銀皿に愛しきものの首をのせて


1 :瑞希 玲 :2006/06/30(金) 23:53:13 ID:P3x7nJsi

「Salome kissed the lip of the color of the blood with the head of YOKANAN at the silver tray. And a thin cloth is fluttered in a wind and danced. "YOKANAN and it are my love" "-- you are loved -- in you, Salome continues laughing the head of my thing" and a "deep love with deep it" prophet for a hand now forever aand an angel descends. In order to achieve the duty as a condemnation person. In order to punish the foolish royal princess who killed the prophet of God 」
 サロメはヨカナーンを愛していたかしら?
 それはエゴではないの? あたしは思う。
 この原書「戯曲サロメ」はあたしを不快にさせる――真実の愛なんて今のあたしには
必要ないの。
「深い深い愛?」
 あたしは図書室でこの書を手にとりため息をつく、広い広い図書室は
誰もいない。あたしだけが椅子に座りため息をついている。
「カレン?」
「カレンじゃないわ! 志乃よ」
「どっちでもいいよ、どちらにしても閉館時間なんだけど」
 司書の浅黄先生が、こっちをみてため息をついている、漆黒の髪と瞳、
神経質そうなそして理知的な顔、あたしを見る瞳はどこか優しい。
 あたしはこの空間が好き、浅黄先生と過ごすこの図書室の本の匂いと静かなる空気がすきなの。
「しかし、先生を先生とも思わない口を聞くなあ貴方は」
「帰国子女だからしょうがないって……それとも半分【あっち】の血をひくからしょうがないって?」
 あたしの一言は何処かきつくなる、いつも言われていることだもの。
【あっちの血を引くものはやはり生意気だ、やはりあちらの血をひくものは純粋な日本人ではない……】って、先生たちはあたしの扱いに困っている、自己主張が強すぎるからだと思うけど。
「きついなあ、とにかくカーマインさん帰ってください」
「……わかったわよ」
 あたしは原書を棚にもどす、あたしの名はカレン・志乃・カーマイン。
 父が【あっち】の人。母が日本人。
 まあ色々あるってわけ――でもこのお話ってあたし嫌いだな。
 でも続きよんでみたいけど、明日は土日で休みなのよね。
 先生は困ったようにあたしを見ながら、図書室の棚の本を片付けていく。
 先生は図書室の主、誰もこない図書室をいつも綺麗にしている。
 そんなところが好き――大好き。
 そしてあたしは決意する――先生に黙ってここに忍びこもうって。
 だってつまらないんだもん、家でいても……。
 あたしは悪戯っぽく微笑み、何処か嫌そうな顔をする先生にバイバイと手を振って
図書室を後にした。


2 :瑞希 玲 :2006/06/30(金) 23:57:26 ID:P3x7nJsi

【サロメは銀の盆にヨカナーンの首をもってその血の色の唇にキスをした。そして薄布を風になびかせ踊る。
「ヨカナーン、それは私の愛」
「貴方を愛しているわ、貴方は永遠にこれで私のもの」
「それは深い深い愛」予言者の首を手にサロメは笑いつづける。そして天使は降臨する。断罪者としての責務をはたすために。神の予言者を殺した愚かな王女を罰するために……】
 あたしは思わず訳した文章を呟いていた。
 サロメ、あんたはヨカナーンを殺して永遠に自分のものにできたの?
 銀の大皿にのせてその首をみつめつづけるの?
 でも天使って……こんな章はあったかしら? サロメに。
「でも……それはただのエゴよ」
 あたしは暗くなった図書館に、忍び込んだ。
 暗い図書室で、月の光をたよりに原書を訳す。
 そして机に頬杖をつき、ため息をついた。
「戯曲サロメは悲しき王女、ヘロデ王の息女の物語」
 あたしは呟く、これはあたしに対する言葉かも知れない。
「王女は誰よりも何よりも美しかった」
「その瞳は夜空で瞬く星のよう――全ての男を魅了した」
 あたしは思い出す。もう一人の身勝手な「姫」の物語を。
「白雪姫ね」
 あたしは呟き、もう一つの原書を手にとった。
 訳本ではなく、これらは正確に物事が書かれているから好きよ。
 翻訳者の手がはいっていないから、だってあたしが訳すんだから。
 英語で書かれた書物――この匂いが好き、でも誰もこれは読まない。
 完全に浅葱先生の趣味で、買い入れられたものだからだ。
 あたしのために? あたしが読みたいって言ったらこれは入っていた。
 でもわからない、先生が何を考えているのか……。

