草二は眉をひそめて、考え直すように言いつつ、
ますます困った表情になる。


「ああ千波の言うとおり、そこの女、左の指先から首筋と左胸のあたりの
約三割ほどは取り憑かれているが、一応まだ人間ではあるようだ」

「少し興味深い、できれば個人的にも生け取りにしてもらいたいものだよ」

一方、智鶴は暗闇の中で開いているノートパソコンのわずかな光に
顔を照らし出されながら、カタカタとキーボードを打ちこみ、

まるでサーモグラフィーの様な感じで雫の全身が映し出されている
画面を相変わらず表情は変えずに見つめながら淡々と、
声だけは興味深そうな感じで、草二に同意する。


「うるせぇんだよお前ら! 邪魔するなら先に殺すぞ? あ?」
「こいつはお前らが思っているほど簡単じゃねえ、足引っ張り合えば共倒れするぜ?」

2人の反応は夜一には予想できていたようで、苛立たしそうにしながらも、
真剣な口調で2人に手を出すなよと、釘をさしつつ、身構える。



「・・・やはり、このままでは少々きついか」

「・・・ぇ?」

夜一に加え、大ケガをしている草二と、無傷ではあるが、
いかにも文系でひ弱そうな智鶴ではあるが、2人が増えたことに、
不利な状況になったと判断したのか、左手が突如雫の腹を殴りつけた。

「小娘、少し体を借りるぞ」
「え?・・・うぐぅ!?」

雫は突然の痛みに、顔をしかめ右腕でお腹をおさえながら、
ゆっくりと前かがみになりながら両膝をつき、気絶・・・したかと思うと・・・。

「くっくっくっ・・・」

突然雫の声とは明らかに違う、先ほどから左手からしていた声が、
今度は雫の口から漏れ出し、

「!」
「なっ」
「・・・」

3人は雫の変化に気づき、それぞれ身構えながら注意深く洞察していると、

雫の体がゆっくりと起き上ってきたのだが、口を大きく上げ、

『はあああああああああああああああ――――――!!!!』

気合とともに、力を解放すると、雫を中心に周囲に風が巻き起こり、
その風がゆっくりと強まっていき、台風のような強い風が巻き起こり、
穏やかに揺れていた草を、桜の木を、川をと、徐々に激しくざわつかせていく。


雫の表情が険しくなり、犬歯と八重歯が徐々に獣のように鋭くなって、
まるで狼のように口から見えるくらいまで成長していく。


「くっ!」

「何・・・だ?」

「・・・気よつけろよ 夜一?」


3人は強い風に飛ばされないよう、足を踏ん張りつつ、
雫の変化に驚愕していると、パソコンの画面を眺めていた
智鶴が珍しく表情をこわばらせて、夜一に注意を促す。


「はん! 誰に向かって言ってやがる。 ・・・一々いわれるまでもねえ」

智鶴に対してそう強がる夜一からは余裕が消え去っていた。


4 :ヘタレ草 :2010/10/03(日) 23:52:13 ID:m3kntkzJmn


「先刻での戦いでたかだか人猿の3匹のガキごときに
受けた傷と屈辱、この場ではらさせてさせてもらおうか」

いいつつ、雫はまるで威嚇している猫のように四つん這いになって、
今にも跳び掛らんという感じで夜一のことをじっと見据えて、スキをうかがっている。


「はん! それはこっちのセリフだな」
「俺たちが3人がかりで殺れなかったヤツ(化け物)はお前くらいだ」
「そうのうえこっちはこのざまだ。 ・・・今度こそきっちりと、とどめをさしてやるよ」

夜一は相変わらず苛立たしそうに、厚着をした服で隠した自身の包帯だらけの
体と、明らかに一目で大ケガしていることが分かる草二をそれぞれちらりと
見てから、再び雫の方に視線を戻すが、その眼にはとても子供が発するものとは
思えないほどの強い殺意が込められていた。


