汚れていく強さ――


1 :麗汰 :2007/04/28(土) 16:11:03 ID:o3teWkL4

ども!笑 麗汰やで!! 今回は短編小説なるものを書こうと思ってます!笑
恋愛アリ、ギャグアリ、友情アリ、とにかくなんでもアリ!(ぇ
ぜひ見てってなぁ♪


2 :麗汰 :2007/04/28(土) 17:56:07 ID:o3teWkL4

愛するが故に――

あんな笑顔ほかの女に見せちゃだめ――

悠斗の馬鹿――




「なぁ、俺が悪かったって。アイスおごるからさ! 許せよー……」

茜が空を支配する夕方。

ずんずんと進む小さな影を追う、大きな影。

「見てみろよ奈々! この木、セミが三匹いるぜ! すげぇな……って人の話聞けよ」

夕暮れ時のセミの声はなぜか切なく感じる。

奈々は恋人である悠斗の言葉を無視して進んでいく。


悠斗が悪いんだよ――

全部全部――

ほかの女と仲良くするから――


「なぁ……いい加減機嫌直せって……」

悠斗が奈々の腕を掴んだが、奈々は触るなとばかりに振り払う。

そして、人気のない一本道をひたすら走って逃げた。もうすぐ訪れるであろう暗闇から逃げるように――。

悠斗が追ってくる気配はない。きっとこんな酷いことする私に愛想をつかしたのだろう。


ゴメン悠斗――

心の広くない彼女でゴメンね――

私……ずっと嫉妬してた――

悠斗はモテる――

黄金色に光るサラサラの髪

漆黒に染まる大きな瞳

ガッチリとした大人の体

着くずした制服

モテる要素を全て持っていた悠斗

悠斗は優しいから、虫のように付きまとう女たちを追い払ったりはできない

女たちの間で屈託のない笑みを見せる悠斗

私はそれを見るたびに吐き気がした

それは初めて覚えた嫉妬だった――


ずいぶんと走ったような気がした。

後ろを振り向くと悠斗の姿はなく、かわりに地面に落ちている雫が目に止まった。

いつのまにか泣いていた。

無意識に流れ出た涙は止まることを知らず、頬を伝っては地面へと吸い込まれる。

あぁ

悠斗はいつも私の涙をぬぐってくれた。

あの大きなやさしい手で――

でも今はその手はない。そう思うと、とてつもなく寂しかった。


暖かい夕日は夜から逃げるように沈んでしまい、代わりに切なさと痛みを伴う星が輝いていた。


私は行くあてもなく、川沿いの道を彷徨った。

この道はいつもは悠斗と一緒に通っていた。

朝学校に行く時も――

夕方学校から帰る時も――

毎日二人で通った道だった。


6月にはここでホタルを見つけた。

『うわぁ! すげぇ! ホタルって……めっちゃ綺麗だな……』

無邪気な子どものように駆け回る悠斗を見て、私はゲラゲラと笑い転げたっけ。

『悠斗子どもみたーい』

『……んなことねぇよ。俺は大人っだってーの……』

顔をトマトのように真っ赤にした悠斗は可愛かった。


12月の寒い日には手を繋いでこの道を通った。

『奈々の手……冷たっ! お前冷え性か?』

『手が冷たい人は心が暖かいの。それにしても悠斗……手暖かいね。心冷たいんじゃん』

そう言って私がニヤリと笑ってみせると、悠斗はそっぽを向いたっけ。

でもね本当は……悠斗は手も心も暖かいよ。


私はそんな過去を思い出しながら、川沿いをゆっくりと歩いた。

そして何度も後ろを振り向く――。だって後ろを振り向けば、悠斗がいるような気がしたから……。

でも悠斗の姿はない。

後ろにあるのは限りなく深い真っ暗闇だった。


いつもとなりにあった笑顔

悠斗は笑うと目が半円を描くように細くなるよね――

いつも私を抱きしめてくれた腕

大きい腕だったけど脆い腕でもあった――

そして悠斗がくれたたくさんの愛

悠斗は私だけを愛してくれたね――


今はもうなにもない――


私はその場に崩れ落ちた。

そしてなりふり構わず大声で泣いた。

「うっ……ぁ……悠…斗っ」

地面に拳をたたきつけ、戻らぬ人のために泣いた。

「うぅっ……悠斗……」

初めて気づいた

私は悠斗の中の世界で生きていることに

私は悠斗なしでは生きられない


「悠斗ー!!!!」

大声で泣き叫んだ。

川のせせらぎなんて聞きたくない。

月の光なんて届かない。

今聞きたいのは悠斗の声。

今届いてほしいのは私の気持ち。

「悠斗……」

「なに?」

ぎゅっと抱きしめられた。

顔をそっと上げると悠斗がいた。

顔を真っ赤にして、今にも泣きそうな悠斗。

「ぁっ…悠斗…うっ……あぅっ…」

「泣くなよ……。あちこち捜したんだけど……なかなか見つかんなくて……お前こんなとこいたんだな」

「悠斗…うっ…ぐすっ…ごめんね……ごめんね…っあぅっ…」

悠斗の手が私の髪をなでる。

あぁ

この温かい手が欲しかった


「俺こそゴメンな。大好きだぜ……」

そう言って悠斗は、私をぎゅっと抱きしめる。

月はやわらかに闇を切り裂いた。


チュッ

仲直りのキス


この温かさ……

この愛を……

一生信じて生きたいと思った――


3 :麗汰 :2007/04/28(土) 18:00:48 ID:o3teWkL4

あとがき

『愛するが故に――』どうでしたか? 嫉妬するほど愛は深いんですよ……(ぇ
まぁ、この小説を読んで愛の深さを知ってもらったらと思って書きました!
次回は恋愛じゃないジャンルの小説を書きたいと思ってます!


