交叉する地の絶対強者


1 :ヘタレ :2008/02/15(金) 00:30:58 ID:ncPiWArF

ある所に天国や地獄に霊界、魔界などといった異界etcにもっとも近く、宇宙にも何か謎の電波を発しているのだろうか、
地球外生命体などといった異世界の住人達を年がら年中呼び寄せてしまう、なんとも迷惑で不思議な町があっとさ。


この物語は、学生のかたわら、代行屋をひっそりと営む少年がよそから来た者達や、この町の住人らが起こす椿事に巻き込まれたり、
ちょっとした雑務や大事をおし付けられたりするけど、それらを何とかしていくという話である。


7 :ヘタレ :2009/01/05(月) 00:07:05 ID:m3knrFsJ




一方・・・、萩裏の家を出て行った凛たちはというと・・・、

「はぁ、はぁ、はぁ・・・うぅ〜」
「・・・っ」
「・・・」

周囲に気を配りながら、人気のない場所を目指して町の中を駆けていた。


ちなにみ、周囲に気を配りながら走らなければいけない理由に、
勢いで飛び出したまではよかったが、萩裏家の浴衣のままだったから・・・、
などという間抜けなものは含まれていない。


昨日洗濯されていた衣服は朝には乾いていたので、
午前中には2人とも浴衣から昨日の格好に戻っている。


容姿に関しては、重咲の格好は問題なしとして、凛は全身黒ずくめの格好で、
ただでさえ人目を引く上に、刀を帯刀しているので、変に注目を浴びるが、
そういうことに関して、凛は少々無頓着な方なので特に気にもかけていない。



なお、刀のことに関しては、凛はすぐに抜けないから邪魔だと嫌がったが、
雫たちにいわれ、刹火が用意した布袋を刀に被せられているので、
はたから見れば剣道場に通う健全(?)な少女に見えないこともないので、
誰かに通報されて、駆け付けた警官から逃げ回っている・・・というのでもない。


では何故走っているのかというと、萩裏の家を出てから、5分程歩いていたら
数日前から散々相手をしてきた敵≠フ気配を凛と黒羽が気取ったからである。


正確な数までは気取りきれていなかったけれど、大した数ではないと判断した凛は
敵を返り討ちにしようと、人気のない場所を探しながら、最初は適度に距離を置いて
歩いていたのだが、徐々に追手の数が増えていくことに気づき、移動速度が上がったのだ。


補足として、凛がその場で戦闘に入らなかったのは、重咲になるべく被害を
出さないように戦う場所を選んでほしいと頼まれていたからである。


また、敵も増援待ちか、どこかに誘導しようとしているのかはわからないが、
今のところは姿を隠して追い回してくるだけで、仕掛けてくる様子はない。


「凛よ、右後方からも増援が来ておるぞ」
「このままやみくもに逃げているばかりでは挟まれてしまうぞ」

「わかってる。 ・・・、それにしても何でこんな急に・・・」
「あいつの家にいたときは全然だったのに・・・、うんん、むしろ・・・」


土地勘のない黒羽には敵の位置を気取ることしかできないので、
その役に徹しつつ、どこか戦いに適している場所はないかと訊ねると、

凛は現状の異常さに眉をしかめて、原因と、ふと感じた違和感のワケを思考していた。


「はあ、はあ、はぁ・・・、リンちゃん・・ゎ・私、もう・・・、はぅぅ・・・」

重咲はもともと体が弱く、体力もさほどないにもかかわらず、半強制的にかれこれ
10分以上も凛に手をひかれて、ふらふらになりながらも走りまわっていたので、
足取りもおぼつかず、心身ともに限界を迎えつつあり、顔を真っ青にして今にも倒れそうだった。


とはいえ、この状況は凛と重咲にとっては、突然の出来事というほどのものでもなかったりする。


確かに数日前から重咲は化け物に付け回されるようになって、
今回のように必死で逃げ回ったりもしたけれど、そのつど凛に守られていたので、
あまり深くは考えたこともなかったが、そのときはどこにいても、
どこに隠れていても、四六時中化け物の存在に脅かされ、凛の家もぶっ壊されたりもした。