「くっくっくっ・・・、その体で相変わらず威勢がよいの」
「それにいい眼をしておるな、邪眼の小僧」

「!」

不敵に笑う雫と夜一の視線が重なった瞬間、まず動いたのは雫だった。


「しゃあーーーっ!!」

四つん這いの状態から30mほど離れた位置に立っている夜一に跳びつくような勢いで、
一度の跳躍で間合いを詰めると、着地を待たず、爪を立てた右腕を夜一の
顔面狙いの横薙ぎからの掌低で、切り裂くように素早く振り抜く。


「くっ!」

とっさに反応した夜一が上半身を反らせた直後、雫の右手の指が夜一の髪を微かにかすめていった。

「おー流石やりおるわ」

「!!」

崩れた体勢で夜一が、雫のニヤリとつり上がるように緩んでいく唇をみて、
初手は布石であることを悟りさらなる追撃を察知した直後には、
雫は既に夜一の顔面狙いの跳び蹴りを放っているところだった。



「ウラっ――!!」
「うっ・・・・・・く!」

雫の跳び蹴りが顔面に入る直前で素早く両手をクロスさせて蹴りを受け止めようとするが、
体勢が悪すぎて、全く踏ん張れず、後方にそのまま蹴り飛ばされ、背中から地面に叩きつけられ、
小さなうめき声を出しつつも、距離を取るためにそのまま自分で転がってから素早く立ちあがって、
体勢を立て直すとともに雫の姿を探す。

「・・・ちっ」

だが、夜一の視界には雫の姿はなく、焦り交じりに舌打ちすると、

「後ろだ夜一!!」
「っ!?」

草二からの声を合図に、後方に振り返ろうとしたとき、


「今度は貴様がワシの攻撃をただひたすら防ぐ番のようじゃな?」

一瞬のうちに間合いを詰め、夜一の背後を取った雫が再び爪を立てた右腕を
大きく振りかぶって、背後から切り裂こうと、横薙ぎからの突きを放ってくる。


「はんっ!」「ぬ?!」

雫の挑発的な言葉を夜一は鼻で笑いながら、その場で素早く真上に跳び上がって、
雫の突きを直撃寸前のところで躱しながら、空中で背面跳びのように体をひねって、


「そいつは・・・」

「む?」

バク宙の状態から今度は夜一の方が雫の頭部を狙って、
何のためらいも、手加減もない蹴りをふり下ろす。

「どうかなっ?」

「何っ?!」

「夜一・・・、あいつあの状態から反撃を・・・」
「・・・」

土壇場の状況下で、夜一の思わぬ反撃に雫から余裕の笑みが消え、
それぞれが驚駭の声をもらし、誰もがその一撃が決まったと思った。

「ぐおっ!」

「・・・っ!!」

だが雫は左腕を高く上げ、夜一の蹴りを片肘一本だけで防いでいた。


「ああっ!!」
「まずいぞ!」

「フン! おしかったのぉ!」
「貴様が万全の状態であれば決まっておったじゃろうが・・・なっ!」

「っお?!」


雫は防いだ左手を素早く動かして夜一の足首を掴むと、
円盤投げの選手のようにその場で半回転して、

「うおあああああ――――!!!?」

雫とは体格の差がほとんどない夜一の体を、片手一本で
軽々と振り回し、向こう岸の土手めがけて投げつける。


夜一の体は横幅が50mは軽くある川を越え、背中から土手に思いっきり叩きつけられ、

「がうああああっ!!!」

周囲に凄まじい衝撃音とともに、炸裂した土手の破片が周囲に飛び散り、
河原に粉じんを巻き上げて、一部の視界を奪う。



夜一が80mほど雫にブン投げられて、向こう岸の土手
の一部を吹っ飛ばすまで、ほとんど一瞬の出来事だった。

「うぐ・・・っそったれが――!!!」

泥だらけの状態で少しよろめきつつも、背中をおさえながら
ブチギレている夜一が立ちあがろうとしたとき、


「なっ!!」

舞いあがっていた粉じんを切り裂くように吹き飛ばし、
雫が左手を大きくふりかぶり、夜一の顔面狙いの突きを放とうとしていた。


「死ねっ!」

「っちい!!」


『夜一――――!!!!』
「・・・あ」

戦慄している草二と智鶴をよそに、雫は容赦なく左手一本だけで、
河原の地形を変えてしまうほどの強烈な突きを放ち、
さらに土手をふっ飛ばし、周囲の視界を粉じんで覆い隠す。


