”あお”


1 :ラッフィン :2007/12/23(日) 22:09:30 ID:n3oJkJsk

初めまして。ここへ初投稿させていただきます。ラッフィンです。

ええ、拙い文ですがよろしかったら読んでもらえれば幸いです。
また、誤字・脱字、アドバイス、この表現はいけない、など意見がございましたら教えて頂けたらと思っております。

では、ここからは作品についてです。

心を閉ざしていた少年と心を閉ざしている少女達の物語。
彼らが出会い、交流し、変わっていく。

心の変化を描いていく。

そんな作品にしていきたいと思ってます。

どうぞ、よろしく御願いします。


2 :ラッフィン :2007/12/23(日) 22:12:04 ID:n3oJkJsk

過去の日々

僕は人間が嫌いだ。

 僕の名前は蒼崎蒼一(あおざき そういち)。生粋の日本人……のはずなんだけど。初めて会った人にはそう思われないんだ。なんでって?それは僕の外見を見ればすぐにわかるよ。と言っても顔立ちも肌の色も髪の色も他の人と変わらないんだけどね。

 ただ、他の人と違うところが一つだけあるんだ。それはね? 僕の目の色なんだよ。みんなは黒いよね? 後、茶色っぽかったりするのかな? でもね、僕は違うんだ。僕はね? 蒼いんだよ。そう、名前の通り”蒼い”のさ。当然だね。だって、この目の色が名前の由来だからね。
 どうも生まれつき色素が薄かったみたいでね。おかげで強い日光には弱いから天気のいい日にはサングラスか日光を遮断するレンズ入りのメガネをかけないと目が日焼けしちゃうんだって。面倒だよね?

 そんな僕だから、学校ではいじめられるんだ。目の色が違うから。まだ高校生にもなっていない子供がサングラスなんてかけてきているから。最初は数人だけだったんだけど、その数人が周りにもいじめを強要したもんだから、クラス全員どころか学校全体にまで広がったんだ。当然だよね? やらなきゃ自分もいじめられるんだもん。靴隠し、教科書、ノート類に落書きなんて日常茶飯事。上履きが焼却炉の中で炭になってたり、体操服がやぶられてたり、黒板に罵詈雑言を書かれてるのだって珍しくなかったよ。先生も見てみぬフリで僕を助けてくれなかったし。こんな問題があるのって学校のイメージが悪くなるからね。それといじめに参加してた人の親の中に議員やらなんか偉い人がいるっていうのもあったのかな?
 最初のころはずっと抵抗していたよ。なんでこんなことするの? ってね。でも、帰ってくるのはみんな同じ答え。僕がみんなと違うからだって。目の色が違うだけなのに。後はみんなと同じなのに。それだけで差別されたんだ。だから、僕は反応するのをやめた。どうせ、反応を見せると面白がって嫌がらせがエスカレートしていくから。僕は無視を決め込んだ。ただただ、そいつらを冷めた目で見つめていただけ。だけど、結局同じことで。僕の態度が気に入らないと嫌がらせは続いたよ。もう、どうすりゃいいんだって言いたいね。

 だから、僕はいつも一人で過ごしたよ。そうするしかなかったから。当然、人間不信になってたね。実の親でさえその対象だったんだから。こんな仕打ちされてたら人なんて信じられなくなるのも当然だもん。友達なんてもちろんいるわけがない…わけではなかった。そう、僕にも友達はいたんだ。ただ、それが犬とか猫っていう動物だっただけ。彼らは本能に素直で人間のように裏切らないから。人間不信だった僕も彼らのことは信じることが出来たんだ。
 学校行事は全部欠席、授業には出てないと進級するときに面倒だから出たよ。本当なら、本を読んでいれば全然大丈夫だったんだけどね。いつも一人でいたから本ばかり読んでた気がする。

 そんな日常を、人間不信な日を過ごしていた僕だけれど。あの日から少しずつ気持ちが変わっていったんだ。


3 :ラッフィン :2007/12/25(火) 00:46:30 ID:n3oJkJsk

過去の日々2

 ある日、僕は昼休みに職員室に呼ばれた。別に何か問題を起こしたわけじゃないのに。クラスの人達は「とうとう転校か?」とか「なんかやらかしたんじゃねぇ?」とかヒソヒソやってたけど。全部聞こえてるよ。ヒソヒソ話の意味ないじゃん。あ、わざとやってるのか。ってどうでもいいことを考えながら職員室に入ったんだ。