が・・・、萩裏の家にいたときだけはこれといって、
敵の存在を感じることはなかったし、何も起きなかった。


全くもって不本意ではあるが、常に化け物に襲撃されるという
この状況が、彼女たちにとっては本来あるべき状態であった。


では何故、萩裏家では何も起こらなかったのかという、それは萩裏の家を中心に、
その周囲に特殊な結界のようなものが、はりめぐらされていたからである。


なお、その特殊な結界は何かを寄せ付けないようにしたり、その空間内にいる
モノを閉じ込めたりするのもではないので、攻撃したり、防いだりは一切できないし、
独自の空間を維持するためのものでもないので、誰もが結界内への出入りが自由にできる。


では何のための結界かというと、隠ぺいや妨害行為のものといったところであろうか。

詳しく述べると、その空間内に居る、または在るモノならば、刹火や雫にはその存在を、
結界の内・外問わず、誰にも認識できないようにすることができるのだ。


この方法ならば2人の存在だけを消すだけでいいので、
町から一部の空間を隠すよりかは違和感を最小に抑えられるし、
2人が消えた地点を探し出すのは敵にとっては困難である。


つまり敵に2人の少女に関する情報を一切遮断していたのだ。


その上、この結界は高等な技術でつくられており、発生源の特定はもちろん、
結界の内と外の境目が分からないほどで、よっぽど鋭敏感覚な持ち主ではなければ、
気づくことはできないだろうし、かりに気づいたとしても、その用途がわからないようにできているので、
化け物たちには重咲たちが消えたあたりの地点があやふやになっているので、
仲間が殺られた地点からしか、2人を探し出せなくなっていたので、かく乱できていたのだが、


化け物ホイホイこと、重咲とただでさえ全身黒ずくめで目立つ凛の2名が、
結界の外に出てしまったことで、あっという間に敵に見つかっちゃいました〜
・・・というだけのことなのだが、凛たちはその事実を知らないので、


(・・・やっぱりあいつは敵の親玉だったんじゃ?)
などと凛は的外れなこと考えていたりする。


「あの親子はかなりの力≠持っておるようだった」
「ここはいったんひき返して彼らに協力を仰がぬか?」

と、黒羽は萩裏の家にひき返すように提案するが、凛はその選択肢を
選ぶことなく、ま逆の方向に突っ走って状況を悪化させていたりする。


「っ――! フぁ―っ ―――・・・・」

「しかし、このままでは麻奈の嬢が持たぬぞ?」
「・・・む〜ぅ・・ったくしょうがないわね!」

あからさまに限界に来ていた重咲はもう喋ることはおろか、呼吸も満足にできずに
ただ引きずられているような感じだったので、足手まといもいいところだった。


それを見かねて黒羽が指摘すると、凛は小さく唸って、
重咲の腕を引きよせると、素早く背中に背負い、

「黒羽も!」
「ウム」

黒羽の名を呼び、黒羽が小さくうなずいてしがみ付くと、一気に速度を上げて駈け出した。


もちろん萩裏の家とは逆の方向に・・・、しばらく走っていると・・・、


建設中の建物や、取り壊されかけの家が建ち並ぶだけの、
随分と殺風景で人気が全くない寂れた場所にたどり着いた。


そこはかつて、どこぞの金持ちが、巨大なデパートやらマンションを建てるために、
その周囲の家主たちを立ち退かせて、巨大なビルを建設していたのだが、完成直前に
不況の影響でか、倒産か何かの理由で破産となり、その後は手付かずとなった廃墟地帯であった。


「よし、ここなら・・・」

凛は重咲の条件に見合った場所を発見し、これでひと暴れできると微かに笑むと、
刀に被せてあった布を投げ捨てて、廃墟と化した町の一角へと入って行った。


中は工事の道具や機材などを置くための場所として、いくつかのスペースが設けられており、
意外と見晴らしがよく、戦う場としても、状況に応じて即、隠れる場として最適な場所であった。

