(リハビリ)ア・イデアの晩餐会


1 :akiyuki :2012/08/20(月) 23:42:40 ID:tDVcxmsF

 破壊前線のプロットが思ったよりも固まらないので、リハビリもかねて書きたいものを書きたいように書いてみるというだけの企画。です。


62 :akiyuki :2013/03/26(火) 23:21:08 ID:tDVcxmsFuk


【魔法使いのラブソング】鬼灯炎編

 人は誰だって精神が荒む時はある。
 心に闇がおりて、辛くってどうしようもない時がある。

 そんな時は、強い光でなくたっていい。
 夜道に浮かぶ、カンテラの灯火程度の光でいい。
 
 そんな明りでも、人は前に行くことができるから。




 種類様々な異能があふれる月本市に、魔法は存在する。
 白川実子が開門する以前より、地球に存在するその技術の根本は『繋ぐ力』である。
 遠くと近くを繋ぐ力。
 他者の心と自身の心を繋ぐ力
 敵と破壊を繋ぐ力。
 その力を持つものを、心を繋ぐ魔法使い(ラブソング)と呼ぶものは呼ぶ。


 まったく逆の魔法を使う者達がいる。
 力を使いこなせず、使うことを怖がり、他人に恐怖を押しつけてしまう。
 他者を拒む力となってしまう者達。
 思春期の少女が陥る傾向の強い、その分類を、心を拒む魔女(ヘイルホーリー)と呼ぶものは呼ぶ。



 広瀬罪雛(ひろせつみひな)という少女は、魔法使いの家系に育ち、一流の魔道教育を受け、特別な家系以外には使用不可能であった術さえ復元してしまうほどの才覚を持った、将来有望な娘であった。けれど、周囲の期待は心に負担をかけ、普通の子供のように遊んだり友達を作りたいという気持ちを抑えつけて過ごす日々は彼女の心を蝕んでいた。
 そして、とある夜に魔術の行使に大失敗して以来、彼女の心の均衡は崩れに崩れ、ついに罪雛は、人を拒絶する魔法しか使えなくなってしまった。

 という典型的な魔女で、

 鬼灯炎(ほおずきほのお)という少年は、異能などと関わってはこなかった。両親共働きのため祖母に真っ当に育てられ、よい意味で血の熱い先生によい教育を受け、大切な大切な友達を作り、その子が魔法使いであったため、思わず魔法を習得してしまった。
 とかく優しくて、人の心の繊細さというものを、大事にしたがる傾向があった。
 
 それが、わがままだとしても、自業自得だとしても、荒んでしまった同年代の人間を、放っておけない性質で。
 心を持てあまし外部に悪意をふりまく魔女を放っておくことなどできなかった。
 炎にとって、罪雛はもろ、ど真ん中であったのだ。



 罪雛は戦う。
 人に害なす者と戦い、それを止める。
 罪雛自身のように、他人も自分も苦しめる行為をしなくていいように、戦って止める。
 その瞬間だけは、自分が世界に必要とされている気になれるから。


 炎は会話する。
 苦しんでいる者と話し、それを共有する。
 別に自分が救ってやれるなんて思ってはいないけれど、やれることはやる。
 その瞬間だけは、幸せを祈る時間だけは、誰にだってあっていいはずだから。


 
 月本市月本町。二人の魔法使いが、生きている。
 ラブソングを口ずさみながら。


63 :akiyuki :2013/03/29(金) 23:01:00 ID:onQHQJocLe


【かんてらっ!】高町観照編



 月本市童子町の農業振興地域内に、どかんと建った私立柊学園。

 尋常でない生徒数がひしめければ、その中に含まれる変人の数も多い。


 おそらくその頂点に位置するだろうポジションに『かんてら屋』はある。


 高町観照(たかまちみきてる)
 筋骨隆々の大男。甘いものとゆるキャラグッズ集めが趣味。
 見た目は怖いが、一言二言会話すれば、人のよさがにじみ出てくる好漢。
 人を、強制的に安心させるという超能力『ぐらり』を使う。
 友達も、そうでない者も、観照(みきてる)の名を読み替えて、かんてらと呼ぶ。
 