4 :麗汰 :2007/04/29(日) 12:36:03 ID:ncPik7s3

強くありたい――

耳をつんざくクラクションの音――

あぁ――

俺より先に逝くなよ――

真央――


「オース亮汰! 今日はいい天気だねぇ。雪だるまでも作っちゃう?」

「……そうだな」

なにも変わらない平凡な朝の学校。

女子達は朝から、ぺちゃくちゃとおしゃべりを楽しみ

男子達は、そんな女子達の会話に割り込んでいく。

一日は平凡に流れて行く。

みんな平凡に過ごしていく。

なんでそんなに笑えるんだ……

なんでそんなに平凡なんだよ……

そっか。

あいつがいなくて平凡じゃなくなるのは俺だけか……。

俺は唇をぎゅっと噛みしめて、机に顔を伏せた。


気づけばあの日の出来事を思い出していた。

思い出したくなかったけれど、いやでも思い出してしまう。

俺はあの日――愛する人と、生きる意味を失った――



一ヶ月前。冬真っ只中。

真冬の太陽は宝石のように輝いていて、しかし、冷たき雪を溶かす力はない。

無機質なコンクリートの上に覆いかぶさるのは白い雪――太陽よりも強い雪――。

その日は雪が積もっていた。

俺はその日、いつものように恋人の真央と手をつないで登校していた。

「さっむいねぇー」

と、真央がぶるぶると震えるしぐさをする。

「でも手だけは暖かいよ。だって亮ちゃんが握ってくれてるからね」

と、今度ははにかんだ笑顔を見せる。

俺はそんな真央の笑顔が大好きで――。

俺の中心は真央だと言っても過言ではないくらい――。

大切で――。

俺は真央のために存在し、生きている――。

だから俺は

真央がいなくなった世界なんて

想像できなかった――

いや

想像したくなかったのかも知れない――


学校まで400m手前に差しかかったとき事件は起きた。

その日は雪。

地面は凍結し滑りやすい。

「寒い寒い。早く学校中入りたい! 先行くね」

そう言って真央は、つないでいた手をふりほどいて、駆け出した。

今思えば

この手を離さなければ

真央は生きていたかも知れない――


真央と手を離した瞬間に、響き渡った耳障りなクラクションの音。

そして歩道のガードレールを突き破る、すさまじい音。

真央はスリップした車の下敷きになっていた。

即死だった――

俺は奇声を発しながら、血まみれで倒れている真央に駆け寄った。

もう、なにがなんだかわからなかった。

そして次の瞬間は暗闇にいた――

多分気を失ったのだろう。

その日俺は愛する人と、生きる意味を失ったんだ――

今もなお、俺は生きる屍――



気づけば一時間目の授業が始まっていた。

「おい、西口! どうした? 顔色が悪いぞ。保健室行くか?」

「……はい」

とてもじゃないが今は授業を受ける気分じゃない。

俺は先生の言うとおり保健室に行くことにした。

「先生。私がついていきます」

「そうか。神崎。頼んだぞ」

……神崎? あぁ。学級委員の子か。

クラスメイトのことも忘れちゃうほど、今の俺は正気じゃなかった。

俺は神崎の肩を借りながら保健室へと向かった。

「大丈夫……?私ここにいるから、なんかあったら言ってね」

俺が寝てるベットのそばに、椅子を置き座る神埼。

「いや……大丈夫……ッス。ありがと。授業に戻っていいよ」

今は誰とも話す気分じゃない。一刻も早く一人になりたかった。

神崎は、スカートのすそをぎゅっと握り、下を向いた。

「西口君……。今の西口君生きてない。死んでるよ。心がね……。そんな西口君を彼女が見たらどう思うかな? きっと……悲しむよ」

耳をふさぎたかった。

わかっている。こんな俺を見たら、真央は悲しむだろう。

でも仕方なかった。

俺は愛する人を失った。俺にとっての中心を失った。生きる意味を失った――

だから俺は死んだも同然だ。

「神崎さんには関係ないッス。ほっといてください……」

俺はふとんを頭からかぶって、神崎を見ないようにした。

しばらく沈黙が続いた。

聞こえるのは、俺と神埼の小さな息遣い。

沈黙をやぶったのは神崎だった。

「関係なくないよ。私は西口君が好きだから……」

「……え?」

俺はふとんをはねのけ、神崎を見つめた。神崎は今にも泣きそうだった。

「付き合いたいとかじゃないの……。だって西口君が愛してるのは、真央ちゃんなんだから……」

そして一瞬間を置く。

「私は大切な人を失ったことないからわかんないけど……きっと西口君つらいんだろうね……。もがいてももがいても闇から抜け出せないんだね……」

神崎は今にも泣き出しそうな顔をしている。

そんな神崎の顔が、保健室の薄暗い蛍光灯に映えて綺麗だと思った。

「でもね……。残された西口君もつらいだろうけど、西口君を置いて死んじゃった真央ちゃんもきっとつらいんだよ。だからさ……真央ちゃんのためにも元気だして」

涙が出そうだった。

けれども涙は出なかった。

真央が死んでから、一度も涙は出ていない。

俺の心が死んでいるから。

今の俺になにを言っても無駄だった。

「もういいッス。帰ってください。目障りッス」

冷たい言葉しか浴びせられない自分が、たまらなく悔しい。

「わかった。でも一つだけ忘れないで! あなたを想っている人がここにいるってことを……。あなたのこと大好きな人がいるってことを……」

そう言って、神崎は去っていった。

神崎の言葉は、俺の冷たい心の奥底に沈んでいった。

今は神崎のことも、真央のことも考えたくない。

俺は夢も見ずに深い眠りについた。


次の日から神埼は、必要以上に俺に話しかけてくるようになった。

「おはよう。今日は一時間目から体育だね。はぁ……寒いし嫌だね」

そう言って、神崎は凛とした笑顔を見せた。

「西口君。これ英語の宿題。写していいよ」

授業をまとも受けられないくらい病んでいた俺のために、神崎はいろいろ尽くしてくれた。

「あ! 見て見て! 桜のつぼみだぁ。すっかり春だね。ま、私は花より団子だけど!」

笑うことのなくなった俺のために、神崎は笑わせようとしてくれた。


でも俺は変わらなかった。

今でも俺の中心は真央であって

神崎じゃないから。

神崎の苦労は

全部全部無意味なんだ――。

神崎の努力じゃ、俺の心の雪を溶かすことはできない。

ごめんな――神崎――。

俺はもう生きることに疲れた。偽りの自分で生活することが苦しくてたまらない――。



「死にてぇ……」

神崎に無理やり屋上に連れて行かれ、二人で昼食を食べていた時に出た、本音。

「……え?」

神崎の箸から、卵焼きがぼとりと落ちる。

「……疲れた。俺はもう生きる意味なんてない……死にたい。殺してくれよ……」

春の暖かい風が、俺の心をさらに冷たく凍えさせる。

「俺も真央のところに行くよ……」

真央のことが好きなうちに、真央が待つところへ行きたかった。

神崎はさっきから下を向いたまま、弁当箱と睨めっこしている。

「……バッカじゃないの……」

俺は空を見上げながら馬鹿だよと、つぶやいた。空は痛いくらいに澄んでいて、俺の心

と正反対だ。

「俺は馬鹿。女一人守れない馬鹿野朗だ。だから俺は……」

突然、誰かが抱きついてきた。

神崎だった。神崎は俺の胸の中で哀れな小鳥のように泣きじゃくっていた。

俺は神崎を抱きしめるだけの、勇気はなかった。

「西口君、いい加減目を覚ましてよ! 死ぬなんて言わないで! 真央ちゃんが悲しむよ!」

神崎の充血した目が俺を見つめる。俺は忘れていたなにかを思い出したような気がした。

「真央ちゃんのためにも……生きてよ。あんたは真央ちゃんのために生きるの! 真央ちゃんのために生きるのが、あんたの使命なの……」

神崎の目の奥に、確かに真央がいた。真央は俺に生きて欲しいと願っている……。

気づけば俺は、神崎をぎゅっと抱きしめた。

「真…ぁっ…真央……あうっ…ぅっ…」

なにかの糸がぷつんと切れた。

その瞬間涙がとめどなく流れて、制服を塗らした。

真央が死んで以来始めて流す涙だった。

「真…っ…央…ゴメン…ゴメン。俺っ…うぁっ…生きるよ…グス…。お前と…自分のために…っ…生きるよ…ぁうっ……」

「そうだよ……。西口君……」

神崎が俺にキスをした。

真央としたキスを思い出させるような、熱いキスだった。

その日、さくらは満開をむかえていた。


俺はまた生きる意味を得た。

『自分のため、真央のため……そして神崎のために生きよう』って……

神崎……。

お前のおかげだよ。俺のせいで散々傷ついただろ? ゴメンな。

そしてありがとう。

俺は天国の真央、そして今となりにいる神埼を守りながら生きていくよ。

二人を守りながら――

もっと――

強く――

ありたい――


5 :麗汰 :2007/04/29(日) 12:40:41 ID:ncPik7s3

あとがき

もしあなたの愛する人が亡くなったら――
あなたはどうしますか? 俺だったらこの主人公のようになるでしょうね。
でも幸い亮汰には、助けてくれる人がいた。それが神埼さん。
亮汰のことが好きで……亮汰に前のような元気を取り戻してほしかった神崎さん。
神崎の亮汰に対する「愛」は亮汰の心を変えました。愛によってつけられた傷は、愛にしか治せないのですね!
では、マタアイマショウ♪(ぇ


6 :麗汰 :2007/04/30(月) 15:10:29 ID:ncPik7sc

寂しき夜

「んっ……あぅっ……」

「痛い?」

「だいじょっ…っ…ぶっ…」

窓から差し込む半月が

私の心をさらに幼くする

音のない世界で聞こえるのは

私と唯の荒い吐息

「ぁうっ…あ…ひゃっ……」

互いの存在を確かめあうように

抱きしめる

唯の焦げるほど熱い体は

冷め切った私にはちょうどいい――

「あ…ぅあっ……っ駄目っ……あぁぁあぁっ!」

あぁ――

夜がふけていく――


「っ……腰いたい…」

体を重ねた後、シャワーを浴びて出てきた私に、さっそく唯がうめく。

「はは、馬鹿だなぁ。唯は」

からかう私に、唯は私に殴りかかろうとしたが、起き上がれずベッドに撃沈。

「今日一人で帰れるか? それとも俺が送って行こうか? まだ外暗いけん」

私は一人で帰れるよ、と微笑んで唯の額にキスをした。

唯の頬がかすかに赤くなった。

可愛いんだから。

そして私は玄関のドアへと向かった。

「また来週なぁー」

部屋の奥から唯の声が聞こえる。

私は返事もせずに、唯の家を後にした。



私は唯のことが好きだ。けれども恋人ではない。

唯には社会人の彼女がいる。

だから私たちは恋人ではない。だからと言ってセフレでもない。

私たちは『土曜日だけの恋人』。

土曜日の夜だけ二人で過ごす。そんな恋人

そんな関係に不満はなかった

唯と一緒にいれるなら

唯の心が土曜日だけ私のものになるなら

土曜日だけ私と唯が同じ場所にいれるなら

それだけで十分だ――

これ以上高望みなんてしないよ――



私たちが『土曜日だけの恋人』になったのは一ヶ月前のことだった


私と唯は同じ大学で

その日、私は彼氏と別れて落ち込んでいた。慰めようのないくらい落ち込んでいた。

中庭の池のそばでぽつんと一人座り込んで、涙流している私に声をかけてくれたのが、同じ学科の唯だった。

「杏ちゃん♪ なにしてんねん? こないなとこおったら風邪引くで」

唯の言葉を無視して、池の水をぼーっと見つめる私。

そんな私を見てなにを思ったか、唯は私をかつぎあげ大学を抜けだした。

私は抵抗する気力もなく、気が付けば唯の家へと連れ込まれていた。

唯はココアを入れてくれたり、おもしろい話をたくさんしてくれた。

唯の優しさは、私の痛みにうめく心を、軽くさせてくれた。

凍てつく心を温かくしてくれたのは、唯の優しさだった。

「また来週おいで」

これが『土曜だけの恋人』の始まり。

以来私は毎週土曜の夜、唯の家に通っている。

通い続けているうちに、いつしか唯に恋をしてしまっていた。


唯のことを考えていると、あっという間に玄関の前に来ていた。

「疲れた……」

私は着替えもせずベッドに飛びこみ、眠りについた。

唯――

私達は、月にしか認めてもらっていない関係なんだね――

でも寂しくないよ――

土曜日だけは

唯の笑顔は、唯の温かい腕は私のものだから――


次の週の土曜日の夜も、唯の家に来ていた。

「こんばんわぁ! ……あれ?」

部屋に入ってみたが、電気がついておらず、唯の姿はない。

「唯ー?」

返事はない。きょろきょろと辺りを見渡していると、突然後ろから抱きすくめられた。

私はびっくりして、小さな悲鳴を上げた。

「お前遅いねん。……今日は来ないんかと思ってたわ……」

「ゴメン、ゴメン。レポート書いてたからさ。だからって脅かすことないでしょ」

そう言って後ろを向くと、唯はムスっといじけた顔をしていた。

ドキッ……

唯……そんな顔しないでよ……反則だよ……

あぁ――

唯のことが愛しくてたまらない――

「俺よりレポートのほうが大切なんや!」

「当たり前じゃん」

私はわざとそっけなく言って、唯の腕を振り払うと部屋の電気をつけた。

今の私……可愛くなかったな。ゴメンね、唯。ホントは唯のほうが百倍大事だよ。

「ちぇっ。ええもん、ええもーん! 俺には大好きな熊吾朗がおんねんから」

唯はベッドのところに飾られてあった熊のぬいぐるみを、ぎゅっと抱きしめた。

そして私に、子どもっぽい純粋屈託のない笑みを見せる。

あぁ――

私はその笑顔に何度負けただろう――

唯……あんたホント反則だよ――

「はいはい、それよりDVD見よっか」

その日も夜は淡々と過ぎていった。

私の気持ちとは裏腹に、夜はストイックなまでに終わりを告げていく――

「じゃぁ、また来週ね」

「おう! 気をつけてな」

唯の家を出ると、一気に体温が下がった気がした。

三日月はそんな私を暖めてはくれなかった。

最近唯に会うたびに、唯と体を重ねるたびに、感じるのは『虚しさ』だった。

唯――

あなたともっとつながりたい

嗚呼

もっとそばに――もっと近くに――真実の恋人に――


結局虚しさを感じながらも、次の週も、そのまた次の週も唯の元へ足を運んでしまった。

そのたびに唯は、子どものような幼くて純粋な笑顔で迎えてくれた。

私がどんなに冷たくしようが、突き放そうが、最後は必ず後ろから抱きしめてくれた。

「杏は笑顔のほうがええって!」

それが余計私の心を虚しくさせた。

唯の優しさに触れる度、私はもっと唯のことを好きになって……

『土曜日だけの恋人』という関係がいやになってくる。

本当の恋人になりたいんだ――

唯のことが好きすぎて、好きすぎて、ほとほと自分が情けない。

でもこの気持ちには逆らえない。

好きです――唯――



しかし、私の気持ちが届くことはなかった――


「もう俺ん家来ないでくれ……」

今まで見たことのない唯の真剣な顔。

部屋の温度が一気に下がった気がした。

「え……? なんで? 唯どうしたの? なんか今日おかしいよ?」

私はその日の土曜日も、唯の家に来ていた。

いつもと変わらぬ暖かい夜――のはずだった……。

「どうもあらへん。俺もうお前に飽きたねん。やっぱ俺には彼女しかおらへんな、って思っただけや」

凍てつくような目で、私を睨む唯。

……なんで? 唯……。なんでいきなりそんなこと……。

頭がついていかなかった。涙を流すことも、息をすることも忘れていた。

ただ、唯の目を見ることしかできなかった。

「わかったらはよ行け。二度と俺ん家来るなよ」

足が動かなかった。金縛りにあったみたいだ。

「はよ行け!!」

唯の怒鳴り声にようやく我に返った私は、脱兎の如く家を飛び出した。

後ろを振り返りもせず走った。

向かい風を切り裂いては、闇の中を走りまくった。涙は風と共に闇へと消えていく。


唯、ごめんね――

もうあなたのところへは行かないよ――あなたは恋人を選らんだから――

もう二度と、あなたの笑顔を見ることはないでしょう――

もう二度と、あなたの温かい腕に触れることはないでしょう――

寂しい――

ずっとあなたに言いたかった言葉があるの――

ずっと心で暖めていた言葉――

『大好きです――』


7 :麗汰 :2007/04/30(月) 15:16:31 ID:ncPik7sc

あとがき

唯って人酷い! って思ってるあなた!! 唯はそんな酷い人ちゃいますで!
唯はめっさ優しい人なんや…次回、これを唯バージョンで書きます!
唯のホンマの気持ち知ったら……切なくて胸が痛くなるで!


8 :麗汰 :2007/04/30(月) 16:27:12 ID:ncPik7sc

冷たき夜

「んっ……あぅっ……」

「痛い?」

「だいじょっ…っ…ぶっ…」

半月に染まる杏の顔が

とても美しかった

細い体で俺を受け止めようとする杏が

とても綺麗に感じた

「ぁうっ…あ…ひゃっ……」

互いの存在を確かめあうように

抱きしめる

杏の冷め切った体は

焦げるほど熱い俺にはちょうどいい――

「あ…ぅあっ……っ駄目っ……あぁぁあぁっ!」

冷たき夜が――

終わっていく――


「っ……腰いたい…」

俺は、風呂から上がった杏にさっそく助けを求めた。

俺の腰は情けないほど弱いんだ。……ったくどうにかならへんのかなぁ……。

「はは、馬鹿だなぁ。唯は」

蒸気に顔を赤らめた杏が、俺をからかう。俺は殴りかかろうとしてベッドに撃沈。

情けないで……。俺……。

「今日一人で帰れるか? それとも俺が送って行こうか? まだ外暗いけん」

「一人で帰れるよ」

そう言って杏は微笑んだ。くそっ! かっこええとこ見せたかったのに……。断るなよ!杏の馬鹿!

杏は俺の額にキスをし、そそくさと玄関に向かった。

「また来週なぁー」

杏は返事もせずに、バタンと扉を閉めた。

俺は杏にキスされた額をさすって、杏の笑顔を思い浮かべた。

そしてガラにもなく照れて、布団を頭までかぶった。

あかん……俺……重症やな。


俺には彼女がおる

でも俺は彼女よりも愛している奴がおる

杏や

池を見ながら泣いている杏を見つけたとき、一目ぼれしてしまった

涙に濡れる杏はどうしようもなく美しくて

ちょっとやそっとじゃ動かない俺の心臓を

いとも簡単に動かしてしまった

でも俺には彼女がおった

本当は彼女とは別れたかった

俺は元々今の彼女は好きじゃない。彼女も俺のこと好きじゃないだろう

互いの親同士の仕事関係で、無理やり付き合わされていただけだ

今の彼女と別れることは許されない

だから俺は杏とは付き合わない

いや

付き合いたくても付き合えないんや――

だから『土曜日だけの恋人』という関係を作った

杏の恋話は聞いたことないけど、きっと俺よりもっとええ男が好きなんやろう

でも土曜日だけは

俺の恋人でいてくれ――

土曜日だけでええから

俺だけのために存在してくれ――

土曜日だけは

俺の横におってくれ――

杏――


暗い空を照らすにはあまりにも小さな三日月

俺はそんな三日月を、窓というスクリーン越しにボーっと見つめていた。

今日は土曜日。杏が来る日……なのに……来ない!

