終わる世界の物語


1 :一八十 :2009/09/29(火) 23:00:11 ID:ocsFuDVe

 高校の時に考えていたプロットの作品化です。
 ファンタジーです。

 連載周期は週刊にしようかと思っています。


2 :一八十 :2009/09/29(火) 23:01:24 ID:ocsFuDVe

プロローグ

 アルベルトゥス暦 783年

 ――アルベルトゥス王城、特別講義室

 扇形に広がる階段状の講義室であるそこには、既に多
くの人々が、これから始まる講義を聴講しようと集まっ
ていた。この日は、アルベルトゥス国王と、その将軍が
国民の為に無料で講義を行うことになっていた。
 アルベルトゥス王城では、頻繁に国民向けの特別聴講
が実施される。それは、学問の国であることの象徴であ
り、また、王国の豊かさを広く知らしめる為に行われて
いた。
 やがて、講師室の扉が開き、中から2人の男性が現わ
れた。国王カイン=アルベルトゥスと、将軍フォン=ニー
ヴェルトである。講義室が一斉にざわめく。2人は、ゆ
っくりと演台に上がり、拡声の魔術が織り込まれた、筒
を手に取った。
「それでは、講義を始める」
 国王カインの声で、ざわめいていた聴衆が一気に静ま
る。横で、将軍フォンが満足げに頷いた。国王の威信は
未だ衰えていない、と。
「本日の講義は、北都ローラシアとの平和的協調につい
てだ――」
 北都ローラシア。大陸の北部に広がる王都であり、最
近は、その地からのアルベルトゥス王都への侵攻が目立
っている。国王カインは、武力的な解決を望まず、平和
的な話し合いによる解決を求めていた。
 しかし、その考えに被害地域の住民たちは憤りを感じ
ていた。悠長なことを言っていると、村が完全に滅ぼさ
れてしまう、と。
 国王は、そういった地域には充分な救済措置を行って
いたが、地域住民の主張はやはり、武力による早期解決
であった。
 その溝を埋める為に、この日の特別講義が行われた訳
でもある。
「北都ローラシアの王、エヌマ=エリシュ公とは、既に
和平条約を結んでいるが、国力が乏しい為に、全ての住
民を統御することが難しい状態であり、その為に、相次
ぐ侵略が行われていると考えなくてはならない。
 そこで、我々アルベルトゥス王国は、北都ローラシア
への食料及び、物資の支援を今まで以上に強化しようと
考えている。勿論、国民の諸君には負担にならないよう、
支援物資を提供する者には、王城から、報奨金を出すこ
とにする。
 諸君。決して、私的な制裁などを加えぬようにして貰
いたい」
 国王は、そう告げると演台を降りた。その背中に、大
きな拍手が与えられる。中には、国王の名前を大声で叫
ぶ者もいた。

 そこへ、拍手をしながら演台へ近付く一人の男が現わ
れた。将軍が、その男の前に立ちはだかる。
「これより先は立ち入り禁止だ」
 だが、男は、その制止を無視して、演台の向こう側に
いる国王の近くに行こうとする。講義室内が騒然となっ
た。
「私に用かな?」
 国王は、近付いてくる男に、親しげに話しかける。如
何なる階級の意見も取り入れる、国王らしい態度であっ
た。その態度に男は、平伏し、国王の前に跪き、言葉を
発した。
「警告スル。コノ王城ハ、マモナク陥落スル」
 その言葉は、人間の発するような音ではなく、何処か
無機的な声で発せられた。そのまま男は崩れ落ち、絶命
する。
 それを聞いていた聴衆たちは一時、呆然としていたが、
突如鳴り響いた轟音に、恐慌状態となり、一気に出口へ
と殺到する。
「フォン。これは一体何事だ?」
「わかりません。ただ、北都の連中でないことは確かで
すよ」
 国王は、首を捻ると講師室へと走った――。


 同時刻
 ――アルベルトゥス王城 城門付近

「これは――、一体何事だ?」
 至る所から煙が上がっているアルベルトゥス王城を前
に、遠征から帰って来たばかりのユイ=ニーヴェルトは
驚愕した。門番を始め、城へと続く通路には、いくつも
の人間だった物が転がっている。その凄惨さは、ユイと
同行した歴戦の兵士たちをして、吐き気を催す程であっ
た。
「ユイ様。どういたしましょうか?」
 兵士団の団長がユイに尋ねる。
「答えるまでもない。全員、魔力防壁を最大にして突撃
せよ」
 誇り高きアルベルトゥス王国の将軍、フォン=ニーヴ
ェルトの娘である、ユイには後退という選択肢はない。
兵士たちが突撃していく中、ユイもまた、魔力防壁を最
大まで展開し、王城内部へと駆けて行く。