「っ・・・これも躱すか」

粉じんが舞い上がるなかで雫が呟くように言葉を漏らしていると、
粉じんの中から夜一が飛び出してきた。


「はあ、はあ・・・はあ、くそっ!」

「夜一!」
「・・・無事だったか」

だらんと両手を下げて、息を切らしながら血の混じったつばを吐く
夜一を見て、とりあえず生存の確認ができ、安堵する2人。


5 :ヘタレ草 :2010/11/15(月) 06:55:35 ID:m3kntkzJmn



「なかなかすばしっこいの・・・っぅぐ」



舞いあがっていた砂埃が静まり、再び雫が姿を見せたのだが、少し様子がおかしい。


雫は少し顔をゆがめ、前かがみになり、今にもちぎれ落ちそうな左腕を肩からだら〜んと
下に垂らしており、左の首筋から脇のあたりにかけて、赤いシミが服の中から滲みだしている。


「・・・!」
「・・・え?」

「・・・」

その姿をみて、夜一と草二の顔が驚きと戸惑いの交じったものにかわった。


「あれってもしかして・・・血? ・・・どういうこと?」

という雫の体を心配してでた草二の呟きに続き、


「どうなっていやがる・・・、中身がかわっただけで
ここまで(強さに)差がでるもんかよ?」

肘で口元から垂れる血をぬぐいながら、
雫の急激に向上したパラメーターの変化をボヤく夜一。


「ふむ、夜一、それは身体強化によるものだよ」

夜一のボヤきに対して智鶴が一つの解答を述べると、

「あー? 何だって?」

「身体強化って?」

少し離れた位置にいる夜一と、隣にいる草二が同時に振り向いて、
何を言ってるんだこいつというような疑問符を浮かべた顔をして訊き返してきた。


「ヤツの本体である左腕から彼女の体に力を分け与えて、
全身を強化して無理やり潜在能力を底上げるようだ」

「ただ、いくらかは体を強化しているみたいだけど、
ベースとなる宿主の体があまりにも貧弱すぎるようで、

本気で力を振るおうとすれば見ての通り、反動で彼女の
体の方がその力に耐えきれずに壊れてしまうようだ」

2人の微妙に違う疑問を同時に答えるように、
パソコンの画面に視線を落したままの智鶴が、淡々と語る。


しかし智鶴の大人ぶった説明では難しすぎて、
小学5年生のお子様たちにはまるっきり伝わっておらず、


「・・・えーっと・・・?」

と悩ましげに言葉をもらし、草二は額に手を添えて、
どこから説明を受けようかと考えていると、


「あ? 無駄に大人ぶった言い方しやがって、もっとわかりやすく言いやがれ」
苛立たしそうに夜一がお前の話は全然わからないと、ばっさりと言い放った。



「ふう、要するに夜一、君の戦闘スタイル同様フォースをコントロールして、
運動能力をたかめて、攻撃や防御する瞬間だけ体を強化しているんだよ」

やれやれといった感じで、智鶴が説明し直すと、

「けっ、ようはヤツが俺の真似をしっるってことだろ?」
「・・・それで急に一発一発が重くなったわけか」

いま一つ理解はし切れてはいないようだが、説明を聞くのがだんだん
めんどくさくなってきた夜一は適当に相槌を打って、納得したような反応を示した。


「まあ、大まかな解釈としてはそれでも構わないかな」

智鶴も夜一の性格を熟知しているので、
それ以上は説明しようとはしないし、るす気もない。


「つーか・・・いつも思うが、ほんとに俺らとタメかよ? 
てめえの喋り方はまどろっこしい」
「一々訊き返してもよくわかりゃしねえしよ」

理解していないということを見透かされていると感じ、
若干苛立たしそうに夜一が言葉をもらすと、

「夜一の場合は逆にもう少し頭を使うべきだね」

智鶴はパソコンの画面から顔を上げ、ズレた
メガネを指で押しあげて位置を直しながら答える。


「あー? 誰が頭使ってねえって? あ?」
「1人で考えなしに敵につっ込むあたり・・・」
「っんだと?!」

売り言葉に買い言葉、戦闘中にもかかわらず、