俺は、あのアホなにしてんねんと、小さく毒づくと、部屋の中を行ったり来たりした。

遅いな……杏。

早く会いたいねん……。こんなただっぴろい部屋で、俺を一人にさせんといて……。

俺は電気を消して、テーブルの下にもぐりこんだ。題して「遅刻した杏を、驚かせてこらしめよう」作戦だ。

「こんばんわぁ! ……あれ?」

しばらくすると、杏がやってきた。

今ごろ来たんかい……。俺は心の中で小さくため息をついた。

「唯ー?」

杏が不安そうに部屋中を見渡す。

あぁ

不安そうに眉をひそめる杏が可愛い。

俺……ホンマおかしくなったんかなぁ……。

気づけば杏を後ろから抱きしめていた。

もっといじめてやろうって思ってたけど、あんまりにも杏がかわええから……体の制御がきかんかったんや。

「お前遅いねん。……今日は来ないんかと思ってたわ……」

「ゴメン、ゴメン。レポート書いてたからさ。だからって脅かすことないでしょ」

そう言って、杏は俺の顔をのぞきこむ。

ドキッ……

そんな近くで見らんといて。恥ずかしいやん。

俺は恥ずかしさを隠すように口をへの字に曲げて、いじけてみせた。

「俺よりレポートのほうが大切なんや!」

「当たり前じゃん」

杏が俺の腕を振り払い、部屋の電気をつけた。

杏……。俺のこと嫌いなんかな……。

俺はそんな不安を隠すように、熊のぬいぐるみを抱きしめた。

「ちぇっ。ええもん、ええもーん! 俺には大好きな熊吾朗がおんねんから」

そしてはにかむように笑ったら、杏は頬を赤らめて小さく笑ってくれた。

あぁ――

杏、俺の前ではずっと笑っていてくれよな。

俺はその笑顔がホンマ好きやからさ――

「はいはい、それよりDVD見よっか」

夜は俺たちを欺くかのように、進んでいった。

もっとそばにいたい、という気持ちを邪魔するかのように、夜はふけていった――

「じゃぁ、また来週ね」

「おう! 気をつけてな」

杏がいなくなった部屋は、凍えるように冷たくて、広く感じた。

俺の中に最近渦巻いているのは虚しさ。

俺は親の仕事の関係で、今の彼女と付き合わなければならない。

俺はどうあがいても、杏と付き合うことはできない。

それに杏には普通に幸せになってほしかった。

優しい男と結婚して、子ども産んで、幸せに暮らしてほしい。

なのに俺は、杏の幸せなはずの将来を邪魔してる気がする。

杏は俺とこんなこと続けてたら、きっと幸せになんてなれない。

俺が杏の将来を――幸せな未来を邪魔してる――

杏――

俺は杏の幸せ願ってるで

だからさよならや――



俺は杏との関係を絶つことにした――杏のために

「もう俺ん家来ないでくれ……」

とびきり冷たい目線を杏に送ってやった。

杏、ごめん。お前のためなんや。

「え……? なんで? 唯どうしたの? なんか今日おかしいよ?」

あぁ、俺はおかしいよ。杏のこと好きなのに、俺杏のこと傷つけてる。

でも、これでええんや。

杏のためやからしゃぁない……。杏との関係を絶つには、冷たいこと言うしかないんや。

「どうもあらへん。俺もうお前に飽きたねん。やっぱ俺には彼女しかおらへんな、って思っただけや」

杏は今にも泣きそうな顔をしている。

あかん。抱きしめたい。抱きしめて、ゴメンと謝りたい。

でも駄目や。こらえなあかん。

俺は服のすそをぎゅっと握った。

「わかったらはよ行け。二度と俺ん家来るなよ」

これで行ってくれることを願った。もうこんな可愛そうな杏……見たくなかった。

けれども杏は動かない。

「はよ行け!!」

俺は涙をこらえて怒鳴った。これしか方法はなかった。

効果はテキメンで、杏は脱兎の如く俺の部屋から去っていった。


杏がいなくなった部屋で

俺は声を上げて泣いた。

悲しみを隠そうともせず泣いた。

杏――

幸せになってな――

あと、ゴメンな――

杏傷つけてしまった――

ホンマゴメン――

でも杏には普通に幸せになってほしかったんや――

わかってくれ――

もう二度と、杏の笑顔見ることはないやろう――

もう二度と、杏の体温感じることできんやろう――

寂しい――

ずっとお前に言いたかった言葉があるねん――

ずっと心で温めていた言葉――

『大好きやで――』


9 :麗汰 :2007/04/30(月) 16:34:09 ID:ncPik7sc

あとがき

『寂しき夜』の唯バージョンにあたる『冷たき夜』どうでしたか?
本当は唯も杏のことが好きだったんですよ……。でも互いの気持ちが通じることはなかったんですね……。唯の杏に対する優しさが、杏の唯に対する愛が、悲劇の結末を生んだわけですね…(ぇ みなさんは、駄目だとわかっていても、一度告白してみましょう!(ぇ
こんな二人のようになる前に……


