電波なお話。


1 :小豆 :2007/03/27(火) 20:51:12 ID:PmQHsHuF

……ねぇ。

なんだよ。

君は、どうしてLASの会長をやらないの? 誘われてるでしょ?

……面倒だから。

「神の子」なのに?

その呼び方は止めろ。

あはは。恐いな、睨まないでよ。

はぁ……。会長なら、お前がなるんだろ?

うん。僕には、夢があるからね。

だったら、俺はお前のそばでそれを応援する。それで十分だ。

……君の方が、会長になるのは簡単なのにね。

まぁな。皮肉なもんだ……。

それでも僕は、君をいつか追い越すよ。そして、君のそばで、世界のトップに立つ。

……楽しみだな。あるかどうかも分からない、俺よりも上にいくお前の未来が。

ふふ……。
僕は、君がそばにいてくれれば、それでいいから。だから、僕のそばから離れないで。

……分かってる。






遠い遠い、昔の話。
君と僕の。
お前と俺の。
昔話。
あの夢は、叶うことなく。
今も、願い続けている。


2 :シルヴァイン :2007/03/27(火) 21:43:37 ID:nmz3m3si

こんなんでいいんだ?

「ごめんな・・・・・。」

君は、僕の事を好きでいてくれるか?
僕が穢れた者だと知っても。
僕がこんな醜い感情を持っているとしても。

君を壊したいと願ったんだ。
君をぼろぼろにしてやりたいと。
君を壊すのは僕でありたいと。
君のゆがむ顔が見たいと。

その一方、共に歩みたいと願う自分もいるんだ。
君を傷つけている。分かっている。
君は優しいから、僕を傷つけぬよう、言わないだけ。
お互い、分かってるんだろう?
なのに、なのに。

気高い戦神、よく怒鳴って声を嗄らす親友、
神経質な教長センセイ、力をなにより求める《雷神》。

部屋が片付いてないと不機嫌になって、
不摂生が嫌いで、負けず嫌いで、頭の回転速くて、
僕をいつも心配してくれて、実は打たれ弱くて、
どれだけ傷ついても、僕の傍にいてくれる・・・・・

君の全て、大好きで、大嫌いだ。


3 :シルヴァイン :2007/03/27(火) 22:12:39 ID:n3oJtLmD

生きた長さが違うんだ。

くくっ、とお前のいつもの笑い声を聞きながら、
そっとその銀の髪を編む。
まるで、月のようだと思いながら。
「総弦。」
「ん?」
「お前の髪は、まるで月のようだ。」
「お前は、太陽にそっくりだがな。
最初は馬鹿な人間だと思ったが・・・
お前は、本当にたいした心を持っている。」
それきり彼はしばらく口をつぐみ、
俺も何も喋らず、長い長い髪を編んでやる。
「総記、長生きしろよ。」
「・・・・ああ。」
もう何度も聞いた言葉を、彼はまた口にした。
「俺の・・・銀狼の血の、加護の全てを、総記に。
お前が、俺が初めて惚れ込んだ人間だからな。」

振り返り、俺の顔が赤くなったのを見たのか、
また彼はくくっ、とのどの奥を鳴らして笑う。

ああ・・・出会ったときから一度も勝てない。


4 :小豆 :2007/03/27(火) 23:11:56 ID:PmQHsHuF

この心、想うのは君のことだけ。


――――――孤征!!