 ――アルベルトゥス王城 中央の間

 王城のあらゆる建物と繋がる通路のある空間に、若い
男が立っている。名前は、サグ=ウシュ。あらゆる物を
破壊する能力を持つ男である。勿論、その能力は、人間
にも発揮される。その男の足元には、バラバラに破壊さ
れた人間の残骸が散らばっていた。
「圧倒的な戦力故の、隙のある造りだが、圧倒を圧倒す
る戦力には簡単に殲滅される造りでもあるな」
 彼は、今までの戦いを反芻していた。彼が城門を破っ
てから、中央の間に辿り着くまでに、殺した数は、30
0。中央の間に入り、現在までの1時間で殺した数は、
5000。何れも、彼を迎撃しようとした兵士たちであ
る。
「しかし、この国の兵士たちの統制は、よく取れている
な。我々もこれくらいの結束があっても良さそうなもの
だが――。いや、それ故に、か。さて、そこに居るのは
誰だ?」
 彼の声に、柱の陰に隠れていた影がびくりと震えた。
彼は、躊躇い無くその柱を破壊する。その後ろに隠れて
いたのは一人の少女だった。まだ10代のはじめ位だろ
う。顔には恐怖が色濃く表れている。
「なんだ。子供か」
 彼は、興味が無いというように顔を背けた。女子供に
は手を出さない、それが彼の信条だった。
 しかし、間の悪いことに、その場に兵士たちが到着し
てしまった。ユイ=ニーヴェルト達と遠征に出ていた兵
士団である。
「貴様。サチ様に何をしているか!」
 団長の怒声が、彼に当てられる。彼は肩を竦め、「何
もしていない」、と言ったが、仲間の死骸を見てしまっ
た兵士たちには、彼の言葉は通じなかった。怒りと忠誠
によって、兵士たちは彼に殺到する。
 彼は、能力を発動し、兵士たちを魔力防壁諸共に破壊
していく。1分も掛からぬ内に、兵士たちは全滅し、残
骸となって地面に降った。その内、誰一人とも、彼の身
体に触れることすら出来ずに。
「人の話は、よく聞いた方がいい、な」
 彼は、少し哀しそうな顔で呟いた。
「そこまでだ」
 澄んだ少女の声が響いた。彼の背中に剣が突きつけら
れていた。
 その声の主は、ユイ=ニーヴェルト。彼女の魔力障壁
は、自身の気配さえ消すことが出来るようになっている。
目の前で仲間たちが破壊されていく中を、彼女は音も無
く、彼の背後に辿り着いた。
「大丈夫ですか? サチ様」
 凄惨な光景を目の当たりにして、腰を抜かしているサ
チに対し、彼女は、優しく声を掛けた。勿論、剣を男の
背中からは離さずに。
「うん。私は大丈夫。でも――」
「構いません。私たちは、王国に忠誠を誓った身。この
命、サチ様の為ならば、捨てても構いません」
 彼女は、凛として言い放つ。
「結構な心意気だが、俺はどうすればいい?」
 男は、ユイに落ち着いた口調で聞く。
「答えるまでもない、ここで死ぬがいい」
 彼女は、剣の柄に力を入れ、男を刺し貫こうとする。
だが、力を入れた瞬間に、彼女の剣が、粉々に砕けた。
その衝撃で、彼女の体が弾き飛ばされる。
「――いや、それは不可能だ」
 そう言い放つと男は、王城の最奥。王の間へと入って
いった。


 ――アルベルトゥス王城 王の間

 王の間では、将軍フォン=ニーヴェルトと、仮面の男
が戦っていた。仮面の男は、名をサグ=メ=ガルという。
サグ=ウシュの兄であり、その能力は精神支配であった。
 既に、アルベルトゥス王国の12騎士の内、フォンを
除く全ての騎士は、サグ=メ=ガルの支配下にあった。た
だ、フォンだけは、強靭な精神力を以って、その支配を
逃れている。
「フォルトゥナ・ボナ」
 フォンの最大魔術が、仮面の男を直撃する。しかし、
仮面の男は動じた様子もなく、その冷たい笑顔の仮面を
震わせながら笑った。
「くっくっく。アルベルトゥス12騎士団の団長でこの
程度か。貧弱すぎる。いや、我々エクソダスの面々が強
すぎるのか――」
「ほざけっ!」
 フォンは、さらに剣戟を加える。しかし、仮面の男は、
指先だけでその剣を受け止めた。男の右手がフォンの顔
面を包む。
「お前は、通常のやり方では通用しないようだ。少し、
手荒く行こうか」
 何かが、フォンの顔面から剥がされていく。フォンは、
苦痛の呻き声を上げながら、その場に崩れ落ちた。
「ふっふっふ」
 仮面の男は、肩を震わせながら笑い始めた。