10 :麗汰 :2007/05/01(火) 23:08:11 ID:n3oJteuH

蛍舞う場所で

『目……もう開けていいよ』

幼馴染の隼人に手を引かれやってきた場所。

『んっ……うわ……キレイ……』

目を開けたとたん、ぼやけた視界に入ってきたのは――蛍。

川の暗い水を、照らすかの如く光を放つ蛍。

素朴でいて、どこか寂しい光を放つ蛍についつい見とれてしまった。

『へへっ! 驚いたやろ? ここ俺が見つけた場所だぜ。今日からここを俺と凛の秘密の場所にしような!』

そう言って、私にピースをした。

サラサラの髪をなびかせ、まだ小学生なのに顔立ちが整っている隼人の笑顔は

蛍がかすんで見えるほど美しかった。

『うんっ……』

独り占めしたくなるような場所を私に教えてくれて――。

そこを二人だけの場所にしようって言ってくれて――。

きりりと胸が痛んだ。

きっと嬉しさのせいだ。

『この蛍は全部俺と凛のものだな!』

その後、私は隼人と手をつないだままずっと蛍を眺めていた。

幸せだった。けれどもその直後、私は冷たい現実の刃を突きつけられたのだった。

そして私達は、悲しい約束を交わした――。


ねぇ――隼人――

私は今でもこの場所に来て、蛍を眺めてはあなたを思い出してるよ

そしていつの日か、あなたが私を迎えに来てくれる日を、指折り数えて待ってるよ

あなたの約束を――今でも信じている――




「あちい……あちい! あちい!」

学校の昼休み。いつもの通り親友の遥と過ごしていた。

「だぁ……うるっさい!」

セミはまだいないものの、初夏の陽気は私達の体力を奪っていく。

今年は、隼人が私の前から姿を消してちょうど5年目の夏。

五年たった今でも、隼人の約束は私の心を自由にさせてはくれない。

「うるさいとか酷さぁ! ムフフ……。感謝しなさい凛ちゃん♪ ジャジャーン」

いつもハイテンションな遥が、そう言ってバッグから取り出したものは……

冷えピタ。

一瞬でも期待した私が情けない。

「んなもの誰がするかってーの! 遥してなさい♪」

私はそう言って、遥の顔中に冷えピタを貼ってやった。

その後、遥が烈火の如く怒り狂ったのは言うまでもない。

私は五時間目の授業中、冷えピタの箱を見つめながら過去に思いをはせていた。


あれは……隼人にあの場所を教えてもらう少し前のことだった。

その日、私は風邪で寝込んでいた。

『体弱いなあ。お前』

隼人は学校帰りに、私の見舞いに来てくれていた。

『……うる…さい。風邪移るから早く帰ってよ』

いつも強がりで、可愛くない私。

その日も、せっかく隼人がお見舞いに来てくれたのに、冷たくあたってしまった。

それもこれも全部……隼人が好きだから。冷たくなってしまうんだ。

『てかお前のもうふ気持ちいいなぁ。俺も寝ちゃおっと』

『え……? ちょ……待って!』

気付けば狭いシングルベッドに、二人で寄り添うように寝ている形になっていた。

私より少し小さくて、私より少し温かい隼人の体が、私の体とぶつかる。

あぁ――ずっとこうしていたいや――

平常心を保っていられなかった。もっと熱が上がるかと思った。

『ちょ……隼人狭い……出てっ…』

私の言葉は、隼人の規則正しい寝息に邪魔された。

隼人は私の横ですっかり眠っていた。

『……ったくもう……』

そう毒づきながらも、素直に嬉しかった。

隼人の近くにいればいるほど、愛しさを感じた。

隼人の近くにいればいるほど、離したくないって思えたんだ。

私は今でも、隼人のことが愛しい――そして恋しい――

会いたいよ――隼人――


気付けばもう学校の授業は全て終わっていて、教室にいるのは自分ひとりだけだった。

茜色の夕日が教室を少しだけ明るくしていた。


今日は遥の冷えピタのせいで、隼人のことたくさん思い出してしまった。

私は多かれ少なかれ、毎日のように隼人のことを考えている。

気付けば、五年前の出来事を思い出していた。

あの日、隼人は私のものから去っていった――

寂しそうな笑顔と、ある約束を残して――

それは――初めて二人で、あの場所に行った日のことだった――


『なぁ……俺転校するんちゃ……』

『……え?』

二人で手をつないで、蛍を眺めていたときだった。

さっき隼人に、ここは二人だけの場所って言われて嬉しかったことも

手をつないで、綺麗な蛍を眺めている楽しさも

一瞬で吹き飛んだ。

耳をふさいでしまいたかった。目を閉じてしまいたかった。

『嘘だ……。隼人冗談キツイって! アハハ。せっかくの雰囲気台無しじゃない」

『嘘じゃねぇってば。俺福岡に行く。親父の仕事の関係で』

悲しみを押し隠すかのように下を向く隼人。

私は無意識のうちに隼人の手をぎゅっと握りしめていた。

この手を離さなければ、隼人はどこにも行かないって気がしたから――

『そっか……。しょうがないよ! お父さんの仕事の関係なら! 福岡行っても隼人ならすぐ友達できるって!』

言葉とは裏腹に声が震えていた。

気付けば視界がゆらいでいた。

ちょっと……こんな視界じゃ、綺麗な蛍が見えないじゃない。

そう思って目をこすったら、服に雫がついた。

いつの間にか涙が出ていた――

『凛……。俺がおらんくても、一人でここに来てな。俺の心はここに置いていくけん』

『だってここは、俺とお前の……二人だけの場所やからな』

隼人は寂しそうに笑った。

ドクッ――。

もう隼人の手を握れないと思うと――

隼人の笑顔見られなくなると思うと――

心にぽっかり穴が開いた気がした。

私にとって隼人は空気みたいな存在で、いなくなると私は息できないんだよ。

行かないで――

『……うん』

行かないで、とは言えなかった。本当に好きだから――言えなかったんだ。

グスッ……うっ……グスッ…

隼人も泣いていた。

『いつかお前のこと迎えに行く。絶対迎えに行くから……。だからここで待ってて。蛍と一緒に待っててな……。約束や」

指きりげんまんをして、互いの体を抱きしめあった。

これが、隼人と交わした約束だった――


隼人が転校してから、隼人との連絡は途絶えてしまった。

そして気付けば、五年の月日が流れていた。

心配だったけど、心配じゃなかった。矛盾していたけど、私は隼人を信じていた。

私はこの約束を信じるよ――二度と会えないとしても――信じるから――


夕日はとっくに沈んでいて

薄暗い空の下、私はおぼつかぬ足取りで家へと向かっていた――はずが……

あの日のことを思い出したからか、気付けばあの場所へと吸い込まれるように来てしまった。

川原の土手に腰かけて、蛍はいないかときょろきょろ辺りを見渡した。

まだ時期が早かったのか、蛍の姿はない。

がっくりと肩を落として、川の流れを見つめていた。

ここに来て思うのはいつも隼人のこと――

ここに来ると、隼人と過ごした思い出が走馬灯のように駆け巡るんだ――


自分で前髪を切って、失敗して落ち込んでいた私に、隼人は慰めてくれた

――変な前髪! ま、いいんじゃねえの? お前らしくてさ――

不器用な慰めかたが隼人らしくて……胸がキュンとした


男子にからかわれてた時、隼人は誰よりも早く助けに来てくれた

――テメェらふざけんなよ! 泣いてわび入れろ!――

息がつまるくらい嬉しかった。その時、隼人のあふれるほどの優しさに触れれた気がしたんだ


一緒にお祭に行った時、隼人は私のために金魚をとってくれた

――ほらやるよ! 欲しかったんだろ? その代わりこの金魚の名前は「隼人」な!――

そう言って照れたように笑う隼人を見て、心臓が止まるかと思った。隼人のことが愛しくてたまらなくなったんだ。二度と離したくないって思った


「はや…っ……と。グス…うぇっ……ん隼人…っ…」

行き場のない想いは、やがてあふれ出して涙になっていた。

日はすっかり暮れ、辺りは漆黒の闇に染まっていた。

隼人……

隼人……

苦しいよ――

会いたいよ――

好き――だから会いたい――

今すぐ抱きしめたい――

「隼人……っ」

「蛍いねぇじゃん」

いきなり肩をドンと押されて、横に倒れてしまった。

私は肩を押した犯人に文句を言おうと、立ち上がり――目を見開いた。

「……嘘」

「嘘じゃねぇって」

真っ暗でもわかる。蛍の光がなくてもわかる。見間違えようのないその姿――

背は私より高くなっていて、声も低くなっていて――

けれども――あの時と変わらない、笑顔――

「……隼人」

「迎えに来たぜ」

そして隼人は私を抱きしめた。

月は出ていないけど、蛍はいないけど、私の瞳はまぶしいほどの光を帯びている。

あぁ――

温かい――

久ブリの隼人の温もりは、私の心に幸せな痛みを与えた。

「馬鹿っ……。もうちょっと遅くてもっ……よかったっ…のに……っ」

「相変わらず憎たらしい奴だな。そんな子にはお仕置きだな」

チュッ

「会えてよかった。大好きだぜ」

その瞬間、一匹の蛍が葉っぱの裏から飛び出した――


隼人――

五年間待ち続けた私は馬鹿じゃなかったね

心の奥底にずっと持っていた

行き場のない愛と、苦しい恋心は

この日のためにずっと心の中で溶け合っていて

でも、今この瞬間全てが空になったよ――

隼人――愛しています――

光輝く蛍のように、切なきを知る蛍のように――


11 :麗汰 :2007/05/01(火) 23:14:19 ID:n3oJteuH

あとがき

これ…書いてる自分が痛いデス…(滝汗

なんか…まとまりのない文章でゴメンなさい!涙 意味わかんないよな? ゴメンなさい!大泣 ホンマゴメン!(汗 でもハッピーエンドやったから許してやb《吐血


12 :麗汰 :2007/05/02(水) 23:43:04 ID:n3oJteuH

記憶

『意識戻りました。けれども事故の衝撃で、十歳以降の記憶がないようです』

医者の声が悪魔のささやきに聞こえた――



「美緒お姉ちゃんのハンバーグおいしいね!もっと作ってよ〜」

大人びた顔で、子どものような笑顔。

低い声のわりには、子どものようなセリフ。

それは当たり前。

私の彼氏、侃汰は交通事故で、十歳以降の記憶をなくしてしまった。

だから見た目は大人びてかっこいい二十歳にしか見えないけど、中身は十歳のころのまま。

だから十歳までの知能しか持ち合わせていない。

もちろん、私が彼女だってことも忘れている。

今までの思い出……全て忘れている。

「もう残りないから、私の分一個あげる。てか食べ過ぎると太るよ?」

「へへっ。美緒お姉ちゃんよりは痩せてるから大丈夫だもん」

前は「美緒」って呼んでくれてたのに

今は「美緒お姉ちゃん」

お姉ちゃんと呼ばれる度に心がズキンと痛む。

なんで記憶喪失になったの――?

私のこと全部忘れたの――?

交通事故くらいで私のこと忘れるくらい……あなたの頭の中の、私が占めている部分は少なかったの――?

あまりにも悲しくて涙も出ない――

「な……なにっ?! お姉ちゃんだって運動してるの! 馬鹿にしないでよね」

「えー。だって美緒お姉ちゃんのお腹ボヨンボヨンじゃ……」

侃汰が最後まで言う前に、首を絞めてやった。

顔を真っ赤にしてギブアップと言う、侃汰。

「もう! お姉ちゃんの馬鹿! ホントに死ぬところだったんだぞ」

ほっぺをふくらませて、怒ったように睨み付ける侃汰。

でもその瞳は無邪気に輝いていて――。

本当に中身は子どもなんだって自覚させられた。

クールで大人びた侃汰は、どこに行ったんだろう――。

私――今の侃汰は愛せない。

無邪気で、可愛くて、純粋で、汚れを知らない今の侃汰は

愛せない――。

こんな侃汰……侃汰じゃないよ――。



侃汰は事故以来、私の家で暮らしている。

昔は一人暮らしだったけれど、事故以来、一人で暮らすことは困難になり私が引き取ることになった。

侃汰は毎日のように「お母さんたちはドコ?」と聞いてくる。

ホントは、侃汰が記憶をなくすハメになった交通事故のときに、一緒にいたお母さんたちは、亡くなったんだけど……。なにせ記憶がないもの侃汰は知るよしもない。

その度に、「お母さん達は海外に出張に行ってるの」と嘘をついていた。

帰ってはこない母たちを待ちわびる侃汰は、本当の十歳の少年で――。

見るのがつらかった。


「美緒お姉ちゃん! 俺が今日食器洗いしてやろうか?」

「……え? だって侃汰食器洗い嫌いじゃなかったっけ?」

「ん? 俺よくお母さんの食器洗うの手伝ってたから、大好きだよ」

侃汰がけげんな顔をする。

そうだ――。

食器洗いが嫌いな侃汰は二十歳の――私の彼氏の侃汰だ――

ここにいるのは、見た目は侃汰だけど――中身は――十歳の侃汰なんだ――

いつになったら、今の侃汰に慣れるんだろう――

二十歳の――私の彼氏の――侃汰に会いたい――

「……あ。お姉ちゃんがしとくからいいよ。先風呂入っておいで」

「はあい!」

侃汰は、スキップしながらお風呂場へと消えていった。

食器を洗いながら、気づけば侃汰に告白された日のことを思い出していた。


口が悪く、仏頂面で、けれどもかっこよくて優しい侃汰――。

見た瞬間、惚れてしまって――。

大きい背中をずっと追いかけていた。

いつ告白しようかと、考えていたとき、先手を打ったのは侃汰だったね――

あの日は曇り空で、いつ雨が降り出すかわからない天気で――告白された場所はなぜか、友達みんなでカラオケに来ているときだったね。




「超特急〜♪夢を見た〜♪」

「イエーイ♪ さくら行け行けー♪」

友達のさくらが熱唱するなか、酒を飲んだほかの友達が合いの手を入れる。

部屋は異様な興奮と熱気に包まれていて、イマイチ盛り上がってないのは私と侃汰だけだった。

私は酒のせいで、気分が悪くなり外へと向かった。

「はぁー…。やっぱ外はいいねぇ」

カラオケの駐車場のすみっこにしゃがみこみ、どんよりと曇った空を見上げていた。

「おい。まだそこにいたんか」

「…うわぁ! な…なによ? いちゃ悪い?」

後ろに立っていたのは侃汰で、腕を組みながら私を見下ろしている。

凛々しい顔で私を見つめて――

酒のせいか頬を少し蒸気させて――

しかもこんな近くで、私に話しかけてる――

胸がさわやかに痛んだ。

「わるかねぇけど」

「てか……なんであんたもここにいるの?」

「暑いからだよ。ここにいちゃわりいか?」

暑いって言ってる割には……体ぶるぶる震えてるよ?

もしかして――私のそばにいたいから――?

「わるかないです」

その言葉を最後に沈黙が続いた。

「あ…えっと……お前さ、好きな人いんの?」

「…え?」

いきなりの言葉に、私は口をあんぐりとあけて侃汰を見た。

「いや……そのー…なんとなくだよ」

侃汰はさりげなく聞きたかったのだろう。けれども不器用な侃汰は直球でしか聞けなくて――

耳を真っ赤にしてる侃汰がとても愛しいと思った。

「侃汰は好きな人いるの?」

「いる」

即答だった。

「誰…?」

「お前」

これも即答だった。緊張する暇もなかった。一瞬の出来事だったけど――今も鮮明に覚えている。

これが私達の始まりだった――



「ぷはぁー。気持ちよかった! 美緒お姉ちゃん! コーヒー牛乳どこ?」

「冷蔵庫の中だよ」

侃汰は冷蔵庫の中からコーヒー牛乳を取り出し、ストローを差し込んでチビチビと飲み始めた。

私が知ってる侃汰は一気飲みするのに――

『プハー。うめぇ! やっぱコーヒー牛乳最高だな』

とか言ってさ……。

やっぱり――違う――私の侃汰はどこに行ったの?

パリンッ――

ぼーっとしながら皿をふいていたので、床に皿を落としてしまった。

そして、その割れた皿の破片をひろおうとして、指が切れてしまった。

「いたっ……」

その血を見て涙腺が弱まったのか、涙があふれてきた。

侃汰はそんなドジな私を見て「馬鹿だな」とか文句言いつつ、いつも後片付けをしてくれた。

皿を割ったときだって

『はぁー。馬鹿だなぁ。お前あっち行ってろ。俺が片付けといてやるから』

そう言って、全部皿を片付けてくれた。

ぶっきらぼうだけど、優しさあふれる侃汰が大好きだった――

なのに……侃汰――戻ってきてよ……戻ってきて――

「うっ……侃汰っ……」

私は指から流れ出る血を止めようともせず、その場に泣き崩れた。

「美緒お姉ちゃん? 大丈夫?」

心配そうに私を見る侃汰。

私は侃汰の目を見つめて――また涙があふれだした。

侃汰は記憶を失って、十歳の幼き侃汰になってしまったけど

優しい目は――記憶を失う前と一緒――

「侃汰ー…」

「み…美緒…お姉ちゃん?!」

私は侃汰に抱きついていた。

侃汰はすっかり戸惑っている。

でも、侃汰は優しく私を抱きしめてくれた。

「美緒お姉ちゃん……」

あぁ――

中身は変わったけれど……

侃汰の体の温かい温度は――全然変わらないね――

すごく私を安心させる――

「ゴメン…。ゴメンね。もうちょっとだけこうさせて……」

この日私は少しだけ、十歳の侃汰を認めることができたような気がした――

ほんの少しだけ――


「おやすみー」

「おやすみ。美緒お姉ちゃん」

すっかり涙が枯れて、私達はベッドへともぐりこんだ。

いつもは別々のベッドで寝るのだが、今日だけは一緒のベッドで寝ることになった。

泣いたせいか、目がさえて寝られない。

私の横でスヤスヤと寝息をたてる侃汰。

胸を上下にさせる運動が、振動として私に伝わってくる。

侃汰の温かい体温が、体越しに伝わってくる。

気持ちいい――


私は始めて侃汰と寝たときのことを思い出していた。

『おやすみー』

『ああ』

その時、私の心臓は聞こえるんじゃないかってくらいドキドキしてた。

なぜかって? もちろん隣に侃汰がいるってこともあるけど

一緒に寝るってことは、すなわちアレをするってことで……

怖くないと言えば嘘だった。本当はとても怖かった。

でも今日は覚悟を決めていた。侃汰のためなら恐怖心なんて捨ててやる!

『なあに震えてるんだよ』

そう言って抱きしめられた。

ビクッと体が硬直した。来る――来るぞ――大丈夫――怖くない、怖くない――

けれども来なかった。侃汰は私を抱きしめたまま、夢の中へと旅立っていった。

次の日、侃汰はこう言った。

『体震えて、怖がってる奴を襲えるかよ。俺は待つぜ。お前がいいっつーまで。それまで手ださねぇから』

そう言って、侃汰は笑顔を見せた。

その時、侃汰の優しさに涙出そうになった。

私の心の窓は侃汰のために開けられてて、私の気持ちお見通しだった――

私って大事にされてるんだな――


侃汰――

私が愛している侃汰はどこに行ったの?