「あんた達はなんで黙ってるんだ!!」

 職員室に入ると聞き覚えのある声が怒鳴っているのが聞こえてきた。驚いてそっちに目を向けるとどうりで聞き覚えがあると思ったよ。だって、僕のお父さんだったんだから。その隣にいるお母さんも無言だけど怒りの波動を目の前にいる教師陣にぶつけているのがはっきりとわかる。

 僕は状況がわからなかったから、気付かれないように静かに職員室に入ってじっとその場を見つめていたんだ。僕のお父さんとお母さんは学者さんでいつも忙しくあっちこっち飛び回ってて、家にいることが珍しい人達だった。そのお父さんとお母さんがお昼に職員室で教師達に怒っているんだから。
 僕はわけがわからなくて、ただその光景を眺めるしか出来なかった。

「私達は何度も言いましたよね? どうして、何もしていないの? どうして、放っておくの?」
「いや、ですから。何度も言いました通り…」
「それじゃ、なんにもしてないのと同じだろう!!」

 言い訳をしようとした教師に向かって怒鳴りつけるお父さん。僕はその声に驚いて体を後ろに反らしちゃったら、そこにあった本が落ちちゃったんだ。そのせいで、みんなに僕がいることがバレちゃった。
 お父さんとお母さんは僕に気がつくと怒ってた顔がすぐに優しい笑顔になった。

「もう、あんた達に話すことはない。帰らせてもらおう」

 そう一言言ったお父さんは僕に優しく微笑みながら「こんなところにいたらおかしくなりそうだよ。さぁ帰ろう」って言って僕の手を優しく握ってくれたんだ。後から聞いた話だけど、二人とも僕がいじめられていることを知ってたんだ。僕が家でも何も話すことなく必要最低限のことしか言わないことを心配してたんだって。そして、ある日に近所の野良猫に餌をあげてたときに学校のことを漏らしちゃったことがあって、それを聞かれてたみたい。
 何度も教師に相談したんだけど、取り合ってもらえなくてもう限界だったんだって。

 学校の帰り道でお母さんは泣きながら僕を抱きしめて謝り続けてくれたよ。「ごめんね。ごめんね」って。お母さんが悪いわけじゃないのに。この目は生まれつきだから仕方ないのに。お父さんも悲しそうな顔で「すまん」って謝ってくれたよ。お父さんやお母さんが悪いわけじゃないのに。
 そのおかげではっきりわかったことがあったんだ。この人達は信じても大丈夫だって。それがわかったとたんに僕は涙を抑えることが出来なかった。今度は僕がお母さんに抱きついて思いっきりないちゃったんだ。

 その日、僕は初めて信じることが出来る人を見つけたよ。それは僕のお父さんとお母さんだった。


4 :ラッフィン :2007/12/28(金) 21:05:21 ID:n3oJkJsk

過去の日々3

それから月日が流れて、僕……いや、俺は中学に進学した。アレ以来、何が変わったと言われれば何も変わっていない。相変わらず、一人だったし、友達は出来なかったし、本ばっかり読んでた。
 ただ、いじめは減ったな。俺の身長は小学校の最高学年に上がったころから急激に伸び始めて、中学に入学するころには身長が175はあった。そんな俺から冷たい目で見られると相当怖かったみたいで、いじめは格段に減った。全くなくなったわけじゃなかったけどな。
 そんな俺はそのころから動物関係の仕事がやりたいって思い始めてた。よく怪我した動物とかを家に連れて帰って治療してたからな。いつの間にか、こういう職業になりたいって思い始めてたんだ。でも、調べてみてわかったが、そういう仕事ってなるにはかなり勉強ができないといけないことがわかった。なんでも医者よりも難しいって。だから、俺は毎日本を読んだ。少しでも知識を入れようとしたんだ。

 中学に入ったって、たいして状況は変わらない。そんな風に思ってた。だって、私立ならともかく市立の中学って、学区でどこに入るか決まるからな。同じ学校の奴らが何人もいる。また、いじめをする奴が煽るに違いないから状況は小学校と同じかひどくなるのは想像するのは簡単だった。
 まさか、ここで俺に大きな影響を及ぼす出会いが起こるなんて思ってもなかったけどな。

 それは何の変哲もない日だった。入学してから数日たっていて、普通なら友達もちらほらと出来始める時期だと思う。部活の勧誘が解禁になって様々な部活が新入生を勧誘するようになった。まぁ、俺には関係なかったからいつものように自分の席で本を読んでいたんだが。そんな時だ。

 ガラッ!

