試し書き


1 :ヘタレ草 :2010/09/05(日) 15:30:59 ID:m3kntkzJ

どうもへタレ草です。

手抜きな話ばかり書いてるあっしですが、これまでに一応ですがちゃんとした?
話を書いていたこともありました・・・が、今までストーリー物は
完結まで書ききれたことがなかったりします。(遠い目)


大抵は時間がかかりすぎてダレたり、ハマったことに影響を受けやすいので、
書いてる小説にそのまま反映されるので、急に色々と設定を替えて、
書き直してぇ〜病の発症によるモチベーションの低下によって挫折してきました。


しかしせっかく一生懸命考えたお気に入りのキャラを、そのままお蔵入りにしてしまうのはおしいので、
過去キャラを設定とかいじりながらタイトル通り、色々書いて地盤を固めていこうかと・・・。


なので、たまに設定とかキャラ名に変化があったとしても、ここに書いているのはお試し版だからと、
広い心と暖かい目で、さらっと流していただければありがたいです。


2 :ヘタレ草 :2010/09/05(日) 15:32:22 ID:m3kntkzJmn

今日の鬼見つけた!


物語に入る前に簡単なキャラ説明を・・・。


氷女野(ひめの) アリス 女・16歳。(主人公)


才知とズバ抜けた運動神経を持ち、容姿は人気のあるアイドルと比べても遜色ないほどで、
かなりのスペックを持っているが、チョイ短気で、異性に対しては「こいつ(拳)で語り合おうぜ!」
というような男前な性格のため、言いよってきた男どもとの肉体言語による意思の疎通がうまくいかず、
全て全滅させたことから破壊王などの異名を持つ美少女。



天領(てんりょう) イザナギ 男・16歳。

アリスの幼馴染で、小さいころからアリスが考えた技とかの実験台にされてきたため、
ギャグ的な展開のときにはどんなにひどいケガを負おうとも、すぐに復活することができる
かわいそうな体質を持つ。

一般常識はあるが、直情径行なおバカのため、デリカシーのない言動でアリスを
度々キレさせて、周囲に度々(血の)赤い雨を降らせ、血だるまになる。


平川 和 (ひらかわ なごみ) 女・16歳。

おっとりとした性格のため、気がついたらアリスとイザナギがいる2年3組のクラス委員にされ、
その上、クラス委員ならクラス内で起こる流血沙汰のケンカを止めろ!と、
アリスとイザナギの仲裁役までおしつけられたかわいそうな少女。 
ちなみに今までその役割を果たしたことは未だない。


3 :ヘタレ草 :2010/09/05(日) 16:07:19 ID:m3kntkzJmn

お化け退治はアリスにお任せb



これはある少女が体験した怖い話です。

Aさんの友人のBさんがケガで入院したので、学校が終わった後に、
友達を誘ってにBさんのお見舞いに行き、お見舞いを済ませて帰る途中で、
AさんはBさんの病室に忘れ物をしたことに気がつき、1人で病院に戻りました。


病院に戻ったころには日が落ち始めていたので、暗くなる前に帰らないとと、
Aさんは少し焦りながらBさん病室を目指していたのですが、
この日初めて病院に訪れたので、ただでさえ大きくて入りくんだ造りだったため、
Aさんはいつの間にか今は使われていない旧病棟に迷い込んでいました。


病棟内は暗くなり始めていましたが人気はなく、当然電気もつかないので、
静まり返った廊下の不気味な雰囲気に、Aさんは怖くなって、急いできた道を引きかえしていると、
20メートルほど前方に人影の様なものがみえたので、その人影の方に行くと、


ゴロゴロと鈍い音を響かせて、ワゴンの様なものを押しながら、
静まり返った廊下をゆっくりと歩いていく女性の看護師さんの後ろ姿が見えたので、
Aさんは少しホッとして、Bさんの病室を訪ねようと近づいていくと、
看護師さんはAさんの気配に気づいたのか、ふと立ち止まって、ワゴンごと反転させて振り返りました。


振り返った看護師さんの顔を見たとき、Aさんは悲鳴をあげて逃げ出しました。


何故Aさんが逃げ出したのか、それはなんと、振り返った看護師さんの顔には両目がなく、
その上、バラバラになった死体をワゴンに載せて運んでいたからなのです。


「見ぃ〜たなぁ〜」

そう小さな声で呟くように看護師さんが呻くと、Aさんの後をワゴンを押しながら追っかけてきました。

「まぁ〜てぇ〜」

看護師さんには目がないはずなのに、必死で逃げ回るAさんの後を確実に追いかけてくるので、
Aさんはますますパニックに陥り、とっさに目の前の女子トイレの一番奥の個室に逃げ込むと、
鍵をかけて、恐怖に身を震わせながらも息を殺して何んとかやり過ごそうとしていたのですが、


・・・しばらくして、ワゴンを押しながら近づいてくる足音が聞こえてきて、
コンコンというノックの音がして、ゆっくりと一番手前のドアが開き、

「ここには・・・いなぁ〜い」

という看護師さんの声が聞こえてきました。


そして2つ目のドアをノックして開く音がして、

「ここにも・・・いなぁ〜い」

と順番に、どこか愉快そうにでドアを開けては、中をのぞいていっているのです。

Aさんが逃げ込んだは一番奥で5番です。

徐々に近づいてくる看護師さんの気配にAさんは気が気ではありませんでした。

そしてとうとうAさんが隠れているトイレが開かれる番です。

Aさんはうずくまって震えていました。

ところがしばらく待ってもなぜかドアをたたく音も、外にいるはずの看護師さんの
気配も消え、不思議に思いつつも恐る恐る立ちあがって、助かったのかなと思い、

外に出ようとして何気なく顔を上げると、看護師さんがドアを
よじ登って上から目のない顔でじいっと覗き込んでいたのでした。



「そして・・・「みぃ〜つけたぁ〜」と看護師さんが怯えるAさんに一言」

「うおおっ!」

和が声色を変えて言った看護師さんのシメのセリフに、
イザナギは少し身を引いて小さく驚いた。


ここはとある高校の2年3組の教室で、今はちょうどお昼休みである。

昼休みになるとアリスとイザナギと和の3人はいつも、
三角形に机を向き合わせるように近づけて座っている。

何故真昼間にこんなB級の怖い話をしているのかというと、


「・・・」

仏頂面であくび混じりに、いかにもつまらないと言いたげな態度で、
和の話を聞いていたアリスが昼食中にはなった、

「退屈だわ! 何か面白いことしなさい!」

というわがままがきっかけである。


突然の無茶ぶりに・・・というかほぼ毎日、こんな感じで何かやれと言われているのだが、
それが毎日つづけば、大抵の人は1週間ほどネタなど尽きてしまう。


今は5月の終わりでもう一通りネタなどやりつくしたので、何もできませんと、
イザナギと和が嘆願すると、「じゃあしょうがないわね〜」と妥協案で、

「じゃあ怖い話でいいから何かしなさいよ」という流れで和が怖い話をすることになり、


「・・・あ、あのどうでしたか?」

和はうまく話せていたかどうかを訪ねようと、アリスの表情をみながら感想をうかがうが、
それは言わずもがな、目だけで「くだらない」と語っていたのだが、
和はそういうのを読みとる力が多少劣っているので、聞いてしまう。


「・・・ふう、和ちゃん、確かに私は何でもいいからといったわ」
「けどね、今のところ私には病院へ行く予定はないの。 
だからそんな私生活に何の所縁もない話をされても今一つピンとこないのよ。 
それにどこかで聞いたような話だし・・・」

ため息交じりにアリスがダメ出しを始めると、

「おいおい、せっかくお前ために話してくれた平川のことを責めるのはかわいそうだろ?」
イザナギもため息をつきながら和にフォローを入れる。


すると、
「なに? あんた和ちゃんの肩持つわけ? 和ちゃんのことがそんな好きなわけ?」

かすかに眉を吊り上げてさらに不機嫌になりイザナギに詰め寄ると、
「いや、そういうわけじゃないけど・・・」

こういうやり取りは小さいころからよくおこなわれているが、
相変わらずその視線には耐えがたく、動揺しながら否定するが、

この流れで殴り合い(アリスが一方的にイザナギを殴る)に発展する一歩手前という状況で、

「あ、でも、実はこの話にはまだ続きがありまして・・・」
そういえばと、何かを思い出したように和が発言すると、

「ん?」
「え? まだあの話は途中だったの?」

イザナギの胸倉をつかみながら拳をふり上げようとするアリスと、
殴られた痛みに耐えようと顔をひきつらせるイザナギが同時に振り向く。

「いえ、話自体は終わりなので、その少女がその後どうなったのかは分かりませんが、
その話に出てきた女性の看護師さんが今うちの学校に出るらしいのです」


「・・・はい? え? ちょっとそれ、普通は(そのお化けが出るところは)病院だけでしょ?」
「ああ、だよなあ? てか何で学校に出るんだよ? 意味が分からねえ」

さらりと発言した和の言葉に、思わずイザナギをつかんでいた力が緩み、
その間にアリスから離れつつ、2人は顔を見合わせて首をかしげながら、
場違いなシチュエーションに現れるお化に対する疑問をそのまま和に投げかける。


「えーっとですね、その幽霊は浮遊霊(?)とかじゃないかっていう噂らしいんです」
「たぶん最初は病院を移動していたんだと思いますが、
何かの間違いとかで学校に出るようになったんじゃないかと・・・」

「今は違う学校に行っている中学の時の友達と、たまたま会ったときに聞いたのですが、
ちょっと前までその子の学校にも出ていたらしくて、しばらくはその話題で
持ちきりだったらしいのですが、幽霊が出なくなったという噂が流れたころに、
別の学校でその霊が出るという噂が・・・」


和が何んとか解りやすくまとめながら説明すると、


「なるほど、そしてそのお化けがうちの学校にもやってきたというわけか」


っとイザナギは多少胡散臭そうな話だなともいつつも納得し、
かたやアリスはというと、へぇ〜とわずかに反応すると、
顎もとに左手をそえて不敵な笑みを浮かべながら無言で何か考え込んでいる。


「あー・・・」
その表情を見たイザナギは、右手で頭を掻きながらめんどくさそうに少しうなだれる。

イザナギは付き合いが長いので知っている。 

アリスのこの表情は何かよからぬことを企んでいるときの顔だということを。

そしてそれに巻き込まれる自分達のことを想い、平川、余計なこと言っちゃたなと心の中で呟く。


当の和はただ単にアリスに楽しんでもらおうとして、言ったことなのだが、
それがどれだけ愚かなことなのかをいま一つ理解しておらず、小首をかしげてにっこりと笑っている。



「・・・よし! じゃあ2人も、今日の放課後6時に集合よ!!」

しばらく沈黙していたアリスが満面の笑みを浮かべたかと思うと、
ビシッ!と2人に向かって指をさして、2人の予定も聞かずに何かの決定事項を告げる。


「あー」
「・・・はい?」

イザナギにはアリスの発言は理解できていたので、
やはりそうなるかというあきらめに似た反応を返すことができたが、
和はワンテンポ遅れて、今のは何のことかなぁ?と目を丸くして、
イザナギとアリスの顔をキョロキョロト交互に見合わせている。


「そう言うとは思ったけど、いきなり今日かよ?」
「ええそうよ! そのお化けがいつまでうちの学校にいるか分からないもの!」
「すぐに行動しないともし、今日までだったら後々後悔するし、
他校に侵入するとなると、色々根回しとかが大変じゃない!」


そう活き活きした感じで、まるで遠足とかのイベントに興奮する子供のように、
無邪気にはしゃぐアリスの表情はもっとも可愛いくて、誰もが思わず見とれてしまうほどで、
教室内にいる(男子の)約8割が注目していた。


「えーっともしかして・・・、私も・・・ですか?」

アリスとイザナギのやり取りを聞いていて、和もようやく自分もこのイベントに
巻き込まれているのではないかということに気づき、眉をハの字に顔をこわばらせる。


正直な話、和は怖い話を聞いたりするくらいなら大丈夫なのだが
実際に肝試しとかするのは怖くてNGなので、何んとか断ろうとするが、


「あー平川スマン。 今のこいつを説得するのは、お化けの探索するより
はるかに大変だと思うから、あきらめてしたがってたほうがいいぞ?」

「まあ実際そう簡単にお化けには会わないだろうし、適当に探索したら満足するだろうから
適当なところで帰れるようにしてやるから、とりあえず付き合ってやってくれ」

っとアリスに聞こえないように、声をひそめて話しかけてくるイザナギに引き留められる。


「・・・はい」

和は自分が余計なことを言ってしまったせいでこうなったのだと、
がっくりと肩を落としてイザナギの言うとおり、アリスに従うことにした。



・・・・・・こうして3人は急きょ、学校をさまよう女性の看護師の探索をすることになりました。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・放課後。


アリスとイザナギと和の3人は約束の時間まで大分あったので、
一旦家に帰って、カバンなどの荷物を置いてから学校の校門に集合していた。


この学校は私服登校可で、一応指定の制服があり、デザインがよくて人気があるので、
アリスと和は朝と一緒で制服のままで、イザナギだけラフな恰好に着替えてきていた。


今の季節は5月の終わりで、日が長くなってきたとはいえ、時計の針が午後6時を半分ほどを
回った頃には周囲は大分薄暗くなってきており、グランドで練習していた野球部やサッカー部などの
運動部は片づけを始めており、校内に残っていた文化部はちらほら帰宅し始めているところだった。




「う〜んやっぱりこの時間帯でもそこそこ生徒が残っているわねぇ〜」
「ねえ本当にこの時間帯くらいからお化けが出るのよねぇ?」

「あ、はい、部活帰りの生徒が何人か目撃しているみたいですよ?」

アリス達は校内へ向かって歩いているため、校門へ向かってまばらに帰宅してゆく
生徒たちのことをすれ違いざまに眺めながら、本日のターゲットのことについて確認する。


「まあ、悲鳴が聞こえないからまだ出てないんでしょうけど、誰か追いかけられてくれないかしら」

「物騒なこと言うなよ・・・、そういえば平川、目撃したやつらの中で誰か犠牲者とかでてないよな?」

「はい、遅くまで残って部活している人たちにはこの噂は結構有名らしいので、
みんな遠巻きで目撃して、絶対に後は追わずに逃げ出していらしいので・・・」

「なるほど、要するにみんなへタレっていうわけね」

「いや、そういうなって・・・」

「学校に看護師の恰好してるのがうろついていたら、私だったら確実に呼びとめるわよ?」

「いばっていうなよ」

などと若干脱線気味に会話をしているうちに下駄箱までたどり着いていた3人は、
とりあえず校内を回るために上履きに履き替えようとしていたら・・・、

「お?」
「し! 何か聞こえない?」
「はい?」

人気がなくなて静まり返った廊下からゴロゴロという
何かワゴンのようなものを押して移動していく音が聞こえ、
その気配に気づいたイザナギとアリスが同時に同じ方向を向いて、耳をすましている。


「台車の様なものを動かしている音が聞こえるわね」
「ああ・・・けど遠ざかってるな」


微かに音がする方向の廊下の電気は、消灯時間をむかえているため消されていて、
暗くて見えにくいので、とりあえず確認しに行ったほうがいいと思った2人は、
視線だけで合図を送ると、小走りで走り出した。