今の侃汰は……私にとっての侃汰じゃないんだよ

今の侃汰は、私が恋人だってことも忘れてる

思い出して――私はあなたの恋人なんだよ――

スヤスヤ眠る侃汰の横で、私は声を押し殺して泣いた。


「侃汰ー! 朝ごはんできたよ」

「んっ…もうちょと…」

「だめ! 早く起きなさい。ったく……ホント朝弱いんだから」

そう言って、私は侃汰の体を乱暴にゆさぶって起こしてやった。

「いただきますー!」

ガツガツとご飯をかきこんでいく侃汰。

朝からよく食べるなー。

「……なに?」

いや別に、と軽く微笑んでから、ベッドのシーツを洗おうと思い、席を立とうとしたら
侃汰に呼び止められた。

「美緒お姉ちゃんってさ」

「ん? どしたの?」

振り返ると、目をキラキラと輝かせている侃汰がいた。

「美緒お姉ちゃんって好きな人いんの?」

――ドクッ――ドクッ――

当たり前なことだけど、その当たり前がとてつもなく私の心を冷たくした。

侃汰は記憶がなくて、私があなたのこと好きだってことも

あなたが私のこと好きだってことも忘れてる。

わかってる――

しょうがない――

でも、悲しい。

あなたは私の好きな人さえ忘れてる。

仕方ないことなのに……心がついていかない。

私は、あなたの記憶から本当に消えているんだね――

「い…るよ」

「誰?」

「あんた」

あの時の侃汰みたいに、即答してやった。

侃汰びっくりしてるだろうなと思って、侃汰の顔をのぞきこんで――こっちがびっくりした。

「俺も」

ぎゅっと抱きしめられた。

私を抱きしめる腕は、力強くて

あの侃汰の抱きしめかただった。

「あっ……侃っ…汰?」

「ああ」

「侃汰…っうっ…あぅっ……」

「馬鹿。泣きすぎだってーの。あと……ただいま」



侃汰は記憶を取り戻しました

それは

やっぱり愛の力だと

今でも思います


13 :麗汰 :2007/05/03(木) 18:37:25 ID:n3oJtkok

あとがき

いや……これアレですな……すんごく眠たい時に書いたから……話がまとまってない……ダラダラとした文章でごめんなさい!涙 俺の力量不足ッス!汗
なんかね……どこから侃汰が記憶取り戻したのか……なにをきっかけに侃汰が記憶を取り戻したのか書かれてねぇw(吐血 一番大事なトコなのに…ゴメンなさい!涙


14 :麗汰 :2007/05/03(木) 21:44:03 ID:n3oJtkok

一本通行の道

俺は君と付き合ってて

俺は君のことが好きで

でも君はアイツのことが好きで

それでも俺は君のことが好きで

縮まらない心

一方通行の恋

でも傷つくのは

いつも君――



タッタッタッタ――

「はぁっ…はぁっ…ゴメンっ! 待った?」

水平線のかなたに沈んでいこうとする夕日。

そんな夕日は最後の力をふりしぼるように、大地を紅く染める。

「蓮ちゃん遅いよー! 部活お疲れ様。帰ろうか」

愛梨はそう言って俺の手を握った。

愛梨は痛いくらいに俺の手を握る。

でも痛いくらいが丁度いい――

「いつも待っててくれてありがとな。んじゃ帰るか」

俺は愛梨の頬にそっとキスした。

愛梨が顔を少し赤らめたのは夕日のせいではない。

俺らは仲良く手をつないで帰っていった。

他人から見れば俺たちは普通の高校生のカップルで

ニコニコと顔を見合わせては笑う俺たちを、他人もほほえましく思っていたりしてさ――

ふざけんな。俺たちは普通なんかじゃねぇ。

俺たちのこと、傍観者見たいにへらへら見るなよ。反吐が出る

普通のカップルになれたらどんなにいいか――

普通に『愛してる』なんて生温かい言葉かけあって

普通にキスして、普通にニコニコ笑いあえたらどんなにいいか――

でも普通じゃない俺たちはそんなことできない

あいつは――愛梨は――いつも俺の目を通り越して――あの男を見つめるんだ

俺の肩越しに――あの男に――熱い視線送るんだ――

俺は愛梨のことが好きで――けれども愛梨はあの男が好きで――

でもあの男は別の女が好きで――

全てが一方通行の道。全てがまっすぐにしか進めない雲。

悲しき心は縮まりを見せず、新たな傷を生み出す。



「それでさー。俺がキャプテンにこう言ったんだよー……って愛梨?」

一緒に帰っていた途中、愛梨は一点のほうをうつろな目で見つめたまま、足を止めてしまった。

やな予感がする。

愛梨の目線の先を恐る恐る追っていくと――公園があって――そこにいるのは――

心臓がぎりりと軋んだ。

そこにいるのは――愛梨の元カレ。大樹。

愛梨が今も追い続けてる人――愛梨が今も愛してる人――

「……行くぞ。愛梨」

俺は強引に愛梨の腕をひっぱって、ずんずんと進んだ。

大樹なんか見るなよ。俺を見ろよ。

愛梨――

「…あ…うん」

愛梨はしきりに後ろをふりかえっていた。

大樹の姿が見えなくなっても、何度も何度も後ろふりかえって――

俺の存在を忘れたかのように

俺の声すら聞こえないと言わんばかりに

何度も何度も――

なんで――俺を見てくれないの――


「愛梨、じゃあね」

「うん、また明日」

愛梨の家に到着した。愛梨は俺に背を向けてドアへと向かっていく。

俺は愛梨の小さな背中をずっと見つめて――気づけば愛梨を後ろから抱きしめていた。

「蓮ちゃん……?」

愛梨が不安そうな声を出す。

あぁ――

こんな時でも

お前はきっと大樹のこと考えてるんだろ?

俺のこと考えてるふりして、大樹のこと考えてるんだ――

ひでぇよ。

「蓮ちゃん……痛いっ」

気づけば俺は、愛梨をものすごい力で抱きしめていた。

そうでもしないと、愛梨が大樹のところへ行きそうで怖かったから。

「愛梨…愛してる…愛してるよ…」

俺はこの言葉をナイフのようにとがらせて、愛梨を刺した。

今の俺の『愛してる』は愛梨を焦がすナイフになっている。

「わかったっ…から……離して」

声が震えている。

泣いている?

愛梨は俺の腕をふりほどくと、逃げるように家の中へと入っていった。

俺は、その後一度も顔を上げずに家へと帰っていった。


愛梨

俺はお前をいつでも見てるよ

なのにお前はほかの女が好きな大樹に恋するのか?

大樹を見る度に、風船を欲しがる子供みてぇな顔してさ

お前片思いなんだよ? 片思いなんてつらいだけだ。 やめちないな。

あ――

俺も愛梨に片思いしてる。人のこと言えないな

一方通行の道は行き止まりはなくて、前しか見えない雲は前にしか進めなくて――

涙が出るくらい笑っちまう

俺の目を見ない愛梨の目なんか、潰れちまえばいい

俺の声聞こうとしない愛梨の耳なんか、ふさぎちまえばいい

俺を見てよ。俺の声聞いてよ――







あなたが好きなんです――――







「おはよう、蓮!…って…どしたのその顔?!」

次の日の朝。教室に入ってきた俺に向けられた、ダチの仁の声。

「…いや、別に」

俺はそう言って、席に座った。

外は俺の気持ちなどしったこっちゃないというような快晴で

雲ひとつない空を見る度に、なぜだか心が苦しくなった。

「どうもないわけねぇだろ! なにその目の下のくま? しかも…顔青白いぜ?」

「そうか? いつもと変わらないぜ?」

確かに昨日眠れなかったよ? 愛梨のことずっと考えてたから。そりゃくまだってできるさ?

俺はくま如きでわめく仁に無償に腹がたった。

「学年一の美少年がこんな顔してたら、女子達がなんていうか…」

そう言ってわざとうなだれてみせるが、目はらんらんと輝いている。

「やっぱりあれか? 顔青白くて、気分悪いの…今さっき彼女さんと、4組の大樹が屋上行ってたからか?まぁ、気にするな…あいつらは…」

俺は、仁が最後まで言う前に教室を飛び出した。

愛梨と大樹が――屋上に?

嫌な予感ばかりが頭をよぎる。

絶対愛梨は大樹に告白している――

絶対そうだ――

愛梨――俺がいるのに――どうしてお前は――

ようやく屋上につくと、間髪入れずに扉を開けた。

目に飛び込んだのは、果てしなく広がるブルの空と――愛梨と大樹の姿――

二人はぎょっとした目で俺を見つめる。

「愛梨! なにしてんだ!」

俺はそう叫ぶと、走りながら助走をつけ大樹を殴り飛ばした。

言い訳なんて聞かないぞ愛梨――

俺がいるのに――大樹に告白するほど――大樹のことが好きなんかよ

泣くことさえも忘れていた。

目が回るほど俺は怒りに満ちていた。

「やめて! 蓮ちゃん!」

大樹は数メートル先に吹き飛ばされた。

お前大樹をかばうんかよ。

かわいそうなのは俺のほうなのに――

「どけっ!」

俺は前をふさぐように立つ愛梨を突き飛ばすと、倒れている大樹の上に馬乗りになりひたすら殴った。

俺が殴る度に生まれる鈍い音が、コンクリートにはねかっては、天高く響く。

大樹はどうぞ殴ってくださいとばかりに、目をつぶっている。

「やめてー!!!」

愛梨の金切り声が聞こえる。

愛梨

お願い

これ以上

俺を苦しませないで

いい加減

こっち向けよ

なんであいつじゃなきゃ駄目なんだよ

あぁ

そんなこと言う俺も愛梨じゃないと駄目なんだ――


パシッ――

頬に激痛が走った。

誰がやった?

大樹は俺の下で、血まみれになって倒れている。

と、言うことは――

「…蓮ちゃん。もうっ…やめて」

愛梨が涙を流しながら、俺の前に立っていた。

つらいのは俺なのに

苦しいのは俺なのに

なんでお前が泣くの?

意味――わかんねぇよ

でも愛梨を泣かしたのは俺――

罪悪感が俺の心を貫いた。

「大樹はね…私と蓮ちゃんがうまくいってないことを…っ知って…っ私にアドバイスをくれてたの…」

え――? 大樹が――?

俺はてっきり――愛梨が大樹に告白してるのかと――

鈍器で殴られたようなめまいが起きた。

「私を励ましてくれて…っ頑張れよって言ってくれたの…。悪いのは大樹じゃない! 悪いのは全部私…っ。蓮ちゃんの気持ちに答えられなくて傷つけて、大樹をこんな風に巻き込んで……っ」

愛梨の頬から涙がとめどなく流れて

でもその涙をぬぐってやる資格は、俺にない。

俺が愛梨を泣かせちまったから。

「愛梨は…っ…悪くねぇ。悪いのは屋上に愛梨連れ出して、アドバイスっ…なんかした俺が悪いんだ…っ。蓮…悪かった。ごめんな」

「大樹は悪くないよ!」

愛梨はそう言うと、馬乗りになっている俺を押しのけて大樹の血をぬぐった。

そして大樹にやさしく微笑んで

「大丈夫?顔、真っ赤だ。トマトみたい」

と、ささやいた。

大樹もうるせぇよ、とクスクス笑った。

ドクンッ――

あぁ

やっぱり俺は

愛梨の彼氏じゃない

俺にとっての好きな人は愛梨でも

愛梨にとっての好きな人は大樹だから

これはカップルなんて言えない

『カップル』という名の同じ名札をもらっただけの

赤の他人だ――

嗚呼

愛梨とつながっていたかった

一瞬でいいから

愛梨と同じ気持ちになりたかった――


「愛梨。大樹。ごめん。全部俺のせいだ。大樹、愛梨を頼んだ」

大樹が待てよ、と言いかけたが手で制した。

「愛梨……。今までありがと。大樹と幸せになるんだぞ」

涙がせきを切ったように流れ出した。

次の言葉が出てこない

涙――邪魔だよ――止まってくれ

俺は最後に愛梨に伝えなきゃいけないことがあるんだ――

「愛っ……梨…。一本通行…ぁぅっ…の恋やったかもっ…ぅっ…しれんけど……っ大好きやった…っ」

さよなら、一本通行の恋

さよなら、締め付ける心の痛み

さよなら、愛梨


ブレーキがないバイクに乗っている俺は

これからもずっと愛梨行きの道しか進めないけど

いづれ燃料切れで止まるさ

だから

それまでは

片思いでいさせてくれよな――






あなたが好きなんです――


15 :麗汰 :2007/05/03(木) 21:54:26 ID:n3oJtkok

あとがき

誰しもが経験する片思い。それを今回はこんな形で書かせていただきました。
って…よく見ると誤字あるし!汗 「ブルーの空」のところを「ブルの空」って書いてます…(吐血 ゴメンなさい…涙;;