 教室のドアを勢いよく開ける音が響いた。クラスの奴らがもちろん俺も含むが、一斉にその音源を振り返ると、そこにいたのはガッチリとしていて、筋肉質な巨漢の男が突っ立っているじゃないか。誰かを探しているように首をキョロキョロさせていて、クラスの奴らはその様子に恐怖を抱いたらしく身を固くしていたけど。俺は関係ないとばかりに読んでいた本に視線を戻した。どうせ、どっかのクラブ勧誘だろう。あの体型からして柔道部だなと、そんなことを考えながら。
 でも、そんな俺の考えとは裏腹にその巨漢が向かってきたのはなんと俺の席だった。周りにいた人達は進路の邪魔にならないように道をあけていく。そして、その巨漢が俺の席の前でとまり声を掛けて来た。俺は声をかけられたんで、面倒臭かったけど仕方なく顔を上げる。
 その巨漢は言う。

「なぁ。俺はバスケ部なんだが。お前、俺と一緒にバスケやらね?」
「やらない」
「「即答!? もうちょっと考えてよ!」」

 どうやら、バスケ部の勧誘のようだ。元々部活に入る気のなかった俺は即答で返して再び読書に戻ろうとしたんだが、俺の後ろからつっこみが入ってそれが出来なかったんだ。そのつっこみを入れたのは顔が似ている男女だ。後でわかったことだが双子の姉弟だとさ。ってか、いつの間に俺の後ろにいたんだ?

 それが俺と先輩達の出会いだった。この先輩達のおかげで今の俺があるって言ってもいいだろう。何せ、先輩達は俺に初めて仲間ってものを教えてくれたからな。


5 :ラッフィン :2008/01/06(日) 09:44:20 ID:n3oJkJsk

過去の日々4

「よし、いつでもかかってこい!」
「ガンバレ〜!」
「手を抜くなよ〜!」

 なんでこんなことになっているんだ? 誰かわかったら教えてくれ。あの後、俺は3人から強引に学校の体育館に連れてこられた。そして、今目の前には腰を落とし手を広げている巨漢の男がいて、そっくりな男女は後ろで声援を送っている。俺はというとバスケットボールを持たされて立っている状態だ。
 何故だ? 俺は勧誘をきっぱり断ったはずなんだが、どうしてボールを持たされて体育館に立っているんだ? 

「なんで、こんなことになってるんです?」

 一応、相手は上級生であるから敬語で話す。教室で勧誘を断った後、この先輩はまるで話しを聞いてなかったように「そうか、じゃあ行くぞ」といって俺を強引にここまで引っ張ってきた。で、連れてきたら自分は運動着に着替えに部室(だと思う)に入っていき、俺はこの顔のそっくりな二人に見張られていたわけだ。
 で、部屋からボールを持って出てきた先輩が俺にボールを投げ渡してきて今に至ると…。
 回想から話を戻して、俺の至極当然の疑問に返ってきた答えはというと。

「俺がそうしたいからだ!!」

 というかなり自己中心的な答えが返ってきた。頭いてぇ…。

「まぁ。深く考えるな。これは一種の遊びだ。勝負内容で部活に入れなんて強要はしねぇよ。ただ、純粋にバスケをやろうってこった。それならいいだろ?」
「まず、それならクラスの友達やら部活の同志でやるのが普通じゃないですか? 第一俺みたいな素人とバスケ部とじゃ勝負にならないって考えはないんですか!」
「え? お前が素人? 嘘だろ? おい!!」

 本気で驚いているらしい。なんでだ? 俺がバスケ経験者であるというデマをどこで手に入れたんだろうか? この人は?