 放課後の、購買横のテラス(生徒会が角材を調達し、物理的に作った)に集まる大男と、その友人達。誰が呼んだか『かんてら屋』。
 彼らに相談すると、どんな変な悩みでも、なんとかしてくれるともっぱらの噂。

 犬小屋のペンキ塗りから、寂れた山村の村おこし。
 呪いのおまじないの調査から、空から落ちてきた宇宙人のミイラまで。

 
 不思議なことが起きやすくなったこの町で、『あっち』と『こっち』その境界線上に立ってしまった少年少女の横にやってきて、一緒に馬鹿騒ぎをする。


 この広い世界、そんな青春を送る人間が一人くらいいてもいいんじゃないのかな。

 かんてらはそう言って、いつも笑う。


 大体、事態は急展開を迎え、最終的に超能力バトルになるのだが。

 まあ、この広い世界、そんな青春を送る人間が一人くらいいてもいいのかもしれない。

 


64 :akiyuki :2013/03/30(土) 20:53:01 ID:P7PitFPHYJ


 かんてらの使う『ぐらり』という力は、その他の異能者とは、また毛並みが違う。

 魂と肉体を繋ぐ『生命』というエネルギーを流用して、こちらとあちらを繋ぐ『魔法』に対して、『ぐらり』は人の心の弱さを原動力としている。

 心臓を介して魂より放たれる微量の波動を、ネガティブな心の揺らぎに乗せて体外に放出し、とても奇跡とは呼べぬ結果を起こす力。

 人に触れられることを怖がる少女は、熱を操る術を覚え、誰も彼女に触れられぬようになった。
 すべてにコンプレックスを持つ矮躯な少年は、人を転倒させる力を知り、すべてを見下ろすよになった。
 自分の罪を認めることのできない彼女には、迷わせる眼が与えられ、誰も彼女にたどりつくことはできなくなった。
 

 後ろ向きな気持ちから生まれた力のせいで、ネガティブ思考をなかなか抜け出せない三人だが、それでもかんてらのおかげでそれなりの日々を送れている。


 放課後、テラスに集まってかんてら屋の活動を行えるくらいに。




 基本は彼らを笑わせたいという気持ちから始まった。


 かつて、世界を滅ぼそうとした魔女として蔑まれたあの人が大切にしていたように。

 今も、人の魂を救おうと奮闘する夕焼けの魔法使いのように。
 

 いつの日か【過日の魔王(カンテラ)】として、終末を迎えるその日まで、楽しく生きたいと、少年は祈っている。


65 :akiyuki :2013/03/30(土) 21:31:09 ID:P7PitFPHYJ


【落魂の都】月本喜須・間久部冬子編


 『童子』 角の生えた少年の姿をしたもの
 童子町には30万近い個体が住んでおり、天候の変わり目、花の咲く時、人の気持ちの高揚や、深く悩む時などに現れるという。
 ありとあらゆる現象に人格を与えたもの、という解釈が一般的である。人に影響を与えることはほとんどない。
 原則、人間の目には見えない。

 『安綱』 童子を見ることのできる人間
 最近は、ほとんどいない。血縁関係により、見る力が遺伝することもあるが、最近は血の薄れか、安綱が継承されることは少なくなってきた。
 はずなのだが、最近、童子を見えるようにしてしまう童子が出現し、安綱の数は、増加している。なぜかは不明。


 『童子切』 童子を使役する安綱
 ずっと昔、まだまだ鬼神に市民権があった時代。童子を使役する術というものが存在した。
 よいことが起こる時、吉兆として現れる童子を呼び出すことで、逆によいことを招いてしまう。
 悪いことが起きる時、不吉の象徴として現れる童子をとりつかせることで、不幸に陥れる。

 そのような呪い師が、この町にいて。

 月本一族により根絶された。


 月本喜須  女子高生。お嬢様。安綱
 月本市で一番の金持ちの直系の御姫様。父親は日本語がぺらぺらなイギリス人で、母親は自分と父を残して、蒸発した。父親は、なんとか月本本家になじもうとして、悪の異能者取り締まりに精を出していたが、炎の魔術師と戦っている最中に、被呪し、蒸発した(化学的な意味で)
 一人取り残された喜須は、目を見張る美人に成長し、なんとなく恐れ多くて近づきがたいオーラを出している。本人はそんなつもりはないのだが、環境で培われた貴人性というのはにじみ出ているのだろう。
 家に帰ると、とたんにずぼら。生活力は、あまりない。
 色素の薄い赤毛を、お手伝いさんに梳いてもらう時間が二番目に幸せ。最近の一番の幸せは、友達の冬子と時間を過ごすこと。
 得意なことや、不得意なことがあまりない。なるようになればいいと思っているし、どんな在り方でも、受け入れるしかないとも考えている。
 月本一族の長女ということ以外に、自分には何の価値もないのではないかと、悩んでいたりもする17歳。