 アルベルトゥス王城は、完全に陥落した――。


3 :一八十 :2009/10/03(土) 20:45:16 ID:ocsFuDVe

第一章

 アルベルトゥス暦 784年


 第1話 旅立ち

 アルベルトゥス王城から東に500km程離れたとこ
ろに小さな村がある。小さいながらも子供は多く、栄え
あるアルベルトゥス王国の村らしく裕福な村である。
 しかし、最近この村ではある異変が起きていた。それ
は、モンスターの大量発生である。村の外れには広大な
森林地帯が広がっている。この村の主産業である森林業
の要であるが、そこに突如として謎のモンスターが現わ
れた。それらは、森林を破壊するのみならず作業にあた
っている人々を次々と襲い産業に深刻な被害をもたらし
ていた。
 さらに、この森林地帯の村よりの場所は子供たちの絶
好の遊び場にもなっていた。大人が止めても子供たちは
そこに行くのを止めない。
 今日もそこで子供たちはかくれんぼなどをして遊んで
いた。
「もーいーかい?」
「まーだだよ」
 元気な子供たちの声が森林に木霊する。モンスターは
その声を聞きながら、鼻をかぎ鳴らし子供たちの場所を
探す。彼らにとっては子供たちの場所を知るのは実に容
易であった。
 人間の間で流行っているかくれんぼという遊びを彼ら
がしたならばものの5分と経たない内に全ての子供たち
が見つけられるだろう。その子供たちの死とともに。
 そして、まもなくモンスターは全ての子供たちの場所
を特定した。次はどの順番で回れば効率がいいかを考え
る。
 獰猛な肉食獣の形を模したそれは、充分に知能も開発
されている。やがて、それはゆっくりと動き出し、徐々
に加速を始める。
 最初の目標はあの小さな女の子にしよう、そんなこと
を考えながら。

 ユーリ=アルカティスは、村の市場の手伝いをしてい
た。市場の商品を並べる仕事だ。彼が3番目の箱に手を
掛けた時に、横で一緒に仕事をしている幼馴染の少年、
ライが荷物を取り落とした。
「なにやってんだよ、ライ。おやっさんにどやされる
ぞ」
「今、悲鳴が聞こえたような気がする」
「空耳だろ、っておい待てよ。ライ」
 ユーリの制止は空しくライは一気に森林の方へと駆け
て行った。

 モンスターは一つ誤算をしていた。人間の子供という
のは意外とすばしこいということだ。普段、それが襲っ
ている大人ならば簡単に追い詰めることが出来るが、人
間の子供は彼らが入ることの出来ない隙間に平気で入っ
ていく。
 加えて、子供の叫び声は大きく甲高い。その女の子の
叫び声はあっという間に森林中に響き渡り、他の子供た
ちに伝わっているはずだ。
 大人を呼ばれると面倒だな、とそのモンスターは思い
ながらも、逆に子供たちが皆集まってくればそれはそれ
で一気に美味しく戴けるメリットもある。
 モンスターは逃げる少女を追いかけながらそんなこと
を考えていた。

「ライお兄ちゃん!」
 森林の入り口には子供たちがたくさんいた。
 そこに到着したライとユーリは子供たちの表情から中
で何が起こっているのかを察する。
「ユーリは子供たちを見ていてくれ!」
 ライはそう言って再び駆け出した。今度は森林の中へ。
一つまみの土と、何個かの石を持って奥へと進んでいく。
 その姿をユーリは溜息をついて見送った。子供たちが
不安そうな顔でユーリを見る。それは、ライの身を案じ
るというよりは、目の前のユーリに対する不安の表情で
あることをユーリはよく知っていた。
「っていうか、お前じゃ無理だろ!」
 そう叫んでユーリも駆け出す。子供たちの視線から逃
げ出すように。