【Snow White is a princess more beautiful than whom in the world. Even the mother of a fruit can confuse the good looks. The hair is like  the white skin is like snow and ] an ebony. The lip is the blood of crimson. The mother who wished the good-looking princess is jealous of it. And the death is wished.】
 白雪姫は最後には母を殺すのよね――あたしは思う。実の母を殺してどうするの? 
ってね、たとえその存在を疎ましく思われていたとしてもね。
 真っ赤にやけた鉄の靴をはかせて、踊り狂わせるなんて……。
 でもあたしも人のことは言えない。母さんはあたしのために……。
 思い出したくない、ただ男の愛だけを求めていた女なんて。
「真っ赤に焼けた鉄の靴……」
 あたしは思わず呟いていた、あたしの名はカレン。
 赤い靴の少女は『カーレン』これは愚かな少女の物語。
 虚栄心から自らの両足を失った――どうしてこんな名を母さんはつけたのかしら?
 もうわからない、すべては闇の中だから……。
 あたしは月の光が支配する中、原書をぱたんと閉じて、瞳をゆっくりと瞬かせた。


3 :瑞希 玲 :2006/07/01(土) 00:06:07 ID:P3x7nJsi


【白雪姫は世界中の誰よりも美しき姫。
その美貌は実の母さえも惑わせる。白き肌は雪のよう、その髪は黒檀のよう。
その唇は深紅の血。美貌の姫を生みたいと自身で願ったはずの母はそれに嫉妬する。そしてその死を願うのだ】
 世界で一番の美貌をもった二人の姫。
 そしてその虚栄心から美しさを求めて、破滅へと堕ちた赤い靴の少女。
「サロメとカーレンは神によって断罪される」
 あたしは原書を閉じてただ独り言を呟く。
 これはあたしの癖、心の中で思っていることまで口にしてしまうの。
「許しはうけたけど――カーレンは本当にその罪をつぐなえていたのかしら?」
「虚栄からとはいえ、身を飾りたいと願った少女の願いは罪なのかしら?」
「サロメは何処にいったのかしら? 天使から断罪されて……地獄かしら? 裁きの天使は一体だれなの?」
 ただため息をつきながら、遠い瞳をして呟きつづける。
「それはジャスティス」
「え?」
「異端の天使」
「浅黄先生!」
 あたしは原書を手にため息をつく――見つかった、でも浅黄先生は
怒ってはいないみたい。
 面白そうに笑いながらパチパチと手を叩く、
そして扉をすっと開け放ち、あたしの傍に近づいて、机に手をついた。
「ゲームオーバーです、カレン」
「あーあ」
 あたしは原書を棚に戻して先生を見る。
 先生の漆黒の瞳が、銀色の月の光の中とても綺麗だった。
 それは何処かあたしには悲しく見えた。
 いつもの先生ではないようだった。
「でもジャスティス?」
「それは裁きの天使、貴方も覚えがあるのではないのですか? 罪人よ……」
 浅黄先生は、その漆黒の瞳を、闇の中できらめかせあたしを冷たく見据える。
「浅黄先生?」
 あたしの戸惑いに、どこかおかしそうな笑みをその歪んだ唇に浮かべて先生は
軽く両手をすくめた。
「それは仮の名、浅黄などという司書はここにはいない」
 校舎から独立したこの図書室には誰もやってこない――はずれのあるこんなところにやってくるのはあたしくらいのもの。
 あたしは銀縁の眼鏡をはずし、にこやかに笑いながらも、どこか空虚な瞳をする浅黄先生をみながら、ただたちすくむしかなかったのだった。
 きっと誰もこない――先生が怖い。
 あたしに心に得体のしれない恐怖が広がっていった。