今でも鮮明に俺の耳に響く、お前の声。

あれからもう、24年という月日が経っているというのに。

未だに時々、信じられなくなるんだ。

お前が、死んだこと。

もしかしたら突然。

また、いつもみたいに後ろから斬りかかってくるんじゃないかと。

そう、思ってしまうんだ。

だから、俺は今日も、振り返る。

お前の姿はないかと、振り返る。

だけど……。

そこに、朱色の長い髪を揺らす姿はなくて。

また、深い落胆を味わうんだ。

また、思い知るんだ。

お前はもう、死んだんだって。


「……朱温。近いうち、俺もそっちに逝くだろう。……だから、あと少しだけ、待っててくれ。そしてまた、共に暮らそう」


今日もまた、俺は朱色の紐を握り締め、空を見上げる。


5 :シルヴァイン :2007/03/28(水) 09:35:55 ID:n3oJtJnm

司祭でなくなった司祭。

主に祈りをささげる事で能力を得る、司祭。
即ち、清き心なければ勤まらぬ能力。


「っ・・・・・・・」


わかっている。迷いがあるうち、この力を使う事は許されない。
だが。自分が司祭となった理由は、たいした事ない。
初めはなんとなく、今は、ただ約束の為に。

そんな、馬鹿げた理由で、この力を使ってはいけない。
ただ、俺を縛る彼女の為に、司祭であり続けるだけでは・・・いけない。

だからだ。この身に司祭の力がなくなったのは。
自分が司祭であることを、疑った。だから。
でももう、いいかと思う。
四強は三強になり、自分はここで、能力を捨てた司祭として過ごす。
祈る事は、能力がなくても出来る。




しかし、俺は世界に、君を認めたんだ。


6 :シルヴァイン :2007/03/28(水) 09:44:41 ID:n3oJtJnm

優しい彼女の水が、軽く俺の頬を撫でる。
背から聞こえるのは、扇が風切る音と、異形が消え去る音。
気付いて苦笑。彼女は自分が護るまでもなく十分強い。

「総記様。」
「どうした?」
彼女の声に答えてそちらを見ると、
彼女は水を立ち上がらせ、異形を攻撃。
「水の舞い手は弱く、幾度となく迷います。
こうしたいああしたい、理想ばかりあっても、
何も出来ない自分に歯噛みします。
大切な人の足を引っ張っていたくないと
逃げようとしてまたその身体を絡め取られて。
ひっこんでいればいいものを、前に出てきてしまう、
駄目なお姫様です。」
俺はただ彼女の心地よい声を聞きながら、刀を振るう。
「それでも風統べる者、総記様は、私を迎えにきてくれますか?
私を傍においてくれますか?」
俺は、ためらうことなく答えた。
「咲姫・・・俺は、何度でもあなたの為に、あなたを呼ぶ。
いっぱいの慈しみをこめて、『咲姫』と。
俺の姫は、あの日から、あなただけだ。
・・・・・・風統べる者は、決して自らの姫を見誤らず。
風統べる者は、水の舞い手の笑顔を見るために、
ただ己の道を、彼女と歩む事を望もう。何度も。」