 モンスターはついに少女を追い詰めていた。森林の奥。
高い崖になっているところは少女の背では乗り越えるこ
とが出来ない。
 モンスターは歓喜の咆哮を、少女は絶望の悲鳴を上げ
る。それを作り出した主がかつてそれに教えたことの中
に、恐怖を与えれば与えるほど人は美味しくなる、とい
うことがあった。
 モンスターは少しずつ少しずつ少女に近付いていく。
既に腰が抜けて立つことが出来ない少女は近付いてくる
異形にただ身を震わせるのみだった。
 モンスターは些か焦れてきた。つまらん、そんな感情
がそれの中に生まれる。さっさと食った方が良いのでは
ないだろうか。これ以上の恐怖を与えて前に食った男の
ように下から変な液体が出てきても困る。あの液体は臭
いし塩辛くて美味くない。
 やはり、早く食ってしまおう。そう思ってそれは牙を
剥いた。少女は、絶望の悲鳴をあげ目を閉じる。しかし、
モンスターは背中に刺さった異物に気が付き、その向き
を変えた。
 背中に刺さっていたのは針であった。黄土色をした針。
それは、モンスターの背中の鱗に突き刺さっている。あ
くまでも鱗に、である。
 その針を刺したのは、ライである。ライは拾った土を
針に変化させてモンスターに向かって投擲していた。一
本の針の長さは20cm程。それで充分にモンスターの皮
膚を貫通し、致命傷を負わせることが出来ると考えたの
だった。
 しかし、モンスターの背中は鱗で覆われている。その
鱗は全て岩石で出来ている為に、土から出来た針などは
通用するはずもなく、ただ突き立ったのみである。
 ライは更に持ってきた石を変化させ剣を作り出す。石
の剣である。だがやはり、石の鱗を持つモンスターにそ
れは通用しない。
 痺れを切らしたモンスターの一撃でライは殴り飛ばさ
れた。受身をとって無駄だとわかりつつもひたすらに攻
撃を続ける。その内にまた殴り飛ばされ、また攻撃し殴
り飛ばされる。
 ライはただ少女を守ろうと必死になっていた。彼が闘
っている内に少女が逃げてくれれば良い、と。しかし、
腰を抜かした少女がそう簡単に立ち上がる筈もない。ラ
イの体力も底を尽き掛けてきた。
 モンスターは意外としぶとい人間の少年に少し感心し
つつも折角の獲物を失う訳にはいかない、と思い始めた。
遊びは終わりにしようとばかりに、全身のマナを一箇所
に集中する――すなわち口に。土石流を吐き出すそれの
最大技はレベルの差から一撃でライを殺すことが出来る
だろう。
 ただがむしゃらに攻撃を続けるライを見下ろしながら、
モンスターはマナを解放しようとした――その時、モン
スターの口下で爆発が起こった。マナは上向きに解放さ
れ、土石流が上空に撃ちだされる。降り注ぐ土石流は既
に対象を失い無意味な攻撃と化した。
 モンスターは、今何が起きたかを理解しようとしたが
その思考をする暇もなくあちこちで爆発が発生する。そ
の爆発はモンスターの石の鱗を崩れ落とし内部の柔組織
を剥きだしにした。
 そこに一際大きな爆発がぶつけられる。モンスターは
慌てて鱗を再生しようとしたがそれが致命的となった。
不完全に再生された鱗が爆発の衝撃で柔組織を突き破る
弾丸と化す。モンスターはその一撃で粉砕された。
「子供を助けようとするってのは良いことだけど、自分
の実力を考えろよな」
 その爆発を起こしていたのは、ユーリだった。満身創
痍のライの手を引っ張って立ち上がらせる。
「すまない。ユーリ」
「あーあー。さっさとその女の子を連れてこいよ」
 ユーリはさっさと森から出ていく。どうせ俺が抱えて
いくと、村の奴らは良い顔をしないんだ、と呟きながら。
 ライは、その後姿を哀しそうな表情で見送る。友の境
遇に彼は強く同情していた。しかし、彼にはどうするこ
とも出来ない。そのジレンマに押しつぶされそうになり
ながら。

 森の出口では子供たちの親たちが心配そうな顔で待っ
ていた。すでにユーリの姿はない。ライが少女を母親に
渡すと、母娘が泣きながら抱擁する。
 そこに村長が現われた。恰幅の良い体を揺すりながら
ライに近付いてくる。
「いやぁ、お手柄だねぇライ君」
「いや、僕は……。全部ユーリがやったことです」
 彼は無駄だと思いながらも友の手柄と白状する。しか
し尊重はおかまいなくライを褒め称える。そして、一枚
の紙切れを差し出した。
「これは、何です?」
「アルベルトゥス王城からの傭兵募集の通達だよ。この
村からも1人出すことにしたんだ」
「それで僕に行け、ということでしょうか?」
「いやいや、違うよ。さっきユーリ君にもこれを見せた
んだけどね、受け取らなくてね。そこで、君にはユーリ
君を説得してほしいんだ」
 ライは途端に怪訝そうな表情になる。
「それは、ユーリをこの村から追い出すのですか?」
「追い出すなんて人聞きの悪い。違うよ。彼のレベルは
この村では勿体無いだろう。傭兵として国の為に役立て
た方が良いじゃないか?」
「そう……ですか」
 ライはうな垂れて村長の傍から離れていく。彼は、そ
の話を承諾した訳ではなかったが、確かにユーリはこの
村から出たほうが良いという気はしていた。村人たちか
らの待遇も然り。ここ、石の村とは相容れない異能は、
ユーリを拒絶するには充分すぎる程の理由である。
「一応、話してみるか」
 そう呟いてからライはユーリのいる村はずれの民家へ
と向かった。

 ユーリは、村はずれの民家に静かに帰り着いた。家の
中には誰もいない。彼の育ての親であるヘルメス=トー
ト=トリスメギストスはどこかに出かけているようだっ
た。
 ユーリは村長に見せられた傭兵募集の紙面を思い出し
ていた。正直なところ彼はあまりこの村が好きではない。
気質が合わないのだ。村の気質は土の気質。安定を望み
変化を受け入れることのない気質。それに対してユーリ
は火の気質。周囲に激変をもたらす気質。変化を望まな
い土は、変化をもたらす火を拒絶する。どうように、火
は土の上には居づらい。
 正直、これを機会にこの村から去るのも悪くない話で
はある。ところが、彼には気がかりなことが一つあった。
それは、最近現われたモンスターのことである。今日1
体を倒したとはいえ話によるとその数は千を越えるとい
う。どこからやってきたのかも知れないモンスターに対
抗できる人はこの村には誰もいない。
 ユーリの次に力のあるライですら何も出来ず仕舞であ
った。彼にはそれが実に気がかりだった。自分がこの村
を去れば誰がこの村を護るのか。自分ですら1体倒すの
にマナの半分以上を消費しているというのに!
 しかし、ユーリの心の中にはもう一つの欲望があった。
この村を出たい、そして更なる力を身に付けたいという
火の心。本態的に心に火を持つユーリは常に闘争への憧
れを抱いている。
 葛藤は苛立ちに変わる。ユーリは家を出て庭にある即
席の魔導訓練所に行く。彼の育ての親であり師であるヘ
ルメスがユーリの為に作った訓練所である。
 円形に仕切られたそこには、巨大な魔方陣が描かれて
いる。ユーリはその中央に座り瞑想する。体内のマナを
凝集し1点に集める。先ずは脳へ。次に脳に集まったマ
ナを脊髄へと流し落とす。脊髄の下端に到達したマナは
地面の魔方陣へと注がれる。中心から外側へと。マナに
触れた線は淡く輝く輝線となる。やがて暗かった魔法陣
は光を放つ。
 ユーリは、瞑想を解き目を開ける。完全に輝きを湛え
る魔方陣に満足げに頷いて訓練所を出る。するとそこに
ライが立っていた。