「え? あっ・・・待ってくだ…」

息の合った2人のすばやい行動に、半ば取り残された和が慌てて追っかけようとしたとき、
イザナギとアリスが同時に振り返って、口元に人差し指を添えて、
静かについてこいという合図を送られ、口ごもる。


「で、出たんですか?」
「さあ〜? 今のところは何んとも言えないわねぇ〜」
「ってか、学校に忍び込んでそっこうで幽霊と出会うとか(話の)展開じょう、
ありえないからきっと先生か、たまたまそんな恰好している演劇部(?)とかじゃないか?」


3人は小声で喋りながら、なるべく物音をたてないように注意し、
移動している何かの後を追っていると、15Mほど進んだところで、
前方にボロボロの白衣を着た、どこか不気味な雰囲気というか、
オーラの様なものを発してる女性の看護師さんの後姿がうっすらと見えたので、
様子をうかがおうと思い、とっさに物陰に隠れて立ち止まるイザナギと和。


一方、さらに加速して看護師の後を追って廊下を突っ走るアリス。


「って!! うおい!!? 何やってんのあいつ」
「あ、アリスさん?!」


「ちょっとそこのあんた! そこでいったい何してんの?」

確実に聞こえるようにアリスが大きな声で呼びとめると、ワゴンを押していた看護師がふいに立ち止まる。


そのタイミングとほぼ同時くらいで、1人で突っ走っていったアリスの後を追ってイザナギと和がやってくる。

すると、看護師はワゴンごと反転させながら、ゆっくりと3人のほうに振り向いたのだが、


「・・・ひぁっ!!」


「っ・・・」


「・・・フン!」

その顔には両目が・・・なかった。

そして、ワゴンの上にはバラバラにされた複数の人間の死体が載っている。


これはまさしく昼間に和が話していた通りのお化けの像であり、
その出現に和は小さな悲鳴を上げ、素早く視線を外して、
アリスとイザナギの背後に隠れるように体を震わせながら縮こまり、


イザナギは身構えつつも、目のない顔の看護師の霊、
というグロさに、若干顔をひきつらせてひいている。

一方アリスは両手を腰に添えて、相変わらず堂々と仁王立ちでふんぞり返っていた。


「・・・ぁぅ」

「いたみたいよ? イザナギ」

「・・・ええ゛〜マジでいきなり遭遇とかねえだろ」

「どうやら話が長いから(書き手が)まきでいきはじめたようね」
「何の話だよ?」

「それよりどうしようかこれ? 勢いで見つけちゃったけど」

「いや、俺に聞かれてもなあ?」


怯えている和をよそに、イザナギとアリスは看護師の霊の不気味な容姿に慣れたのか、
わりと平然と遭遇してしまった霊の処遇について雑談交じりに話しこんでいると、


「見ぃ〜たぁ〜なぁ〜」

看護師の霊が小さな声で呻くように呟いてきたので、

「ええ見たわよ? それがな・・・「!」に・・・ん?」
「おおう!?」


すかさずアリスが強気な発言を返している途中で、
何かがアリスの耳元をかすめていき、飛んできた何かが、カツっ! 
という鈍い音を立てて廊下につきささったので、3人はそれに注目する。

「・・・あ」

「これって・・・」

「あ、あれですよね」

廊下に突き刺さっていたモノは、銀色に鈍く光る、
とても切れ味のよさそうな医療用のメスであったが、
3人は実物を見たことがないので、これが何なのか断言できず戸惑っていた。


しかし一つ確実にわかったことがある。


それは、このメスを投げつけてきたのは目の前にいる
看護師の霊であり、それが3人に敵意の様なものを発していることを。

それはいくらか鈍い和でもわかるくらいで、
目の前の看護師の霊がとても危険でやばい! と本能的に悟っていた。


「へぇ〜今のは牽制ってところかしら?」

アリスは身構えつつ、目を細めて看護師の霊のことを睨みかえしていると、


『ひ、ひ・・・、ひああああああああ〜〜〜〜〜〜〜!!!』


「平川!?」
「和ちゃん? え?」


恐怖で限界を超えたのか、和は突然大声で悲鳴を上げながら
廊下をダッシュで逃げ出したので、イザナギがとっさに
アリスの手を掴んで、和の後を追って走り出す。


「ちょっ、イザナギ何すんのよ放しなさいよ!!」

「いや、だって平川が・・・、それにあれはちょっとヤバいだろ」

『ひゃうぅ〜〜来ないで!!』

「おい、平川! 落ちつけ!!」

「・・・っ」


悲鳴を上げながら廊下を必死で突っ走る和にはすぐに追いつくことができたのだが、
イザナギが追いついた時には、和が女子トイレの一番奥のトイレに逃げ込んで、
ドアを閉めて鍵をかける直前だったので、慌ててその中に飛び込んでいた。

「っ!! ・・・はぁはぁ・・・」

和はドアを閉める瞬間、一瞬ビックと身を縮みこめたのだが、トイレに入りこんできたのが
イザナギとアリスとわかると、息を切らせながらドアに身をあずけてゆっくりとしゃがみこんだ。

「・・・」
「・・・」
「・・・」

「ところで、ちょっとイザナギ・・・ここ女子トイレよ? 何であんたまでここに居んのよ?」

しばしの沈黙のあと、アリスがジト目でイザナギに罵声を浴びせると、

「あっ! いやっ、でもこれはしょうがないだろ!!?」

ハッとしたように現状を理解したのか、顔を赤くしてイザナギが何んとか弁解しようとするが、


「この・・・変態っ!」

「・・・くっ」

アリスのたった一言でバッサリと切り捨てられ、凹んだ。


現状を整理すると、3人はいつの間にか和の話の中の少女のように、
一番奥の女子トイレに隠れているわけなのだが、幸いトイレの個室の中は
必要以上に広かったので、窮屈感もなく、自由に身動きが取れた。


だが、のんびりと構えている余裕なんてなかった。


だって廊下の端から端へと移動して、トイレに逃げ込んだだけなのだから、
ワゴンを押して近づいてくる音がすぐそこで聞こえていた。


「ひゃぅ」

和は両耳を手でふさいで何も聞こえないようにしつつ、身を丸めてただただ震え、


「きやがったか!」

へこんでいたイザナギは気分を切り替えて、身構え、

アリスはというと・・・、

「・・・ー」

腕を組んでどこか苛立たしそうに小さく息をついている。


その間に看護師の霊は女子トイレに入りこんで来ていて、1つずつドアをノックしながら、

「ここには・・・いなぁ〜い」

と、中の様子をうかがっていた。


「ちっ!」

看護師の霊の狙い通りの展開にことが進み、獲物を追いつめているプロセスを
どこかで楽しんでいるような声に、アリスはさらに苛立ちながら小さく舌打ちをする。



(はあ〜? 何が「ここにもいなぁ〜い」だっ!)
(鍵がかかっているのはここだけなんだから、一目でわかるだろ!!)

思わず小声でイザナギも苛立たしそうに、看護師の霊の行動にツッコむ。


すると、看護師の霊が3つ目のドアをノックして開けてた時、

「ここにも・・・あっ!」
「きゃ!」

「・・・ごめんなさ〜い。 間違えましたぁ〜」

「・・・いえいえ」

誰かいたようである。


「・・・(え゛?!)」
「・・・(今の何? 誰かいたよな?)」
「・・・(あーたぶんそれ、トイレの花子さん的な奴よ)」
「・・・(ここのトイレにはそういう噂、だいぶ前からあったから・・・)」
「・・・(だぁ〜もうグダグダじゃねえか!!)」

そうこうしているうちにもう、隣のトイレまで看護師の霊は迫っていたのだが、


・・・・・・・・・。

いよいよ残すは、アリスたちが隠れているトイレのみというところで、
急に外にいるはずの看護師の霊の気配が消えた。


当然しばらく待ってもノックの音もしない。


だが3人は知っている。 

けして看護師の霊が追跡をあきらめたわけではないことを・・・。

そして次にどこに現れるのかも・・・。

ダメだとわかっていても、3人の視線はほぼ同時に上を向く。


するとそこには案の定、両目のない看護師の霊が、
トイレのドアをよじ登って、上から中の様子をうかがいつつ、

「みぃ〜つぅ〜けぇ〜『フンっ!!』 !! ―っ がは!!!!?」

「ひいぁあああ・・・うええええええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

「おおう!!? っってえ゛え゛え゛ぇ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!?」


あ、えーと・・・、一瞬のうちにたくさんのことが起こりましたので、
それぞれの状況にあった描写が追いつきませんでしたので、順を追って説明したいとおもます。


まず最初に、トイレのドアにしがみついていた看護師の霊は、
「みつけた〜」というセリフを吐いている途中で、

回りくどいことするな!! と、ブチギレたアリスがはなった
強烈な蹴りによって、ドアが勢いよく開き、


ちょうつがいで固定されたドアなので、180度反転して、
ドアとトイレの壁にたたきつけられるように挟まれて悶絶し、


その様子を見ていたイザナギと和は、最初は看護師の霊の出現に対しての悲鳴を上げていたが、
すぐに驚きと呆れの声にかわりました〜というようなことが起こっていた。


「っは・・・」

看護師の霊は小さくうめき声をあげ、背中と腹をさすりながらゆっくりと立ちあがる。

「いや、ちょっ、おまえなにやったの!?」

「何って、さっき(牽制)のお返しよ?」

「いや・・・けど・・・え〜」

どうツッコんでいいのか分からない状況に、イザナギが若干パニックって戸惑っていると、

「あっ! 来ます!!」
「たあ―っ!」

「ごふっ!?」

体勢を立て直し、メス投げの構えを取っていた看護師の霊に気づいた和が言うのと
ほぼ同時くらいに反応したアリスが、看護師の霊のドテっ腹めがけて蹴りを放つと、


看護師の霊は何本か手にしていたメスを落としながら吹っ飛んで、
さらに何かにぶつかったので、様々なモノが一斉に倒れたり、転がって、
騒音といっても差し支えないほどの音がトイレ内にこだまする。


「え?! あ、あ、あ、ああ・・・うわ〜」

「えーっと、あの〜アリスさん?」 

「な〜に?」

「いえ、あの、その・・・(幽霊は)怖くないんですか?」

驚きの連続で、呆れかえって何も言えないイザナギにかわって、
普通に誰もが抱く疑問を和がアリスに投げかけると、


「こわい? 何が? 所詮霊の攻撃っていっても、大抵はポルターガイストみたいに
物が飛んできたりするような物理的な攻撃≠カゃない?」

「そりゃ刃物とかが飛んできたらちょっと怖いけど、
豆腐とかみたいに殺傷力がない攻撃だったら怖くないでしょ?」

「ようするに、武器を(破壊するなどして)無効化して、
やられる前にやっちゃえばそんなに怖くないわよ?」

っとまあ当然でしょ? とでも言いたげに小さく息を吐いて答えた。


「ってか、何でお前はお化けとか霊をなぐれんだよ?」

「あーそいう言われればそうね、何でかしら?」

呆れ気味に何気なく呟いたイザナギの疑問にアリスはあごに手を添えて、
小首をかしげながらしばし思考を巡らせてから、

「あっ! そういえば」

っと、ポンと手をたたいて、

「私、小さいころに、親戚のおじさんのつてで、
ある有名なお寺で少しの間だけだけど修業したことがあったわ!」

「だから・・・(霊に攻撃できるのは)たぶんそのおかげじゃないかしら・・・?」


「いや・・・、どこの寺で修業すれば霊と互角に戦えるようになるんだよ?」

もう何が何だかわけのわからない展開で、どうでもいいやと思いつつも、イザナギが尋ねると、


「あー少林寺≠チていうお寺だったかしら?」
しれっと澄ました顔でそう答えた。


【何か色々間違ってるぅ――――――!!!!】

イザナギは声を大にしてそうツッコミたかった。

・・・ツッコミたかったのだが、


「なっ?! 何・・・少林寺拳法の使い手・・・だと?!」

突然顔をこわばらせながら立ちあがってくる看護師の霊によって阻止された。


「それが何だっていうのかしら?」

アリスは相変わらず強気な姿勢を崩さず問い返すと、

「そうとわかれば、この命にかえても全力でつぶすのみ!!」

何か急にバトルものみたいな展開に発展していた。


【えぇえ゛―――!!? なんか変な空気になってるぅ!!!】

「ってか、お前、お化けだか幽霊なんだからもう命ねえだろ?!」

おっとりとしている和は置いといても、いよいよこの展開についてこれなくなってきていた
イザナギのツッコミを合図に、両者が一斉に動いた。


「はっ!」

「遅い!!」

看護師の霊が両手いっぱいにメスを持って投げつける構えを取ったが、
それよりも速く、アリスはライダーキックー☆よろしくの強烈なとび蹴りを
看護師の霊の顔面にはなっていた。


ここでいきなりだがアリスの蹴りの威力が今一つ伝えきれていないので、解説しよう。


(素足時)アリスの蹴りの威力は一撃で大抵の大木はへし折ることができ、
今はいている靴は上履きだが、それは全面に厚さ10ミリほどの
鉄板が仕込まれた特注の安全靴。


そしてここはトイレ、しかも結構歩き回った直後の・・・、

それらの要素を含んだ蹴りが顔面にヒットしたのだ!


その威力は想像を絶するもので、心身ともに壮絶なダメージをともない、それを2度もくらってなお、
看護師の霊は今度は意地でも倒れまいとして、体を大きくのけぞらせながらも片足を前に出して
踏ん張り、何んとか不屈の闘志で立ち続けている。


その闘志に拍手を送ってやりたいのだが、

「ふ〜ん。 結構粘るわね・・・けど、これならどうかしら?」

「がっ!? ごはっ!!」

アリスの容赦ない攻撃は続き、看護師の霊の太ももめがけて
強烈なローキックを素早く交互に決め、両足をつぶして、


くずれ落ちてゆくように沈んでいる看護師の霊の首筋めがけ、

「はあぁーっ!!」

「ごはっ?!」

とどめの一撃といわんばかりに強烈な右側からのハイキックを叩き込む。

おそらく看護師の霊には最後にはなったアリスの蹴りは見えていなかっただろう。


「お、おのれ〜 少林寺拳法使い・・・め」

ただ、忌々しそうにそうはき捨てて、3人の前から跡形も残さず消滅してしまった。


「おぉう!! こ、こいつ、お化けを素手で倒しやがった!!」
(ってか、少林寺拳法関係ねぇ―――!)

「アリスさんすごーい」

もう何をどうリアクションしていいのか分からないイザナギと、
幽霊の恐怖から解放され、大はしゃぎしている和に向かって、


「少林寺拳法は無敵よー☆b」


と、ウインクして、親指を立てながら楽しそうに振り返るアリスさん。


幽霊をボコってきっとすっきりしたのでしょうね。


「いや・・・、今の動きのどこに少林寺拳法の要素が・・・?」

という疑問を投げ込みたかったが、それはそっと心の奥底にしまいこむイザナギであった。


・・・こうして、アリスの蹴りによって怪談がまた一つ減りましたとさ。


あ―なんかこのシリ―ズ続けられそうだ〜
誰かアリスさんに倒してほしいお化けとかいたら募集します〜
ってな感じで宣伝して、

血なまぐさい次回予告とか入れて、最後に、

「そこのあなた! 次も読まないとボコるわよ!」

みたいなかんじでシメるのもいいかな〜ともくろみつつ、

お試し版の今日の鬼見つけた!≠ヘとりあえず終了です。


4 :ヘタレ草 :2010/09/13(月) 00:26:55 ID:m3kntkzJmn

今日の鬼みつけた!