次回はこれの続編を書こうと思っています。時は流れて一年後。いまだに愛梨のことが好きな蓮――。そして大樹に捨てられた愛梨――。行き場のない二人の想いは――やがて一筋の光になって――両思いになる――のか?(ぇ 乞うご期待!(ぇ


16 :麗汰 :2007/05/04(金) 21:58:32 ID:o3teWkLF

クロスした道

一年前――

私は大樹が好きで

でも蓮は私のことが好きで

それでも私は大樹が好きで

蓮と私は交われなかった

一本通行の道はクロスできなくて

気づけば私は大樹も蓮も失ってた――




一年前――

屋上から蓮ちゃんが去った後

私は大樹が好きで

蓮ちゃんのこと好きじゃなかった

はずなのに――

去って行こうとする蓮ちゃんの腕を掴みそうになった。

蓮ちゃんの背中追って行きそうになった。

泣きそうになった。

なんで――? 私は大樹が好きなのに――

「蓮の後追っていかなくていいのか?」

大樹が私の顔を見て、悲しく微笑んだ。

「…え? なんで? 私は大樹のそばにいたいんだよ? だから蓮ちゃんの後なんか追わない…」

大樹の全てを見透かすような目。

ドクッ――

秋の太陽が

私の体に汗をもたらす。

「…お前の好きな奴って…一体誰なんだよ?」

わからない――

私は大樹が好きで

蓮ちゃんを毎回傷つけては、大樹の背中見ていたのに

なのに

今となりに蓮ちゃんがいないと

息が苦しくて

こんなにも寒い

これは…蓮ちゃんが好きだから――?

「まぁ、愛梨の好きな人が誰であろうと、お前は俺と付き合わなきゃなんねぇ」

「…え? なんで?」

蓮の話聞いてなかったのかよ、と大樹が舌打ちをする。

「俺は蓮に『愛梨を頼んだぞ』って言われたんだ。だから俺は蓮の最後の願いを叶えてやんなきゃなんねぇ。と、言うことでよろしくな!」

大樹はそう言って、私を抱き寄せキスをした。

甘い、甘い、キスに体は熱を帯びていて――

でも、なぜか心は寂しくて――

大樹と付き合えること、嬉しいはずなのに――

ちっとも嬉しくない――


なんで――?


「おぉ! おめでとう愛梨! やっと大樹とカップルになれたんだねぇ。でも大樹には好きな人が…」

そう言って、親友の舞は口をつぐむ。

私はニッコリと微笑んだ。

「大丈夫! なんとかなるさ!」

と、笑ってみせたが……実際どうにもならない。

大樹は私と歩いていても

好きな人を見つけると

動かなくなって

まばたきもせずに固まるんだ

その度に私は泣きたくなって

こっち見てよ、って叫びたくなる――

きっと蓮ちゃんも

今の私と同じ気持ちだったんだろうな――

「愛梨なら大丈夫だよ! 次移動教室だから行こうか」

そう言って、舞と廊下を歩いていると

廊下の壁に寄りかかって、友達とたわむれている蓮ちゃんを見つけた。

周りには女がいっぱい。みんな蓮ちゃんのこと触ったり、いやらしい目でチラチラ見たりしている。

女にかこまれて楽しそうに笑う蓮ちゃん。

それを見て、激しい嘔吐に襲われた。

蓮ちゃんに触らないで――

蓮ちゃんをそんな目で見つめないで――

「どうした愛梨? あ…蓮か。蓮フリーになった途端アレだもんねぇ。モテる男はいいねぇ」

なんでだろう――

ものすごく寂しい

もう私だけを見てくれる蓮ちゃんはいなくて

もう私のために笑ってくれる蓮ちゃんはいなくて

すごく寂しい――

「…そうだね。行こうか」

最後にもう一度だけ蓮ちゃんを見て、その場を去った。


その日の放課後、大樹を振った。

「ごめん。別れよう」

大樹には好きな人がいて

その人と付き合いたいってのが、見え見えだったから。

大樹見てて辛かったから。

私が一番そばにいるのに

大樹は遠くにいる好きな人ばっかり見て

辛かったから――

蓮ちゃんもこんな想いしてたんだね――

ごめんね――

「…お前が謝るなよ。俺こそごめん。じゃぁ、元気でな」

大樹はそう言って、私の元から去った。

不思議と悲しみはなかった。

なぜか今、蓮ちゃんの顔を思い出した。

蓮ちゃんに会いたいって思った。

なんでだろう?


この意味を知るのは一年後――



そして一年後――



「あぁー。ねみい」

そう言ってまた机に顔を伏せる俺。

「蓮また寝るのお? 授業中も寝てたじゃん。マジありえないって!」

「でも蓮の寝顔マジありえないほど可愛いんですけど? マジハンパねぇ」

周りでは猿みたいにキーキーわめいている女子達。

ホントうるさいなぁー。

落ち着かない。

愛梨のそばのほうが百倍落ち着くってーの。

「ってことで俺は寝る。おやすみー」

あっち行けとばかりに手をふって女子たちを追い出して、俺はようやく安心して机に顔を伏せた。

今日で愛梨と別れて一年か。

愛梨と大樹…すぐ別れちゃったんだなぁ。

なんで別れたんだろ。

本音を言えば別れてほしかった。

だって俺は愛梨が好きだったから。

そして今でも愛梨が好き。

愛梨……お前今……誰が好きなの?



今日で蓮ちゃんと別れて一年か――

最近ため息ばっかりついてるような気がする。

大樹と別れたから?

違う。別れた当初は辛かったけど、一年たった今ではなんとも思わない。

もう大樹を見てもなにも感じない――

では、なんだろう。

このズキズキとした痛みは――

「愛梨ー。帰るぞー! マック寄って帰らない?」

私の肩をぽんとたたいて微笑む舞。

「ゴメン! 今日無理! 用事があるんだぁ。じゃぁね」

私はそう言って教室を飛び出した。

とくに用事はないんだけど

なにかしなくちゃいけないような気がして

でもそれがなにかわからなくて――

もどかしい

でもここに行けば、なにをすればいいのかわかる気がして――

私は蓮ちゃんの教室へと向かった――




「蓮ー。帰るべ」

「おう。今日ゲーセン寄って帰るか?」

いいねぇ、と仁が俺の肩に拳を入れる。

「んじゃ商店街のゲーセンで…って蓮どうした?」

俺は教室のドアのところに釘付けになった。

あれ? これ目の錯覚? ドアのところに愛梨がいる。

しかも俺に手招きしてる――

ドクッドクッ――

心臓が高鳴った。

「悪いっ…。今日ゲーセン…なしな…っまた明日」

俺はそう言うと、愛梨のもとへ駆け寄った。

「どうしたんだよ…。いきなり」

あえて冷めた口調で問う。

そうでもしないと緊張してるってこと見破られそうだったから。

「ちょっと…屋上行こう」

愛梨はそう言って、俺の腕を掴み屋上へと連れていった。

愛梨の手…相変わらず温かい。

俺が求めてた温かさ。

愛梨――やっぱ俺お前のこと好き

お前は…誰が好きなの?



一年前のあの日と変わらない屋上。

一年前のあの日と変わらない秋の風は、私達を優しく包んで

トンボは手を伸ばせば届きそうなくらい近くにいる。

そして今、一年前と同じように隣に蓮ちゃんがいる。

「んで…いきなり何?」

ドクッ

蓮ちゃんの声が私の耳を刺激する。

ねぇ、蓮ちゃん

一年前と一つだけ違うことがあるの

それは

私が蓮ちゃんを好きってこと

一年前、蓮ちゃんを失った瞬間

芽生えた気持ち

いつも傍に蓮ちゃんがいて

いつも蓮ちゃんが私のこと好きって言ってくれて

いつも私のこと気遣ってくれて

いつも私のために傷ついてくれた

でも、その『いつも』がなくなった瞬間

蓮ちゃんの優しさに気づいて――蓮ちゃんの深い愛に気づいて――

私は蓮ちゃんが好きになってた

蓮ちゃんがいなくなってから、好きになるって皮肉だね――

蓮ちゃんがいない毎日はとても寂しくて――苦しくて――

大樹がそばにいても駄目だったんだ

私には蓮ちゃんが必要なんだ――

「好きです。蓮ちゃん」

溢れ出すいろんな気持ちを一言にするとやっぱりこの言葉しか出なかった。

蓮ちゃんは口をぽかんと開けて私を見つめる。

「蓮ちゃんが好きなの」

「…っ…ふざけるな! 一年前…俺のことなんか目もくれなかったくせに…今更っ…」

蓮ちゃんが怒鳴る。

傍を舞っていたトンボたちがその声に驚いて、一斉に逃げる。

「…今更っ…今更俺に好きとか言ってんじゃねぇよ!」

蓮ちゃん

たくさん傷つけてごめんね

いつも傍にいてくれたのは

大樹じゃなくて蓮ちゃんだったのに

気づかないなんて、私ホント馬鹿だね

「私…蓮ちゃんがいなくなって初めて…蓮ちゃんの大切さに気づいたの…。馬鹿だよね…」

「うぁっ…お前っ…グスっ……ホント馬鹿っ…ぅあっ…」

俺の目から涙がこぼれ落ちた。

愛梨

お前ホント馬鹿だよ

俺がどれだけ待ったと思ってるの?

俺がこの一年どれだけお前を想ってたか知ってるの?

ホント馬鹿だよ

「だから蓮ちゃん…。私と付き合ってくれますか? 今度は蓮ちゃんしか見ない。蓮ちゃんのために生きて、蓮ちゃんのために笑って、蓮ちゃんのために存在するから…。だから付き合って」

「……うんっ…」

一年前

俺は愛梨が好きで

でも愛梨は大樹が好きで

それでも俺は愛梨が好きで

全てが一方通行。全てがまっすぐにしか進めない雲。

俺と愛梨は交わることないって思ってた。

でも今心はちゃんとクロスしている――

「蓮ちゃんっ…」

愛梨は愛しげに俺の名を呼んで

俺の体を抱きしめた。

「愛梨っ…」

今、愛梨は

大樹ではなく

俺の目を見て

俺の声聞いて

俺の存在確かめてくれてる




あなたを好きでよかった――――


17 :麗汰 :2007/05/04(金) 22:02:33 ID:o3teWkLF

あとがき

なんじゃこの文章の羅列は?!(吐血

まったくもって意味わからないですね…この小説…(涙 ホントごめんさい!

愛梨になったり蓮になったり…愛梨になったり…蓮になったり…ホンマわけわからんかったでしょ?(吐血 俺の力量不足ッスbごめんなさい…(土下座
俺は二人の心情を書きたかったんですよね。そうするとこんな風になってしまって…(汗

まぁ、なにはともあれ!ハッピーエンドで終わったからいいでしょう!(ぇ

では次回お楽しみにーb 


18 :麗汰 :2007/05/05(土) 21:30:12 ID:Wmknr7Qe

GW後半のよく晴れた午後。

のんびりとした日差しが、窓から差し込んで実にすがすがしい。

なのに――だ。

見せ付けるかのような浮気の跡。

ベッドに染み付く甘ったるい香水

アンタの洋服についた長い髪の毛

そして紅い口紅

直樹に嘘は似合わない――認めて――浮気してたこと――



事の発端は今日の正午。

私は直樹の家にいた。

GWで仕事も休みで、久ブリに彼氏の直樹が手料理を振舞ってくれると言ったからだ。

「おいしいじゃん! でも私のほうがうまいかなぁ?」

私はそう言って、また口にオムレツを詰め込んだ。

「えー! 俺のが上手いに決まってるじゃん!」

直樹は幼い顔をさらに幼くして、ふくれっ面をした。

直樹は本当に純粋な子で

子どものまま大人になったような感じで

ホント見てて可愛い。

コロコロと表情を変えるところなんて、見てて飽きない。

「そう怒るなって。ごちそう様ー」

「ちぇっ、麻美なんて大嫌いだ!」

私はふくれたお腹を抱えてベッドに飛び込んだ。

太陽の匂いと直樹の匂いが混ざっているふとんはとても気持ちがいい。

「直樹、おいで」

猫なで声を出して直樹を呼ぶと、直樹は飼いならされた猫のようにスリスリと寄ってきた。

そして私の胸に顔をうずめて、私の体をぎゅっと抱きしめた。

「直樹…好きだよ」

直樹の顔がかぁっと赤くなり、より強く私の体を抱きしめた。

「いきなり…んなこと言わないで…ってば//」

直樹は頭まで布団をかぶってしまった。

ホント可愛いな。

私も負けじと布団の中にもぐりこみ、直樹の顔にキスをした。

薄暗い布団の中でもはっきりと分かるくらい、直樹の顔は赤かった。

「俺っ……昼風呂はいってくるっ…//」

直樹は布団をばさっと払いのけると、その場で服を脱ぎ捨て風呂場に向かった。

照れすぎだって。

ホント

抱きしめても

抱きしめても

足りないくらい

愛しい。

「あららー。こんなところに服脱ぎ捨てるなってば」

私はそう言って、お母さんのように服をたたみはじめた。

あれ――? なんだろう――?