彼女は笑って。

「何度でも、あなたのお心が変わらない限り、
私はあなたの手をとりに行きます。総記様。」


7 :小豆 :2007/03/28(水) 14:56:29 ID:PmQHsHuF

嫌な夢。


「……ほら、あいつだよ。あの灰色の目した奴」

「うわ……。あんな可愛い顔して、極道かよ」

「あいつには関わらない方がいいぜ。あいつの親父、マジでやべぇんだって」

「げ。こっち睨んでるぞ……」

「恐……。あっち行こうぜ」



 まだ僕が、小学校に通ってた頃。

 僕には、友達なんてひとりもいませんでした。

 もちろんそれは、家柄のせい。

 僕を…………いえ、違いますね。

 僕の“家”を怖がって、誰も僕に近づこうとしませんでした。

 それでもいいと、僕は思っていました。

 仕方のないことなんだと。

 僕と、みんなは、住む世界が違いすぎる。



「……若。お迎えに上がりました」

「あぁ」



 学校にはいつも、黒塗りの外車が僕を迎えに来て。

 みんなはそれを、横目で見ながら通り過ぎていきます。

 露骨に見るのは、低学年の子たちくらいでした。

 何もわからない、幼い子たちだけでした。

 僕は学校では、わざと悪ぶって。

 誰も、近づけないように。

 近づけないように、していました。

 その方が、楽だから。

 だけど、僕は、孤独でした。





「……唯斗。唯斗!!」

「…………心?」

「よかった……。すごいうなされてたよ? 悪い夢でも見たの?」

「……はい。でも、もう、大丈夫ですよ」

「本当に?」

「はい。心がそばにいてくれれば、平気です」

「じゃあ僕は、ずっとそばにいてあげる!」



 よかったです。

 ただの、悪い夢でした。

 昔の夢なんて、もうみたくないですね。

 でも、もう、大丈夫です。

 今はもう、孤独ではありません。

 心が、そばにいてくれるから。


8 :シルヴァイン :2007/03/28(水) 15:07:28 ID:xmoJtFrD

少年は笑って生きたいと思ったんだ。

「笑って生きる事が出来たなら、どんなに幸せでしょうね。」
そっと風に耳を澄ませて、大切な人の声を待ってみる。
聞こえないと知りながらも、師の声を探す。

この身に染み付いた拳法を教えてくれたのも、
妹と自分の世話をしてくれたのも、
あらゆる事を、見せて、体験させてくれたのも、あの方。
自分が背負う悲しみは、仲間のものよりずっと軽い。
へこたれていてはいけないと、知りながらも。

「でも僕は、いるだけで不幸を呼んでしまうようです。」

たくさんたくさんのことを思い出して、
ただ、白黒の少年に告げる。
「優、死にたくなければ逃げたほうがいいかもしれません。」
彼はただ、ふん、と鼻を鳴らして言った。

「だれがお前の運命に引きずられて死んでやるか。
今、死にたいなら止めんがな。後悔するのはお前だ。」


9 :小豆 :2007/03/28(水) 15:25:59 ID:PmQHsHuF

偽悪のあなたと共に。


「アンヌ、なんであんた、秘書なんかやってるのよ?」

「そうそう。アンヌなら、いい会社入れたのに」

「しかもLASの会長って、すごく性格悪いんでしょ?」

「かなり恐い人だって、噂で聞くわよ」

「早く止めて、いい人見付けて結婚したら? アンヌ、もてるんだから」



 友達の言葉は、聞き飽きました。

 もう何度、反対されたか分かりません。

 「止めた方がいい」って、言われたか分かりません。

 私が秘書になるって、決めたときも。

 みんなは私を、止めました。

 でも私は、どうしようもなくあのお方に。

 惹かれたのです。

 テレビや雑誌でしか見たことのない。

 あなたに、惹かれたのです。

 いつも口調が悪くて、恐い人ですが……。

 その眼だけは、とても。

 とても、悲しそうでした。

 泣いてる、子供みたいでした。

 実際に、秘書になってみて。

 私は気付きました。

 あなたは、優しい人なんだと。

 ただ、“偽悪”を決め込んでいるだけなんだと。

 偽って、悪に成っているだけなんだと。

 どうしてですか?

 あなたは、こんなにも優しいお方なのに。

 誰よりも、プラダジーの皆さんのこと。

 心配しておられるでしょう?

 大切に想っているのでしょう?

 死なせたくないと、願っているのでしょう?

 そして、舜輝(みつき)様のことを。

 心から、愛しておられるのでしょう?

 なのに何故、あなたは偽悪と成るのですか?

 優しさを、隠すのですか?

 あなたのことが、分かりません。

 それでも私は。

 偽悪のあなたと共に、歩んでゆきたいと。

 心から思うのです。


10 :シルヴァイン :2007/03/28(水) 15:28:59 ID:xmoJtFrD

鳳凰の当主様。

鳳凰家当主夫妻は大変仲がよく、今でも一つの布団で寝ている。
だが今日は少しばかり事情が違った。

咲夜の隣に総記の式、律宝と六夜が眠り、
総記の部屋に一組布団が。

ふーっ・・・ふーっ、と断続的に布団の中で
うつぶせになり唸る男。
総弦だ。
今日午後、入ってきた異形を抹殺してみたところ
肩から腹までばっさりやられてしまった。
ただ、薬など付けても自然治癒を妨げるので
ただこうして唸っているのである。
部屋に帰ってきた総記は少し溜息。
結界をかけた後、治療の魔術を展開し、
彼の背を撫でる。
「・・・・・・・・・いつつつつ・・・・・」
「この程度じゃ死なないとかいって無理をするからだ馬鹿。
・・・誰もこの部屋には入れん。気を張る必要はないぞ。」
その言葉を聞き、総弦は瞼を下ろす。