単発ネタのつもりだったので、終了とか書きましたが、
何となくネタが思いついたので続編を・・・。


ちなみに時間がループしていたりしますが、
軽く流していただきとうございます。 m(_ _)m


5 :ヘタレ草 :2010/09/13(月) 00:31:10 ID:m3kntkzJmn

アリスさんの三分クッキング


この物語は和がアリスと仲良くなるちょっと前の話である。

平川 和、現在は高2の16歳。

 ・・・彼女は今、ある悩みを抱えていた。
色々あるがその原因の根本は総じていつも、とても間が悪いということだ。


具体的にいつぐらいからどう悪いかというと、高一の三学期に、
父親の仕事の都合によって、アリスたちが通う高校に転校してきたあたりからだ。


和は三学期の終業式の日に転校してきてしまった。 
つまり翌日からは春休みである。

一見うらやましそうに聞こえるが、そこが問題だった。


和の印象を簡単に例えると、口数が少なく、褒めるところも注意するところも、問題も、
特に目立ったところがなく、とても教師の印象に残りにくいくらいおとなしくて、
通知表のコメント欄に担当教師が書き込むとき、何も書くことが思いつかず、
ある意味、その点においてのみ一番、教師を悩ませるタイプの生徒である。


そのくらい地味な生徒など、2週間足らずの休みがあれば皆の記憶から、
転校生という設定はほぼ消え去るし、進級するとクラス替えもあり、
和が転校生であることを知る生徒もほぼいなくなる。

教師からも一年生の時に転校してきているので、転校生としての扱いも紹介もない。


さらに運が悪いことに、新学期早々に体調を崩して休んでしまったのだが、
その日はクラス委員を決めるHRがあった。


高校生になって自ら委員長になろうという者は、よほどの世話好きか、
内申点を稼ごうともくろむ者でのない限り、ほぼ皆無である。

なので、たまたまその場にいなかった和に、

「誰も立候補しないし、誰か知らんがもうこいつでいいんじゃね?」

というようなノリで白羽の矢がたち、2年3組の委員長にされてしまった。


新学期が始まってからは友達が一人もいないので、移動授業がある時が一番困った。


場所が分からなくて、クラスメイトの後を追っていたつもりが、
たまたま遊びに来ていた別のクラスメイトだったりして、
何度か授業に遅れてしまい、仮にもクラスの委員長が遅刻して、
途中から教室に入るのはとても恥ずかしかったので、
そのたび体調を崩したふりをして保健室に行っていた。


そのせいでより、周りからの印象はおっとりしていてどんくさい奴とか、
あまり人とかかわりあいになりたくないのだろうと、勝手に解釈され、人付き合いが悪くなる。


早いうちに自分が転校生であることを誰かに打ち明けて、わからないことを
色々教えてもらっておけば、こんなことにはならなかったのだが、
それほど積極的に話せるようなタイプではなく、どちらかといえば、
何かを期待して待っているだけの女である。

そんなこんなで今は4月の末、いまさら自分が転校生だから
それなりの扱いをしてほしいなどと主張できるわけがない。


日に日にクラスメイト達との距離が開いていく気がして、和は憂鬱な思いで毎日登校する。


和はいつも家を出る前に朝のニュースでやっている、星占いと天気予報を見てから登校している。

別にこだわりでもないが、何となく習慣になっているだけである。


今日の和の運勢はまずまずで、特にいいのは友情運。
新たな理解者が開拓できそうとのこと。


ちなみにラッキーアイテムは雨具だったので、傘でも持っていこうと思ったけど、
その後の天気予報で傘の必要はないとなっていたのでやめた。


たかが占いなのだが、友達のいない和にとってはとてもいい結果だった。
だからこの日はちょっとだけ期待してみる。


この日は3時間目と4時間目を使って調理実習があったのだが、
その内容はかなり自由で、好きな者同士で班をつくって
一人で調理してもいいことになっていた。


各自が持ち寄った食材で出来上がったものを家庭科の教師が評価を出すので、
みんなは楽をして点を稼ごうとして、料理が得意な者と組みたがるし、
基本的にはクラス全体で仲がいいので、単純に仲のいい者同士で班を作ったりもする。


だから一人で調理するのはよっぽど自身があるか、和のように周りになじめないものしかいない。


和は調理が得意でないし、仮に得意だったとしても、披露する機会は当日なので、意味がない。


だから誰からも誘ってもらえなかったのだが、自分と同じように
一人で調理している子と班を組もうと思い、とりあえず近所のスーパーで
安売りしていたブロッコリーだけを大量に買い込んで、当日に臨んだわけなのだが、


欠席者0の状態で・・・どうやら一人で調理するのは自分1人だけのようだった。


クラスメートたちはワイワイと楽しそうに持ち寄った食材と、なぜか室内なのに
つねに雨具を持ち込み、新しく買ったのかそれを見せ合いながら調理を始めていた。


一方、和はというと、調味料は学校のほうで用意してくれているのだが、
今ある食材は大量に買い込んだブロッコリーのみ・・・、
それを見つめて和は泣き出しそうになっていた。


というか嗚咽を上げて泣き出しそうになった時、


「ねえ、えーっと平川? ・・・さんだっけ?」
「よかったらそのブロッコリーちょっとだけ分けてくれない?」

っと、気さくに声をかけてきたのが、氷女野(ひめの)アリスであった。

「ぇ・・・? は、はいっ!!」

振り返って声をかけてきたのがアリスであることが分かると、
思わずスーパーの袋ごと和は震える声と手で差し出していた。


何故和が唯一あった食材をアリスに全て差し出したのかというと、
それはアリスが度々クラスメート(の男子)を血反吐が出るまで
ボコっているのを度々目撃していたからなのだ。

それにアリスにまつわる、思わず耳を疑ってしまうような武勇伝らしきものをいくつか耳にしている。


とても暴力的で怖い人だと思い、一番和が苦手とするタイプの人なので、
なるべくかかわりあいにならないように、気配を消して目立たないようにして、
逃げ回っていたのだが、一人で調理しなければいけないとう現実にショックを受けて、
いつまでも席につかずに、一人でポツンとたたずんでいたから目をつけられてしまったんだ。

そう思い和は自分の間の悪さをさらに呪った。


「ど、どうぞ・・・」

声や体を震わせ、半泣き状態で自分の食材を全て差し出す和のその姿は、まるでアリスが
堂々と公衆の面前でカツアゲしているように周囲には見えていることだろう。


「え? ありがとう。 ・・・でも、さすがに全部はいいわよ?」

思わぬ反応にアリスは一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔をつくってお礼を和に返す。


周りにいたクラスメート達も和が泣いているので何事かと思って注目していたが、
アリスがカツアゲして泣かせたんだなというような反応は示さない。

むしろ何で和が泣いているんだろう? という感じの心配を含んだ視線を向けている。

「ところで平川・・・さん? は一人で料理するの?」

「ぇ?! ぁっ・・・その・・・・・・」

主に名前のあたりが疑問形ながらも、突然のアリスの問いかけに和は焦って
頭の中が真っ白になり、どもりながらゴニョゴニョと言いながら何か返答しようとしていると、

「何かいつも一人でいるみたいだけど、よかったら一緒に(料理を)やる?」
「は、はいっ!」

アリスは何となく一人で寂しそうだな〜と思って和のことを誘ってみたのだが、
断ると後が怖いと思ったのか、和は考えるよりも先に返答を返していた。


「・・・? まあいいわ。 ・・・こっちよ」

和からぎこちない即答を受け、アリスは特に気にもせず和を自分たちの班に招き入れた。


和はほとんど話したこともないクラスメート、並びに恐怖の対象であるアリスに囲まれ、
恐縮していたのだが、それは最初のうちだけで、徐々に自分の勘違いに気づかされた。


アリスは和を自分の班に招き入れると、素早く全員に調理に指示を出し、
料理に不慣れな子には別の班の人たちであっても包丁の使い方から、
野菜の皮の向き方など一から丁寧に教えていた。


どうやらかなり料理は得意なようで、その腕前は売り物として出せるくらいのものらしい。


アリスは誰にでも暴力をふるうものだと思われているが、実際の所はそれほど理不尽なことはしない。


まあ小さい頃は誰でも殴っていたらしいのだが、現在は友達よりももうちょっと
親しい関係になったか、なろうとする異性にしか手は出さないのだ。


なのでクラスメートには誰にでも優しく接しているし、誰もが納得するような美人なため、
それで惚れて告白すると、恋人になるということは友達以上の関係になるということである。

そのせいでいつの間にか、アリスの暴力に耐えられる男だけが
アリスの彼氏になれる条件になっていたらしい。


だからそれを承知で、告白してきた猛者供をさっそくボコっているところを、
事情を知らいな和が目撃し恐怖を感じて勘違いしたまま逃げ回っていたのだ。


そして、和のほうもアリスのおかげで、クラスメート達からの誤解を解くことができた。


調理を始めた直後から、「そういえば・・・」という感じで、
和はアリスから、どうして一人でいるのとか、下の名前は何だっけ?とか、
たわいのない世間話から、これを訊くと気まずくなるだろうな〜と思って
みんなが口にできないような質問までを次々と投げかけられたのだが、


和にとっては逆に自分の身の上を打ち明けやすかったので、
最初のうちはとりあえず何か答えなければという感じで返答していたのだが、
名字で呼び合うのも堅苦しいからと、アリスと下の名前で呼び合う仲になり、
気がついたらみんなから少し同情されつつも、打ち解けることができていたのだ。


ちなみにアリスに関する和の誤解が解けたは、仲良くなったクラスメートからの会話と、
アリスの言動をみてからなのだが、アリスに感謝しつつ、今朝の占いのことを思い出し、
ああ(今朝の占いが言っていたことは)このことだったんだと、顔をほころばしていた。


そうこうしているうちにいつの間にか料理が出来上がっていたのだが、
大量にあったブロッコリーを使用したため、全体的に緑色の料理になっていたのだが、

「うわ〜おいしそう」とか、「さすがアリス」とか、周りから感嘆の声が上がっていた。

むろん、和も目を輝かせて、アリスのことを尊敬し、お友達になれたらいいな〜とおもい、

「あ、あのアリスさん」
「なあに和ちゃん?」
「こ、今度、私に何か料理を教えてください」

何でもいいからアリスと関わるためのきっかけを求めて、勇気を出してお願いすると、

「いいわよ」
っとアリスは気さくにOKした。

「さてと・・・、イザナギ〜!」

アリスは自分の分の料理がのった皿を持って、ある男子のほうへと
満面の笑みを浮かべて、駆け寄っていった。


そのある男子とはアリスの幼馴染で、いつもボコられている
天領(てんりょう)イザナギというちょっとかわいそうな男の子だ。


「おおう? 何だアリ・・すわっぁ!!?」

呼ばれて振り返ったイザナギが、近づいてきたアリスの持っている皿を見て、
顔を真っ青にして、物凄くオーバーなリアクションをして、壁際まで一気に後ずさった。


このオーバーアクションの理由は、アリスが手にしていた料理につかわれているある食材にあった。


それはかつて、幼少の頃、イザナギがアリスとおままごとをしているときに、
近所にいた農家のおじさんに畑で採れたばかりの野菜をもらい、

ちょうど昼飯時だったので、新鮮な野菜は生でも食えるということを
何かで聞いていたので、全く洗わず、土とか泥の付いた状態で、
マヨネーズだけかけ、素材の味をお楽しみくださいと言わんばかりに、

イザナギに無理やり食わせたところ、ブロッコリーを食べた時に、
違和感の様なのを感じで、食べかけのをよく見ると、
大量の青虫がびっしりと蠢いていたらしい。


それ以来、イザナギはそのトラウマのせいでブロッコリーが苦手になったのだが、
表向きではそれを何とかしてやろうという理由で、本心ではアリスは今日も
イザナギをいじめるべく、意気揚々と駆け寄っていたのだ。


ちなみにアリスがイザナギをいじめる(?)のは、

「ホラ、好きな子には素直になれなくって、
ついテレ隠しとかでいじめちゃうことってあるでしょ?」

的なノリで、アリスの場合は周りが引くほど、ちょっとドが過ぎるだけなのだ。


アリスはこの日、普通に料理を作ってイザナギに食べさせてあげようと
思っていたのだが、和が手にしていた大量のブロッコリーを見た瞬間、
いじめっ子心に火が付いてしまったので、そのネタを調達するべく、和に声をかけたのだ。


ちなみに・・・、アリスの手料理を食べることを断ったイザナギは、
アリスにボコられていたのだが、皆はその流れに慣れていたので、
気にせず出来上がった料理が冷める前にと、食べ始めていた。

だがこの日はちょこっといつもと違うことがあった。

それは、アリスがイザナギをボコっている間に、置いておいた手料理を、
アリスにひそかに思いを寄せる(同じクラスに他のクラスや他学年)の男子が群がって
勝手に食い、イザナギのために作った手料理をかってに食われ、ブチギレたアリスが、

『私の料理を勝手に食ったヤツ出てきなさいっ!!』

と怒鳴ると、男子たちが次々に名乗り出て、一見お互いをかばい合っているように見えるが、
実際の所は絶妙な加減で殴打してくるアリスに、何か目覚めてしまった
M男達がいち早くボコられたい一心での行動であった。


「ふふふ・・・、私のことをイラだたせるのがうまい連中ね・・・」
「私の料理を勝手に食べるようなしつけのなっていない連中は万死に値するわ!」

「・・・和ちゃん」

「は、はい・・・」

不敵な笑みを浮かべながら呼びかけてきたアリスに、
再び恐怖を感じて、恐縮しながら返答すると・・・、

「おとなしい和ちゃんには早速だけど、一つ、料理を教えてあげるわ」
黒い笑みを浮かべながら呟くように言うアリス。


「は・・はい? ど、どんな・・・料理ですか」
ついさっき、何か料理を教えてほしいとは言ったものの、
この状況でアリスから伝授される料理とは何だろうと、顔を引きつけながら尋ねる和。


「それはね、・・・『三分で10日はご飯の食べられない体に(調理)する方法』よ!!」
「え?え?」
「ちなみに出来上がりがこちらで〜す」

と、完成品を紹介するように、アリスは自分の足元に転がっている、
元・イザナギとかいう肉塊を指さし、

「て・・・天領・・・さん? ですよね? これ?」
「・・・ええ」

そう端的に答えると、戸惑っている和をよそにアリスは黒い笑みを浮かべ、
拳を固めると、楽しそうに愚・男子どものほうへとダッシュしていき、

「ここが胃でぇ〜」、「ぐはっ!」、「このあたりにスイ臓があって〜」、「ぎょはっ!!」

っと、内臓の位置を和に分かるように解説しながら男子供をボコってゆく。


ちなみにクラスメートたちはこういう状況には慣れっこの様で、
やべやべとか言いながら、いつの間にか雨具を完全装着して、
赤くて生温かい雨からその身を守っていた。


和はいつもアリスのことを避けていたので、こんなことになっていたとはつゆ知らず、
何故いつもみんながどこでも雨具を持ち込んでいるのだろう?と、
常に疑問を抱いていたのだが、その理由が解り、
これからは自分も天候に関係なく雨具を用意しようと心に誓ったとき、