「ヘロデ王の王妃、ヘロディアスはもとはヘロデ王の兄の妃だった」
「……知ってるわ」
 あたしは面白そうに笑いながら、あたしの髪を触り、それに口付ける先生を
椅子に座りながら、恐れおののき見る。
「それは禁忌」
「そしてそれを予言者ヨカナーンによって非難されるのでしょう?」
 あたしは思わず浅黄先生に言葉を返していた――月の光がこの闇を照らし出す。
 あたしはこの光を頼りにさきほどまで書を読んでいたのよね――でもそれもはるかな昔のような感じがする。
「月の光の中で7つのヴェールをはぎとっていく踊り……」
「踊るならお前の所望のものはなんでも与えよう。この国の半分でさえも……」
 あたしたちは問答を続ける。それは『戯曲サロメ』の中のお話。
「……覚えていないのですか?」
 先生はあたしの髪を離して淋しそうに笑う。
 自嘲と自虐――それが先生を彩っていく。
「何のこと?」
 あたしはその言葉を聞いて、何かが頭の中をリフレインしていくのを感じていた。
 月の中に冴え冴えとした美貌を映し出しながらも『あたし』を清らかで聖なる男は冷たく拒んだのだ。
 古井戸の中に幽閉されながらも、誰よりも清く気高い『あたし』の心を奪った男。
 そんなビジョンが浮かび上がる……あたしの脳裏に。
 今は恐怖を忘れ、あたしはその感覚に何処か酔っているようだった。
「……あたしのものにならないなら、殺してしまえばいいだって――」
「殺せば永遠に自分のものにできるから?」
 浅黄先生はその長き黒髪を月の光の中映し出しながら、深き黒き瞳であたしを見つめつづける。
 クスリと笑ってあたしをぎゅっと抱きしめた、
 あたしは思わずがたんと席から立ち上がる、いつもの先生ではやはりなかった。
 こんなことをするなんて……。
「思い出したようですね、断片だけでも――ヘロデ王の息女、サロメよ!
妖艶なる踊り子、予言者を殺害せし者よ!」
 あたしはどこか遠くで先生の言葉を聞いていた。
 感覚が遠い、先生の冷たい手さえもう感じない――思い出すあの遠き日のことを、
 そして前世と今世のあたしの『罪』を。


4 :瑞希 玲 :2006/07/02(日) 21:26:04 ID:P3x7nJsi

「裁きの天使よその名は……」
「ジャスティス――またの名を大天使ミカエル」
「右手に剣を左手に天秤を……」
 あたしは知らず知らずのうちに、口からついて出る言葉に感情を麻痺させながら
呪文を唱えるように呟く。
「思い出したようですね……」
 浅黄先生はクスリと笑う――するとその姿はゆがみ、スーツ姿から、
大きな黒き翼とそして白き衣装に姿を変化させる――それはさながら天使のように……。
「愚かな女よ、汝に裁きを下す!」
「前世もそういったわね……」
 あたしは衝動が襲うまま話す、この心が浮遊しているようだ。
 おかしくなりそうだ、あたしは誰、一体誰なの?
 自らの手で体を抱きすくめ、あたしは先生をただ見つめるだけだった。
「そうですねカレン、私はまた貴方に裁きを下すために降臨した」
 右手に抱えた剣をあたしにつきつけ――そして天秤を左手に持っている姿の先生。
「裁定?」
「覚醒したからには、前世の罪はおわかりでしょう?」
 あたしであり、あたしでないものの罪とやらを断罪する天使。
 いや今のあたしも罪を犯している。
 それは確かだ――あたしは銀色の冷たい刃を、じっと見つめ冷たく醒めた瞳の
先生。いや裁きの天使に尋ねる。
「あんたは――誰?」
「私の真名をあてることができたら、許しは下るかも知れません……」
「真名――浅黄 遥? それともミカエル、それともジャスティス。わからないわよ!
あんたは一体……誰なの?」
 漆黒の髪が月影に揺れる、そして黒き瞳があたしを見据える。
 断罪の天使は今はあの穏やかな微笑みでなく、冷たい断罪者としてあたしに接していた。
 それを心の何処かで悲しく思うあたしがいる。
 でもこの感情はほんとのあたしのもの? わからないわ……。
「どうして? 天使の色彩は金色の青であるはず? それに翼が漆黒……」
 あたしは疑問を口に出す、教会で見た天使は皆その姿だった。
 黒髪に黒き瞳の天使などいなかった。
 それに黒き翼の天使などいない、堕ちた者だけだもの。
 でもこの天使は穢れし色――闇色をしていた。
 クスクスと優美に、何処か残酷に天使はあたしに笑いかける。
「私は堕ちたのですよ――だから汚れた」
「どうして?」
「我が父ヤハウェ以外に心とらわれたから……」
「あんたが?」
 あたしの長い金の髪が月の光に照らされる、それを瞳を細めて眩しそうに
天使は見ていた。
「そうですよ、さあ真名を!」
「真名……」
 神々しいまでのの断罪者の眼差しにたえつつ、あたしは考える。
 わからない。ううん思い出せないわ――どうだったかしら?
 名前は何だったのかしら?