「何の用だ。ライ?」
「村長から頼みで来たんだ」
 ライは沈痛な面持ちで話出した。内容は言わずもがな
ユーリを傭兵として派遣したいということ。ユーリはあ
まりにも案の定な話しに溜息を吐く。
「何を言っても無駄だ。俺はこの村を出る気はない」
「だが! ユーリはこのままでいいのか? ユーリが何
をしてもこの村では良い顔をされない。そんな事に耐え
ることが出来るのか?」
「関係ねぇよ」
 そう言ってユーリはライに背を向ける。家に入ろうと
して、一つ振り向いた。
「お前の言いたいことはよくわかってるさ。だけどな、
お前は弱すぎるんだ」
 そう言ってユーリはドアを閉じた。

 ライは外に取り残されたまま、途方にくれていた。彼
は見落としていたのだ。普段は淡白に振舞っている幼馴
染の奥底に潜む強い正義感を。彼は誰よりもこの村の事
を考えているのだ。謎のモンスターに襲撃されているこ
の村の危機を。
 そして、それを防ぐことが出来るのは自分しかいない
と、ユーリの心の中では結論が出ているのだった。
 ライは、叫んだ。僕にもっと力があれば、そうすれば
この村からユーリを解放できる、と。
 ――力が欲しい、と。
「ほう。それは面白い」
 ライの周りの空気が突然変わった。ゴンドワナ特有の
高温多湿な空気から、乾燥した切り裂くような寒気へと。
 ライは声のした方へと振り向く。そこに立っていたの
はフードとマントですっぽりと顔を隠した男だった。
「何だ。あんたは?」
「楔(ヨーク)。この世界に楔を打ち込む存在だ。
 さて、少年。力が欲しいというのは君の本心か?」
 ヨークと名乗った男は薄気味の悪い笑みをマントの中
で浮かべた。
 ライは後ずさりながらもその問いに頷く。ライは恐怖
と共にこの男に引き込まれていた。圧倒的な存在感をこ
の男は発している。しかしそれは恐ろしさと共に一種の
神々しさすら孕んでいた。
「ならば与えよう。君に力を幾千もの怪物を圧倒するだ
けの力を」
 そう言うと男はライに近付き、その手をかざした。そ
の両手には怪しく光る光球があり、それがライの体に触
れる――。

 翌朝。例の森林の奥地には人だかりが出来ていた。モ
ンスターの残骸が散乱するその場所に立っていたのは一
人の少年。彼の周りには一本の木もなく地面も抉れてい
た。
 その少年の近くに一人の老人が近付いていく。ヘルメ
スだ。少年はヘルメスに気が付くと口元に薄く笑みを浮
かべた。――それは、絶対にその少年のしない笑い方で
ある。ヘルメスはいぶかしみながら彼に問いかけた。
「何をしたのじゃ?」
「このモンスターどもを処分したまでですよ。トート」
 相変わらずその少年は、口元ににやにやとした笑いを
浮かべている。
「ライ!」
 そこに更に一人の少年が現われた。ユーリ=アルカテ
ィス。その少年の幼馴染である。
「ユーリ。俺はお前よりも強い。行けよ。外の世界に」
 少年はユーリを傲然と見下ろすと村の出口を指差した。
そこには、昨日までの優しさや哀れみといった感情はな
く、ただ、冷たい感情しか込められていない。
「ライ。お前どうしたんだよ?」
 ユーリは友の豹変に戸惑いを隠すことが出来ない。そ
んなユーリの姿を見ながら彼は更に、行けよ、と促す。
「ソウェル・スリサズ(太陽の巨人) フェフ(1)」
 詠唱したのはヘルメスだった。古代文字による詠唱は
大気中のマナに干渉し激変をもたらす。
 少年の周りのマナが質量を持ち少年を押さえつける。
徐々に大気は熱量を帯び灼熱の巨人に包まれた少年は苦
痛に顔をゆがめる。しかし、その苦痛の中少年は詠唱を
始めた。
「ルイス・ウール(赤い土) ベイゼ(1)」
 少年の周りの地面が燃え上がる。その炎はヘルメスの
呪文によるマナを掻き消し、巨人の抱擁から少年は逃れ
た。
「な、なんと!」
 ヘルメスが驚きの表情を浮かべる。最低レベルとはい
え今までユーリですら打ち破ることの出来なかった呪文
をいとも簡単に破るとは、ヘルメスは目の前の少年に強
い危機感を感じ始めた。――その時、
「ザガズ・ソウェル(昼の太陽) スリサズ(3)」
 ユーリの声が響く、続いて轟音と強い衝撃波が発生し
た。「ザガズ(23)・ソウェル(16)」は、レベル
39の呪文である。ユーリの実力ではまだレベル20ま
でしか扱うことが出来ない筈だった。加えて「スリサズ
(3)」による3倍補正が入っている。よって消費マナ
レベルは117に上る。王国騎士団レベルの呪文をユー
リが放ったのだった。
 少年の放った「ルイス(15)・ウール(18)」は
レベル33。圧倒的な力量の差に少年は弾き飛ばされる。
 その姿を目の端に入れながらユーリはその場を去って
いく。
「そんなに俺を追い出したいんなら出てってやるよ」