2人が睨み合って若干険悪なムードになりだした瞬間、


「ちょ、まあまあ落ちつけよ2人とも、それよりもあれ・・・」

慌てて草二が仲裁役に回り、雫の方を指さしながらそちらの方に意識を向けさせる。

「あ?」
「何だい?」

草二の言葉で2人が雫の方に視線を向け、注意をはらうと、

雫は右腕で血の滲む左腕を掴んで固定するように体に押し当て、

「ぐおおおおーーーーー!」

咆哮するとともに全身が淡い光に包まれた。


「!」
「また力を溜めてやがるのか?」

雫が再び飛び掛かってくることを警戒し、夜一が構えていると、


「・・・いや、違う」

驚愕とも、歓喜ともとれる声で智鶴が小さく否定の言葉をもらした。


「あ?」


その智鶴の反応がふに落ちず、何がどう違うのか?
という意を込めて、夜一が視線を向ける。


「・・・こいつは驚いたな、自己再生もできるのか」

顔をパソコンの画面に落としたままで表情はうかがえないが、
その声には明らかに物凄く興味津々といわんばかりに抑揚がついている。


「え? どういこと?」

「フォースで細胞を活性化させて損傷した部位を修復しているよ」
「・・・これはなかなか、す・・・」

相変わらず大人びた言い回しを使う智鶴に草二が詳しい
説明を求めるが、さらに難しい表現となってしまったので、
夜一は話の途中で再び雫の方へを視線を戻しながら、

「これ以上一々そいつに訊くまでもねえだろ」
「・・・そうだな」

夜一がめんどくさそうに結論付けて、草二がそれに同意をします。



「ぐおおおおおーーー!」

夜一達が雑談している間も雫は唸り声をあげて、傷の回復をおこなっていて、

「はあ、はあ、待たせたな・・・」

夜一が智鶴の話を無視って、再び身構えたとほぼ同じタイミングで、
少々息を切らせながら雫が再び獣の様な立つふるまいというか、

単なる猫背の様な前傾姿勢で身構えると、だらんと下に垂れさがって、
ちぎれ落ちそうになっていた左腕が何事もなかったかのように、

正常位置にもどっており、爪を立てて構え、むしろとてつもない威圧感を
まとって、今にも切り裂かんといわんばかりに夜一達の方に向けられている。



「あ・・・ぅ、け、ケガが治っている・・・?」

「はんっ、早い話がこれがヤツ(智鶴)の言ってたことだろ」

雫の様子を見てようやく智鶴の言葉を理解した草二は改めて驚愕し、
一方夜一は説明の意味は分からずとも、何となく内容を理解していたのか、
さほど驚かずに、雫の次の行動に注意を払いながら身構えている。



「傷が治せるんじゃ、やばくないか? ここはいったん逃げた方が・・・」

直感的に雫にとり憑いているモノの危険さを再認識し、
草二が撤退の案を2人に述べると、


「あー? バカ言え、誰がその程度のことで逃げるかよ
むしろまだ力をうまく使えないうちに殺ったほうがいいだろ」

好戦的な夜一はすかさずその案を却下し、

「俺も草二と同意見だな、確かに今がチャンスとも言えなくはないけど、
万が一にも君がやられてしまったら、草二の傷が完治した頃には、
ヤツも何らかの手を打って、元の状態に戻ろうとしているはずだ」

「否応なしにも俺たちは3人揃って初めてその本領が発揮される、
だから1人でも欠けると今後にも大きな影響が・・・」

智鶴が草二の案に同意し、夜一の必要性を相変わらずな感じで述べ、説得すが、


「はんっ、うるせえよ、俺はやりたいようにやるだけだ!」
「さっきも言ったがじゃますんなよ?」

夜一は夜一で相変わらずの強気な姿勢を貫き、
2人の案に同意を示さず、むしろより戦意を強めていた。


「夜一・・・お前な」

その様子に困ったというか、呆れたような表情になる草二と、


「ふ、しかしさっき、君はずいぶんおされていた様じゃないか、
それにあの左腕はヤツの本体だ、万全のコンディションであるならともかく、
今の君の体で一発でもあれを喰らえばほぼ間違いなく死ぬだろうね」