凛は布を被った未完成の建設物という名の巨大な壁を背にして、
そこに重咲と黒羽を下すと、3歩ほど前に出ると抜刀状態で、

「いい加減逃げ回るのには飽き飽きしていたところだし、相手になってあげるわ・・・」
『さっさと出てきなさい!』

気合十分に追手の気配がする方向を睨みながら挑発する。


「くくくっ・・・」
『ぎぎぎぃーーー・・・』
≪・・・面白い≫
[フッ]
【・・・】

凛の挑発に応じるかのようにして、辺りがざわつきはじめ、
その無謀さを嘲笑う無数の声が、静まりかえった廃墟地をさらに不気味な場所にする。


そして、物陰に隠れていた連中が徐々にその姿を現しだしたのだが、
その姿はどれも現存する生命体とはどこか違っていて、違和感だらけの者たちだった。


具体的にあげると、両手がカマキリのカマみたいに長く折れ曲がっていて、
全身が紫色の毛におおわれた、手なが猿だったり、昨日襲ってきた馬とバグを
かけあわせたような化け物だったり、バッタの後ろ脚のように異常に足が発達したウサギだったりと、
この場にいるほとんどが、昆虫の特徴をもった謎の獣たちであった。


「ふ〜ん・・・。 たったの3〜40匹程度で私と戦りあおうだなんて、ナメてるんじゃない?」

相変わらずの下眼使いで、凛は周囲を取り囲む敵の数を大雑把に数え、その数に物怖じすることなく、
いつもの強気な態度で、むしろ物足りないと言わんばかりに、敵を挑発する。

「・・・」
「・・・リンちゃん」
ことの成行きを無言で窺う黒羽と、凛の背中を心配そうに見つめる重咲。  


≪人猿が・・・、エラそうに・・・≫
「コロス・・・粉々にして・・・」
【・・・邪魔者、排除する】
[ガガガッ・・・・!!]

互いの事情により、お預け状態だった戦闘だが、凛の挑発により、周囲が一気に殺伐とした空気に包まれ、
今まさに獰猛な獣たちがその力を振るわんと、一斉に身構えて、前方の敵から一気に突っ込んでくる。


「ふん! 殺れるものなら、やってみろ!!」

大きく啖呵をきると凛も迷わず敵陣へと突っ込んでゆく。

「邪魔ぁ――!」

気合とともに、走りながら片手で持った刀を水平に振り抜き、正面の魔物たち3体を一撃で斬り捨てると、

「があ?!」
≪ぐぱっ!!≫
[ぎゃああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!]

断末魔を上げながら、青白い炎へと変化して、燃え尽きてゆく残骸を背にして、

「はっ!」

助走でえた勢いをそのまま跳躍力に変え、5mほどの高さまで跳びあがる。


「くそっ! キマルたちが殺られた!!」
≪来るぞ〜〜〜上だ!!≫ 
≪叩き落とせ!!≫
【ガルルルゥウ〜〜〜〜〜〜!!!】

その下でざわめつく魔物たち。


「はああああぁっ―――――!!!」

凛は前宙しながら敵陣のど真ん中に向けて、勢いよく刀を振るい、刀から発せられた衝撃波で敵を薙ぎ払い、
それによってできた空間に着地すると、間髪入れずに円を描くように
刀を水平に振るって、内側から半径2m内にいる魔物たちを粉々に粉砕する。

【ギャパ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄!!!】
「ギョガ・・・」
≪ブ・・・ベ・・・っ≫
[グ・・・ふっ]

なまじ数が多くて統制がとれていないのか、戦場が狭すぎて身動きがとりづらいのかは定かではないが、
ほとんど魔物たちは凛を眼で追いながら現状をただ叫ぶだけで、
その動きについていけず、何も出来ぬまま次々と切り捨てられてゆく。

ちなみに戦闘が開始されてからおよそ、20秒で凛はすでに半数近く撃破していたりする。


「・・・凄い。 やっぱりリンちゃんは凄い」

これまでにも何度も見てきた凛の流れるように素早い動きに、重咲は初めて目の当たり
にしたかのように目を丸くして、取り囲む魔物たちの隙間から見えるその頼もしい背中を見つめ、


「うむ・・・流石だ。 腕は落ちていないようだな」
(だが・・・、疲労していたと聞くが、本気の凛のあの攻撃をあの小僧(刹火)が全てかわしたとは、とても信じられん・・・)

黒羽は、凛の動きに感嘆しながら、刹火の実力を推し量ろうとする。


「ふん。 数は多くてもこの程度の集まりじゃ、手ごたえが全くないわね」
(・・・、まるで動きがトロい、あいつ(刹火)だったらこの程度のスピードじゃ、一発も入らなかった)