直樹のジーパンについていた長い毛。

髪の毛だった。しかも女の人の……。

いやな予感がした。けれどもたまたまどこかでついたのかも知れない。

だって

一途で

純粋で

優しい直樹に

浮気なんてできるわけないって知ってるから。

けれども私の予想はことごとく裏切られていった。

「なに…これ…」

直樹の上着についていた――紅い口紅の跡。

ありえない――。

まさか――。

直樹を信じろという気持ちと

ホントは浮気してたんだという気持ちが

せめぎあって

私を混乱させる。

浮気と決まったわけじゃないのに

自然と涙があふれてきた。

そして、たたんでいた服をそこらに投げ捨て

ベッドに飛び込んで泣いた。

「うっ…あぅっ……」

泣いているせいか、息が苦しい。

酸素を多く取り込もうと思い、思いっきり息を吸ったら

酸素と一緒に、布団から甘い香りが鼻に入ってきた。

直樹の匂いじゃない――

女の人がつける、気持ち悪いくらいの甘ったるい香水――

直樹が浮気――

その言葉が脳裏をよぎる。

いつも『麻美、麻美』って笑顔で話しかけてくれる直樹が――

いつも照れながら『好きだよ』って言ってくれる直樹が――

いつも私が悲しんでるときに『大丈夫だから』って安心させてくれる直樹が――

――浮気?

ほかの女を愛してる――?

あの純粋屈託のない笑顔は偽者――?

「あぁー。さっぱりしたぁー」

直樹がバスタオルを腰に巻いて出てきた。

私以外の女にもそんな格好見せてるんだ――

「いやぁー。やっぱ風呂最高だね」

そう言ってまた笑う。

何事もないような笑顔見せないで。

偽で固めた笑顔なんて見たくない。

激しい嘔吐に襲われた。

「あれ? 麻美…? 泣いてるの?」

直樹がベッドにちょこんと座って、心配そうに私の頭をなでる。

いろんな女触った手で私を触らないで

反吐が出る

心配そうな顔しないで

ホントは心配なんてしてないくせに

「さわっ…るなっ…」

「…え?」

私は直樹の手をはらいのけた。

直樹が驚いて目を見開く。

「直樹っ…馬鹿っ…信じてたのに……信じてたのに…っうぁっ…」

涙がベッドのシーツに吸い込まれては消えていく。

この涙のように、私も直樹の前から姿消さなきゃいけないのかな?

傍にいたいけど

傍にいたくない

そんな矛盾した気持ち抱えているのは

直樹が本当に好きだから

「…麻美…? どうしたの? 言って? 俺にできることならなんでもするから」

なら今すぐ

浮気なんてしてないよって

言って

麻美だけを愛してるって

言ってよ

「直樹っ…浮気してたっ…んだ…酷い…よっ…信じてたのにっ……」


「……」

沈黙という名の悲しみがこの場を支配した。

否定してよ

いつもみたく幼い笑顔全開にして

俺は麻美だけだよ

って…

なんで否定してくれないの?

やっぱり浮気してたからなんだ――

「直っ…樹?」

グスっ…グスっ……

鼻をすする音がして、顔を上げると

直樹が泣いていた

子どものように泣きじゃくる直樹は

今すぐ抱きしめたくなる衝動に駆られた。

「ごめっ……麻美っ…うぁっ…ごめんね…」

直樹は何度も謝った。

ゴメンネ――ゴメンネ――ゴメンネ――

謝られるたびに

ホントに浮気してたんだって実感して

胸が痛くなった

「もういいよ。だから泣かないで」

「っ…あうっ…グスっ……」

私は直樹の頭をそっとなでた。

でも

この金色で細くて綺麗な髪を

ほかの女も触れているって思ったら

急に触れなくなって、手をひっこめた。

「んじゃ、帰るね。早くパジャマ着なさいよ。風邪引くから」

「あっ…待っ……」

直樹の言葉を最後まで聞かず、私は玄関のドアをパタンと閉めた。

ドアを閉めると同時に――私の恋も終わりを告げた。

そしてわきめもふらずにひたすら走った。

なにもかも忘れてしまいたかった。


ねぇ

直樹

どうして

浮気なんかしたの――?

どうして――


19 :麗汰 :2007/05/05(土) 21:36:36 ID:Wmknr7Qe

あとがき

…(撃沈)…

この文字の塊たちはなんだっ!(ぇ もはや小説じゃねぇ!(マテ

これ次回に続きます! てかこれで終わったら後味悪いからね♪(ぇ


20 :麗汰 :2007/05/05(土) 22:51:55 ID:Wmknr7Qe

真実

信じていた人に裏切られることほど

酷いことはない

愛していた人に裏切られるほど

つらいことはない

直樹

最低だよ――



ドンッドンッ

「麻美!いるんでしょ? 開けて!」

ドアを乱暴にたたく音。

そして直樹の甲高い声。

直樹の元を去って一週間。

それまで音沙汰もなかったのに

今になって私の家にやってきた。

今さら――なんの用なの?

「麻美っ…開けてっ…」

今にも泣きそうな直樹の声に

思わずドアノブをひねりそうになった。

だって

直樹が私にどんな酷いことしたとしても

私は直樹が好きだから

直樹の泣き顔なんて見たくない。

「麻美っ…お願いっ…ぁうっ…」

とうとう直樹はドアにもたれかかるように座って泣き始めた。

小さな肩を震わせ、迷子になった子どものように泣きじゃくる直樹。

それをのぞき穴から見てた私は

我慢ならなくなって

ドアを開けてしまった。

私は冷めた目で直樹を見下ろして、直樹を部屋へと促した。

「…お邪魔します」

「なんか…飲む?」

直樹はいらないと首をふるとソファに座った。

「で…なんの用?」

私はできるだけ直樹と離れているところに座った。

「あのっ…この前のことだけど…」

「やめて! もう聞きたくない!」

私は両手で耳をふさいで、目をぎゅっと閉じた。

もう、直樹の口から

謝罪の言葉とか

言い訳とか

聞きたくない

もう忘れたいんだ――

「だから…っ」

「やめて!!」

「お願いだから…っ聞いてく…っ」

「聞きたくない! 帰って!」

「聞け!」

直樹が私を押し倒す。

私を見下ろす直樹の目には

涙が浮かんでいた。

「聞きたくない…。離してよ…っ離して!」

離してと言う度に、直樹は更に強く私を押さえつけた。

「…離さない」

ズキッ――

直樹の真剣な目。

なにもかもを丸裸にするような鋭い目。

初めてみた――

いつもキャンディもらった子どものように笑ってる直樹が

初めて見せる真剣な目――

「ごめん。全部嘘なんだ」

「……」

部屋の温度が一気に下がった気がした。

嘘って

私のこと好きって言ってたのが

嘘なんでしょ

酷いよ直樹

面と向かってそんなこと言わないで

「全部全部っ……嘘なんだ!」

直樹の涙が私の頬に落ちる。

その涙が私の頬を伝って

ポタリと地面に落ちた。

「うっ…あぅっ……」

気づけば私も泣いていた。

私の手首を掴む直樹の手が

妙に温かくて

それが更に私の涙腺を刺激した。

「全部全部…俺の小細工っ…あうっ…んっ…」

――は?

――小細工?

きょとんとする私。

「口紅も…長い髪の毛も…香水も…っあぅっ…俺が仕掛けた小細工なんだっ…」

あの毒々しい色の口紅も

綺麗な髪の毛も

甘ったるい香水も

直樹がしたの――?

「なんでまた…そんなことをっ…」

私は拍子抜けした声を出した。

直樹は私を離すと、決まり悪そうにもぞもぞとした。

「…最近…不安になってたんだ。麻美が俺のことホントに好きなのかって…。麻美さ…時々すっごく冷たくなるからさ…。もしかして俺のこと嫌いじゃないのかな?って思って」

「だから口紅とか、髪の毛とかつけて麻美にわざと見せた。麻美が本当に俺のこと好きなら…嫉妬して泣いてくれるんじゃないかってさ」

そう言って直樹が先生に怒られたときのような苦々しい顔をした。

「麻美…本当に泣いてくれた。俺のために泣いて怒ってくれた…。それがめっちゃ嬉しくて…。んですぐにこのこと言おうって思ってたけど…麻美帰っちゃったからさ…」

直樹がはにかんだ笑みを見せる。

「…じゃぁ、ホントは浮気なんてしてない……の?」

「当たり前じゃん! 俺は麻美だけだよ!」

あ――

私が言って欲しかった言葉――


子どもみたいに可愛くて

純粋で

曲がりのないこの子が

浮気なんてするわけなかったんだ――

「直樹ぃ〜っ…馬鹿っ…ぁうっ…グスっ」

直樹の胸に飛びついた。

直樹は私をしっかりと受け止めてくれた。

「麻美っ。試すようなことしてホントごめんね。でもどうしても知りたかったんだ」

「うんっ…いいよっ…全部許すっ…私も…ごめん。直樹にそんな思いさせてっ……。私も直樹だけっ…だから」

「うん、うん」

直樹は何度もうなずいた。

「あ! ねぇねぇ、今度の日曜日…仲直り記念にパーティしようよ!」

「いいねぇ。どこでする?」

私がそう聞くと、直樹がニヤリと笑った。

「もちろん麻美の家で! 手料理作ってよ! 俺より料理うまいんでしょ?」

「うっ…」

思わず言葉につまる私に、してやったとばかりに微笑む直樹。

実を言うと……私は料理が苦手だ。

「約束ね」

直樹は私の小指に指を絡ませると、そっと口付けした。

そして真っ赤に熟したトマトのように照れる。

ホント

可愛いな、直樹

もう嘘はつかないでね?

直樹――


21 :麗汰 :2007/05/05(土) 22:58:10 ID:Wmknr7Qe

あとがき

直樹君…。可愛い割にはけっこうハードなことしますねぇww(吐血

でも俺の性格って直樹に似てるなあb笑

だから俺は直樹がこんな嘘ついても許せちゃうぜ!(ぁ

さて…この物語さらに続きますw(ぁ

次回は「仲直りパーティ」のこと書きたいと思います!

さて、麻美の料理の腕前はいかほどなのか?笑

乞うご期待! ちなみに次回激甘デスb(ぁ 気分悪くなるくらい二人がイチャイチャしてます…(吐血


22 :麗汰 :2007/05/06(日) 20:03:19 ID:n3oJteuH

番外編 所有印

「よっと」

ジューと香ばしい音が食欲をそそる。

そして慣れた手つきでハンバーグをひっくり返す。

キッチンタイマーがピピピと鳴る。

その音を聞いて、ハンバーグの横でゆでていたスパゲッティの麺をさっと取り出した。

「できたあ! ミートソーススパゲッティ!」

汗だくになった額をさっとぬぐって、テーブルのミートソーススパゲッティを置く。

いやー。汗だくになった直樹も可愛いなー。

私は雑誌から視線をそらし直樹の顔を見つめた。

ん? なに? 料理作ってるの私じゃないのかって?