「もちろんカスっただけでも十分致命傷になりかねないよ?」
「それに左腕の一撃ほどはないが、ほかの部位からの
攻撃もそこそこの威力を誇っているようじゃないか」

相変わらずの戦闘バカの愚か者だなと、遠回しに罵倒する智鶴。


「はんっ! 何とでもほざいてろっ!」
「んなことは一々てめえに言われるまでもねえよ!」
「じかでやり合ってる俺が一番わかってるつーの!」
「それにおされてたのは・・・途中まであんな
雑魚相手に本気出すのがバカらしかっただけだ」

智鶴からの貶しをうけ、夜一がすかさず子供っぽい反論を示し、


「それに・・・、お前が言うようにヤツが
俺と同じ能力を使ってるならやりようがある」
「いくら威力があっても、やつには左腕での連打はできねえからな」
「せいぜい2発連打できりゃいいとこだ!」

「・・・それを躱せばヤツの左腕がまたつぶれる。 そこを狙えば勝てるだろうよ」
「完全にと言えねえが、少しは力が使える程度まで体力がもどってきたところだしな」

一変して今度は声のトーンを落として、ク―ルに振る舞いながら、腰を落として身構えると、

「はあああああーーーーーー!!」

雫同様に咆哮し、気合とともに全身に力を込め始めた。


「少しって、夜一、今の君とヤツとのフォースの固有量にどれだけの差があると・・・」

バカかこいつと言いたげに、智鶴が夜一と雫の全身がサーモグラフィー越しに
映っているようなパソコンの画面を見つめながら夜一に制止をかけた直後、


「うらっああ!!」

夜一が地を力強く蹴って、雫目掛けて跳び掛かって行った。


6 :ヘタレ草 :2011/01/30(日) 01:33:27 ID:o3teVAznV7


「おいっ!」

「戻れ夜一っ!!」


制止する2人の言葉に一切耳をかさず、常に敵の真正面から攻める夜一。


しかし本気でやるとかイキがって突っ込んでいったわりに、ケガの影響であきらかに
本来の力が発揮できておらず、さっきほとんど変わらないスピードでしか動けていない。


「正面から・・・か、相変わらず勢いだけのガキよの」

まっすぐ突っ込んでくる夜一を見て雫はあえて身構えず、
目をわずかに細めて、その場でつっ立っている。


動きのにぶい夜一を見て、油断をしたわけではない。

雫の体で動いてみて、夜一と一合したさい、
少し力を入れて動くだけで壊れてしまうほど、
この体がモロいことを体感し、戦法を変えたのだ。


リスクはあるが今の夜一のスピードと威力なら十分さばけるだろうと判断して、
あえて隙をつくって自分の間合いに呼び込むことで、動きを最小化し、カウンターを狙う。


「うらっ!」

互いの攻撃がギリギリ届く範囲に入ると同時に夜一が
右手で掌手を放とうと、わずかに腕を動かす予備動作の段階で、

「遅いわ!」

カウンター狙いで準備していた雫が夜一の顔面を狙って、
右ストレートを放っていて、確実にその拳が夜一の顔面をとらえたと確信した瞬間、

「・・はんっ」 
「なっ?!」

夜一が短い嘲笑を発した直後、雫の視界からその姿が消え、
右手にはいつまでも空を切る感触しかなかった。


雫の拳が顔面に届く直前、夜一は雫の読みをはるかに上回る速さで、
真下に向かって全身を急激に降下させて、攻撃を躱しつつ、
雫の右横へ向かって、ヘッド・スライディングをかましていた。

「っ! ・・このガキ」(急に動きが・・・) 