 間久部冬子 女子高生。呪術師。安綱。
 おかっぱ頭の、背の小さい少女。バトミントン部。
 童子を使役し、呪いをかける術師の末裔。しかし、その術自体は追い詰められ根絶させられており、今や童子が見える家系にしか過ぎなくなっている。
 それでも、安綱達は再興を夢見、術を復興させようと、地下にもぐり研究を進めている。
 冬子は、そんなことをしたくない。大学で、国文学を専攻したい。
 けれど、母は許してくれないだろうとも理解している。
 そんな運命に自分を陥れた月本一族であり、たった一人の同年代の安綱であり、一緒にいてちょっとドキドキする奇麗な少女である月本喜須に複雑な想いを抱いている。


 千足
 月本市に何十種類と存在する異能体系。異能を自発的にえる方法はまず、ない。異能が持つ物語に巻き込まれることによって、発症することが多い。しかし、その発現を自在に操ることができれば、どうなるか。
 その異能者を捕まえて、システムを解読し、人間を誰でも異能者にする技術を開発することを目的とした会社が、この町にはある。
 悪の有限会社SAKI 営業課長 鬼灯千足(ほおずき むかで)
 この町でも、もっとも多くの戦闘回数の経験者である。

 一色
 千足のただ一人の部下。営業課は、この二人だけ。
 まともに戦える人材が、二人くらいしかいないので、それ以上人を増やしても役に立たないためである。
 魔術調整を受けすぎて、もう人間である部分が、ない。
 それでも、なるようになればいいと思っているし、どんな在り方でも、受け入れるしかないとも考えている。



 落魂の都
 月本市童子町。ここで、赤毛の少女と、魔人が出会う。


66 :akiyuki :2013/04/06(土) 15:20:03 ID:P7PitFPkzA

ダンドリアン 最終話


「だったら、シロネコが異界の扉を開けることも、仕組まれてたってことなのか?」
「アカシックレコードを書き換える力を持った『天使』ならば、シロネコさんにわざとそれを見せることくらいしたんだろうね」

「何のためにだ」
「人類を、ア・イデアに対抗できる存在にまで進化させるため。キュキと、その配下の天使達は、人類を極点の存在の原型と定めた。キュキの支配下にない、並行世界の別の地球の技術や異能を取り込んで、イデアの娘達と宇宙戦争ができるくらいにまで、激変させる」

「S・A。ファインドランダム、ハイドランダム、時の翁、車輪堂縫ゑ、ファイブ、デア・メルクヴルディヒ、テロメア、女帝陛下、永遠愚行。天使全員がこの町に降りてきたのも、そのためか」
「彼らは月本市を拠点として、運命を捻じ曲げる。種レベルの危機を、巻き起こし続けるだろう。そして、それをあらゆる手段を使って克服させることで、人類を強制的に成長させる」

「……。しかし、シロネコは自分が【世界を滅ぼす獣】になるという未来を予知して、そうならないように異界へ消えたのだろう? なぜ、あえて危機を回避する予知なんて許しあんだ?」
「彼らはわかっているんだよ。シロネコさんが、異界から戻ってくることを。だって、世界を滅ぼす獣が一匹しかいないなんて、誰も言ってないのだから」


「……、次郎、この町で一体これから何が起きる?」
「ここから先は、僕の想像だが。【過日の魔王】と【世界を滅ぼす獣】が戦って世界が滅ぶのなら、どちらかになる可能性のある候補が、複数存在していると考えるべきだ。もしかしたら、シロネコさんが開けた門から、これからやってくるのかもしれない。そして、破壊前線の戦いに生き残った最後の2体が、それになるということだろう」