「委員長、傘持ってないの?」
「じゃあ、こっちに入ってきなよ」
「う、うん」
「いや〜それにしても今日はいつもより多く降ってるわね〜」

っと、仲良くなったクラスメートに呼ばれ、傘の下に入れたので何とか汚れずに済み、
今朝の占いでのラッキーアイテムのことを思い出しつつ、
ああこうことか〜と手をポンとついて、うなずいていた。



アリス 「次も読まなきゃあなたもボコるわよ?」b


終。


6 :ヘタレ草 :2010/09/19(日) 17:00:18 ID:m3kntkzJmn

できないことは力づくだよアリスさん



季節は秋。 誰が言ったか?秋といえばスポーツに食欲、読書に芸術。

・・・っというわけで、今日は学校のイベントの一つである、
全校生徒参加の写生大会が、近くの高原でとり行われておりました。


その内容は結構アバウトなもので、現地集合の現地解散で、丸一日かけて、
好きに画材を各自持参し、風景画を完成させて、次の授業で提出すること。
なお、優秀な作品はコンクールに出展されるらしい。



各教師からちょっとした説明と注意をうけ、美術担当の教師の合図で、
生徒たちは各々グループをつくったりして、好きなところへ移動していき、
ほとんどの生徒たちは描くポイント探しと銘打って、久々の外での課外授業に
テンションが上がって、走り回ったりして自由に遊んでいたりする。


ただ、もちろん描ききれなければ宿題になるし、成績にも影響が出るので、
二時間ほど経つと、時折ラクガキとか、雑談したりしてふざけ合っている
生徒もいるものの、一応下書きとかデッサンに取り掛かっている。


ちなみに、課題を早く済ませれば後は終了時刻まで、自由に過ごしていいこと
になっているので、最初から真面目に授業に取り組んでいる者たちの中には、
夏休みの宿題を七月中にすませて後は遊ぶというようなタイプか、絵を描くのが好きな
人くらいなので、既に絵具やマーカーで色を塗り始めているものもいるが、
その絵は結構雑なできで、やっつけ仕事のような感じで描きあげられている。


中には早くて絵の上手いのもいるが、そういう生徒は周りにいる生徒たちに
のぞき込まれたり、群がられて集中力とかが低下し、ペースダウンさせられたりしている。



とまあ、周りの状況をお伝えしたところで、当・物語の主人公たちは
どうしているかというと、アリスと和は数名の女子グループと共に行動し、
さっさと絵を完成させて遊ぶぞー!!という約束のもと、急ピッチで作業が行われている。


一方、イザナギも仲のいい男友達とグループをつくって絵を描いているが、
こちらは度々ふざけてちょっかいとかを出し合ったり、雑談したりして、
脱線しまくっていて、ほとんど無計画に作業して、今を楽しんでいた。


「ふぅ・・・」

課外授業が開始してから三時間ほど経ち、ようやく満足のいく下書きができた和が
小さく息をつき、ちょっと休憩しよう手を止めて、ふと隣の様子をうかがう。

隣で作業しているアリスは、既に絵具で色塗りしていたので、
進行状況の確認を兼ねてその絵が見たいと思い、

「あのー・・・、アリスさん」

「何? 和ちゃん」
声をかけるとアリスが顔を上げたので、トコトコと近づいていき、

「あの、アリスさんはどれくらいできましたか? 」
絵を見ようと、背後から覗き込む。


「え? ちょ、まだ描きかけだから見せたくないんだけど・・・」
「え・・・あっ、ごめんなさい」 

すると普段は堂々としているアリスには珍しく、照れくさそうにすぐに
体で絵を隠して、見せないようにしたので、いきなりのぞき見るのは
失礼だったと思い、和はすぐに視線を逸らしてから、謝る。


「うーん、まだ描きかけだからあまり見られたくないんだけど・・・、
和ちゃんには特別に見せてあげようか?」

「え、はい」

少し間を開けてから、ちっとためらいがちにだがゆっくりとアリスが
見せてくれると言ってきたので、気がかわる前にと、和は即答して、
アリスから描きかけの絵が描かれている画用紙を受け取る。


アリスは何でも器用にこなすので、さぞ絵もすごく上手なんだろうなぁと期待して、
絵を見せてもらった和だったのだが・・・、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛?」

しばらく絵を眺め、二十秒ほど沈黙したままつっ立ってからやっと声ができた。

「描きかけだから変なところもあると思うけど・・・どう?」



「・・・はい? あっ、その・・・えー・・・あう・・・」 

絵に対する感想を訊ねられたのだが、和にはすぐにコメントを返すことができなかった。
その理由は言わずもがな、アリスが描いた絵にあるのだが、
和にはどう表現していいのか分からないからだ。


アリスが描いた絵の雰囲気を何んとか文章にして書きおこすと・・・、

白い画用紙の上には、ピカソに自身のアイデンティティを保ったまま、
自分流に好き勝手にムンクの叫びを書いてくださいとお願いしたらこうなりました〜。
というような絵が描かれていたからなのだ。


もう少し具体的に書くと、木とか池とか街灯とか人が、図形の様な感じで
描かれていて、その形もかなり適当で、木と思われるものが楕円や、
逆三角形で表わされていて、何が何なのかパッと見では解らないのに、
それに加えて、暗黒色を使った絵具で塗装がほどこされており、
観る者を精神的に不安にさせると同時に、描き手の心配もしてしまう。


普段は明るくふるまっているけど、精神的に病んでいるのではないのか?
それともアリスの目には世界がこう映っているのか・・・? と。


しかしながら、あれ?これは下手とかそういう次元ではなく、
ある意味、これは一つの新たなジャンルの作品なのでは? と、絵に対する知識とか
そういうのを評論する力に乏しい和には、むげに絵の評価を口にできない。

「・・・」

その脳内会議はの和の中で約五秒ほどで行われていたが、何もコメントは浮かばない


「ど?」
「あ・・・ぅ?」
だがアリスから評価を問われているので、何か言わないといけない。

そこで和はこの絵を理解することから始めようと考え、まずアリスの視線の方向と、
絵を見比べてどのへんのを描いているのかを解析してみることにした。

何を描いていたのかが分かれば、それを何とか褒めてごまかそうと考え、
アリスが座っている位置から見える景色を見ると・・・、

「あ・・・イザナギくんだ」

男子たちと相変わらずふざけ合いながら無邪気に笑っているイザナギの姿が見えたので、
和は無意識のうちに友達の名前を口にしただけだったのだが、


「え?! ちょ、ちょっとなななな、何であいつのことを描かなきゃ・・・、
えっと、あれよ! そう、たまたま私の描いてる所にあいつがいただけよ!」

アリスはどうやら和が口にした幼馴染の名前を、絵の中から見つけて言ったのだと
勘違いしたらしく、思わぬ不意打ちに顔を若干赤らめて、珍しく動揺し、
慌てながら、集中して描いていたら偶然、気づかず描いてしまったと言い訳しつつ、
和から素早く絵を取りかえしていた。

「・・・」
(へぇーあれイザナギくんだったんだ・・・どれかは分からなかったけど)

耳までかすかに赤いアリスの女の子らしい反応に、和はいつの間にかニヤニヤと
顔をほころばせていたが、その様子にアリスはさらに恥ずかしさを感じたのか、

「わ、私があいつのことかいてたら何か意識してる
みたいでイヤだし、絵具で塗りつぶしとくわ」

っと、再び大急ぎで色塗りを始めたところへ、

「よう! お前らここにいたのかよ・・・、ってか相変わらずアリスの絵はひどいな〜」

っと、いつの間にかアリスたちの存在に気付いたイザナギが背後に回り込んで来ていて、
アリスの絵に対して全くデリカシーのない思考ダダ漏れの言葉をさらりと吐いていた。

「・・・」
「・・・」
一方アリスと和は、一瞬ピキッ!とか何かにひびが入った音を立てて、
その周囲の空気ごと硬直していたが、それに気付かないイザナギは、

「ぷっ!ってかこれなんだよ? 相変わらず何かわかんねえって」
っと、普段何をやってもアリスには負けているので、
その仕返しとでも言いたげに、絵を指さして一人爆笑している。


「あ・・・」
(い、イザナギさん、それたぶん(位置関係的に)あなたですよ)
っと和はイザナギに伝えたかったが、声が出なかった。


「・・・」

だって、すぐそばでたぶん乙女心を粉砕されて、物凄く黒いオーラをまとっている
アリスがイザナギのことを、ありったけの殺気を込めて睨んでいたのだから。

「あははあははっ―――wwww」

「・・・チッ」

「あわわわ・・・」
(イザナギくん気づいてぇ〜)

噴火寸前のアリスともう何で笑っているのか分からなくなるほど、
爆笑しているイザナギを交互に見て、何もできない和はただオロオロとうろたえていた。


そしてついにアリスに限界が訪れ・・・、

「あ〜らー、いけないわ! 赤の絵具を切らしちゃったわ」
と、すました声で呟くと、イザナギを見る。

「ん?」
ようやく何かを感じ取ったのか、イザナギは笑うのをやめて、アリスの顔を見る。

目と目があった瞬間・・・。

「おおう、ちょうどこんなところに(赤の絵具の代わりになる)いいのあるじゃない!」

「へ?」

「あんたの血で代用させてもらうわ」

「え?ちょ・・・『うぎゃああああああああああああああああああああ―――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!』」


・・・・・・・・・・・・・・・・・。

さて、この後イザナギくんがどうなったのかはご想像にお任せするとして、

ただ、一暴れ終えて、全身に返り血を受け、ガニ股でドスドスという擬音を
携えながら不機嫌そうに去って行くアリスが残していった絵に、放心状態で
コンビニで買ったビニール傘をさし、レインコートまで完全着装してつっ立ていた
和が視線を落とすと、そこにはまるで現実のほうがアリスの絵のほうに
合わせたかのように、絵と瓜二つの絶望的な世界がそこには広がっていたそうな。


終。


7 :ヘタレ草 :2011/01/31(月) 00:32:56 ID:o3teVAznV7


きょう鬼はネタ溜め中につき、別の話でも書いてみます。


8 :ヘタレ草 :2011/01/31(月) 00:35:38 ID:o3teVAznV7

こんがり職人



*プロローグ+簡易の人物紹介*


この物語は・・・、フリーター街道を爆進していた三男坊の青年がある日突然、
大人な事情によって代々続く家業の神社を無理やり継がされ、若くしてめでたく?
16代目当主となるも、この神社にはとある慢性的な大問題がありました。


その問題のせいで一時、手詰まりになって途方に暮れた折に、
とある用事というか理由で、なんと、とある神様がこの神社に訪れたのです。

そのとある神様が青年の務めてる神社に居ることによって、
青年の抱えている問題とまた、訪れたとある神様自身の用事が一度に解消される。

・・・という双方の利害の一致により始まった、
とある神様と人間との世にも奇妙で、とても珍しい組み合わせの同棲生活。


これはそんな彼らの非・日常かつ、心霊ほのぼの時々バトル・・・、ところにより雪崩れ!
という、欲張りすぎやろ〜とか誰かにつっ込まれていそうな、やる気のない話です。(笑)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「えーあー・・・、ども、プロローグでご紹介にあずかりました、
神主の青年こと、当、狐狸神社で現在当主をしております、
水科 居織(みずしな いおり)23歳で絶賛恋人募集中です」

「・・・なお、この作品に限りましては僕視点の描写で語らせていただきます」


「・・・イオ、それはただいつもの様にケチっていんくっ・・・」


「あ、あはははは、いや〜サイちゃんは自己紹介もせずに何をいってるのかな〜?」
「あ、いえ、皆様、ほんと、別に深い意味なんてありませんよ?」 

「三人称で描写してもらった方が僕としても楽だし、
読者様も状況が伝わりやすくていいっていうのはわかってますよ?
ほんのお茶目心と言いますか、作風を変えるためのチャレンジ精神と言いますか、

三人称で発注すると、語り手さんにまで料金が発生しちゃうし、
何より(ギャラが)高いからとか、そういうとかほんと、何でもありませんよ?」

「イオ、オフレコとか本音が出まっくってるぞ?」

「・・・え〜おほん、先ほどはお見苦しい点をお見せしましたが、
先ほど僕のことをイオって呼んでいたのは僕の友達で、通称サイちゃんでます」
「あっと、ちなみにサイちゃんはさっきのプロローグにあったとある神様です」

「ほら・・・サイちゃんも自己紹介して」

「・・・めんどくせぇ・・・、つーか本編でもお前が紹介すんだろ?
んな無駄なことほざいて暇があったらさっさと本編に行け、・・つーか、イオ、
ハラ減ったからはやくメシを作れ・・と、コンビニで食後のデザート買ってこい、
と、ついでに今月発売の週刊誌と後、明日発売の(人気作の)ゲームを今から並んで買ってこ・・・」


「サイちゃん・・・パシリに使うにしてもひどくね?」
「相変わらず無気力というか、他力本願というか・・・、
それにここで自己紹介しておいてくれたら、
本編でのページ数とか行数とか、一文字でも減らせるだろ?」

「ここはフリートーク場だから、語り手を使ったり、無駄に喋っても
料金が発生しないけど、本編内だと既定の文字数を超えると、
罰金が取られるんだぞ!! 一文字につき、いくらすると思ってんだよ!?」

「それに安い製作費で面白いモノができたら、ボーナスが支給されるんだぞ!!」

「イオ・・・お前もなかなかの守銭奴だな」


・・・以上プロローグと簡易の人物紹介でした〜

以下から本編開始です。


9 :ヘタレ草 :2011/02/02(水) 18:28:11 ID:o3teVAznV7

無精な神と判るだけの男


僕の名前は水科居織(みずしないおり)23歳、恋人大絶賛募集中≠ナす。←ここ重要です。


みんなからは親しみを込めて、イオと呼ばれてます。

僕はとある街はずれの山にある、狐狸という名前の古くから代々続く由緒正しき神社の・・・、
とかいえば聞こえがいいんだけど、ぶっちゃけ手入れが行き届いてない、
ただのボロ寺の16代目当主をしております。


ちなみにこの神社はもともとは狐と狸を神の使えとして、崇めるとか意味不明なものだったんだけど、
うちは代々強力な霊能力を持った人間が生まれやすい家系だったらしくて、確か、町の人に頼まれて、
6代目辺りが付喪神祓いをやってのけた以来、付喪神祓いの方がメインの仕事となっていって、
うちの神社はいつの間にか、付喪神祓いをする神社として、全国的に有名となっていましたね。


ああと、ちなみに付喪神というのは、長いことつかっていた家具とか持ち物に魂が宿って、
それがごくたまに人に危害をくわえるっていう、まあ俗にいう、髪が伸びる人形とか、
所有者が次々に不幸な目にあうっていう、何かいわくのある呪いの逸品やら珍品なんかのことだね。