「本当に良いんじゃな?」
 その日の夜。ヘルメスはユーリに尋ねた。ユーリは旅
支度を既に終えている。まもなくこの村を出ようとして
いる。
「ああ。もうこの村には俺は必要ないだろ」
 ユーリはさっぱりとした口調で答えた。
「うむ。ならばこれを持っていくのじゃ」
 ヘルメスはユーリに一つの石を差し出した。
「何だこれ?」
「<意思の石>じゃ。これから会う全ての人々の会話を記
録できるんじゃ」
「へぇ。なんだかよくわからないけど便利そうだな。あ
りがたく貰っていくよ」
 そう言って、ユーリは意思の石をポケットに入れた。
「あぁ、それとこれも忘れちゃいけないな」
 そう言って棚の中から取り出したのは赤く光る石のは
まったペンダントだった。それは、生き別れたユーリの
父親の物だ。ユーリはそれを首に掛けると、勢いよく家
の外に出た。
「それじゃあ、行って来るぜ!」
「うむ。気を付けるのじゃぞ」

 ヘルメスは、去っていくユーリの背中を見送り続けた。
そしてその背中が見えなくなった時にぼそっと呟く。
「世界は動き始めたのかのう。ヨークよ」

   Ch1 ph1 departure fin.  to be continued


 〜魔法リスト〜
「ソウェル・スリサズ(太陽の巨人) フェフ(1)」
 属性 火 基本レベル19
 大気中のマナに干渉する呪文。マナに質量と熱量を与
えることで相手を拘束する。レベルが上がるごとに質
量・熱量ともに上昇し拘束から拷問、果ては殺傷にも至
る。

「ルイス・ウール(赤い土) ベイゼ(1)」
 属性 火・土 基本レベル33
 地面のマナに干渉する呪文。地形による影響の大きい
呪文。今回は周りが森林地帯であったために燃えやすい
地面であった為に威力が1.5倍されている。なお、ライ
がモンスターを一掃したのはこの呪文ではない。

「ザガズ・ソウェル(昼の太陽) スリサズ(3)」
 属性 火 基本レベル39 (×3=117)
 この言語の火属性の呪文では最高レベル。大気中のマ
ナに干渉し爆発を起こさせる。その爆発は対象にのみ作
用する。ユーリが普段使っている爆発能力とはその威力
が桁違いである。今回は、スリサズによる補正が入って
いた為にレベルが100を越え威力も段違いであった。