「キュキってのは、人間を作った神様なんだろ……。なのに、そこまでするのか」
「するんだよ。彼の目的は、宇宙戦争を生き抜く強い生命体の登場なのだから。そのためには、別の世界の扉を開く異能なんてとんでもない異能を生んだ人類は、まさにチャンスなのさ」

「次郎、お前はこれからどうする?」
「【過日の魔王】の候補者を探す。キュキの好きなようにはさせない。彼らを保護する」

「さすがだな、ダンドリアン。お前なら世界を救えるだろう」
「手伝ってくれないのか、カーゴ。なら、君は何をしようと思う?」


「【世界を滅ぼす獣】を探す。そして、片端から絶滅させる。シロネコみたいに、他人を導いてもやれないし、お前みたいに段取りよく準備もできない。敵と戦うしか能がないからな」
「それは違うよ、カーゴ、君はシロネコを失って、自暴自棄になってるだけだ。君は、僕と来るべきだ。僕を使って世界を守るのは、君なんだ」


「三銃士は解散だ。今までありがとう、俺も、シロネコも、君がいたから楽しかった」
「……」




「厳しい道を選ばずともよかろうに」














 

 『一千億年平行協定』


 ルール


1、地球神キュキの配下である十人の天使は、様々な危機を月本市に与える。
2、異界から流れ着いた力を用いて、人類は異能者になる。
3、その異能をどのように使うかは、人の心次第である。
3、全ての世界の危機を克服した日が、審判の日である。
4、天使は残酷な運命を与え、審判の日に、二人の異能者をその場に立たせる。
5、2体の内、人の存続を望む者を【過日の魔王】 人の滅亡を望む者を【世界を滅ぼす獣】とする。
6、2体が戦い、勝利した獣は、人類を滅ぼす。




追加ルール
7、その結末に不服がある場合、月影次郎は時間をさかのぼり、白川実子の消えた日からやり直すことができる。これは月影次郎の魂が敗北を認めるまで有効である。

8、誰が魔王となるか、誰が獣となるかは、不明である。天使長スカイウォーカー・アンサーズであろうとその項目の改竄は許されない。

9、滅びの運命を変えられた時、人はア・イデアと対面する。その瞬間を、『ア・イデアの晩餐会』と呼称する。


67 :akiyuki :2013/04/07(日) 16:55:53 ID:P7PitFPkzA


 とある、ファミレス。

 10人の男女が隅の席を囲んでいた。

 一人は、男装、赤髪の大女。
  二号天使(異能回収担当)『戦女神』ファインドランダム
 
 一人は、同じ衣装で、黒髪の少女。
  三号天使(異能配布担当)『剣女神』ハイドランダム
 
 一人は、緑色のくたびれたマントに身を包んだ、旅人風の男
  四号天使(特異点探索担当)『機械使徒』デア・メルクヴュルディヒ

 一人は、ダークスーツに、東南アジアの精霊でも真似た奇異なデザインの仮面をかぶった男。
  五号天使(『魔力』維持管理担当)『午後五時元帥』ファイブ

 一人は、傍らに無駄に大きなラジカセを侍らす筋骨隆々な爺様。
  六号天使(『最後の審判』証拠品収集担当)『時の翁』時の翁

 一人は、ノースリーブから露わになった両腕、足、頬。見える皮膚を全て包帯に包んだ女(?)
  七号天使(時間製造ライン管理担当)『運命維持管理責任者』車輪堂(しゃりんどう)縫ゑ(ぬえ)

 一人は、席に体がおさまらず、仕方ないので外のテラスで一人チョコパフェを食べる無口な男
  八号天使(寿命開発者)『岩窟王』テロメア


 一人は、みているだけで眼が痛くなるような、ドギツイ紫色のゴシックロリータファッションに身を包んだ、みた限り幼い娘。
  九号天使(零号異界維持管理担当)『過日の魔王』女帝陛下

