人違いの恋


1 :凪紗 :2006/11/30(木) 16:32:46 ID:WmknYkPe

「あの・・・」

-人違いではじまった

君との恋・・・


2 :凪紗 :2006/12/03(日) 13:06:46 ID:ncPiWHt7

俺は、フリーターでアルバイトだけで毎日生活していた。
収入は少ないもので、贅沢な暮らしも出来ていなかったが、彼女がいた。
それだけで、良かった。

良かったのに・・・

彼女は姿を消した。

いや、正確には俺が彼女を突き放してた。


ずっと片思いしてた彼女とつきあって、6ヵ月が過ぎた頃
俺は現実を見た。
長い事たつと彼女と言う存在が、友達以下になっていた。
思い描いていた充実した日々はなくて、めんどくさい毎日だった。

クリスマスも俺は、彼女との約束をすっぽかして友達と遅くまで遊んでいた。

「遼平いいの?お前夏輝ちゃんいるだろ?クリスマスぐらい、一緒に過ごせよ。」

「いいのいいの。約束すっぽかしてもおこんねえもん。怒ってもこわくねえし。」

なんていいながら笑っていた。

「・・・いいねぇ、彼女がつくしてくれてー。俺はどうせ独り身ですよーだ。」

「はは・・」

彼女といるよりも、友達といたほうが楽しい。
そう思いながら、クリスマスを終えた。

友達と別れたころの時刻はもう2時すぎで、恋人達のクリスマスも終わっていた。

白い雪を踏みつけながら家に帰って「ただいまー」と声を漏らす。
いつもなら明かりがついているけれど、全くついていない。
不思議に思いながら彼女の名前を呼ぶ。

「夏輝??いる??」

家にあがっても誰一人居らず、部屋には俺の荷物だけがぽつんと置いてあった。
訳がわからず、俺の荷物しかない部屋を歩き回るが、やっぱり彼女はいない。
彼女の生活用品は全て消えていた。

「・・・は?え。夏輝・・・??」

彼女の名前を呼んでも返事は返ってこない。

カーテンの隙間から月の明かりが漏れ出して、俺の顔を照らし出していた。



そして現在、彼女が突然姿を消して1ヵ月たとうとしている。

ずっと、うざかったはずの彼女の存在が今はすごく必要になっている。
周りから見れば都合のいい男だ。
あんなに友達以下だと思っていた夏樹を必要としている。
でも、夏輝にもう一度あいたい。
あって謝りたい、やりなおしたい。
そう思っていた。

でも、携帯に電話をしても着信拒否にされているし、メールもアドレスが変わっていた。

もう、会えないのかもしれない。
そう思いながら東京の街をひたすら歩いた。

「・・・そろそろバイトしなきゃ。お金ねえし・・」

あたりにバイト定員募集の張り紙を探すが、見当たらない。
それよりも、1月だからいつもよりも人が多くて息が詰まりそうになっていた。
もともと人ごみは嫌いだ。

ため息を深くついてから前に向き直った。

その瞬間目を見開いた。
まさか・・・

「・・・夏輝!?」

5メートル先のところらへんに、夏輝らしい人物が歩いていた。
後ろ姿だったけれど、歩き方もファッションも髪型もすべて一致していた。

あれは夏輝だ。

そんな先入観が俺の中を支配して、歩いていた重い足をはやくさせた。

「夏輝!!!」


3 :凪紗 :2006/12/03(日) 13:47:52 ID:ncPiWHt7

肩にかかるくらいの、赤いメッシュのはいった髪をふわりと揺らして彼女が振り向いた。
振り向く瞬間ほのかにフルーツの香りがした。

けれど違う。

猫目で、ぱっちりとした二重。さらに、ナチュラルとはいえない化粧。すっとした鼻。
香水の匂い。
夏輝は正反対だ。(鼻は同じだが)

完全に人違い。

「・・・だれ?」

ドラマとかでよく、こんなシーン見るけれど。
本当に有るんだなと、わけもわからない考えがアタマの隅ではたらいていた。

ぼけーと知らない人の顔を見つめていると、きょとんとして首をかしげた。

「あの・・・?」


「ああ、ごめんなさい。人違い・・・でした。」

俺はやや頭を下げて謝罪をした。
そうすると、その人はにこっと笑って

「そうなんや。探し人見つかるとええね。」

と言った。
突然の関西弁にびっくりしつつ、ゆっくりと

「ありがとうございます。」

と礼をいった。

「ええねんて。それじゃあ、あたしいくから。」

軽く一礼をするとその人はメッシュの入った髪をふわふわと揺らして歩いていった。
歩いていく時にまた、フルーツのような香水の香りがしていた。

その人の後ろ姿を見つめて、夏輝を思っている自分がいた。

後姿が見えなくなったあたりになってからまたため息をついた。

そういえばよく夏輝が「ためいきをすると、幸せが逃げるんだよ?」って言ってたな。
俺はもうまさに幸せが逃げていったあとだよ。

軽く息を吸い込むと俺も歩き出した。

夏輝よりも、バイト探さなきゃ。生活かかってるし。
バイトが見つかったら、夏輝を探そう。


それまでは恋なんてしない。

そう決心を固めて前を見つめ、ひたすら歩いた。


けれど、その日ではバイトが見つけられることはなかった。


4 :凪紗 :2006/12/05(火) 19:43:50 ID:ncPiWHt7

    再び出会う

人違いをしてから3日がたとうとしていて、もちろん遼平はまだバイトを探せずにいた。
お金も、前よりも低空飛行ギリギリを送っていて、もう食生活は乱れ始めていた。

「親に仕送りを頼む。」なんて死んでもいえない。
遼平は高校卒業後、一人で東京にでてきた。

一人で稼いで、立派な社会人になるから親の力はかりないときめていた。
でも、実際はフリーターになっていて、お金はない。
けれど親を心配させるのだけはごめんだった。

「・・・バイト・・・」

ぽつんと一人声をだすと、白い息が出てきていた。
一人で座っている公園のベンチも、前は夏輝と座っていたのにな。
なんて自分が夏輝のことを考えているということに腹が立った。