 〜獲得アイテムリスト〜
 <意思の石> 
 内部に空洞のある水晶玉。出会った全ての人の会話を
記録できるというが、その真の効果は……

 <赤い石のペンダント>
 生き別れたユーリの父親の持ち物。赤い石には何やら
紋様のようなものが彫りこまれている。どうやら対にな
るようだが……


4 :一八十 :2009/10/10(土) 21:12:53 ID:ocsFuDVe

 第2話 強襲

 ユーリは森の中の路を歩いていた。完全に舗装された
路であるので歩きやすい。王都から全ての街へと敷設さ
れた舗装路はアルベルトゥス王国の国力の象徴であり誇
りであった。
 ユーリは、村を出た後近くの街に立ち寄り、そこから
伸びる27号通路を歩いているのだ。
 ところでこの27号通路は、曰くつきの道路である。
というのは、2年前までこの通路は盗賊が出現すること
で有名だったのだが、2年前のある日を境にぱっと盗賊
が出なくなったのである。
 出なくなっただけならば大した問題ではないのだが、
その後盗賊が移動したとか、盗賊が全滅したとか、そう
いった情報が一切流れずに、突然の盗賊消滅は近くの街
の人々に恐怖感を与えていた。
 しかし、ユーリはそんな話を聞いても怯んでいる場合
ではなかったので、今この27号通路を歩いている。
「とはいっても、やっぱり不気味だよなぁ」
 左右を森林に囲まれたこの通路は昼でも薄暗い。加え
てカサカサと言う音が突然聞こえることもあって不気味
さが際立っていた。
「暗くなってきたしここいらで野営でもするかな」
 ユーリは、荷物を降ろしてその場に座り込んだ。この
日で村を出てから8日目。はじめに気張って限界まで歩
き続けた為に最近は日が沈んだ後に歩くのが困難になっ
てきた。
「あー。回復薬を買っとくんだった」
 街の商店で回復薬を安売りしていたのだが、荷物が増
えるからといってユーリは一個も買わなかったのだ。そ
れを今激しく後悔している。
「明日の朝の様子を見て、一度街に戻るかなぁ」
 そんなことを考え始めている。
 しかし、そんな時こそ都合の悪いことが起こるのであ
って、ユーリの方に近付いてくる足音が聞こえてきた。
「な……なんだ?」
「さて、なんだろうね」
「う……うわっ!」
 振り向いたユーリの前に一人の男が立っていた。驚い
てユーリは後ろに跳び退る。
「お前がユーリ=アルカティスだな」
 男は驚くユーリを尻目に話しかける。ユーリは泡を食
った表情で頷いた。
「よしよし。シャマシュの馬鹿はもうとっくに仕事を終
えたらしいからな。俺もそろそろ仕事を終わらせたい。
 ――覚悟はいいか?」
 男は淡々とユーリにとっては意味のわからないことを
話している。反対にユーリはいきなり「覚悟はいいか」
と聞かれて、非常に困っているような表情だ。まぁ、当
然だろう。この男、言葉が足りなすぎる。
 そんなことに気が付かないのか男は腰に提げている剣
を鞘から引き抜いた。銀色の細長い剣だ。長さは2mほ
どもある。男の背丈よりも長い。男はその剣を構えて言
った。
「さぁ。来い」
 ユーリは全く意味がわからずに戦闘に引きずりこまれ
た。仕方なくユーリも戦闘態勢に入る。

「意味わかんないけど。やるなら加減はしないよ」
 ユーリは宣言して右手をかざす。親指と中指で指を打
ち鳴らした。ユーリの基本の戦闘スタイルである。この
音を合図に爆発が起こる。今ので先ず一回。男の周りで
爆発が起こった。男は咄嗟に反応して後ろに跳ぶ。爆発
は男の体を掠るのみでダメージを与えない。
「なるほど。それがお前の基本技(詠唱なし魔法)か」
 男は着地した足で前に跳ぶ。ユーリの方へと。そのま
ま剣を横に一閃した。ユーリは相手の動きの敏捷さに驚
きながら、こちらも後ろに跳んで回避した。剣の切っ先
は空を切る――筈であったが、ユーリの体を掠め腹の皮
膚を少し切る。
「っ! 何でだ?! 避けた筈なのに」
 ユーリは腹の傷を押さえる。大した傷ではないようだ
が、次に同じ攻撃が来たときはどうなるのか、不安にな
る。
「なかなか良い反応だ。それでは次に行こう」
 男はそう言って再び踏み込んだ。今度は袈裟に切り落
とす。ユーリは再び後ろに跳んでの回避を試みるが、剣
との距離が離れた気がしない。慌てて指を打ち鳴らす。
「!?」
 爆発が剣を弾いた。と、同時にユーリの体も後方に弾
き飛ばす。
「ってぇ!」
 地面に叩きつけられたユーリが叫ぶ。ダメージはそれ
なりにあったが、剣によって切り落とされるよりはマシ
だろう。
「何でだ? 何で剣から逃げられないんだ」
 ユーリは目の前の奇妙な武器を持つ男を睨んだ。男自
身の運動能力もともかく、武器の性能まで高い。他方、
ユーリは運動能力はともかくとして、武器がない。圧倒
的に不利であった。
「とはいえ、相手の武器は近距離用だからな。遠くから
魔法で攻めれば良いか」
 ユーリは相手の踏み込みの前に足元で爆発を起こし一
気に距離を取る。さらに男の周りで爆発を起こす。攻撃
ではなく撹乱として。その隙に詠唱する。
「イェーラ・ソウェル(夏の太陽) フェフ(1)」
 大気中のマナに干渉し、灼熱を生む。熱波が男を呑み
込んだ。基本レベル28の魔法である。しかし、森林と
いう地形効果でレベル補正が1.5加わり、実際レベル
は42となった。相手を倒すには充分すぎるレベルであ
った。
「ケト(防壁) ヘー(5)」
 男はユーリの魔法に即応して防壁魔法を展開する。防
壁魔法ケトは、基本レベルが8である。乗算補正によっ
てレベル40。ユーリの魔法の42に僅か届かない。
 男は更に詠唱を続ける。
「ザイン・ザイン(剣の装甲) アレフ(1)」
 カウンターの防壁である魔法だ。当身魔法であるザイ
ン・ザインは基本レベルが14である。受けた魔法との
レベル差分だけ相手にダメージを与える事が出来る。
 ユーリの魔法は、防壁ケトによりレベル40分を削ら
れ残量が2である。ザイン・ザインとの差分は12。レ
ベル12分のダメージがユーリを襲う。
「うわぁぁ!」
 マナの塊の直撃を受けたユーリは、全身を強く打ち意
識が朦朧としてきた。普段ならばこのレベルの魔法一撃
程度はどうということはないのだが、今は疲労がピーク
に達していた。だがそれ以上にここに来てユーリは、相
手との能力差を痛感する。
 今この男が行ったのは、連続詠唱と言うテクニックだ
った。魔法戦における高度技術の一つであり、戦闘を有
利に運ぶことが出来る。もっともその代償は大きく、消
費するマナが通常の5倍になるのであるが、ザイン・ザ
インの5倍のマナを支払っても男は平気な顔をしている。
「レベル42か。加減はしないんじゃなかったのか?」
 男は倒れているユーリを見下ろしながら言う。
「それとも何か。お前はその程度の力で俺に勝てるとで
も思ったのか? あ? なめんじゃねぇぞ、こら」
 男は倒れたユーリの頭を踏みつけた。ユーリが苦痛の
呻きを漏らす。
「どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがってよぉ! こん
なクソ餓鬼にもなめられるたぁ胸糞悪いな! マルドゥ
クの指示だと殺すなってことだが、我慢できねぇ。今こ
の手で焼き尽くす。燃やし尽くしてやるよ」
 突然饒舌になった男の表情は先ほどまでとはまったく
違った。目が血走って理性をまったく感じさせない。理
由は全くわからないが、キレたようだった。
「ルイス(15)・ストライフ(14)・ジェータル(13)
 (赤い炎よ、硫黄色に傷つけよ)」
 詠唱が終わった途端に、ユーリの周りの地面が燃え上
がる。ルイス・ストライフ・ジェータルは火炎系最高の
呪文だった。連続した3語を使った呪文でありそのマナ
レベルは通常の計算方法とは異なる完全乗算で行われる。
つまり15×14×13のレベル2730である。燃え
上がった地面は熱によって溶け出し地中へと沈む。
 後はレベルを宣言するだけだが、その時何者かがユー
リを燃え盛る地面から拾い上げた。意表をつかれ詠唱を
中断したために魔法は効力を失う。
 男の顔が蒼白になっている。ユーリを拾い上げたのは
黒いマントの男だった。ライに力を与えた男である。
「何をしている、シン」
 マントの男は銀の剣の男に言う。シンと呼ばれた男は
ガクガクと震えながらようやっと口を開いた。
「すまない……マルドゥク」
「何をしているのか、と聞いている」
「う……」
「愚かな」
 マルドゥクと呼ばれた男は右手をシンの前に翳す。そ
の手の平には奇怪な紋章が書かれている。我々の時代で
は梵字と呼ばれている文字だ。それは、淡い光を放ちシ
ンの顔を照らす。
 その途端にシンの体が崩れ落ちる。マルドゥクはシン
の体内のマナを全て吸い上げたのだった。マナは常に消
費され回復するものだが、急激な減少は肉体にも悪影響
を及ぼす。
 マルドゥクは崩れ落ちたシンを抱え、ユーリを路に横
たえる。ユーリの体はあちこちが熱で傷ついているが幸
い命に別状はないようだ。
 マルドゥクたちはそれを知ってか知らずかユーリを置
いて森の中に消えていった。