途端、魔力が膨れ上がり、小さな炸裂音と共に、
総弦の身体が獣へと戻る。
本来の姿は獣なのだから、この方が楽なようだ。

銀の狼の、美しい毛並みを撫でる。
のどを鳴らすような音。
口を開かない狼から、魔力によって声が脳へダイレクトに伝わってくる。
「眠ってくれ、総記。俺は朝には傷が塞がってる。」
「・・・・・・・そうか、分かった。」
総記は平然と布団を捲り、彼、大きな狼の横に寝転び、
その身体を抱く。
「お前がいれば暖房要らずなのでは・・・・」
「人を暖房扱いするな阿呆。」
そう言いながらも、彼は総記の胸あたりに頭をこすりつける。
「お休み。傷が痛んだら、すぐに起こしてくれ。」
主の声を聞きながら、もう一度瞼を下ろす。
まだ傷はズキズキと痛むが、
こうして主の魔力を感じる事で少し和らぐ気がした。

さて、当然のオチとして、
総弦は眠っている間、無自覚に人型となり、
朝割と大騒ぎ(但し本人達は平然)になっていたり
するのだが、まあ関係はない話だろう。


11 :小豆 :2007/03/28(水) 16:10:18 ID:PmQHsHuF

ただひとり愛した人。


「舜輝」


 君の僕を呼ぶ声。

 何よりも愛しくて、大切なんだ。


「何? 響」


 だから僕はこうして、笑顔で君の名前を呼ぶ。

 僕は、何よりも君が大好きで。

 君さえいてくれれば、それだけで生きていけて。

 僕の、叶いそうにない夢も。

 君がいてくれれば、叶いそうな気さえしてくるんだ。


「……舜輝、悪い。俺、LASから“会長にならないか”と、誘われた……。だが、俺はその誘いを断る」


 だからあの日。

 君の言った言葉に、僕は心底驚いた。

 まだ僕たちは、18だったのにね。

 高校を、卒業したばかりだったのにね。

 それなのに君は、世界のトップに誘われたんだ。

 僕の夢の通過点。

 それは、LASの会長。

 確かに君なら、LASの会長として、ふさわしい人間だろう。

 なんたって、「神の子」だからね。

 やっぱり君には、どうしたって追いつけないのかな。

 そう思ったから僕は、君に言ったんだ。


「僕に遠慮してるのなら、それは嫌だよ。君がもし、やりたいのなら、誘いを受ければいい」


 だけど君は、笑ってこう答えたね。


「俺がLASの会長? 馬鹿言うな。お前じゃあるまいし、そんな面倒くさいことできるか」


 それは、君の本心だったのかな?

 それとも、僕の為に言ってくれたのかな?

 だって君は、誰よりも僕の夢を、応援してくれていたからね。

 それでも僕は、君の言葉を信じたんだ。

 君が応援してくれるから、夢を叶える為に頑張ったんだ。

 響。

 僕は何よりも、夢よりも、君のことが大切だ。

 だから僕は、君よりも早く死にたい。

 君の死にゆく姿なんて、見たくないからね。

 でも。

 そんなことを思ってたから……。

 こんな結果になっちゃったのかな?

 ごめんね、響……。

 少しの間しか、そばにいられなくて。

 僕の、叶えられなかった夢。

 君に託すよ。

 君は、僕がただひとり愛した人だから。


12 :シルヴァイン :2007/03/28(水) 16:25:49 ID:xmoJtFrD

わーれら真紅の名のもとにっ!!