違うに決まってるでしょ。私はこんなに手際よく料理なんてできませんよ。

だから直樹の作ってもらっている。

「うわぁ! ハンバーグ焦げそう!」

ただでさえ高い声をさらに高くして、直樹がまたキッチンへと戻る。

「焦がしたら承知しないからねぇー」

「んなっ?! わかってるよー!」

あわてふためく直樹はホント可愛い。

直樹といると、彼氏というより子どもと遊んでいる気がする。

そのくらい直樹は可愛い。

「はやくー! お腹すいたあ」

と、一言言ってまた雑誌に目を戻した。

キッチンのほうから悪態をつく声が聞こえた。


「いただきまーす」

「…いただきます」

次から次へと料理を運んでいく私に対して、直樹はまったく箸が進んでいない。

「うわ! このサラダのドレッシングおいしい! あれ? 直樹食べないの?」

「…料理作るのに疲れて…腕が動かない…」

直樹はすがるような上目遣いで私を見た。

キラキラと輝く目。

この野朗! 私を誘惑したな!

私はそんな直樹にノックアウトされて……

「わかった、わかった。口開けて」

「あーん」

と、ニコニコ微笑みながら直樹が口を開ける。

「んっ……」

そして口移しでハンバーグを与えた。

「へへっ、麻美の味がした」

照れたように笑う直樹。

かあああ

火が出るかと思うくらい、顔が真っ赤になった。

直樹っ――アンタ可愛すぎ――反則だって――

「はいはい、あとは自分で食べ……んっ…ぁふっ…」

「お返し♪」

口の中に入ってきたスパゲッティと直樹の味。

私は恥ずかしくなってベッドに飛び込んだ。

そして布団を頭までかぶる。

「直樹の馬鹿馬鹿馬鹿っ!」

ドスッ――

突然体に体重がかかった。

「そう怒るな♪ ね?」

直樹が上に乗ったかと思うと、次の瞬間布団を剥ぎ取られてしまった。

「どけ! 餓鬼!」

私が顔をトマトのように真っ赤にしながら悪態をつくと

「俺餓鬼じゃないもーん」

そう微笑んで、直樹は私のわき腹をくすぐり始めた。

私はくすぐったくて猿のようなキーキー声でわめいた。

「やめっ…あはははは!…っちょっ…やめなさいっ…あははは!やめてってば」

「やめない」

直樹は悪餓鬼のような笑顔で、今度は首筋をくすぐり始めた。

「ちょっ…そこだめっ! あははははは!」

チュ――

「んぁっ」

突然首筋がゾクッとして、体中に電流が走った。

「所有印♪ これで麻美は俺のもの」

かあああ

顔がさらに赤くなる。

直樹…こんなところにキスマークつけるなっ!

「もっとつけていい?」

「駄目っ……あぁっ!」

直樹は私の服をまくりあげると、へそや胸をきつく吸った。

「はぁっ…やめっ…んぁっ…!」

「いやらしい声だなー。麻美」

「ちがっ…ぅあっ…!」

太もものところをきつく吸われ、思わず背中が弓なりのようにそれる。

「あはは。麻美の体俺の所有印でいっぱいだぁ。これがある限り麻美はほかの男に裸見せられないね」

そう言って、直樹は食器を片付けようとベッドを降りた。

私は跳ね起き直樹の手をとって、床に引き倒した。

「直樹にも…所有印つけなきゃね♪」

ぞっとするような笑みを浮かべたら、直樹の顔がかすかに引きつった。

「いや…俺はいいよ」

「駄目。すごくイイコトしてあげるから♪」

「いや、いいってば」

「駄目」

「いいって」

「駄目」

私が鬼のような形相で睨むと直樹は黙りこくった。

直樹――肩がカタカタ震えてるよ?

目に涙浮かべて

野獣に襲われるの待ってる処女みたい。

唇噛みしめて私を見上げる姿なんて――誘惑してるとしか言いようがない。

ホント

どんなけ純粋なんだよ

可愛すぎる

「……んあっ」

首筋を指でなぞっただけで直樹はおもしろいほど反応を示す。

チュッ

「あっ…」

唇をぎゅっと噛みしめていたが、思わず声が漏れてしまって慌てて口をふさぐ直樹。

可愛い――

チュッ

チュッ

いろんなところに所有印を施す。

「あっ…麻美っ…やめっ…」

「やめないよーだ」

だって可愛いんだもん

歯止めがきかないよ

でも

私にこんなことさせてるのは

直樹のせいだよ

「あっ…そこだめえっ! あぁんっ…!」

女のような声で喘ぐ直樹。

涙が頬を伝って絨毯に吸い込まれていく。

可愛い――もっと虐めたい――

でもかわいそうだからこれまでにしてやろう。

「終わりっと。これで直樹は私のものだね♪」

直樹は起き上がるとほっぺをふくらませてすねた。

「麻美の意地悪っ」

おもちゃを買ってもらえない子どものような顔に思わず胸がキュンとなる。

「もう直樹かーわい♪」

ぎゅっと抱きしめると、直樹もぎゅっと抱きしめてくれた。

「麻美首筋赤い。俺がつけた所有印だ」

直樹が私の首筋をなぞる。

かあああ

また顔が赤くなるのがわかった。

「直樹だって赤いよ? 私がつけた所有印だ」

直樹の顔にも赤が差す。

素直で

曲がりなくって

純粋で

子どものまま大人になったような直樹が

ホントに愛しい――

所有印なんてつけなくても

大丈夫

私達は永遠に所有しあってるから

ねぇ? 直樹――

「ちぇっ。麻美いつからこんなに意地悪になったんだ? 最初会ったころは可愛かったのに」

そうぼやく直樹の口をふさいでやった。

「んっ…」

かすかに漏れる直樹の吐息。

どちらともない唾液が落ちていく。

熱い

熱い

それは仲直りパーティにふさわしいキスでした

「愛してる」

「俺も」



浮気なんて絶対させない

所有印にはそんな決意がこもってる


私は直樹を所有して

直樹は私を所有する

それってすごいことだよね?


直樹

これからも

浮気なんてしない直樹でいてね

曲がりなき

汚れなき

直樹でいてください――

大好きだよ――


23 :麗汰 :2007/05/06(日) 20:05:31 ID:n3oJteuH

あとがき

これを書いてから三十分は放心状態になってました…(ぇ

なんじゃこりゃぁ!怒 俺はなんでこんなもの書いてしまったんだぁ!(吐血

ごめんなさい…ただ普通に甘いのが書きたかっただけなんです…っうぅっ…グス…(泣くな

甘いどころか…これ変態ですよb二人共(ぁ もうやだっ!(逃走


24 :麗汰 :2007/05/12(土) 16:48:37 ID:n3oJW4o7

過去

なにもかもが初めてで

なにもかもが新鮮で

なにもかもが愛しい

でも

あなたは初めてじゃない

昔たくさん付き合っていた女がいて

私は翼の過去に嫉妬している――



「凛? ボーっとしてるよん?」

翼が私の顔をのぞきこむ。

体育の授業が終わって、体育委員の私達が片付けていた時だった。

「うわっ! びっくりしたぁ。なんでもないよ」

翼は私をぎゅっと抱き寄せた。

抱き寄せる手つきも

翼にとっては手馴れたものだ。

どうしようもないことだけど

翼がこんなことを手馴れているのは

ほかの女も抱いたことがあるってことで……どうしようもなく悔しい

「ちょ……ここ体育館倉庫だよ? 誰か来るよ…っ」

「大丈夫だって」

翼はこれまた手馴れた手つきで私にキスをする。

恥ずかしがらず

顔を赤く染めたりせずにキスする姿から

今まで何度も女にキスしたことあるんだなって実感させて

また悔しくなる

私は翼の過去に嫉妬してるんだ――

「うっ……っぁうっ……」

「凛?! どうした?」

泣くことが

せめてもの

感情表現

翼は私の頬を優しくなでる。

あぁ――

翼の行動一つ一つが

愛しいけれど

同時に

嫉妬が生まれる

「泣くなよ。凛らしくねぇ」

「帰るっ……」

私は翼の腕を振りほどくと、体育館倉庫を抜け出して教室へと戻った。

翼は私のこと心の底から愛してくれている

それは紛れもない事実だけど

翼……

私にとって翼は初彼で

なにもかもが愛しくて

新鮮なんだけど

翼にとって私は初彼女じゃない

過去は変えられないけれど

私は過去に翼が愛した女性達に

ものすごく嫉妬してる――

女扱いに手馴れた翼に

ものすごく嫌悪を覚える――


家に帰ってからも私の気持ちは晴れなかった。

相変わらず翼からの電話やメールの着信音が鳴り響いている。

私はケータイの電源を切り、ベッドの枕の下に入れた。

今は翼の手馴れた『ごめんね』は聞きたくない。

聞くとまた嫉妬しちゃう

私はどんよりとした雲がたちこめる空を見上げた。

月がある部分だけほんわか明るい。

「はぁ……」

思わずため息がでる。

前に一度夜のお花見をした時だって

「おー。桜に負けじと月も綺麗だなぁ。でも凛のほうが綺麗だけど」

甘いセリフを恥ずかしがらずに言ったり


デートに行くときだって

いつも最高のプランを立ててくれた。

それはきっとデートに慣れてるから

今までたくさんの人をデートに連れて行ったから――

全部

全部

嬉しいんだけど……

やっぱり

悔しい――

『私はもしかしたら翼の運命の恋人なんかじゃないかもしれない。だって運命の恋人なら翼の一番最初の彼女になっていたはずでしょ?』

私はその言葉の意味を噛みしめて、ベッドにもぐりこんだ。


その日夢を見た。

丘の上で

白いワンピースを着た綺麗な女の人と

男の人が手をつないでいる。

あの黒髪……スラっとした身長。

翼だ――!

私は無意識のうちに駆け出した。

けれども

追いつかない

前に進めない

下を見ると、草が私の足に巻きついている

翼と女の人がキスをした

ダメ――!

私は声にならない叫び声をあげて――

夢から覚めた。


なんとなく体がダルくて

熱を測ったら

体温計が38度4分と表示した。

私はその日、学校を休んだ。

ベッドの中でひたすら天井を見上げる。

時計の音だけがストイックに時を刻み続ける。

それにしても今日の夢は酷かった――

翼――

過去は変えられない

それはわかってるよ

過去が変えられたらどんなに幸せか

でも変えられない

ならどうすればいいの――?

「あっ……」

私はふと思い出して、枕の下にあったケータイを取り出した。

電源を入れると、そこにはあふれんばかりの翼からのメールと着信があった。

メールボックスを開き一通一通目を通していく。

『今日なにがあったん? 俺でよければ相談のるよ!』

『凛……? 俺のせいか? ごめんな』

『明日一緒にどっか行こうか♪ 俺がおごったる』

『返事して……俺のこと嫌いになったんか?』

『ゴメン。俺のせいだよな。ホントゴメン』

『凛は俺のこと嫌いなったんかも知れんけど……俺は凛のこと好き。だから返事くれ』

翼――

こんなに私のこと心配してくれてたんだ

涙腺がうずきだす。

しかし最後のメールを見た時、私の涙がこらえきれずに零れ落ちる。

『俺は本当に愛する人には、一度に一人きりしか出会えないって思ってる。凛、過去は変えらん。なら……過去に負けないぐれぇ幸せな今を作ろうぜ』

私の心を見透かしたような翼のメール――

「うっ…っくぁっ……」

思わずケータイをぎゅっと握った。

“過去に負けないぐれぇ幸せな今を作ろうぜ”

まっすぐ前向きな

翼の言葉は

私の背中に

『幸せな今』という翼をくれたような気がした――


ごめんね、翼

過去に捕らわれてた私は

今なんて忘れてた

一番大切な今を忘れてたよ――


翼に私が嫉妬するような過去があってもいいじゃない

今と未来を一緒に翼と一緒に過ごすのは

紛れもない私なんだから――

過去に負けないくらいの今を作るのは私達なんだから――


コンコンッ

ドアをたたく音がする。

「どーぞ」

部屋に入ってきたのは

翼――

私は思わず翼に抱きついてこう言った。

「過去に負けない今…作ろうよ!」

こうして私達は

今と未来を羽ばたく鳥になった。


25 :麗汰 :2007/05/12(土) 16:58:11 ID:n3oJW4o7

あとがき

俺もあるなぁーッ…彼女の過去に嫉妬するってことw!笑

でも過去は変えられない……ならばどうするべきか?

それは過去に負けないほどの今を作ることw!笑

でもあれですよ……。言うはやすし行うは難し!ん…なんか違うような?笑

ま、また次回アイマショウ!(ぇ


26 :麗汰 :2007/05/22(火) 16:48:17 ID:n3oJtes7

お知らせ!

次回から長編小説書こうかなと思っとりますw!笑
楽しみにしといてなあ♪笑


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