「だって、お前。毎朝、公園で…」

 な!! バレてる!  その言葉に俺は驚いた。まさか、アレを見られていたとは。
 俺は怪我をした動物を見つけたら手当てしているのだが、前に治療した動物の怪我が治ったんでその動物のリハビリのために朝と晩に散歩させるようにしている。その散歩コースの途中に大きな公園があり、そこは珍しくバスケットコートがあるのが特徴の公園だ。あるとき、そのコートに誰かが忘れたのだろう、バスケットボールが落ちていたんだ。そのときリハビリしていた犬がボールが跳ねる様子に興味を抱いたらしく一緒にはねて回り始めた。俺はリハビリにもいいかと動きすぎないように気をつけながらそのボールをバウンドさせてみたのが始まりだ。
 それから、毎朝公園でボールを跳ねさせることが日課になってしまい、犬のリハビリの進行具合に比例して最初はただついているだけだったボールもドリブルして走ったり、ゴールに向かってシュートをしたりとバリエーションが増えていった。そのたびに犬が尻尾をぶんぶん振ってはしゃぎまわるから、俺としても気分が良くなってさらに動いてしまうわけだ。それを見られたらしい。

「あのボールは俺のなんだよ」

 全て納得が言った。そのボールを取りにきたときに見たのだろう。
 状況を理解した俺は先輩の誘いを受けることに。普段なら断っているところだが、ここまで連れてこられてしまったし、俺の密かな楽しみを見られていたこともあって断ることができなかった。でも、勝負にならないというのは変わらないと思うのだが…?

「ルールは知ってるよな?」
「メジャーなところは…。細かいところはわかりませんよ」
「まぁ、それはいいさ。これはお遊びだからな。楽しむことが第一だ!」

こうして、俺の初めての他人との遊びを体験することになったのだ。


6 :ラッフィン :2008/01/06(日) 09:44:20 ID:n3oJkJsk

過去の日々4

「よし、いつでもかかってこい!」
「ガンバレ〜!」
「手を抜くなよ〜!」

 なんでこんなことになっているんだ? 誰かわかったら教えてくれ。あの後、俺は3人から強引に学校の体育館に連れてこられた。そして、今目の前には腰を落とし手を広げている巨漢の男がいて、そっくりな男女は後ろで声援を送っている。俺はというとバスケットボールを持たされて立っている状態だ。
 何故だ? 俺は勧誘をきっぱり断ったはずなんだが、どうしてボールを持たされて体育館に立っているんだ? 

「なんで、こんなことになってるんです?」

 一応、相手は上級生であるから敬語で話す。教室で勧誘を断った後、この先輩はまるで話しを聞いてなかったように「そうか、じゃあ行くぞ」といって俺を強引にここまで引っ張ってきた。で、連れてきたら自分は運動着に着替えに部室(だと思う)に入っていき、俺はこの顔のそっくりな二人に見張られていたわけだ。
 で、部屋からボールを持って出てきた先輩が俺にボールを投げ渡してきて今に至ると…。
 回想から話を戻して、俺の至極当然の疑問に返ってきた答えはというと。

「俺がそうしたいからだ!!」

 というかなり自己中心的な答えが返ってきた。頭いてぇ…。

「まぁ。深く考えるな。これは一種の遊びだ。勝負内容で部活に入れなんて強要はしねぇよ。ただ、純粋にバスケをやろうってこった。それならいいだろ?」
「まず、それならクラスの友達やら部活の同志でやるのが普通じゃないですか? 第一俺みたいな素人とバスケ部とじゃ勝負にならないって考えはないんですか!」
「え? お前が素人? 嘘だろ? おい!!」

 本気で驚いているらしい。なんでだ? 俺がバスケ経験者であるというデマをどこで手に入れたんだろうか? この人は?

「だって、お前。毎朝、公園で…」

 な!! バレてる!  その言葉に俺は驚いた。まさか、アレを見られていたとは。
 俺は怪我をした動物を見つけたら手当てしているのだが、前に治療した動物の怪我が治ったんでその動物のリハビリのために朝と晩に散歩させるようにしている。その散歩コースの途中に大きな公園があり、そこは珍しくバスケットコートがあるのが特徴の公園だ。あるとき、そのコートに誰かが忘れたのだろう、バスケットボールが落ちていたんだ。そのときリハビリしていた犬がボールが跳ねる様子に興味を抱いたらしく一緒にはねて回り始めた。俺はリハビリにもいいかと動きすぎないように気をつけながらそのボールをバウンドさせてみたのが始まりだ。
 それから、毎朝公園でボールを跳ねさせることが日課になってしまい、犬のリハビリの進行具合に比例して最初はただついているだけだったボールもドリブルして走ったり、ゴールに向かってシュートをしたりとバリエーションが増えていった。そのたびに犬が尻尾をぶんぶん振ってはしゃぎまわるから、俺としても気分が良くなってさらに動いてしまうわけだ。それを見られたらしい。

