夜を渡る者


4 : :2007/01/13(土) 00:48:23 ID:rcoJVemH

 夜を渡る者は夜しか生きられない。
 俺はばあちゃんの言葉を思い出す。
 闇の中、少女はこちらをにらみつけ見る。
 長い長い黒髪の少女は裏路地で、大の男を押さえつけ、銀の刃を男の胸元に突き刺していた。
「……お前」
「……消えろ、夜の住人よ!」
 呪文、ワーズ。唱えられたそれ。
 男の胸からあふれ出るのは真紅、真紅、真紅、真紅。
 鉄のさびた匂いが辺りを支配していた。
 少女はただ傲慢な笑みをしたまま、男を憎しみの瞳で見つめる。
 夜を渡る者は、銀の刃を手に傲慢にただ笑っていた。
 少しの驚きをその目の中の光に湛えながら。
 多分それは俺に対する驚きだということは、俺にはわかっていた。
 


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