 しばらくして、倒れているユーリのそばに一人の少女
が近付いてくる。彼女は倒れているユーリの姿を確認し
てその傍らに座り込んだ――。

 ch1 ph2 strike fin. to be continued


 〜魔法リスト〜
「イェーラ・ソウェル(夏の太陽) フェフ(1)」
 属性 火 基本レベル28
 大気中のマナに干渉する呪文。大気を高温にする。大気に干渉す
る呪文の中では珍しく地形効果を受ける。森林・樹木地形において
1.5倍。しかし、水分の多い地形ではマイナス補正がかかる。

「ケト(防壁) ヘー(5)」
 属性 銀 基本レベル8
 防壁魔法。詠唱した呪文のレベル分だけ相手の魔法効果を打ち消
すことが出来る。地形効果は一切受けない。今回は、5倍補正を受
けてレベル40までの呪文を完全無効化。

「ザイン・ザイン(剣の装甲) アレフ(1)」
 属性 銀 基本レベル14
 防壁魔法。詠唱した呪文のレベル分だけ相手の魔法効果を打ち消
し、さらに越えた差分だけ相手にダメージを与える。ちなみにカウ
ンターダメージは無属性。さらに、打ち消した魔法のレベルが低け
れば低いほど大ダメージを与えることが出来る。例えば、「イェー
ラ・ソウェル」を初めから「ザイン・ザイン」でカウンターするよ
りも、「ケト」を使ってレベルを頭打ちしてからの方がダメージ効
率が良い。

「ルイス(15)・ストライフ(14)・ジェータル(13)
 (赤い炎よ、硫黄色に傷つけよ)」
 属性 火 基本レベル2730
 火炎系最強の魔法。加えて「ゴート(12)」とレベル宣言する
と、4連数詠唱となり属性も核熱に変わる。相手の周囲のあらゆる
物を熱によって溶かし込む。今回はレベル宣言の直前に止められた
為に不完全発動に終わったが、現在のユーリのレベルでは一瞬で消
滅していただろう。使用者の圧倒的なレベルがうかがえる魔法だ。


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甘辛流小説家ギルドGAIA
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