「あのボールは俺のなんだよ」

 全て納得が言った。そのボールを取りにきたときに見たのだろう。
 状況を理解した俺は先輩の誘いを受けることに。普段なら断っているところだが、ここまで連れてこられてしまったし、俺の密かな楽しみを見られていたこともあって断ることができなかった。でも、勝負にならないというのは変わらないと思うのだが…?

「ルールは知ってるよな?」
「メジャーなところは…。細かいところはわかりませんよ」
「まぁ、それはいいさ。これはお遊びだからな。楽しむことが第一だ!」

こうして、俺の初めての他人との遊びを体験することになったのだ。


7 :ラッフィン :2008/02/03(日) 22:39:33 ID:n3oJkJsk

過去の日々5

 他人と初めて勝負をすることになった俺だが、ここで自分の新たな一面を発見してしまった。

 どうやら、俺は結構負けず嫌いらしい。

 やはり当初の懸念通り、素人同然の俺とバスケ部の先輩とでは勝負にならなかった。というか勝負するっていうのもおこがましいほどに完膚なきまでに敗北したのだ。だけど、俺は負け続けていくうちに逆に熱くなっていくことに気付いた。
 
 楽しい…。

 漠然とそう思った。それと同時に、”勝ちたい!!”と強い気持ちが湧き出てくる。その気持ちにつられて俺の体は激しく動きを増していく。先輩の見よう見まねだがフェイントも混ぜて、少しでもゴールに近づくために。

「姉さん。気付いた?」
「あんたもってことは私の気のせいじゃないわね。あの子の動きが変わってきてるって言うんでしょ」
「そうそう。なんか、少しずつだけど鋭くなってきてるよ」
「ええ。ああ、もう!! なんかもどかしくなってきたわ」
「俺も……なんかあれにまざりたいんだけど」

 そんなふうに会話されてることに気付かずに俺は目の前にいる壁をどう乗り越えようかと四苦八苦していた。
 気付けば午後の授業が始まっていたが、俺は気にならない。先輩も気付いてないらしく俺と向き合っている。あの顔のそっくりな二人はそんな俺達をもどかし気に見守っていた。
 もう何回目かわからないほどの俺の攻撃の番になり、ついにそのときがきた。

 ドリブルは? 素人の俺ではカットされてしまうだろう。フェイントは? 所詮付け焼刃だし、仮に成功したとしてもドリブル中に追いつかれてブロックされるのがオチ。パスは? これは一対一だから論外。じゃ、後は何がある? 俺の持っているものの中で一番成功率の高いものは? 残ったのは一番シンプルで単純なものだった。

 シュッ!!

「あっ……」

 そう、ジャンプシュートだ。これだけは毎朝の日課の中でやっているためにバスケ部にもそうそう遅れはとらないと思う。そして、ボールは俺のイメージ通りにゴールへと吸い込まれていった。
 俺は先輩から初めて得点を決めることが出来たんだ。

 それから、俺達の試合を見てるだけでは満足できなくなったんだろう。そっくりの二人が乱入してきて4人での試合になり、気付いたときには部活が始まる時間になってて慌ててそっくりな二人は着替えに、俺は帰宅するという事態になった。俺の心はそのときに決まっていた。
 その翌日、俺はバスケ部に入部届けを提出し先輩達の歓迎を受けた。俺が入ってもいいのだろうか? いじめ対象者の俺が、という思いもあったのだが、後に先輩達のおかげでその思いも解消された。その話はまた後に語ることにしよう。

 それから、将来の夢とは別にバスケにも熱中した俺は毎日のように練習した。ときには先輩達も一緒に。2年のときには学校史上で初の全国大会出場もあるかも! というところまで行ったが、残念なことに成し遂げられなかった。
 
 そして、俺は中学を卒業し、高校へと進学する。春は出会いの季節というが、またしても俺は重要な出会いを果たすことに。でも、俺はこの出会いを感謝している。この出会いは俺に大切な感情を教えてくれたから。


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甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.