 一人は、ただそこに座っているだけで、呼吸しているのかさえ疑いたくなるほどに、動かない。
  十号天使(    )『切り札』永遠愚行




  地球神・重力を紡ぐ男(ジューショ・クア・キュキ)が、自らの分身として、人に加護を与えるために遣わした十体の極点。

 そして、彼らを束ねる、キュキの意思を代行するものにして、地球の過去から未来まで全てをを収めたアカシックレコードを書き換える異能を持つ男。

 一号天使(地球COO(最高執行経営者))『限りなく遠き者』スカイウォーカー・アンサーズ


 彼は今、自分の目の前の席でうまそうにスパゲッティを食べる少女に文句を言った。


「おい、シロネコ。なんか思いっきり変な方向に話が向かってるぞ!」

 天使の長に文句を言われた少女、白川実子は、心外と言った表情で反論する。

「そんなこと言われても、私のせいじゃないよ。次郎ちゃんが何回も歴史改竄のために動いたからね、少しずつ、物語の本筋さえ狂い始めたとしても、おかしくはないよ。長い時を生きすぎたからね。たぶん、私とあんたら天使が協議して世界破滅を防ぐためにこんな事態を引き起こしたことも、忘れちゃったんだろうね」
「くそう、俺達ほど人類愛に満ちた存在なんてないのに、悪党みたいな書き方してあるじゃねーか、この月影招神帳(37刷発行)」

 少女はけらけら笑う。
 ぶすりと、言った擬音のよく似合うふてくされづらで、地球最高位に立つ男が口を開く。
「しかし、ここまで俺達の真意と違う方向に話が進むと、気が気ではない。予定された『四つの大災害』と『飛来体』以外にも、もっと強く介入すべきじゃないか?」
「やめときなよ、余計こじれるから。次郎ちゃんもカーゴも、今じゃ天使陣営は人類の敵くらいに思ってる。誤解を解くには、4巡くらい遅すぎた」
「俺達、お前が思ってるよりずっと万能だぞ?」
「あんたらが思ってるより、人間の魂は傷つきやすいんだよ。いまさら、真実を伝えたって、辛くなるだけだよ。だから、私だってこうやってこっちに帰ってきても……顔も合わせられない」
「むぅ。ままならんな」
「そもそも、人間程度の進化具合で十一号天使(対宇宙担当)を生み出そうなんてのが、皮算用だったんだと思うけれど」
「そんな文句は内の御屋形に行ってくれ。俺は止めたんだが、人間が滅びるのはみるに堪えられないから、進化させる。とか。あほかと思ったわ」
「その結果が、今のこの惨事か。あんたんとこの神様、優しいのか、冷たいのかわからんよね」


「……、俺が人間のお前に訊くのもおかしな話だが……。勝算はあるか? 正直、俺達としてはお手上げだ。それこそ地球に存在する異能を、今この瞬間にすべて消滅させるのがいいんじゃないかとさえ思う。そこに座っている『永遠愚行』の戦闘力なら、可能だぞ?」
「それじゃあ、キュキの望む人の進化は止まってしまう」
「異能がなければ、人は成長できないのか? それほど命はつまらないものとは思えない」
「時間がない。私とあんたがみることのできる、アカシックレコードがあと10年程度で途切れてるってことは、その時にはイデアの娘達は軍勢を整えて地球に侵攻しているってことだろ? なら、それまでに人間を戦える存在にしなければならないってことだ」
「ぶっちゃけ、俺達天使でもことたりるんじゃないのか?」
「あんたら、キュキの分身だろ? ルール(イデアとキュキの協定)では、お互いの分身体が直接介入することは許されない……、ってなんでさっきから私が否定意見ばっかり出してるんだろうね。私は人を救いたいのに」

 料理を食べ終わる。

 食器を片づけにきた店員に、デザートを注文する。

 明らかに見た目のおかしい十人ほどの集団(その内飯を食ってるのは少女一人である)に震える声で応対するバイト娘を見送り、シロネコは結論を口にした。


「今度の物語では、私達の想像を超える者達が生まれるかもしれない」
「ほう、あいつらに期待しているのか」
「月本市をめぐる計画では、大分予想とは別の方向に話が進んでしまった。もっとゆるふわな出来事を期待していたのだけれど。今あの町で生きる子達は、私が生きていた頃とは、まったくキャラが変わっていった。それも、いい方向にだ。歴史の修正をずっとずっとがんばってくれた次郎ちゃんの努力は、無駄じゃなかった」
「ならば、生まれるか。魔王でも、獣でもない者が」
「かもしれない。けれど、その時は私ら上位者もただじゃ済まないかもしれないよ」
「いいさ、世界が滅ぶより、ずっといい」
「……」
「何だ?」
「あんたは、変わらないね」
「そりゃ、ま。天使だからな」