その手の類の物がほぼ毎日うちの神社に持ち込まれては、僕のじいちゃんが祓っていたんだけど、
そのじいちゃんも3年くらい前に寿命で死んじゃったんだけど、一つの問題がのこりました。


ここからは何で僕がこのボロ寺の当主になったのかっていう理由になるんだけど、
それは、強い霊感を持った跡取りがじいちゃんの代を境に、
急に生まれてこなくなったってことなんだよね〜。

僕の両親はもちろん、僕には2人の兄がいたけどそっちも全然ダメで、
唯一僕が霊視できる程度の力があったから、よくじいちゃんに指導
されたけど、結局その力はたいして伸びなくて、僕が高校に入ってからは、
どうせ三男坊だから家を継ぐことないだろうと高をくくって、
特に夢も目的もなくじいちゃんが死ぬまでバイトに明け暮れていたんだけど、

呪いの品が保管されている蔵から、夜な夜な誰もいないのにヘンな物音とかするし
不可解なこともよく起こるから、うちの親兄弟たちや親せきは当然気味悪がって、


兄たちはここを継ぎたくないって一心で、めっちゃ勉強して、資格とかも取りまくってて、
気がついたらエリートコースの仲間入りしてて、両親たちもとてもこの神社を継げとは
言いづらい状態で、そこでフリーターの僕に白羽の矢がたったということだよね。


けれど僕にはじいちゃんたちみたいに、うまく付喪神を祓うことはできなくて、
そのせいでどんどん全国から送られてくる呪いの品が溜まっていって、蔵にも入らなくなって、
保管場所がなくてしかたなく、神社の周りに置いといたら、近隣住人がゴミ屋敷的な認識
をされるようになってて、今じゃ明らかに大型の粗大ゴミとか不法投棄されるようになってたね。


まあうちの寺に送られてくる物で、全部が全部、呪いの品ってわけでもないから、
最初のうちは霊視して、大丈夫なのだけを分類から修理や手入れして売りとばしたりしてたんだけど、
大した額にはならないし、回収や処分の方が全然間に合わなくなって、完全に手詰まりになったそんな時、

僕の前にある神様が現れましてね・・・、いや表現過剰とかじゃなくて、ほんととに神様だよ。


死神・・・ていう神様がね・・・。 ちなみに死神仲間からは3110って
呼ばれているから、僕は親しみを込めてサイちゃんって呼んでます。


誤解がないよう初めに言っときますけど、サイちゃんが僕の前に現れたのは、
別に僕の寿命が間近に迫ってて、魂を回収するためじゃないですよ?

むしろ他の死神さんと話をする機会があって、何となしに僕の寿命を訊いてみたら、
ひ孫の顔がおがめるくらいは生きられるだろうと言われたから・・・。

ただ、・・・その死神さんは僕の寿命を知ってるだけで、
結婚しているかどうかは知らないと、言われたけどね。

まあこんな不気味な神社じゃ女の子が全く寄りつかないしね。


じゃあサイちゃんが何の目的で現れたのかというと、
死神にも色々と管轄とかがあるらしいんだよ。


僕も最近知ったんだけど、人の魂を狩る死神もいれば、魚類に鳥類、
哺乳類や昆虫といった動物、他にも植物などの魂を狩る死神もいるってことで、
サイちゃんの担当が付喪神だったということなんだけどね。


でもって、死神の仕事は保険屋の仕事の様に、毎月ノルマがあって・・・て、
もうここまで言ったら勘のいい人は察しが付くと思うけど、僕のうちは付喪神祓い屋。

何もしなくてもここにいるだけで定期的にそういう類の物が来るから、無精者の
サイちゃんとしてはあちこち探しに回らなくて済むし、僕はお祓いがうまくないから、
確実に処理してもらえるという、互いの利害が一致したから、なんと!
現在僕は死神のサイちゃんとこのボロ寺で一緒に暮らしてるんだよね。


最初はそれでよかったんだけど・・・、サイちゃんはとっても
無精者だから、最近じゃ週末にノルマ分しか働かなくなっています。


だから僕の仕事はというと・・・、境内の掃除に売れそうな物品の修理や手入れにくわえ、
サイちゃんのご機嫌取りという名の、あの手この手でやる気をださせることに精を出しております。


とっまあ、読者様にモノローグでこの神社と僕の現状を説明しながら、
竹ぼうきで集めた木の葉とかゴミをチリ取りで回収して、掃除用具をかたづけると、
誰が置いて行ったのか? ちょっと前にこの神社に捨てられていた救助用に
使われていそうな大きなゴムマットを、とても重いので引きずって縁側にセットしています。


ちなにみこんなバカでかいゴムマットを用意して何する気かって?

僕が何をしているかというと今日は月末で、サイちゃんの仕事の納期日だから、
サイちゃんに気持ち良く働いてもらうための準備をしているんだ。


サイちゃんが死神の仕事をちゃんとしてくれるのは今日ぐらいだけど、
神社の中にある呪いの品は死神がきっちり除霊してくれているから
安心して売る事はもちろん処分もできる日でもあるんだ。


「サイちゃ〜ん!」

僕は神社の本堂にいる死神に向かって、大声であだ名で呼びつけて、準備ができたことを伝えます。

「・・・もうそんな時期か、・・・メンドくせぇな」


1分ほど待っていると、黒いTシャツにジーパンというラフな格好に、
長身で肩くらいまである黒髪を一つに束ねた男ことサイちゃんが、
芸能人のスキャンダルとかがのっている雑誌を片手に、片手で髪をボリボリ掻きながら、
気だるそうな感じで、のそのそとやってきて、マットが敷いている縁側に座り、
読みかけのページを開いて、再び雑誌の熟読を始めている。

こんなだらけまくってる人がとても死神には見えないでしょ?

「・・・イオ、人のことをとやかく言う前にお前の恰好もどうかと思うが・・・?」

と、サイちゃんが僕の語りに何か不満を感じたのか、僕の服装のことを逆に指摘してきた。

ちなみに僕の恰好は・・・金髪の頭を隠すために巻いたタオル、紺の作務衣にスニーカーという
動きやすさ重視の至って無難でシンプルなチョイスなのですが、みんながみんな統一感がないとか、
ヘンだと言って来ますが、いまいちよくわかりません。


まあそんなことは置いといて、話を戻すけど、

サイちゃんの趣味は僕が買ってくる週刊誌や漫画、あるいテレビの
バライティー番組とかをほぼ一日中ゴロゴロしながら眺め見ることだ。


たから別にサイちゃんのこの行動は気にしないし、一応これで準備はオッケイだ。

「それじゃいくよ〜!」

「・・・ん」

サイちゃんに向かって声をかけると、顔は常に雑誌に向いているけど、
小さな返事が返ってきたので、僕は小物を選んで掴むと、
サイちゃんの前を通過するように適当な高さと勢いで
マットの上からはみでないようにほり投げていく。


サイちゃんは相変らす雑誌に目を通して、僕がほり投げている物品には目もくれないけど、
いつの間にどこから出したのか、2mくらいの長さの大きな鎌で、
僕が最初に投げたクマのぬいぐるみを切りつける。

・・・けれど、サイちゃんの前を通過して、マットの上に落ちたクマのぬいぐるみは無傷。
いや、それ以外の物も無傷・・・。 もちろんサイちゃんは空振りなんてしていない。

確実に僕が投げる物品に鎌を当てて、切り裂いているはずなのに、それらはどれも無傷なんだ。


これはどういうことかというと、縁側にセットしている理由にもなるんだけど、
早い話が、サイちゃんが振るっている鎌は死神の鎌で、物体をすり抜けて、
その中にある付喪神の魂だけを鎌に突き刺して、ほじくりだした魂は鎌の刃の
すぐ下に取り付けられている巾着袋に、自動的に吸い込まれるようになっているらしい。


もちろん依頼主からは一筆もらっているので壊しても大丈夫だし、
呪われていた品物をお祓いしているとはいえ、返してほしいという人自体少ないから
そんなことに気を使う必要もないと思うけど、それにそういうのに限って、
意外と値が張るような高価な物が多かったりするんだよね。


だからマットを敷いているのは、あくまで除霊後には知り合いの骨とう品屋に、
高値で売りとばすために、なるべく傷つけないようにするための策だ。


最初の頃はサイちゃんはちゃんとやっていたけど、面倒くさがっているサイちゃんに
仕事をスムーズさせるため試行錯誤した結果、僕が微妙にある霊感を使って、
付喪神が宿っていそうな物品をサイちゃんに投げるという、このスタイルがいつの間にか定着している。



これが僕らの現状であり日常。


ちなみに僕はこの手法で楽してお金を稼ぎ、エリートコースを爆進している兄たちの貯金をたぶんかる〜く
越えてるとは想うけど、こんなおいしい商売のことはもちろん家族や親せき一同には一切口外する気はありません。


今回はほぼ説明文だけで終わっちゃったので、次回はもう少し動きのあるお話をしたいと思います。


10 :ヘタレ草 :2011/03/06(日) 22:01:08 ID:o3teVAznV7

ガサツな神と守銭奴な男




「それじゃ行くよ〜サイちゃん」

「・・・」

「・・・サイちゃんゲームしてないで準備してよ! 僕の声ちゃんと聞こえてるの?」



あっ、どうも、僕こと水科居織(みずしないおり)は今日は今日とで、携帯ゲーム機の某落ちゲーに
夢中な死神のサイちゃんのやる気をあの手この手で無理やり駆り立てて、どうにか定位置
(ゴムマットがセットされている縁側)まで連れ出して、付喪神付の物品の除霊(処理)を行っている最中です。



「・・・はい。 ほい。 よっと」

「・・・」

大丈夫かなと思いつつも、、声で一応合図を送りながら僕はとりあえず、片手で持てる
程度の小物を選んでサイちゃんの前をコを描いて通過するように、ゆっくりほおり投げると、


「・・・」


サイちゃんは器用にも落ちゲーをやりながら、
持ち手の棒の長さが2mはある大鎌を軽ががると片手で持って、
対象物を一切見ずに、居合い斬りを彷彿させるかのように素早く振って、
僕がほおり投げていく物品から付喪神を刺突して掻きだして、
鎌の刃のすぐ下にぶら下がっている(自動吸引仕様の)巾着袋に収納しています。

ちなみにサイちゃんの使用している死神の大鎌は特別せいで、刺突された物品には傷は一切ありません。


っとまあ、こんな調子で僕が付喪神憑きの物品だけを選んでは、
サイちゃんに向かって投げて、除霊してもらってある程度落下地点に
物がたまってきたら、回収というのを動かないサイちゃんの分まで1人でこなして、

その流れが10分ほど経過したときだった、
サイちゃんは構えていた大鎌を地面に突き立てて、
そのあいた手を前に突き出して僕に待ったの意の合図を送ってきました。

「・・・えい、よいしょ、もういっ」

「ん! イオ、ストップだ」

そのとき僕はサイちゃんに向かって、錆ついたボロいやかんを投げようとしたので、


「え? おわっ! ・・とと」 
「ふぅ〜あっぶねっ・・・もうちょっとで商品を傷つけるところだったよ」

と、僕は思わずやかんを除霊&手入れ済みの売却品が置いてある方向に
投げそうになったので慌てて軌道修正して、やかんを空中で掴みなおします。


「・・・もう一杯になったの?」

思わず額に掻いた冷や汗を肘で拭いながら、改めてサイちゃんの方に向き直って尋ねたら、


「・・・」

コクんと無言で頭を一度だけ上下させて、再びゲーム機の画面に視線を戻します。


ちなみにさっき、僕がサイちゃんに言った質問の意味なんだけど、
それはサイちゃんが愛用している大鎌の刃のすぐ下にぶら下がっている、
死神が狩った魂を収納しておくための巾着袋の収納量に対しての質問で、

これは余談になるけど、ほかの死神さんに見せてもらったことがあるんだけど、
パッと見はどれもおんなじように見えるけど、死神が狩る対象に応じて、
巾着袋の収納量が違うらしい。


それは、ノルマにも関係する話なんだけど、簡単に手に入る魂を狩る
死神はその分回収する魂の量が多いからという理由なんだけど、

サイちゃんが専門とする付喪神みたいな魂は、発生するまでに
かなりの年月がかかるうえに、年間に誕生する付喪神は数えるほどだし、

そうそう簡単に見つかるものじゃないから、基本足で稼がないといけないし、
やりがいも危険性も少ないから、付喪神狩りはよっぽど使えない死神か
新人が研修とかでやるような仕事と格付けされるくらい

マイナーな担当らしくてみんな嫌がって避けるから、
その分競争相手はいないし、月々に回収する魂のノルマが
少ないという理由でサイちゃんはこの担当についたらしいんだけど、

どういうつてで知ったのか、めんどくさがり屋のサイちゃんは、
楽して沢山の付喪神の魂が手に入る僕のところに現れて、
こうして自堕落ライフを満喫しているわけなんだけど・・・。



「ねえサイちゃん、毎回思うんだけど、サイちゃんの仕事って、歩合給なんだよね?」

僕が尋ねると「ああ」っと予想通り相変わらずゲーム機の画面に視線を向けたまま
素っ気ない返答しか返ってこないので、ここは一言、常日頃から溜まっていることを
言わねばと僕は思ったのです。


「じゃあ何でもっと頑張らないんだよ!? 歩合給何だよね?!」
「だったら一度その一杯になった袋を納品しに行って、どんどん稼ごうよ!!」

「それにサイちゃんが全然動いてくれないからはけていくのは僕が投げられる程度の小物ばかりで、
大型の物品は全然手つかずだからここが着実にゴミ・・ゲフン! 宝の島ならぬ宝神社になりつつあるんだよ!?」

サイちゃんにはこの言葉はあまり効果ないと思うけど言ってやりましたよ。
いくら死神で、僕の商売の相棒とはいえ、全く働かないんじゃそこまでの待遇を認めるわけにはいきませんからね。


「・・・イオ、一ついいか?」

「え? な、何だよサイちゃん・・・」

僕が日ごろの不満を言いきった直後、サイちゃんが若干声のトーンを落として、
語りかけてきたので、僕は言いすぎた?とか思って、ドキドキして身構えます。

だって今ので機嫌を損ねて出ていかれたらと思うと、サイちゃんがいないと除霊できないから・・・。


「今のセリフはとても神社の宮司のものとは思えないな、イオも一応除霊はできるだろ?」

「え・・・そ、それは〜頑張ればだけど、時間かかるし成功率低いし・・・」

突然の問いかけに僕は目を泳がせて、痛いところをついてくるサイちゃんから視線を思わず外します。

「だったら少しは自分でも努力するべきじゃないのか? 
そうすればイオの小言が減って俺はもっと気持ちよくゴロゴロできる」

「そっち?!」

無精者だと思っていたけどサイちゃんなりの考えであえて僕の成長ためにゴロゴロしているのかな?
とも一瞬思ったけど、最後の一文で結局自分がさぼるためだったと理解してずっこけそうになる僕。


「それに俺に頼らずとも萩裏に頼めばいいことだろ?」

「あ〜しぐれ君ね・・ ん〜確かに彼はきっちり仕事はやってくれるけど・・・
依頼料高いし、支払方法も変わってるし、それに彼も色々忙しいからね〜」
「できれば最終手段にしたいんだよね、なんといっても自分でもできることに金払いたくないし」


「結局イオも自分本位だな」

「いや、だって・・・、え?」

サイちゃんのツッコミに僕が弁解しようとしたときだった、突然神社の敷地内にあるあらゆるゴミたちが
すごい力で一か所に吸い寄せられるかのように、あるいは某ゲームの塊なんたらとかみたいに、くっついていって、
見る見るうちにゴミでできた3mくらいはある巨人が出来上がってしまった。

言っとくけどこれ、ゴミで装飾された最新鋭のロボットとか合体プログラムが
仕込まれたメカがゴミの中に仕込まれているわけじゃないんだからね!