フェンデラムの誇る超個性的かつ有能な魔術教員を紹介しよう。



名:紡真 特徴:黒。愛想なし。障害持ち。
得意:闇・地 授業:常用魔術U
対校長:
「・・・・・・・」
「お、悪い。下手すぎて認識できないか。」
「いえ・・・すいません・・・」
「えーっとここは・・・・・・」
・・・・・・・・・・・
「剣核ー。ここ俺なんて書いた?」
「知るか。」


名:七織緋月 特徴:ちょっぴり変な校医。人格破綻。
得意:治療 授業:保健医。
対校長:
「こーちょーせんせー。電波受信ごっこしない?」
「しねぇよそんな謎の遊び。」
「じゃあ人体実験ごっこは?」
「お前にとって俺はなんですか!!?」


名:時風港 特徴:ふわふわふよふよ。隠れ怠け者。無頓着。
得意:省エネ移動 授業:常用魔術T、2-A担任。
対校長:
「うー・・・・・・・」
「あのなあお前俺が言う事でもねぇけど、
風呂ぐらい入って来い。」
「だって動きたくないんですもん・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」


名:響奈月 特徴:のほほん。サディスティック?肝っ玉据わってる。
得意:神術 授業:神術、教会の神父
対校長:
「・・・・・・・何狙ってんだ?」
「ああ、いえ。静桐先生は引き裂かれるのと鈍器で殴られるのと
魔術をくらうのどれがお好みですか?」
「ごめん、俺が悪かった。頼むからその笑顔やめてくれ。」
「どれがお好みですか?」


名:昏菱謙治 特徴:毎日変化。だるだる人間。奇抜。
得意:魔道具製作、変身。 授業:製作技術、3−B担任。
対校長:
「剣核ー・・・・・」
「なんだ?」
「いやもうだるくてだるくて。充電。」
「・・・・・・・・・・残念。正解は昏菱謙治くんでした。
ということで離れてください。」
「な!?おい、本物は?」
「無論校長先生を完全にだます為
誰も来ない屋上で結界に閉じ込めて・・」
「今すぐつれて帰ってきなさい昏菱先生。」



名:秋戸歌燐 特徴:男前、職人。
得意:薬作り。 授業:薬学
対校長:
「なあ美味い?美味い?」
「一つ聞かせろ。これなんだ?」
「・・・・・・玉子焼き・・・・」
「俺にはこれ赤色に見えるんだが・・・・」
「あの・・・・秘伝の薬品をだな・・・・」
「それを大自然への冒涜と称していいか?」


名:灘梶剣核 特徴:神経質。常に怒鳴り。
得意:剣技、料理、裁縫、掃除他色々 授業:教長、魔術剣、1-C担任。
対校長:
「紙飛行機飛ばすな!!」
「いやこれはだな、飛行実験を・・・」
「そんなことより優先すべき仕事があるだろうこの阿呆!!」
「あ、あんなところにヘルナンデスが!!」
「誰だそれは!!そんなんでだまされる奴がいるか!?」



以上7名、静桐遊凪、真紅の名の下に集い、
彼の遊戯に加担する者。
世界を少し、面白くする為に。


「ついてこい!俺たち皆で、遊戯開始と行こう!!」

「はぁ・・尽力します。」
「きゃはほい!楽しいこと大好きだからいいよん!」
「まあ真がやる気になったならいいかなぁ。」
「おやおや。次に血を見るのはいつでしょうか?」
「僕らが揃えば、システムオールグリーン、ノープログレム、かね。」
「あ、あたしなんかで何か役に立てるのか?」
「はぁ・・・・俺はお前の馬鹿頭をどうにか矯正する役か・・・・・」


さいあくのげーむをはじめよう。
フェンデラム教員団、わーれら真紅の名のもとにっ!!