「You are a foolish woman ―― a smile is turned to anyone」
 よどみない英語を話し、天使はあたしに笑いかける。続けて呪文のように美しく
言葉を放つ。
「愚かな女だ」
 あたしは先生の言葉を訳してみる――それはあたしのこと?
 あたしが首を傾げるのを見て、天使は本当に面白そうに笑う。
 嘲りの笑み――何処かでそれを見た事があるような気がする。
「誰にでもお前は笑みを向けるのだな……」
 あたしが続けて訳した言葉に、天使は剣を突きつけた体勢のまま
ますますあたしの首に力強くその剣を突きつける。冷たい感触があたしを襲う。
「そうです、よくできました」
 クスクスとどこか歪んだ笑みを、天使はあたしに向けつづける。
 狂っている――正気じゃない、こんなに楽しげに人の刃を突きつけるなんて……。
 もう優しい先生の欠片も残っていないみたいだった。
「予言者……」
 あたしはもう一つの感情に身を任せつづける――切なく悲しいといった感情があたしをただ支配していった……。
「そうですよ」
「ヨカナーン!」
「よくできました、それが真名ですよ!!」
 あたしは思い出す、あたしの前に現れた裁きの天使を――彼はすでに黒髪に黒き瞳、
闇色の外見をしていた――その翼は漆黒だった。
そして予言者ヨカナーンは――。
「彼は太陽の髪に青空の色の瞳だった……」
 あたしの頭の中でなにかがはじけ――そして意識は闇に引きずり込まれていく。
 先生の微笑だけが最後に瞳の奥に映った。


【愚かな女だ、お前は誰にでも微笑みを向けるのだな】
【そうよ、あたしの笑みをみたいと、ヘロデ王さえも金銀や色とりどりの衣服!
それに宝石。世界中のあたしの欲しいものを競って男たちは差し出してくれる
あたしの笑み一つで!】
【愚かな女だ……】
【あたしが欲しくないの? あたしはあんたの心が欲しいのよ! ヨカナーン!】
【俺はお前の心など欲しくはない、我が心は我が神のもの】
【神の代弁者ヨカナーン! あんたはどうして普通の男ではないの?】
【……お前のいっていることはよくわからない】
【いいえ、普通の男ならば、あたしはあんたに惹かれなかった。あたしの外見だけを
求める男ならば――あたしはあんたを求めなかった!!】
 まるで劇のような台詞――そんな感覚があたしを襲う。
 でもあたしでないようだ。
 あたしはただ切実にある訴えを、冷たい声の男に続けていた。
「お前は?」
「あたしはあたし自身をみてくれる人を求めていたの。あたしの器ではなく
中身を見てくれる人を。御願いよ、微笑んでよ! あたしを愛して――ヨカナーン!」
 古井戸に月の光がさしこむ、そして暗き井戸の中ヨカナーンの金色の髪がきらきらと
光る。
 その冷たきアイスブルーの瞳が『あたし』をみつめつづける。
 あたしはでも思う――ちょうどその時あたしたちの心がふれあったと。
 孤独の心を持つ王女は美しい顔を歪ませて、古井戸を覗き込む。
 一瞬――本当に一瞬だけど、冷たい男は何処か労わるように『あたし』を見たんだもの……でも。