「おー、珍しいな複数の付喪神同士がひきあって一つの意志を持った怪異に進化した」
「ふつうはある一定の条件が揃わないとこんなことにはならないハズだがな?」

「いやいや、何のんきに言ってるの!? 何んとかしてよサイちゃん!!」

のんきなことを呟きながら僕の隣にやってきて、日光を遮るように額に手を添えて
バカでかいゴミの巨人を見上げているサイちゃんに僕は早くこれを退治してって叫んでみたけど、

「いや、イオもう(袋の中がいっぱいで)回収できんのだが?」

「もーサイちゃんがさぼってるからこんなことになったんでしょってどぅええええええ!!!?」

サイちゃんが付喪神でパンパンに膨れた巾着袋をひらひらと振り回しているのに僕がツッコミを入れた瞬間、
巨大なゴミの巨人が僕をめがけて拳的な部位を真下に勢いよく振り落としてきたので、
僕は自分でも情けないと思う悲鳴を上げながら地面を這って、サイちゃんの後ろに隠れるように回り込みます。

「おー地面にひびが入ったな」

「だから何でサイちゃんはそんなにのんきでいられるの?!」
「っていうか地面にひび!!? ぎゃああああ修理費いくらかかるとおぉお!!!」
「しかもその反動で巨人の拳?もぐちゃぐちゃに!!?」
「売り物がああああああ〜〜〜〜〜〜!!!」

「そっちの心配か? 相変わらずだなイオ・・・っというかうるさい」


呆れ顔のサイちゃんが指さしたところを見ると、ひびなんて表現は生易しい、
神社の境内の石造りの地面が拳だい形に陥没している。

ああもうダメだ・・・損害額とかを思うと、頭がおかしくなりそうだ・・・。
もう今の僕にはまともに状況とかの描写ができそうにありません。

先立つ不孝をお許しください・・・ってあれ?この展開僕死ぬの?

「ったく、めんどくせぇ・・・しょうがないな」

混乱して吐いた自分のセリフに自分でセルフでつっ込んで、若干平静を取り戻している間に、
サイちゃんは首を左右に振りながら小さく息をついて、手にしていた大鎌を、サイコロをふるような
感覚で片手で軽々とほおり投げて、巨人の左足の小指的な部位に突き立てる。


「・・・うわ〜ぉ・・・地味にいたそうだね」

《グぅおおおおおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!》

僕がその痛みを想像して呟いたとほぼ同時にけたたましい悲鳴のような声を巨人が上げて、
サイちゃんの投げた大鎌をひっこ抜いて、巨人が左足をかかえるようなそぶりをしたとき、


《ごおおおお???》

巨人の左足的な部位を形成していたゴミがボロボロと崩れ落ちて、
バランスを崩し、巨人が勢いよく尻もちをつきました。

その衝撃はとてもすごくて、僕の体が一瞬浮き上がったし、
周囲にドン!!!とか何か衝突事故のような短い音がして、
それに驚いた鳥たちが一斉に飛び去っていきました。


よく見るとサイちゃんの大鎌には付喪神魂が突き刺さっています。

どうやら左足を形成していた付喪神を抜かれて、状態を維持できなくなったようですね。

なんてことを皆さまに現状報告を兼ねた描写している間にサイちゃんは素早く大鎌を回収して、
もう片方の足と両腕、顔的部位を形成している付喪神を巨人からひきはがしていました。


僕が気づいた時にはもうそこにあるのはゴミの巨人ではなくゴミでできた巨大な球体のみです。

ちなみに魂の回収袋は容量が一杯のため、サイちゃんが手にしている
大鎌の刃には串団子のように付喪神の魂がいくつも刺さっています。


「・・・イオ、あと一つ大きい付喪神が中心にあるから、刃が届かんから斬るぞ?」

「え?」

言うのが速いのか、っていうか僕の了解を得る前にサイちゃんは大鎌を素早く振るって、
ゴミでできた巨大な球体を発生させた真空波の様な風の刃で物理的にゴミを薙ぎ払って、
真っ二つに切り裂いていました。

え〜っと今の説明だとわかりにくいと思うので補足しておくと、
普段は付喪神を回収するためにサイちゃんの大鎌は物体をすり抜けるように

設定してあるんだけど、状況に合わせてこのように普通の大鎌としても使用できるので・・・、

早い話が今の設定でサイちゃんが振り回している鎌に斬りつけられたら、
全てが真っ二つになっちゃうわけで・・・、

僕が何で黙って描写に徹しているのかというと、自分を落ち着かせるため・・、というか現実逃避というか・・・。

ええいもういい!! 僕は現実と向き合うよ!!!


サイちゃんが衝撃波ぶった切ったゴミの球体はほぼ全部粉砕していて、修理できそうにない状態だし、
貫通して飛んでいった衝撃波が修理済みのや、高額で売れそうなものも見事に粉砕しております。

それに被害はそれだけじゃないよ? ゴミの巨人が暴れて壊れた個所とかあるし・・・ねえ僕はもうどうすればいいの?

あまりにも状況が破たんしすぎて、もう何も言葉が出ません。 ってかあ、ははん、これはさては夢だな。

なんてことを考えていて、ショックで愕然としてひざから崩れ落ちている僕の横で、
サイちゃんは一切のフォローもいれずに携帯の様な見たこともないなデザインの
通信機を使ってどこかの誰かさんと会話しているようです。


ちなみにサイちゃんは今まで見たこともないようなバカでかい付喪神の魂を、
逃げないように足で踏みつけております。


数分後、サイちゃんからの連絡で別の死神さんがやってきて、
サイちゃんが収集した付喪神を全て回収して、
巾着袋も取り換えて去って行きました。


僕はこの時まで知らなかったけど、回収する魂の危険度によって、
ランク付けされていて、手に負えない魂とか悪霊に遭遇したり非常時には、
ベテランの強い死神を呼んで代わりに回収とか対応してもらえるように、
ライフラインが用意されているようだけど、

そのことを僕が知るともっと働かされそうだから黙っていたようだけど、
そのことに僕が全力でツッコミを入れられるようになったのは、
付喪神が大暴れ事件から僕だけで復興作業を行って、約一ヶ月経った後のことでした。


11 :ヘタレ草 :2011/05/06(金) 01:14:56 ID:o3teVAznV7

プロのコンガリ職人を目指して・・・



ども、皆さまお久しぶりです。狐狸神社の当主を務めます水科居織です。
さて、今話で三話目なのでそろそろ僕の名前くらいは覚えてもらえたでしょうか?

え?長いことあいていたから忘れちゃた? ・・・そんな方は一話から読み返してね。
けどその前に・・・、誤字脱字とかの恥部の部分とかあっても何も言わずに流して置いてね。


その必要がない方はそのまま本編にお進みください。


え〜前回、巨大な付喪神が大暴れしまして、それにより多大な被害を出しまして、
一応保険には入ってはいましたが、保険会社に問い合わせたところ、超常現象による損害は対象外らしく・・・、

その修繕費等々といった損失額を集計した結果、リアルな数字をめにして、
ひどいめまいに襲われ、胃に穴があきそうなほど僕の精神は崩壊寸前までいっておりました。


でもいつまでも凹んでられないと、復興に向けて動き出しまして、
学生時代にあらゆるバイトを掛け持ちして、そこで培った知識と技術を駆使して、
ある程度は自力で修繕させましたが、自分だけではどうしようもできない修復作業に関しては、

あらゆる業者に修繕の見積りを出しまして、前回は渋りましたが、
結局一番安かった知り合いの少年に依頼して、一ヶ月ちかくかけて、
どうにか元の生活環境に戻ることができました。


しかしその影響のせいでしょうか、多額の支払のショックで、僕は自身のアイデンティティーを
少々見失ってしまったようで、僕の口調とかが多少なりとも変わってしまっているような気がしますが、
そこは仕様ということにしといてほしいんだよね。


間違っても書き手が長いこと放置していて僕の設定とかわすれたけど、
前話を読みかえすのはまんどくせぇ〜とか思って、こんな誤魔化し方してるんじゃ?
とか妙な勘繰りはしないでほしいんだよね。


さて今話も、毎度おなじみのサイちゃんと付喪神祓いの作業を・・・は、今回お休みで、
この間の騒動の影響で雑務がだいぶたまってきているので、第一話であらかた説明していると思うけど、

今僕は毎月定期的に送られてくるお祓いや、供養を目的とした物品の受け入れ、仕分けから手入れ、
敷地内の掃除に買い出し、サイちゃんのお世話と部屋の掃除に洗濯といった作業にいそしんでいます。


「はぁ〜・・・とはいうものの、やることがいっぱいありすぎて、
正直僕一人だけじゃ手が回らないよ。 サイちゃんは相変わらずあんな感じだし・・・」
「分身でもできたらな〜」


僕一人で忙しくあれやこれやと、必死で雑務をこなしている傍らでは、
いつものようにテレビの前に寝っ転がって、人気の芸能人が浮気しているだのとかいう
話題で盛り上がっているワイドショーを観ているサイちゃんに、

どうせ手伝ってって言っても手伝ってはくれないだろうな〜とか思い、
恨めしそうに箒を手に、庭からちらっと遠目で見つつ、もそんな解りきったことに
労力を使っている暇はないなと、僕はこの忙しい現状を打開する別の対策を考えてみる。



「・・・う〜ん、人手がもっとたあったら楽なんだけど人経費はかけたくないし・・・」
「いや、けど、いっそ女性限定で雑務兼、巫女さん的なアルバイトを募集して、ついでに彼女探し・・・?」 
「いやいやでも、仕事の内容は女の子にはちょっときつい肉体労働が多いし・・・、
これって職権乱用になるかな? けどこれがきっかけで僕にも・・・・・・・・・・・・・・・」

僕にとって都合がよすぎる展開をちょっと妄想してみる。


「雑用係を探しているのかい? それならちょうどいい子がいるよ?」 


「・・・はへ? ってうわああああ!! し、し、し・・シキさん!? いつの間に!?」


自分で言うのもなんだけど、すごく情けないというかキモい顔して、
まだ見ぬてか募集すらしていないアルバイトさんとの桃色な展開を
脳内で絶賛放映中の所へいきなり背後から気配もなく声かけられ、

僕は箒を投げだし、ビクッと身をすくめて、間抜けな声をもらしながら慌てて振り返ると、
スーツ姿の女性がにこやかな顔をして立っておりました。


この時の僕の心境はというと、ははは、おいおい勘弁してくれよダディって感じだね。


・・・失礼。 あまりに吃驚しすぎて一部の心理描写に乱れが・・・、忘れてください。


え〜このお方はシキさんといいまして、サイちゃんのお友達で、学生時代からの同期で、上司です。

ちなみに役職は人間で言うところの人事を担当されているとても偉い方の様です。


「終わったかい?」

「え、あ、はい・・・ども」


終わったかい?というと今の問いかけは、シキさんからのもので、
僕がシキさんの紹介を兼ねた、状況説明というなの描写は終わったのかという確認です。


僕は描写と会話を同時進行できないので、描写に集中しちゃうと、
ただ呆けているだけなので、事情を知らない傍から見れば、

話しかけられても応対できず、無愛想なヤツか、
ちょっとした不審者になってしまうんだけど、


このシキさんはそんな僕の心情を察してくれていて、
声を掛けられて振り返った時の僕の表情は
吃驚したやら恥ずかしいやら、情けないとか色々な感情が混じって、

まともに見れたものじゃないと思うのに、なにも言わずに、
描写が終わるまで待っていてくれたので、片手で頭を掻きながら、
僕は申し訳なく思い、何度も会釈を繰り返します。


シキさんは女性としてはわりと長身なほうで、一見真面目そうな印象を受けますが、
話してみるとボーイッシュな口調に男勝りな性格で、わりとお茶目なところもあって、
なによりどこぞの誰かさんとは違って勤勉家で、

「やあ、こんにちは。 それにしても居織君のリアクションは何回見ても飽きないな」

「・・・」

訂正、・・・とわりとSな方でした。


いい人(神?)じゃなくて、ただ僕が落ち着いて、
自分の醜態を反芻できるようになるまで待っていただけの様です。


え? 被害妄想が激しくないかだって? けどシキさんの顔にはそう書いてるんだけど? 


そういえば前回現れた時も、供養待ちの品物の中に(神の力を使って本物の)髑髏姿になって紛れ込んでいて、
今回同様、油断しきっているところをいきなり声をかけられて、見事に腰を抜かさせていただきました。



「え・・と、こんにちは・・・で、今回はどんなご用ですか?」
「あ・・・、そういえば雑用係にもってこいな子がいるって言ってましたね?」
「けどどうしてそれを・・・?」


僕はシキさんに会釈して挨拶を返しながら、まだ月末ではないので、
サイちゃんのノルマの回収に日はまだ早いし、ただ単に遊びに来たのかなとか
あれこれ考えをめぐらせてるときに、ふとシキさんの最初の言葉を思い出して、
次に何故シキさんが僕が人手を欲しがっているのを知っているのかも気になって、両方尋ねてみた。


「どうしても何も、さっき居織君が大声で人手がほしいっていってたよ?」

「・・・っ」(妄想聞かれた――――!!!?)


「それはそうと、おーいシオン君! もう出てきていいよ」

自身の醜態を一部始終見られていたことに僕が愕然としているのにも
お構いなしに、シキさんは鳥居の方を向いて、誰かを呼んでいます。


ちなみにこの神社は山の中腹にあって、石造りの大きくて立派な鳥居のすぐ下は
斜面を削って作った石段になっていまして、おそらく僕を驚かせるときに邪魔になる
と考えて、お連れさんにはそこで隠れて待機するようにとでも指示をだしていたようです。


一刻も早く話題を変えたいという気持ちもあったので、小っ恥ずかしい気持ちを抑えて、
僕も鳥居の方向に視線を向けると、シキさんの合図を受けてゆっくりと石段をのぼってくる、
パッと見は女子高生くらいの年頃だと思われる女の子の姿がありました。


「え? シキさんあの女の子は?」

「ああ彼女は新人の<Vオン君だよ。 キミ好みの可愛い子だろ?」

「えーと、新人のってことは・・・つい最近まで学生だったんですね? ・・・どちらの?」
「うん、死神学校のね。 ああ、でも彼女は首席で卒業した将来有望な子だよ?」 

「あーやっぱり、・・・」

高校生・・・。僕基準ではその年頃の女の子は若干ロリコンになってしまうので、
その気のない僕には対象外だけど、少し待てば対象になるんだけど、
けどシキさんが連れてきたってことは、あの子も死神だから、人間の僕にはやっぱり対象外。


僕の好みを知りながら、ぬか喜びさせるようなことしてくるシキさんは
やっぱりちょっとSが入ってるんじゃないだろうか?