 


68 :akiyuki :2013/04/07(日) 20:27:02 ID:P7PitFPkzA

第一部・完


 宇宙と地球と異界の物語は、最後はいつも滅びで終わる。

 けれど、それが我慢ならない連中は諦めなかった。

 予知を使い、禁じ手であるイデアの力を用い、時間さえ巻き戻して、世界を改変させ続けた。


 シロネコが消えたことで敵対するはずだったカーゴと次郎は、和解とまではいかずとも、それぞれが世界を救う手段を模索することを確認し、再会を誓い別れた。

 外宇宙から来た最初の『飛来体』である夢幻人形デルタリオンは、六体の同胞と自身を破壊することで、地球を守るはずだった。しかし、高山和時は、デルタリオンを死なせなかった。そうすることで、イデアの娘とキュキの子が、ともに歩める可能性を示して見せた。

 『飛来体』と、それを駆逐する陸上自衛隊の戦いに巻き込まれ、命を落とすはずだった島左子は、もののけ三銃士を率いて妖怪人間と魔術師の戦争を回避してみせた。

 行き過ぎた異界汚染を調整するために、キュキとイデアが結んだ協定を参考に締結された平行協定。その実務を担当していた女郎屋敷小夜子は、異界汚染を受けすぎて、もう人ではなくなってしまった。張りつめた彼女の心に後悔と憎しみがほんの少し垂らされた時、【世界を滅ぼす獣】は誕生したのだった。けれど、それでも愛の言葉を届けようとした男がいた。彼は恥も外聞もなく、頼れるものはなんでも頼って、できる土下座を全部して、紆余曲折を経て、ぼろぼろになって、そして獣にプロポーズをした後は、奇跡がどうにかしてくれた。


 最悪なる者と呼ばれた魔法使いが、「一千億年平行協定」を破壊しようとたくらんだ。何の準備もできないままに、戦争を始め、宇宙を崩壊させようとした。けれど、何度も繰り返した時間のうち、ついに月影降臨術を完成させることを間に合わせた時間軸で、鬼灯炎は魔法使いのラブソングを宇宙に届けた。

 かつて化物と呼ばれ、忌み嫌われた異能者達。彼らは出会い、憎しみあい、殺し合い、最後の一人になるまでそれを続けた。そうして【過日の魔王】を生み出すはずだった。けれど、諦めない少年が一人いた。怪物の灯火を先頭に、前を向いてあるくことを決めた怪物達は、彼らの軍勢を作る。その頭目【大魔王】にして、ラブクルセイダース首領の月食夜理は、自らの命を犠牲にしてまで彼らを導いたその少年のことを忘れないために、自らを【過日の魔王達(カンテラ)】と名乗り、キュキの軍勢に喧嘩を売った。


 ありとあらゆるバッドエンドフラグを打ち砕いて、審判の日を、『ア・イデアの晩餐会』を迎えた時。

 イデアが用意した食卓には、百人くらいの人とか人でないものが押し掛けた。
 最初は、生き残った最後の一人、とかのはずだったのだが、仕方がない。全員、生き残らせて見せられては、仕方がない。
 
 それはそれは、とても盛況な夕食会になったのだと言う。




 第一部・『ア・イデアの晩餐会』 終


 第二部・『破壊前線』へ移行  ?   


69 :akiyuki :2013/04/07(日) 20:27:04 ID:P7PitFPkzA

第一部・完


 宇宙と地球と異界の物語は、最後はいつも滅びで終わる。

 けれど、それが我慢ならない連中は諦めなかった。

 予知を使い、禁じ手であるイデアの力を用い、時間さえ巻き戻して、世界を改変させ続けた。


 シロネコが消えたことで敵対するはずだったカーゴと次郎は、和解とまではいかずとも、それぞれが世界を救う手段を模索することを確認し、再会を誓い別れた。

 外宇宙から来た最初の『飛来体』である夢幻人形デルタリオンは、六体の同胞と自身を破壊することで、地球を守るはずだった。しかし、高山和時は、デルタリオンを死なせなかった。そうすることで、イデアの娘とキュキの子が、ともに歩める可能性を示して見せた。