小さく息をつくと、凛はつまらなさそうに刀を地面に突き立てて、それに肘を乗せて軽く寄りかかる。


【ガガ・・・】
「くっ・・・うぅっ・・・」
≪な、何だこいつは・・・?! 聞いてないぞ!!≫

圧倒的な強さを目の当たりにして退く魔物たち、元々凛が強すぎるので、
波状攻撃で徐々に体力を減らしてゆくのが、魔物側の作戦だったのだが、

しばしの休息でコンディションが完全に整っていることを予期していなかったようで、
どうやらこれだけの数がいれば、負けることはないだろうと、凛のことをナメくさっていた。


「さっきの勢いはどうしたの? 言っとくけど1匹たりとも逃がさないわよ?」
っと、何に言うでもなく不機嫌そうに呟く凛。


連戦の影響で疲労こんぱいだった凛の昨日の実力は、
本来のものではなかったにしても、そのときは全力を出していた。


それでも戦意のない刹火には、納得のいく攻撃が一発も入らなかった。
それは負けず嫌いの凛にとって、歳の近い異性に負けたことと同義であった。


そんな戦いの後で、こんな雑魚たちとのしょぼい戦闘では、
あまりにもギャップがあり過ぎて、少々拍子抜けしている凛であった。


「さてと・・・、どうせお前らからじゃ、たいしてことも聞けないだろうし、さっさと・・・!」
「・・・ぬぬ!?」
地面に突き立てた刀をゆっくりと引き抜いて、戦意喪失しかけの魔物たちを始末しようと、
足を一歩踏み出したとき、凛と黒羽が同時に突然現れた1つの大きな力に気づき、その方向に視線を向ける。


先ほどまで、追っかけまわされていたので多少の緊張感があったものの、
凛が強すぎて魔物たちがちょっとかわいそうに見えるほどで、重咲でも安心して
この場にいられたのだが、凛と黒羽の表情が一変したことで、妙な緊張感が周囲に広がる。


「え? どうしたんですか?! 黒羽さん、リンちゃん・・・?」

戦場の空気が変化したことに気づいた重咲は黒羽と凛を交互に見ながら、その視線の先を追った。


凛と黒羽が気取った気配の先には、空中を漂う異常に長い白いマフラーの様な布が・・・。

「え・・・? 布?」

「誰?」

状況が理解できぬまま、空に浮かぶ布を見上げながら、首を傾げる重咲だったが、
凛はそれに向かって真剣に問いかけている。


・・・すると、

「フォフォフォ・・・、回収に向かわせた使い魔たちを殺っているのは貴女ですか?」
「どれほどの凶暴な方かと畏怖していたのですが、どうやら杞憂だったようですね」

空中を浮遊している布から、甲高い声がして、そこから素顔がわからぬほどペインティングし、
黒をベースに奇抜な色の服で全身着飾ったピエロ?が姿を現した。


(こいつ・・・今までの連中とは違う! ・・・どうやら当りのようね)
「ふん! 麻奈のことを狙ってるのはお前? どういうつもり?」


これまで襲撃してきた魔物たちと雰囲気というか、格の違いを感じ取った凛は、
微かに笑みを浮かべ、刹火の詳細不明な作戦なんかより、自分のやり方が手っ取り早くて、
やはり正しかったんだと、ちょっとした優越感に浸っていたりする。


「フォフォフォ、いきなりお前とはずいぶん不躾な方ですね」
「ふん! だってお前のこと何て知らないんだからお前で十分でしょ」

浮遊しているピエロの含み笑いとその口調に若干イラついた凛が、腰に両手をあてて下眼使いで挑発する。


「まあいいわ、お前が何者で、何が目的なんて別に興味ないし・・・、さっさとまとめて始末してあげるわ」
凛はゆっくりと目を閉じて、浮遊しているピエロ・その他に聞こえるように呟くと、
柄を両手でしっかりと握り直して、殺気のこもった視線を再び向ける。


「そのお顔は怖いですね〜。 おっとこれは失礼しました・・・」
「初めまして、私は黒蝶(こくちょう)と申します。
以後、お見知り置きを・・・っと言いたいところなのですが・・・」

黒蝶と名乗ったピエロが、被っていた紫のハットを軽快に片手で取って、
深々とお辞儀しながら挨拶をしたかと思った瞬間!