13 :小豆 :2007/03/28(水) 17:43:16 ID:PmQHsHuF

君だけが救いだった。


「うわ、何コイツ。目ぇ青いぜ!」

「マジかよ。どっかおかしいんじゃねぇの?」

「病気だったりしてな!」

「あはは! 勉強のし過ぎとか?」

 ドカッ。バキッ。ボコッ……。




「うわぁぁぁん……。響ぃ……」

「なんだ……って。どうしたんだその面!」

「うっ……うっ…………。いじめられたぁ……」

「泣くな! 男だろ!!」

「だってぇ……」


 僕はよく、この蒼色の目のせいで。

 いじめられてた。

 突然変異ってヤツで。

 僕は、何も悪くないのに。

 それにたぶん、ずっと首席だったのも原因で。

 きっと、妬まれてたんだ。


「……誰だよ?」

「ぐすん……。何が……?」

「お前をいじめた野郎! 誰だって聞いてんだ!!」

「……言わない」

「どうして!」

「だって……。言ったら響、殴りにいくもん」

「当たり前だろ!!」

「だから駄目。殴ったら駄目」

「……何故だ?」

「痛いのは、僕だけでいいから。……それに僕には、響がいる。いつも言ってるよね? 僕は、響がそばにいてくれれば、それでいいんだ、って」

「馬鹿だな……お前。お人好しにもほどがある」


 いいんだ、僕は。

 君だけが、僕の救いになってくれれば。

 それでいい。

 何度いじめられたって。

 君は僕を、慰めてくれるから。


14 :シルヴァイン :2007/03/28(水) 23:11:04 ID:nmz3m3si

あなたの傍で。

「水の舞い手は何度でも風を選びましょう。
いかなる苦難があろうとも、
いかなる痛みを受けようとも、
ただ風と共にあることを望むのです。」
彼女は笑い、扇の一閃。

ただ彼の傍にあることを、望んで。

「そうきさま!」
初めて出会った日、自分は4歳、相手は8歳。
それからずっと、11歳の日まで事あるごとに
共に遊び、共に色々な事を学んだ。
ただ、自分は身体が弱く、彼と全く同じことはできなかったが。

約束を交わし、自分は婚期を逃した馬鹿な姫と言われた。
でも、ただ待っていたのだ。
彼が迎えに来てくれるのを。
自分を『蒼月』の姫としてでなく、
少しひねくれたところのある、
負けず嫌いで扱いずらい、ただの女として、
傍に置いてくれる、隣を歩かせてくれる彼が、
自分を蒼月の家から開放してくれるのを。

「咲姫。」
彼が変わらない声で自分を呼んだ。
咲夜はそれをうれしく思う。
あの日、何の疑いもなく交わした約束。
何の疑いもなく、彼が最高の人だと信じたこと。
自分の目は狂っていなかったのだと感じ、うれしくなる。
「ここは寒い。身体に障るといけないから、共に帰ろう。」
「はい。」
笑みを交わして、彼はひょいと咲夜を抱き上げる。
困ったような顔をすると、総記は朗らかに声を立てて笑った。
「咲姫・・・俺はどうやら独占欲が強いらしい。
あなたを抱きしめて、決して離さない。覚悟しておいてくれ。」
「ええ、ずっと昔から、心得ております。」
咲夜もまた笑い、細い腕で彼を抱き返した。
「いついつまでも、総記様と一緒なら、
私は怖いことなどありません。」


15 :小豆 :2007/03/29(木) 12:56:03 ID:ommLQAmD

お前の為だけに。


 そっと、ナイフを手首にあてた。
 プツッという音をたてて、皮膚と血管が破れる。
 大量の血が、流れ出てきた。
「………………」
 だけど、だけど。
 10秒くらいしたら、その傷は癒えてしまった。
 プツッ。
 だから俺は。
 もう一度、切る。
 また血は流れ出て、床に水溜まりを作っていく。
 そして、治る。
 それを10回ほど繰り返したら。
 流石に、貧血で頭がクラクラしてきた。
 血の快復が、追いついていないのだろう。
「……これ続けたら、死ねるかもな」
 呟き、また、治ってしまった手首に刃をあてた。
 だが。
「……止めぇ、詩」
 ナイフが、奪われてしまった。
 何よりも愛しい、彼に。
「…………死なせてくれよ、颯夏……」
 俺は彼を見て、懇願する。
 しかし彼は無表情に、首を横に振った。
「あかん。お前に死なれたら、俺が困るわ」
「……なんでだよ。俺は、もう生き過ぎた。疲れたんだよ」
「詩、お前は死んだらあかん。お前に死なれたら、俺は生きていけん」
 いつの間にか泣いていた俺を。
 彼は、優しく抱きしめてくれた。

 お前は、いつもそうやって。
 俺に「死ぬな」と言う。
 お前の言葉ほど、強い束縛はない。
 だからお前が望む限り。
 お前の為だけに、俺は生き続けるのだろう。


16 :シルヴァイン :2007/03/29(木) 14:43:52 ID:nmz3m3si

大変です。

「・・・・・・・・・・・・・・・」
総記の式の一人であり、竜族、律宝は魚が大好きだ。
基本的に魚ばかり食べてきたので他のものをあまり食べない。
そして今じーっと見ているのは、