夜一は素早く片手を地面について、飛んだ勢いを殺し、
体の向きを90度反転させながら急停止すると、


「はっ!」

しゃがんだ状態から立ちあがる勢いを加えて、雫の右隣りから右手で掌手を放った。


「くぉっ!」

夜一の動きは一応雫の目にはとらえることはできていた。

・・・とらえることはできていたのだが、
夜一の動きは雫の体の反応スピードをはるかに凌駕していた。


この時、雫は右ストレートを放ったままの体勢で、
夜一の方向へ体を傾ける暇すらなかった。


雫は反射的に左腕でガードの構えをとりつつ、
夜一の打撃の衝撃を軽減させようと、自ら左斜め後方に跳びのいた。


・・・が、

「・・・はん」

それをチャンスと見てか、再び夜一が短く嘲笑する。

その直後に雫の左手にとどいた感触は打撃による痛みや衝撃ではなく、
強い圧迫感と右方向へ引っ張られていく感覚。

「!!?(軽いっ!)」
「ぐおっ! しま・・・」

夜一の打撃をとっさに左肘で防ごうとした瞬間、
雫は自身の対処の間違いに気づき、はっとして動揺を口にする。


夜一に右手で左の手首を掴まれたのだ。

左後方へと跳び上がった直後だったため、体勢がさらに崩れる。



そこへ夜一は掴んでいた雫の左手を払いのけ、
素早くしゃがみ込みながら右足で水面蹴りを放ち、

「はっ!」
「っお!?!」 


両足を刈り取られて雫は前のめりになり、
とっさに右手を地面について顔面からの転倒を防ごうとしたとき、

『だぁ―――!!!』

水面蹴りの回転と勢い利用し、素早く反転した夜一の左肘が雫のみぞおちをとらえた。


「っかは?! ・・・ぉご・・」

一切の手加減も容赦もない、むしろ全力で放たれ、モロに入った肘打ちの衝撃と
直後に全身にこみあげてくる苦痛に顔をゆがめ、雫の口からは胃酸交じりの唾液とともに、
深呼吸して全ての息を吐き出した後に、無理やりだしたような声がでた。



「うおおおぃっ!!」

「・・・相変わらず容赦ないな・・。まあ彼らしいと言ってしまえば、それまでのことだが・・・」

夜一が何のためらいもなく、雫の腹を容赦なく殴りつけるというバイオレンスな光景を
少し離れたところでみていた草二は騒然として絶叫し、一方智鶴の方は人差し指で
メガネの位置を戻しながら、夜一の言動にいまさら驚くこともなかろうと、
淡々と話しているが、もちろん夜一の行為じたいには賛同はしていない。


「いや、何のんきに言ってるんだよ? 相手は女の子なんだぞ?! しかもお腹だぞ!!」

「ああ、草二君、そのことに関してならば大丈夫だよ? アレの自己修復能力の高さは君も見ただろ?」
「もちろん君の言わんとしていることも分かってはいるつもりだけど、本気で倒すというのなら・・・、
むろん彼の行為を肯定するつもりはないけど、アレ相手にはあれくらいやらないと何の意味もないことも事実なのさ」


「・・・っだけど」

終始冷静な口調で事実だけを話す智鶴の影響でか、
草二の中で様々に入り混じって、
絶えず込み上がっていた感情が徐々に終息していく。



草二と智鶴が夜一の行為に対して賛否を述べあっているあいだも、
戦闘は続いていて、腹部にいいのが決まり、お腹を抱え込むように
うずくまっていた雫の首筋を狙って、夜一がかかと落としを放つと、

「うらっ!」

「っ!!」

とっさに雫が反応してその場で素早く転がって攻撃をかわし、
転がった勢いを利用して素早く立と上がると、左手でお腹をおさえながら、

「くっ ・・なめるな!!」

再び雫が夜一に向かって右ストレートをを放つと、

「はっ・・」

夜一は嘲笑しながら体を反転させて攻撃をかわし、その勢いを利用して回し蹴りを放ち、
左手が添えられていたが気にせず、先ほど入れた場所に蹴りを叩き込む。


「うぐ・・・がはっ!!」

「いいのが決まりすぎたか? さっきよりトロいぜ?」

同じ個所をガードの上からとはいえ狙われ、さらに苦痛の表情を浮かべる雫に対して、
まるで悪役のように黒い笑みをもらしながら、夜一は一点集中のピンポイント攻撃よろしくで、
雫に容赦なく一方的な攻めを見せている・・・、というのが先ほど草二と智鶴との会話で、
中断されている間にも行われていた大ざっぱな戦闘の流れである。


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甘辛流小説家ギルドGAIA
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