「?!」
「む!」
「ぇ?」

黒蝶の口調に冷淡さが含まれ、その変化に気づいた凛と黒羽と重咲に妙な緊張が走る。

「・・・邪魔なので消えてください!」

そう続けて呟きながら黒蝶が天に向かって大きく指を鳴らすと、主にコンクリート製の
地面や壁から土が盛り上がってきて、それがマネキンの人形のように形成されてゆく。


「!!」
「こ、これは!?」
「な、何ですか・・・これは・・・!?」

突如大量に発生した土人形に取り囲まれ、凛は周囲を見回して警戒し、
重咲は黒羽を抱きかかえて、未知の脅威と不安にその身を焦がす。


「ふん! いくら数があってもたかが泥人形じゃない!」

「こんなもの! はっ!」

凛が刀を振るうと、風圧だけで4,5体くらいの土人形が粉々に粉砕されて、元の土の塊に戻される。

「フォフォフォ、おや、おや、やりますね」
黒蝶は相変わらず不気味な笑いかたでニヤけつつも、凛の言動を観察し、さらに不敵な笑みを浮かべる。


「・・・ふん。 バカにしてる?」

様子見の一撃で得た情報に、この土人形たちは戦闘にさして影響を
及ぼさないと判断した凛は、再び不敵な笑みを浮かべるが、

「・・・むむ、おかしい」
「え?」
重咲の腕の中で黒羽がうなり声を出す。

「・・・」
(あまりに容易すぎる。 それにまるで反応が薄い、何か罠が・・・、それとも他に狙いが・・・?)

逆に黒羽は黒蝶からはこれといって焦りなどが感じ取れず、それが返って不気味に思え、
不穏な空気を感じ取って、一抹の懸念を抱いたので、


「凛よ、いったん下がれ!」
凛を自分たちのもとへと呼び戻そうとする。


「大丈夫よ黒羽、こんな奴らすぐに・・・」

しかしその呼びかけを無視して、凛がさらに敵陣へと突っ込もうとしたとき、

「フッ!」
黒蝶が微かに笑みながら、今度は小さく指をパチンと鳴らしたかとおもう瞬間に、

「・・・え?!」

凛の周囲の土人形たちが一斉に発光して、次の瞬間には大爆発を起こした!!

「ギャアアア―――――――――!!!」
≪うわあぁあぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!?≫
【ギョギョ〜〜〜〜〜〜〜!!】
[ガボオオオオオォ――――――!!!]

物凄い爆発音とともに発生した炎が、凛、および、周囲にいた魔物やら建物、絶叫など、
あらゆるものを一瞬にしてのみ込んで、その衝撃が辺り一面に伝わり、全てを振動させて、
ひび割れや崩壊などを招き、それによって舞い上がった黒煙や粉塵などが全ての視界を奪い去る。


『凛!!?』
「リンちゃ――――ん!!!」

爆破の影響を直接受ける範囲外に位置していた重咲と黒羽は、爆風の衝撃と地響きで一瞬よろめいて倒れたが、
幸いその程度で済み、すぐに起き上がると、何も見えない黒煙に向かって、凛の名を呼び叫ぶ。

その直後、

「げほ・・・っ 熱いわね!!」

黒煙の中から若干焦げた・・・? 元々黒い格好なので、判断しづらいのだが、
凛が重咲たちの前に飛び出してきた。


「リンちゃ〜ん!!」
「おおっ!! 無事だったか!」

相変わらずの凛の仏頂面をみて、安どの表情を浮かべながら向かいいれる重咲と黒羽、
しかし凛は2人のことを無視して、さっきまで自分がいた場所に視線を向ける。


すると、周囲には多少なりともまだ煙などが舞っていたが、何がどうなったのかを
見ることができ、3人は改めて先ほどの爆破の威力に戦慄を覚える。


「く・・・っ、何なのよ・・・」
「・・・あ・・・あぅ」
「何という威力だ・・・、それに自分の使い魔まで巻き添えにするとはなんて奴だ」

先ほどの爆発でどうなったかというと、凛たちの目の前にあった工事現場の機材はもちろん、
建屋や草木などの全てを焼き払い、爆破を起こした周辺を瓦礫の山で覆われた盆地へとつくり変えていた。


「おやおや・・・あれを避けるとはお見事ですね」

一通り惨状を確認した頃、ゆっくりと拍手をしながら不敵に笑う黒蝶が凛を賞賛するが、
その眼はかわせるように手加減してあげたと言いたげで、3人の恐怖に満ちた表情を眺めて楽しもうとしていた。