池の鯉。

「・・・・・・・・・なあ総弦さん。」
「あ?」
「内緒で一匹だけ食べたら、分かるかな。」
「・・・・・食うなよ。川でとって来い。」
煙管を咥えた彼はこともなげに続ける。
「それに錦鯉は不味いぞ。川魚の方が美味い。」
その言葉を聞いた、ご主人様が登場。
「ほう・・・・いい度胸だな総弦。食ったのか?」
「げ。違うここのじゃない。ハルネルザードの庭園にいたのをだな・・・
100匹近いって聞いたから一匹ぐらいいいかと・・・・」
「お前は野良犬か!!」
「なーなー総記ー。これ食っていい?食っていい?
一匹だけでいいからさー!」
「駄目だ!これは灯明にもらったものだからな・・・」
「えー・・・・・・」
少し遠くで様子を見守る咲夜と六夜は苦笑。
まあこのような感じで、総記と周りの皆は楽しく暮らしています。


17 :小豆 :2007/03/30(金) 13:53:09 ID:ommLQAmD

星に願いを。


「心、星を観に行きませんか?」
「星……?」
「はい。今日は快晴だったので、きっとたくさんでてますよ」
「うん! 行く!!」


 ということでやって来たのは、LASの屋上。
 2人でひとつの毛布にくるまり、夜空を見上げた。
 その空には、たくさんの星が。
「うわぁ〜。唯斗の言った通りだね!」
 心は目をキラキラと輝かせている。
 唯斗はそんな彼を、嬉しそうに眺めていた。
「あ、唯斗! 流れ星だよ!! お願い事しなきゃ!」
 突然、心が空を指さして言った。
 そして彼は、両手を組んで目をつぶる。
 一心に、流れ星に願いをかけているのだ。
 空ではなく、心を眺めていた唯斗は見逃してしまったが、
 目のいい彼の言うことなのだから、きっと本当に流れ星が流れたのだろう。
 あまりこういう事は信じない唯斗だが、心があまりにも一生懸命だったので、
 自分も手を組み、願いをかけてみることにする。
 そして、ゆっくりと心は目を開き、唯斗に問うた。
「……唯斗、何をお願いしたの?」
 問われ、唯斗も目を開く。
 いたずらっぽく笑い。
「秘密ですよ」
 そう言った。
「じゃあ僕も、秘密にする〜」
 そして心は、楽しそうに笑った。



 流れ星だけが知っている。
 2人のお願い。


“ずっとずっと、唯斗と一緒にいられますように”

“永遠に、心のそばにいるのは僕でありますように”


 絶対に秘密。 
 流れ星と、彼らのヒミツ。


18 :シルヴァイン :2007/03/30(金) 15:33:50 ID:n3oJtLmD

あなたの声を聞きたかった。

いつも俺を呼ぶ声は、俺にくれた名を呼ぶ声は穏やかで。
滅多に怒って声を荒げる事もなく、
滅多に声を震わせ、泣く事もない。

ただ、彼に幸せになって欲しかった。
自分の身を犠牲に、とまでは思わないが。
俺に出来る事なら彼の為になんでもしようと誓った。

それで、このざまだ。

いくら銀狼の一族の者だといっても、死ぬときは死ぬ。
浮かぶのは、両親と弟。
そして、相手を噛み殺した自分。
死ぬのは、怖い。痛いのは嫌いだ。
そう思ってきたが、どうやら末期に差し掛かれば痛みはないらしい。
頭の芯が重く、だるく。
それから、思い出すのは彼と出会っての十年ばかり。
本当に、本当に、
「・・・大好きだった。」
血を吐き出し、出た声はかすれていた。
目を閉じて、もう楽になろうと思う。
酷く眠い。自分が死んでも、銀狼の里には代理がいる。
十分やっていけるはずだ。
「・・・・・・・・・・・」
最後に、望むのは・・・・・