 『飛来体』と、それを駆逐する陸上自衛隊の戦いに巻き込まれ、命を落とすはずだった島左子は、もののけ三銃士を率いて妖怪人間と魔術師の戦争を回避してみせた。

 行き過ぎた異界汚染を調整するために、キュキとイデアが結んだ協定を参考に締結された平行協定。その実務を担当していた女郎屋敷小夜子は、異界汚染を受けすぎて、もう人ではなくなってしまった。張りつめた彼女の心に後悔と憎しみがほんの少し垂らされた時、【世界を滅ぼす獣】は誕生したのだった。けれど、それでも愛の言葉を届けようとした男がいた。彼は恥も外聞もなく、頼れるものはなんでも頼って、できる土下座を全部して、紆余曲折を経て、ぼろぼろになって、そして獣にプロポーズをした後は、奇跡がどうにかしてくれた。


 最悪なる者と呼ばれた魔法使いが、「一千億年平行協定」を破壊しようとたくらんだ。何の準備もできないままに、戦争を始め、宇宙を崩壊させようとした。けれど、何度も繰り返した時間のうち、ついに月影降臨術を完成させることを間に合わせた時間軸で、鬼灯炎は魔法使いのラブソングを宇宙に届けた。

 かつて化物と呼ばれ、忌み嫌われた異能者達。彼らは出会い、憎しみあい、殺し合い、最後の一人になるまでそれを続けた。そうして【過日の魔王】を生み出すはずだった。けれど、諦めない少年が一人いた。怪物の灯火を先頭に、前を向いてあるくことを決めた怪物達は、彼らの軍勢を作る。その頭目【大魔王】にして、ラブクルセイダース首領の月食夜理は、自らの命を犠牲にしてまで彼らを導いたその少年のことを忘れないために、自らを【過日の魔王達(カンテラ)】と名乗り、キュキの軍勢に喧嘩を売った。


 ありとあらゆるバッドエンドフラグを打ち砕いて、審判の日を、『ア・イデアの晩餐会』を迎えた時。

 イデアが用意した食卓には、百人くらいの人とか人でないものが押し掛けた。
 最初は、生き残った最後の一人、とかのはずだったのだが、仕方がない。全員、生き残らせて見せられては、仕方がない。
 
 それはそれは、とても盛況な夕食会になったのだと言う。




 第一部・『ア・イデアの晩餐会』 終


 第二部・『破壊前線』へ移行  ?   


70 :akiyuki :2013/04/18(木) 22:16:43 ID:onQHQJoFLG

破壊前線 移行


 深夜のテンションのまま、書きたいものを書きたいように、書いてみるだけの企画。
 
 続行中


71 :akiyuki :2013/04/18(木) 22:40:22 ID:onQHQJoFLG

第二部・破壊前線



 女郎屋敷(じょろうやしき)(てつ)少年が、この世のものとは思えぬ、魔道の世界に片足を踏み入れてしまった原因は、数えると3つある。



 一つは、自宅から300メートルのところにできたコンビニエンスストア。
 最寄りのスーパーマーケットが午後十時には完全閉店している彼の住む町で、深夜でも漫画やアイスが買える店舗の登場は、彼の生活リズムを一変させた。
 深夜出歩く理由ができた。


 二つは、『メルヴィッツの逃走地図』
 それが一体何の地図なのか。そもそも、どこを書いた地図なのか。
 知らない場所の知らない経路を示したその紙切れの所有権を、彼は得た。
 世界で初めて公的に認められた魔女『メルヴィッツ』
 彼女の遺品を手に入れたものは、その力の残滓もまた手に入れる。
 そんなものに、巻き込まれた。


 三つは、同級生の少女。
 『メルヴィッツの遺品』を収集する趣味のある、わかりやすい不思議系少女。
 初対面だろうと、人を名前で呼ぶ癖のある、魔道の住人
 深夜のコンビニの駐車場。
 逃走地図を持って、彼女に出会った鉄は、言ってしまった。

「俺のことを鉄鉄名前で言うなら、お前も名前で呼んでいいんだろうな」


 そんなことを口走ったために、彼女に興味を持たれてしまった。


 
 魔女の生まれた町で、魔女が遺したものが、それなりの奇跡を起こす夜。

 女郎屋敷鉄とその恋人、黒沼(くろぬま)らっこの物語が始まる。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
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