・・・という脳内サミットが10秒ほどとり行われ、一瞬で否決がだされ、
シオンという女の子が正面に来たとほぼ同時くらいで、僕は小さくため息をついてしまった。


「・・・」
「・・・」

初対面の相手にため息をついた僕に非があるんだろうけど、
シオンという女の子は僕の顔を見るなり、ムッとして一瞬不機嫌そうなオーラを放ったけど、
シキさんが傍にいるせいか、少し顔をひきつらせて素早く笑顔をつくってくれました。


「あー、移動中に説明したけど、彼がここの当主で・・・」
「あ、ども、ここ・・狐狸神社の当主をしている水科居織・・・・・です」

シキさんがシオン・・・さん? に僕のことを紹介してくれているので、
慌てて僕は自分の名前を名乗りますが、相手のシオンという女の子は、
見るからに僕より年下だと思うけど、一応相手は神だし、

僕ら(人間)と同じ歳の取り方をしているのかどうという点に関しての話は、
シキさんが女性だったので訊きづらくて、したことなくてかわからないから、
わずかな思案の末、途中から恐縮して下手に出てみます。


「で、彼女が死神のシオン君で、漢字だと死の音と書い『ちょ、ちょっと待ってくださいシキ課長!!』」

おっと、シキさんがシオンさんの紹介を始めた直後、大声で割り込んできました。


「課長! 以前にも言いましたけどそれ(漢字の方)で呼ばないで下さいって何度も言ってるじゃないですか!!」
「私、そんな可愛くない、いかにも死神を意識して取ってつけたような名前が嫌いなんですっ!!」


え?そっち? 死神もやっぱりそう思うのか・・・、
ちなみにシキさんは漢字で書くと屍姫さんらしいんだけど、
物騒な感じがするし、何よりシキさんの見た目が爽やか紳士さんなので、
(ほんとは淑女が正しんだけど・・・)

強面な顔とかだったら、漢字の方で呼んでいたんだろうけど、
イメージに合わないから僕も柔らかい感じになるようにシキさんと呼んでいます。

「それともう一つ、これも以前から言ってますけど、死神死神言わないでください!」
「物騒じゃないですか! 私が目指しているのはプロのコンガリ職人≠ネのですっ」

ちなみにコンガリ職人て言うのはこの物語のタイトルで、漢字で書くと、魂狩り職人となります。


こうやって言い方とかを変えているのは、死神がもたれている恐怖心
をあおるようなイメージを緩和させるための処置の一つのようです。


死神たちの間でも思想とかといった価値観が変わってきているようで、
死神という言葉がコンガリ職人に代わったのはつい最近のことらしくて、

シキさんには慣れ親しんできた言葉を、そう簡単に言い換えることができないようだ。


「あ〜すまない。 そうだった」

「すまないじゃありませんよ! それからそこのあなた!」

「え? 僕?」

からかっているのか、シキさんはこれっぽちも悪怯れた様子もなくうわべだけの謝罪を
シオンさんに返しているのを横で眺め見ていると、シオンさんはクルリと体をこっちに向けて、

僕を指さしながら高圧的な口調でいきなり語りかけてきたので、
何か気に障る事でもしたのかなと思って、僕は自分自身を指さしながら尋ねます。


「居織さんでしたっけ? あなたも私のこと呼ぶ時はシオンで!ですよ?」

「え・・ああ、うん。まあ、どうでもいいけど、じゃあ僕のことはイオでい・・・」

「それより課長、本当にこんな汚い所で私は一ヶ月も研修しなくちゃいけないんですか?」

「ちょっ汚って・・え? は?研しゅ?え? 一ヶ?」

話しかけてきた理由がただ単に僕にもシオンという方の呼び方を統一させるためだったんだけど、
まあ本人から直々に呼び捨ての許可が下りたので、僕も少しは親近感を持ってもらおうと思って、

僕も愛称で読んでもらおうとした時、シオンちゃんの口から聞き捨てならない項目がいくつもとびだし
たので、僕は思わず言葉にならない声を出しましたが、けど色々ありすぎてどう突っ込んでいいのやら・・・。



「ああ、そうだけど?」

「そうだけどってどいうことですか!? 僕にもわかるように説明してください!!」


シオンちゃんの問いかけに対して素で肯定するシキさんに対して、
今度は何の事情もわからない僕がシキさんに説明を求めて詰め寄ります。


「シオン君は人魂課を志願していてね、この時期は新人研修の期間で、
本当はその課のベテランの死神がシオン君の担当にあたるはずだったんだけど、
君もテレビとかで見聞きして知っているとはおもうけど、

ついこの間●×国で起こった紛争で多くの死者が出てね、
(人間の魂を狩る死神の)数が足りなくてね、
それで研修係の死神までもが応援にかりだされてしまったんだよ」

「それで管轄外だけど、ベテランの死神で手があいてる者に
急きょ臨時で新人の研修係を頼んでいたんだけど・・・」


「あれ? 彼(3110)から何も聞かされてないのかい?」
「一応彼には事情を説明してアポは取っておいたんだけどな〜?」

一通りのいきさつを僕に説明してくれたシキさんは今度は、
冗談抜きで困った表情をしていたので、全てを察した僕は、がっくりと肩を落として、


「あーきっとサイちゃんのことだからどうせ、シキさんの話を適当に聞き流して、
勝手に承諾した上に僕に説明するのがめんどくさかったか、素で忘れてたかのどっちかですね・・・」


サイちゃんの身勝手さに呆れながらも、とりあえずここから先は本人も
交えて話を進めていかないといけないと思った僕は、息を大きく
吸い込みながらテレビが置いてある居間の方に向きを変えて、


「ちょっ・・・『サイちゃ―――ーん!!』シキさんが来てんだけど!!」


大声でサイちゃんを庭の方へ来るようにと呼びつけます。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


しかしというか相変わらずというか、無反応。

むしろちょっと僕が不機嫌そうな声で呼びつけたから余計にめんどくさがって
あえて無反応を貫き通そうとしているのかも・・・。

「ちょっと失礼して・・・サイちゃん! シキさんが来てるよー!」

シキさんとシオンちゃんにここでちょっと待っててくださいねと言う意味を込めた会釈して、

「・・・」
「・・・」


僕は縁側からサイちゃんのいる居間へとショートカットコースを通って、
寝っ転がってテレビを見ていたサイちゃんを庭の方へと引きずり出します。




「よいしょ、ほらサイちゃん、ハァハァ、
シキさん ・・・ハァ・・・来てるよ」


「何だイオ、今いいところだった・・・」


自分で動こうとしないサイちゃんを息を切らせながら僕は庭まで運び出して、
シキさんとシオンちゃんにご対面させてみたけど、サイちゃんの興味は相変わらず
テレビの内容の方にいってるようで、まるで状況をわかっちゃいなかった。



「やあ、久しぶり・・・君も相変わらずの様だね」

「・・・課長、何ですかこの人? 本当に大丈夫なんですか?」
「とても課長が言うようなすごい人のようには見えないんですけど・・・」


シキさんはサイちゃんとの付き合いが長いので、
この態度に対して慣れっこのようというか、
ただ単に諦めているようにも見えるけど、

シオンちゃんの反応はダメだ、こいつ使えね〜という意思がありありと感じ取れるくらい、
あからさまに見下している目をサイちゃん向けながら、シキさんに不服をもらしているよ。


そりゃまあ当然だよね、理不尽なのとか厳しいのも困るけど、仮にも自分の
教官に当たる人がこれじゃ、不安になるし、文句の一つも言いたくなるよね。


「はっはっはっ、ま、大丈夫だよ。こう見えても彼の方が私なんかよりずっと優秀なんだよ?」

「もしも彼がこの仕事に対して、月並み程度でも向上心なり意欲があったなら、
軽く私の地位を奪って上司になっていただろうにな・・・、
そうなればもっとそばにいら・・・・・ってぃ・・・のに・・」


おや? サイちゃんのフォローに回っていたシキさんの口調が後半部分から急に、
顔を赤らめながらもごもごしだしたけど、どうしたのかな? そう思っていたら、

「課長? どうかしました?」

僕の疑問を代わりにシオンちゃんがシキさんに投げかけてくれました。


「いや、どうもしないさ。 まあ、このままだとしても私が養ってやるし・・・」
「っというわけでどうだ!? そ、そろそろ私とだな、本気でつ、つきあ・・・」

シキさんは真剣な眼差しをサイちゃんに向け、顔を見つめながら語りかけていますが・・・。

『ハイ!そこっ! ストップ!!』

「っん? ・・・何だね居織君」

「アンチ・ラブコメ!」
「ラブコメ撲滅委員会の会長である僕の目の前で何してんの?!」

おっとあぶねえ〜、口調はどこかイタイ気なのに、
言ってることは惚れ惚れしてしまうほど男前だったので、
僕としたことが思わず最後まで聴き入りそうになっていたけど、
僕は慌ててシキさんに対してドクターストップをかけます。



他人がイチャコラしてるとこみてると持病の癪が出るので・・・。

いやまあ、持病の癪ってところの下りは嘘だけど・・・。

・・・だってなんか悔しいんだもん。

なにより僕が一度もモテたことないのに、何にこのラブコメ的な展開は?

「・・・」

ちなみにサイちゃんの反応は縁側で座ったままの態勢で、
伸びをしつつあくびをしているだけで、まるで人ごとのように無反応だし。
 

二人の関係というか、シキさんの心情とかは、ナレータ―とか、
描写を担当してるんで色々心得てるつもりだけど、僕はあえて白々しく
知らないふりしといたのに・・・、お父さんはまだ2人のことを認めませんよ?



「・・・あのーそういう内輪ネタもういいんで、さっさと話し戻してほしいんですけど?」

「ネ・・、ネタ・・・か、すまない、私としたことが私情を持ち込みすぎていたようだな・・・」

「なっ!?・・・あ、うん」

シオンちゃん・・・なんて恐ろしい子。
こんなわかりやすいやり取りをネタ扱いしてさらりと流しちゃったよ。
多分僕にドッキリしかけたりとかしてたから、これもその延長だと思われちゃったんだね。


シキさんもかわいそうに、わりとマジの告白をネタ扱いされてちょっとヘコんじゃってるよ。
まあ自業自得というかこれを機に、もうちょっと茶目っ気がマシになってくれればいいんだけどね。

・・・・・・。
・・・。

「あ―オッホン! まあとにかくなのだが、本日付で、シオン君の(人魂課の)死神の研修担当にあたってもらう」

とりあえずシオンさんと僕とでサイちゃんにもう一度、かいつまんでだけど、
今日から一ヶ月ほどシオンちゃんの教育係に推挙されたことを説明してから、
シキさんが直々に、サイちゃんに任命しました。


「・・・めんどくさい」

「めんどくさいって、サイちゃん・・・一応先輩なんだからもっとしゃんとして、
せめてそう思っても本人の前で、口とか顔に出さないようにしようよ〜」

サイちゃんは相変わらずめんどくさそうに、知り合いとはいえ、
仮にも上司の前で大きなあくびをしながら眉をわずかにひそめて、
ぼそっと不服をもらしているので、僕は呆れているシキさん
に代って注意します。


「本当に大丈夫なんですか・・・この人?」

「あ、ああ、まあね、みためはどうあれ、くどいようだけど(死神としての)腕前
だけは本当に優秀なんだよ? ・・・信憑性のかけらもないだろうけど」
「ま、まああれだ、困ったことがあれば居織君もいることだし、・・・シオン君のことをよろしくね」


当然と言えば当然なんだけど、色んな意味でサイちゃんに対して
不安や疑念を抱いて念押しして訪ねてくるシオンちゃんに対して、
ただただ困惑して苦笑するシキさん。


自らサイちゃんを推薦したシキさん自身も、どうやら不安になってきたようだ。


とりあえずシキさんは僕にシオンちゃんのことはを任せた!
というくちぶりで、シオンちゃんを残して帰っていきました。


ちなみにシオンちゃんの実家からここまでは遠いので、サイちゃん同様、
ここに住み込んで研修を受けることになっているのですが、その点に関して、

家主の僕には一切の断りがなく、ほぼ強制的に事後承諾させられましたが、
とても断りづらい状況だったし、一応空き部屋あるし、
何より、付喪神祓いを含めた雑務等の手伝いをしてもらえる
という条件を提示してもらったので、


これがきっかけで、サイちゃんも少しは刺激を受けて、
先輩らしい行動をとるようになって、やる気が出るんじゃ・・・、

とかまでは期待しないけど、とりあえずこれで、
溜まっている付喪神が少しは減らせられるし、
前回のような悲劇も繰り返さずにすむだろうと、
利害を算出して得を見いだした僕は心地よくOKを出しました。


こうして、僕とサイちゃんに加えて、ニューフェイスのシオンちゃんとの生活が始まりました。


12 :ヘタレ草 :2011/11/28(月) 02:35:43 ID:uGknWGWDW7

プロのコンガリ職人を目指して・・・実習編



ども、こんにちはイオです。

四度目の登場なのでそろそろ愛称で名乗ってもいい頃かなぁ?
とか思ったので名乗ってみました・・・けど、長いことお話を放置プレイしていたので、
僕のことっていうか根本的な本編の内容事態が覚えてもらえてるのかと、
内心不安でドキドキものなんだけど・・・。


え〜っと、かいつまんで前回の流れを説明すると、シオンちゃんという死神の研修生を急きょ、
一ヶ月ほどあずかることになったので、シオンちゃんが忘れ物を実家に取りに帰っている間に
シキさんに手伝ってもらって、急いで物置化していた部屋を掃除したり、四人分の食事を用意して振舞ったりと、
慌ただしくバタバタしながらもまる一日かけて何んとか受け入れい体勢を整えましたよ。



ちなみにシキさんは夕食後、ちょっとした雑談をして帰ったんだけど、その雑談の中でシオンちゃんの研修の話になって、


新人の研修期間は一ヶ月ってなっているそうなんだけど、その期間の間に先輩の仕事ぶりを見て、
魂の回収方法のコツや不測の事態に対しての対処法なんかを教わって覚えることと、

研修期間以内にどんな魂でもいいから、魂の種類によって設定されてる
既定のノルマ分を回収するという課題が出されていて、
それが達成されれば研修期間は終了となるそうなので、

最長はフルの一ヶ月までで、過去の記録によると最短だと三日とか、まあようするに・・・人(?)によっては研修期間が異なるそうだ。


ところで研修期間中はどんな魂でも回収していいってなってるのは、
新人の時に色んな魂を狩らせて、経験を積ませたり、新人の現在の能力を測る
というのもあるらしいけど、実際のところは回収する魂によっては、期間限定モノや希少なものもあって、


教育係の死神も現役の方が多いうえに、縄張りとかその他もろもろの理由によって、
新人の分まで確保できないう面での配慮からなんだろうけど、
それでも何んとか回収した魂の種類や数、難易度、魂の回収にかかった時間などの様々な点で、


その後の(出世への)評価が決まるけど、研修終了後は1人で活動になるから、
その後の活動でノルマを達成できなくなれば、その課には向いていと判断されて、
違う魂を回収する課に回されてしまうから、そうならないためにも研修生は基本的には、
自分が志願する課の先輩について、期限ぎりぎりまでノウハウをえようとするようです。