「王女サロメよ……私の心は!」
 兵士の一人が闇月夜の中、空井戸を覗き込むあたしに近寄ってる。
 ナラボーンだ。どうして?
 たしかに空井戸に幽閉されたヨカナーンに近づくために、見張りの兵士であるあいつを利用したけど……。
 必死の形相であたしににじり寄ってくる。
 あたしはそれに冷たい声でただ答える。
「何か用?」
「私の心はなぜ貴方には届かない!」
 冷たい心にそれは響かない――ろくに話もしたことがない、結局あたしの外見だけを
みて近寄ってくるほかの男とおんなじ……。
「あたしの心はあたしのもの。あたしが愛しい人はあたしが決める!」
 あたしは、近づくナラボーンに嘲笑で持って答える。
 それが冷たく闇の空に響き渡る。
「ああ、我が心は汝にあり。ああ美しき王女サロメ!」
 まるでうわ言のようにナラボーンは愛を語る――でもそれはあたしにとっては
空虚なものだった。
「あたしはあんたなんかいらない!」
「それならばこの生命を絶ちましょう! 貴方の心が得られないのであれば」
 あたしは冷たく醒めた眼差し、背筋が凍るような冷たい声でナラボーンに囁く。
 さながら悪魔の声のようだった……感覚が鈍い。
 どうもあたしがあたしでなくなってきている……。
 ナラボーンはその腰から長剣をひきぬく――胸につきたてた剣から深紅があふれおちていく。
「ヨカナーン……」
 あたしはその光景を見ても冷たく笑っている。でもそれはあたしのせいじゃない。
 あいつが勝手にやったことだもの。あたしが求めるのはヨカナーンのみだもの。
 それ以外――いらないもの。
「近寄るな、愚かな女よ!」
「ヨカナーン?」
「おれに近寄るな、おれにさわるな! 穢れし女」
「ヨカナーン!」
「おれはお前を永遠に断罪する。神の名において」
「ヨカナーン……」
 あたしはただヨカナーンの厳しい断罪者としての声を聞きつづける。
 これがあたしの罪なの? いいえ――違う。真実の罪は……。


「真実の罪は……」
 あたしの意識は戻っていく、そうあたしは志乃。
 今のあたしは志乃――瞳を開ける、するとそこには黒衣の天使が立っている。
 あたしは切れ切れに言葉を放つ。
「それは?」
 天使は何処か荘厳な顔で、あたしに返答を求める。
「愛する者をこの手で葬ったこと」
「……」
「愛する者をこの手で……」
 あたしの言葉を聞いて浅黄先生――いいえヨカナーンの魂をもった
天使は黙っていたが、暫く後慟哭するように顔を覆う。
「それは俺の罪でもある……」
「?」
「俺は……」
 あたしは月に光に照らされた天使の黒い瞳をみる――まるでそれは黒銀。
 しかし変わっていない気高い美しさは――そしてその口調は何処か親しみやすいものになっていた。
「あたしの罪は罪、連れていって煉獄へ! 罪をつぐないましょう……」
 あたしは天使に近寄る、そして断罪を求める――思い出したから。
 思い出したから……あたしの罪を……。
「連れて行けない……」
「どういうこと?」
「前世も結局お前を……」
 天使は声をたてずに泣いていた、その顔からぽたりぽたりと涙が落ちる。
 そしてあたしの心のあの悲しみの光景が再び――リフレインする。
 大天使ミカエル。裁きの天使が降臨した記憶が……あたしは瞳を静かに閉じた。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.