意味はたぶんない。

ベンチから立ち上がると、頬をバンバンたたいて歩き出した。

「はらへった。」

一言漏らすと、近くにあるコンビ二を探す。
あんまりこのへんに来た事がないので、道を知らないのもしょうがない。
携帯の案内サービスを利用する。
初めて使うものだから、あんまり手馴れていない。
おかげで5分以上かかった。

「やっとわかったー・・・」

どうやらこの近くにはコンビニがちゃんとあるようだ。

遼平は携帯をしめると、歩く方向を一つに絞った。
コンビニに向かいながらポケットの中にある財布をぎゅっとにぎりしめた。


5 :凪紗 :2006/12/09(土) 18:55:11 ID:ncPiWHt7

どれくらい歩いただろうか。
近くのはずなのだが、1〜2キロぐらい歩いた気分だった。
やっとの思いでついたコンビ二は、結構年がたったようだ。

ゆっくりと足を前に出して、扉をあけると店員の「いらっしゃいませー」が聞こえた。
入った瞬間ふと右をみると、男が一人雑誌を読んでいて店の中には他の客がいないようだった。

「ふー。」

息を吐いて、クビを鳴らすとすぐさまに食品コーナーに足を運ぶ。
もうおなかが減って限界だった。

あと少し歩いて右に曲がれば食品コーナーだ。

それだけでアタマがいっぱいだった。
遼平は一応年頃で、19だから食欲は旺盛なのだ。

カートを曲がると人なにかとぶつかった。

「うひゃああっ!!」

なんともいえない、あほらしい声が聞こえる。
ああ、人とぶつかったのか。
遼平がそう確信したのは尻餅をついたあとだった。

「いったぁぁぁ。・・・ああああ!!!!!!!」

手を付いて、眉にしわを寄せているとぶつかった人が声を上げた。

顔をばっと上げると、女の店員さんがパンを踏み潰していた。
結構わかめで、遼平より年下だろうか
後ろでたばねたポンポンのゴムが茶色の髪によく似合っていた。
でもクリームパンはもう無残な姿で、食べたくない。そんな感じだ。

「・・・あの。・・・すみません・・・大丈夫ですか・・?」

立ち上がって手をさし伸ばすとその店員さんは、遼平の手を気にもかけずパンをじいっと見つめていた。

「・・・どうしよう。あたし、今度こそクビかも!!!」

ぶつぶつと何かをひたすら言っている。

大丈夫なのか、この人は。

店員さんは顔を上げるとぎらっと遼平をにらみつける。
その目はなんともいえない。
怒っているのか、悲しんでいるのか。
よくわからない。

「・・・もお、どうしよう!ねえ!!あたしどうすればいい?!」

座り込んだままその人が遼平のGパンのすそをぎゅうっとつかんで問いかける。

「・・・ええと・・・えと。」

「・・・5個も踏み潰しちゃったよぉぉ。・・・アンタがぶつかるからでしょ!?ちゃんと前みなさいよっ!!」

その人は目に涙をためて口をへの字にまげて、眉毛をつりあげる。
もうにらみつけるの域じゃない。
それどころか、店員としてのコトバ使いじゃない。
女子高生だ。
しかも、なんとなく・・・恐い。

「ちょっと、弁償してくれるんでしょ?!あたしのクビかかってんのよぉ!」

「・・え、と。そういわれても・・・」

遼平には五個も買うほどお金がなかったのだ。

「あたし悪くないもん!てめぇがぶつかってきたじゃん!!」

どうすんのよぉ。といって泣き出してしまった。
確かに、この子は悪くない。
ぶつかったのは俺のほうだし。前見てなかったし。

遼平はどうにも女の涙には弱かった。
夏輝は泣いた事がないから、大丈夫だったけれど。

「・・・わかったから。俺が弁償するよ。・・・でも、お金ないから。」

「はぁ・・・?なにいってんの??」

「・・・だから。積み立て・・・で。」

遼平の頭に浮かんだのは積み立てだった。


6 :凪紗 :2006/12/09(土) 19:22:52 ID:ncPiWHt7

「・・・つみたて・・・?」

その子は目に涙をためて首をややかしげた。
積み立ての意味がわからないのだろうか。
遼平はうなずいてから積み立ての説明をし始めた。

「君がこのパン代払って、俺がちょっとずつ返すってこと。俺バイトで働くから。」

「そのぐらいわかるわよ!バカにしないでっ!!」

そのこはむっとした顔をして横をぷいっとむいた。

わかりやすいな、この子。
本当はわかんなかったくせに・・


7 :凪紗 :2006/12/26(火) 15:16:00 ID:ncPiWHt7

「・・・はぁ?ちょっと逃げようって言うの??」

なんでこうなるかなぁ・・・

「ちょっとまて、何で逃げる事になるんだよ!働いて返すっていてるじゃないですか。」

最近の子はいまいちわかんないものだ。
突然怒り出したりだとか。
さっきまでないていたこの子も突然目つきがかわった気がする。

そんな事を遼平は考える。

「だってそうじゃない?どこで働くのよ?ここで働いて返してよ。お金。」

「・・・あ、そう。・・・でもアルバイト募集してるの?」

「うん。してるよ」

即答。


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