人魚の泡唄


1 :壱ツ星 :2010/03/04(木) 16:24:49 ID:YcmLzkYi



 ―…一昔前、海賊時代に多く現れたと言う種族。

『私たちの歌声は天使をも凌ぐわ』

尾を七色に光らせ、月夜の晩に現れると言う…

『人間と私達はきっと解り合えない種族、決して深入りしては駄目よ』

長い髪、美しく舞う水飛沫。
そして今宵も『唄声』が響き渡る。

「――何だ? この美しい声は…」
「まるで心が洗われるような美しい声だ…」

どこからともなく聞こえる唄に、海辺の村人達は魅了されていた。
どの家からも窓が開く音が聞こえる。

「きっと、海辺の人魚じゃろう」

一人の老人もまた、窓を開け側にある椅子に腰かけた。
そして、夜空を見上げて呟く。

「人魚は心優しい種族、それを滅ぼしたのは人間かもしれぬな」

その顔は、どこか儚げな顔をしている。

「昔、こんな伝説があったもんじゃ」
「何々? お婆ちゃんの昔話?」

孫娘は嬉しそうに、老婆に近寄り一緒に夜空を見上げた。

「わぁ…綺麗なお月様!」
「さて、少しお話しようかね」

孫娘に微笑んだ老婆はそっと口を開く。

「これは私が生まれるずっとずっと前の話じゃ…」

月の光は、今宵も村を静かに照らす。
波の音すらも音色に変わる。

静かな音と光が、夜の幻想を象徴していた―――


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