「っ!」
「ぬぅ・・・」
「ひっ・・」

凛たちは一斉に声がした方角の空を見上げて、睨み返したり、眉をしかめたり、
恐怖に身を震わせて視線をそらすなど、それぞれが様々な反応を示して、硬直する。


「凛よ、うかつに離れるでないぞ! 奴らの狙いは麻奈嬢だ!」
「この嬢の傍にいれば奴とて、下手に爆発もできまい」
「ちっ! わかってるっ!!」
「ぇ? あ・・・え?!」

先の爆発で肝を冷やしたのか、凛は今度は黒羽の指示に素直に従い、重咲を背にして刀を構える。

「フォフォフォ、無駄ですよ・・・はっ! 捕縛のクサリ≠諱I」

凛たちの策をみて、黒蝶はせせら笑いを浮かべながら、服の中から長方形で手のひらサイズの、
ちょっと大きな銀色の鉄の輪を取り出し、道具の名を呟きながら凛たちにむけてその手を振ると、
たった一つの輪からいくつも輪が出現して、それがクサリへと姿を変え、
まるで鞭のようにあらゆる方向にしなって不規則な動きで凛たちに向って伸びてくる。


「ふん! これが何だっていうの・・・よ!」

すっ飛んでくるクサリに向かって凛は刀を素早く振るい、弾き飛ばして軌道を完全に変える。

「ふん!」

が、

「・・・目標を捕捉しなさい!」

黒蝶がクサリに向かってそう囁くと、クサリがまるで意志を持っている
かのように軌道を変えて再び凛に向かって突き進む。

「凛っ!!」

「ふぇ!?」

「ぁあっ!?」

刀を振るったことで体が開き、体勢を崩しかけているところを狙われ、思わずふ抜けた声を出す凛。


初手の攻撃を簡単に防げたことで、それによって油断が生じ、体を戻すのが遅れたのだが、
それでも凛の反応を超える速さで、クサリが折り返してきたので、どうすることも出来ず、
クサリが腕から体へと巻きついていき、あっという間に身体の自由を奪い去った。


「フォフォフォ、この捕縛のクサリはですね、
*伸縮自在で、使用者の意のままに操ることができるのですよ」
「そして標的を設定すると、それを捕獲するまでどこまでも追っかけるのですよ」

そう言いながら・・・、


「しまっ・・・はぅ?!」


黒蝶はクサリで束縛した凛を引っ張り、重咲から無理やり引き離す。


*この場でいう伸縮自在というのは、クサリ自体が伸び縮みするのでは無く、
クサリの輪の数が一つから無限に増えていくことを指しています。



「いかん!!」
「リンちゃん!!」

黒蝶に上空へと引っ張り上げられていく凛の姿に、焦りの声を漏らすが、どうすることも出来ない黒羽と重咲。


「くっ・・・こ のぉ!!」

引っ張り上げられた瞬間、クサリがしなって刀を持つ方の腕が抜け、
凛は必死に刀で何度もクサリに斬りつけて断ちきろうと抵抗したが・・・。

「フォフォフォ、無駄ですよ」
「このクサリはそう簡単に断ちきれるほど、やわではありませんから・・・」

凛の必死の抵抗を滑稽に思い、あざけ笑いながら自分の持ち物自慢をする黒蝶。 


「うるさ・・・は・・っ!? ・・・うぅ」

黒蝶の言葉に苛立ちながら、睨みつけてやろうとしたとき、
凛はようやく自分が置かれている状況を理解して、・・・絶句する。


凛の周囲には、黒蝶によって新たにつくりだされた20体近くの土人形が浮遊していたから。

否、正確にはそれらが配置された場所まで、引きずり込まれたのだ。


その威力は先の爆破で経験積み。

宙吊り状態で拘束されているから、体の自由はほぼない。

逃げ場がなければ、防御もまともにできない。 

むしろ、この一連の流れのために、ワザと最初の爆破を避けやすくしていたのかもしれない。

それに気づいた時には何もかもが手遅れだった。


「まずは・・・、一匹。 それではさようなら〜・・・・ご機嫌よう」

「・・・ひっ、・・・あぁ」

凛の中で恐怖が支配しはじめ、徐々に引きつっていくその表情を眺めながら、
黒蝶は意地悪な笑みを浮かべ、ゆっくりと指をパチンと鳴らす。


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