でもシオンちゃんの場合は、教育係が志願した課と違ううえに、年中休業中の様な無精者のサイちゃんだ。


シキさんが言うには昔はサイちゃんも人魂課に所属していたから課が違っても、
臨時で教育係に回ってもらっても問題はないらしいだけど、
危惧するところはサイちゃんが教育者としての役割をちゃんと果たすかどうかなんだよね。


でもまあ、サイちゃんは所詮、教官の死神さんが戻ってくるまでの間だけのつなぎ扱いだろうし、
シオンちゃんだってただぶらぶらさせとくのももったいないから、サイちゃんの指導をうけたり、
僕のお手伝いをしてもらってうというこになっているので、教育係の人が帰ってきたら僕らはお役御免らしい。


研修期間に教育係の人が帰ってこれても、これなくてもロスした分は、
少し研修期間を延ばしての対応になるらしけど、

まあまずないと思うけど、シオンちゃんが正式にサイちゃんを教官として指名して
教育を受けることを承諾したら、そのまま研修を終えることもできるらしい。


僕の予想ではサイちゃんに対してシオンちゃんが不満を爆発させる可能性の方が高いとおもうけどね。


だからここにいられる期限は最長で一ヶ月なので、
女の子とはいえどこれからはビシビシとこき使わせていきたいと思います。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


さて、今日はシオンちゃんが来て二日目であり、研修期間初日です。 

朝から晴天で気候もよく、絶好の研修日より(?)です。


朝ごはんをすませた僕たちは、ナチュラルにいつものように部屋に戻って、
テレビを見に行こうとしていたサイちゃんを無理やりひきつれて庭に集まっていました。


何のために庭に集まったのかというと、シオンちゃんの実力を見るためという口実のもと、
日ごろ溜まりに溜まった付喪神とかが宿っている物品のお祓いをするべく、
僕があらかじめ仕分けしておいた、いわゆるいわくつきの物品を、
境内の隅っこに不法投棄されていた簡易のテーブルの上に、ずらりと10個ほど並べて置いてあります。


本当は別の雑用からしてもらいたかったのですが、しょっぱなからへたにこき使いすぎて、
シオンちゃんの機嫌を損ねてもこまるので、最初のうちは死神の仕事に近い雑用をさせて、
慣れてきたらおいおい業務の種類を増やしていって、気づいたら色んな雑用させられていた!!
作戦でいこうかと、僕は脳内でひそかに計画しております。


ちなみに今日はまだサイちゃんの今月分のノルマ日じゃないけど、シオンちゃんにお手本を見せるためにという口実で、
サイちゃんにも仕事をさせようとして、縁側のそばにはいつもの大きなゴムマットも敷いてあります。


「さ〜ってそれじゃ始めようか、サイちゃん、シオンちゃん」

「・・・はい」

「・・・」

僕が両手をパンパンと叩いて作業開始の合図を送ると、シオンちゃんは少し不服そうに眉をしかめつつも、
小声でだけど返事を返してくれたんだけど、肝心のサイちゃんはというと、まるで自分の役割をりを理解していないのか、
めんどくさがっているだけなのか、一切の興味もないのか、大きなあくびをして、
居間にあるテレビの電源を入れてワイドショーを寝っ転がって観はじめてます。


「・・・あ〜」

「・・・っ」

このサイちゃんの行動は僕には予想できていたから、まあおとなしくこの場所にいてくれているだけで
よしとしようとかって思ったんだけど、真面目なシオンちゃんにはサイちゃんの明らかにやる気のない態度に眉を細めて、
ムッとしてサイちゃんに背を向けると、不機嫌そうにツカツカと早足で僕がセットしておいた
付喪神が宿っていると思われる物品があるテーブルの前まで行き、クマのぬいぐるみを手に取って眺め見ています。



僕が知る限りでは、シオンちゃんがウチに来てから、まだ一度もサイちゃんから会話をしているところを
見たことないので、どうやらシオンちゃんはそっちがその気ならこっちもという感じで無視を決め込むようです。


でもね・・・、サイちゃんはただ単に自分から話しかけるのがめんどくさいだけだったんだと思うんだよ?
けどこの時点で2人の間に微妙ななすれ違いが発生いしてしまっているので、この険悪な雰囲気に
挟まれた僕は気まずくてしょうがないので、何んとか2人の関係を良くするためには、
僕のフォーロー力にかかっていると言っても過言ではありません。


「ま、まあ、サイちゃんはいつもあんな感じだから気にしないでねシオンちゃん」
「ああして興味になさそうにしてても、サイちゃんはちゃんとシオンちゃんのこと見てる(ハズだ)から」
「ほら、僕ら人間で言うところに大工の親方さんとか職人気質の人ってぶっきらぼうで、無口な人が多くて・・・」
「サイちゃんて無愛想なところがあるから勘違いされやすいんだけどねははは・・・」


とりあえず無口なサイちゃんの分も補うつもりで大量の言葉でフォローを入れると、


「・・・集中できないのでしばらく静かにしていてもらえませんか?」

いつの間にか取り出していたのか? シオンちゃんの背丈とあまり変わらない大きさだから、
たぶん全長が150〜60pくらいあるマイ・大鎌を片手に、不機嫌そうにてか、
ヘタに刺激すると僕に八つ当たりが来るんじゃないかという恐怖心を抱かせるように明らかにイラついてて、
不機嫌そうな形相で、シオンちゃんに少し低めの声で注意された僕は、即行で沈黙して、
今の僕は空気的存在だと自分に言い聞かせて、無を目指して気配を消します。


その結果・・・、何だかよくわからないけれど、僕の後方でサイちゃんが観ているテレビの音が
はっきりと聞こえるほどの気まずい沈黙が周囲を包んでおります。


一方シオンちゃんは集中して手に取ったクマのぬいぐるみを、
僕的には必要以上に見過ぎやない?と思ってしまうほど吟味しております。


「・・・・・・・」

「・・・」


気まずいとはいえ、最初はすぐそばで静観している僕にも妙な期待感とか、からかいが交じった好奇心を抱けるくらいの
心の余裕があったんだけれど、付喪神が宿ったクマのぬいぐるみを前に、大鎌で居合い抜きでもするかのように
中段で構えて、真剣な目つきのシオンちゃんが醸し出す妙に張りつめた場の空気に、僕は息をするのも忘れて、
たたずんでいたんだけれど、その状態から・・・一分はたったころだろうかな? 


「はあっ―――!!」


その静寂を破ったのはシオンちゃんの気合の入った声だった。

シオンちゃんは気合いのは入りまくった自分の掛け声に体を連動させるように、
大鎌を横一線に素早く振るって、クマのぬいぐるみに切りつけます。


もちろんシオンちゃんの鎌も、サイちゃんの鎌と同様の効果を持っているので、
鎌の刃がクマのぬいぐるみの胴体部分を引き裂くように素早く奔り抜けていきますが、本体は無傷です。


「おおっー」

シオンちゃんの華麗な鎌さばき(?)に思わずモブキャラとかがとるような典型的かつ、
何のひねりもないリアクションをしながら感嘆の声を漏らしてしまった僕なのですが・・・。


「・・・・・・ってあれ?」


声を漏らしてすぐに、いつもとは何か違う違和感とその理由を一瞬のうちに理解した僕は、
まるで肩透かしをくらったかのように、体を少し前のめりに傾けて、ズッコケそうなった人になってしまいました。



除霊とかはできないけど、結構強めの霊感を持っている僕は、これまで幾度となく霊視をしてきたし、
サイちゃんのお仕事の手伝いもしていたからこそ気づけたことなんだけど、

ぶっちゃけると・・・要するにカラぶってるんです。


「あ、あれ・・・」

「・・・えーと」

クマのぬいぐるみから上手く付喪神を狩り取れなかったことに戸惑うシオンちゃんに、
どう声をかけるべきかと僕がフォローの言葉を考えていると、


「い、今のは練習です。・・からほっといてください」

っとシオンちゃんは若干耳を赤らめて、再び鎌をふるいますが・・・、空振りしました。


もちろん、鎌の刃はクマのぬいぐるみには直撃してますがシオンちゃんの鎌の刃には、付喪神が付いてないのです。



そういえば以前、シキさんに聞いたことがあるんだけど、普段何気なくサイちゃんが付喪神狩りをこなしているけど、
実は針の穴に糸を通すくらいわりと精度を必要として、これって意外と繊細な作業でむずかしいらしいんだよね。



通常の過程で生まれた生き物であれば、例外なく魂が収まってところがきまっているらしくて、
まあ、それは先代の死神たちの研究やら経験によって解明されたことらしいんだけど、

だから対象の生物の魂が収まっている部位を狙ってきりつければ、少しはコツがいるみたいだけど慣れれば、
ほぼ一発で仕留められるらしいんだけど、付喪神の場合はランダムで器物のどこかしらに宿っているので、
先ずそこを探り当てないといけないからプロの死神でもかなり難しいんだとか・・・。


ただ基本的には付喪神はよっぽど年数がたって霊力が高まっていない限りは、動くことができないので、
実質無害だから、時間をかければ誰にでも狩れるという理由で、めんどくさい雑用要素もあいまって、
新人Orダメな死神用のマイナーな職業扱いになっているみたいなんだけどね。


「あー、シオンちゃ・・・」


僕が気を使ってシオンちゃんにアドバイス的なことを言おうとして、声をかけようとしたら、

「キィ――――!!!」

って、テレ隠しなのか、突然シオンちゃんがヒステリーを起して、大鎌をむちゃくちゃにクマのぬいぐるみや、
その周りにある他の付喪神憑きの物品にも振り回して、下手な鉄砲数打ちゃ当たる作戦に切り替えた模様です。




・・・ただ残念なことにいくら振り回しても付喪神の本体にカスる気配がまったくない。




「ハァ・・・ハア・・・当たらない・・・。 何で・・・よっ!?」


3分くらい大鎌を体力が許す限りがむしゃらに振りまわしていたシオンちゃんは限界を迎えて、
息を切らせていて、肩で大きく息をして呼吸を整えながら、うまくいかないことに不満を漏らしています。


そんな頑張っているシオンちゃんの姿に僕は思わずうわ、この子つかえねー。とか思ってみたり。

「うわ―この子つかえねー ダメっ子オーラがプンプンしてる」

「いや、思ってるっていうか思ってることを思いっきり口にしてますけど・・・」

僕が無意識に口にした批評がシオンちゃんの癪にさわったのか、こめかみに青筋をたてて、
口元をひくつかせなが睨んでくるので・・・、


「あっ・・・いや・・・、その、そうだ! さ、サイちゃん、て、手本、
そう、手本をシオンちゃんの先輩として見せてあげてよ!」

僕はとっさにテレビのワイドショーに夢中なサイちゃんに話をふります。


「・・・」

わかっていたけどサイちゃんからの返事はなくて、聞こえてくるのはテレビのCMくらいです。

っていうかCMのときくらい返事してくれてもいいんじゃないかな?とか僕が思っていると、

「いいです。 あの人に教わるようなことなんて何一つとしてなさそうですから・・・」

シオンちゃんは呟くようにそう言うと、僕・・・というよりかはサイちゃんに背を向けて、再び付喪神狩り作業に取り掛かります。


「はあ・・・って、あれ?」

この気まずい空気をどう浄化すればいいのかなと、僕が小さくため息をついていると・・・、

いつの間にかサイちゃんが僕の前を通過して、シオンちゃんの真後ろに無言で立って、


「・・・」

「・・・な、何ですか?」

「・・・」

長身のサイちゃんが朝日を遮ったことによってできた影で、サイちゃんに気付いたシオンちゃんは少し驚いたのか戸惑い、
怪訝そうな顔をしながら振り向きざまに何しに来たのかと尋ねたけど、サイちゃんは相変わらず無言というか無反応・・・、

「・・・こうするんだ」

かと思うと、サイちゃんは小さな声でぽつりと呟くと、おもむろに自分の鎌をどこからともなく取り出して、

「めんどくさいから今日は一度しかやらない・・・」

と、もう一言口にしながら大鎌を構えて、横一線に大鎌を素早く振るったんだけど、
早すぎて僕の目では一切とらえることができませんでした。



ただ、結果としては、たぶん一振りでテーブルの上に置いていた全て(10個ほど)の付喪神憑きの器物から、
付喪神の魂を掻きだしていて、サイちゃんの鎌の刃にはまるで串団子状にいくつもの魂が突き刺さっていました。



「あ・・・」

「・・・すごっぅぐ・・・」

普段からサイちゃんの手際の良さを見慣れている僕でさえ、思わず感動して声を漏らしたくらいだから、
初めてその妙技を魅せられたシオンちゃんは目を丸くして、驚いていて、思わず心の声を漏らしかけていましたが、
エリートとしての自尊心が働いたのか、すくに口元を手で覆って、それが何か?とでも言いたげな表情をつくって、強がります。


一方でサイちゃんはというと、宣言通り僕が用意した付喪神憑きの器物から一発で魂を回収してしまったので、
手持無沙汰なのか、鎌の刃の下に付けた巾着袋の中に、自動で回収されていく付喪神の魂を眺めていて、
全て収納されたことを確認すると鎌をしまい、シオンちゃんに背を向けて、無言でさ去っていきます。


「・・・」

「・・・」
(どういう風の吹きまわしでサイちゃんがシオンちゃんに手本?を見せる気になったのかは分からないけど、
っていうかたった一回、しかもあんなむちゃくちゃ早いの見せられても何の参考になるのだろう?)

とか、

(サイちゃんはシオンちゃんにほんとに教える気があったのかな?)

って、僕が思っていると、シオンちゃんにさっき見たのを忘れる前に、試したいことがあると催促されて、
僕はすぐに新たな付喪神憑きの器物を用意して、再びテーブルの上に並べてあげると、

再びシオンちゃんは大鎌をがむしゃらに付喪神憑きの器物に振るいはじめて、

「あっ!」

「やった!」

何発目かの空振りを経て、初めてこけしから付喪神の魂を引っ張り出すことに成功しました。

「・・・」
(あの一度の手本でいったいどんなコツを掴んだんだろう?)

死神だからなのか、エリートだからなのか分からないけどほんとにこの子はすごい。
この子はやったらできる子なんだ。・・・兄さんは信じてたよ?



「おめでとう。シオンちゃん、ついにやったね」

「うん! あ、いや、こほん、んんんっ・・・。 このくらい大したことではありません」

僕が拍手喝さいでシオンちゃんの初めての成果を褒めたたえると、本当にうれしかったようで、
満面の笑みで振り返って、うんとか言って答えていたけど、テレ隠しなのか、すぐにワザとらしい咳払いで
誤魔化しつ、少し赤い顔でクールを装おうとするシオンちゃんだけど、


「うっ」
(普通の女の子みたいで可愛いな・・・、けどこの子は死神なんだよね・・・)

僕にはその仕草がとても可愛らしくて、一瞬トキメキかけたけど、
相手が死神だったことを思い出して、いっきに素に戻りました。


その後、成功率はあまり良くないけど、日が暮れる頃には、シオンちゃんは10回以上20回未満の
空振りで、一つの付喪神憑きの器物から魂を抜きとれるまで、上達していました。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.