「総弦ッ!!!」
空間を貫く激昂の声。あらぶる風は怒りを交えて。
彼に動かない身体はほうり、目だけを向ける。
ああ、まるであの日のようだ。
お互い血の中にいて、人間の身体は、銀狼の身体より、
ずっとずっと弱いのに・・・・大怪我を承知で、助けてくれた。
「目を閉じるな馬鹿者が!!俺はお前の主なんだろう!?
ならば、ここで死ぬ事を許さぬ。これは命令だ!!」
普段絶対に命令をしない彼の、『命令』。
「ハッ・・・ったく・・・・・本当にお前は・・・・」
よく心得ている。

そうだ。俺は、あなたの声を聞きたかった。
何度でも何度でも、あなたの声を聞きたかった。
あなたの声を、ずっと傍で聞いていたかった。



狼はゆっくりと、立ち上がるために目を閉じ、
魔力を爆発させる。


風統べる者の双刀が怒りの風を帯びる。
その姿はまるで修羅のよう。



決して、離さない。
何度でも、名を呼んでもらう為に。


19 :小豆 :2007/03/31(土) 13:25:14 ID:ommLQAmD

落とし物。


 あれは、俺がまだ8歳で。
 お前は5歳の時やったな。
 俺らは、公園で2人だけで遊んどった。
 いつもは人でいっぱいだった公園は。
 その日だけはなんでか、俺らだけやった。



「颯兄ぃ!」
「……雷夏(らいか)、こけるから走るんやない」
 どてっ。
 案の定、雷夏はつまずいてこけてしまった。
 颯夏は慌てて走り寄る。
「雷夏! 大丈夫か!?」
「ふぇぇぇぇ。ヒザうったぁ」
「泣いたらあかんで、男やろ? 兄ちゃんに見せてみ?」
 颯夏はしゃがみ込んで、雷夏の膝を見る。
 どうやら、擦りむいただけのようだ。
「大丈夫や。血ぃも出とらんし。……ほんでも、一応洗っとかなあかんな」
 颯夏は雷夏の手を引いて立ち上がらせ、
 そのまま公園の手洗い場に連れて行こうとした。
 だが。
「………………?」
 ふと、颯夏は妙な違和感を覚える。
「どしたん、颯兄ぃ?」
 すでに泣きやんでいた雷夏が、急に立ち止まった颯夏を不思議そうに見上げる。
「雷夏……絶対に手ぇ離したらあかんで」
「う、うん……」
 ちょっと迫力のある声で言われ、雷夏は縮こまる。
 ただ、その手だけは、強く強く握り締めた。

 そして颯夏は、集中する。
 一心に、イメージを固め、そして。
 刹那。
 2人は、手洗い場の前にいた。

 2人とも、しばし呆然とする。
 1番驚いていたのは、颯夏本人だった。
「颯兄ぃ……。今の何?」
 子供独特の好奇心で、雷夏は何でも教えてくれる兄に聞いた。
 いつもなら、いろんなことを詳しく教えてくれる、自分の兄に。
 しかし、今回は違った。
「……俺にも分からへん」
 おもむろに、颯夏は手洗い場の蛇口をひねった。
「雷夏、傷口洗うからこっち来い」
「うん」
 そして、颯夏は雷夏の傷を洗ってやる。
 土は簡単に洗い流すことができた。
「……雷夏」
 颯夏は、蛇口を閉めた後、雷夏の目を覗き込んだ。
「何? 颯兄ぃ」
 対する雷夏は、にこにことしている。
 まだ、無知な子供だから。
「……さっきのことは、誰にも言うたらあかんで。お父さんやお母さんにもや。ええな?」
「なんで? なんで言うたらあかんの?」
 雷夏は小首を傾げ、本当に不思議そうな顔をする。
 それに対し颯夏は、うまく説明することもできない。
 だから彼は、こう言うしかなかった。
「なんでもや。兄ちゃんと約束せぇ。絶対に言わんって」
「う、うん……。わかった」
 何も分からず、雷夏は頷くしかなかった。
 ただただ、颯夏の迫力に負けて。
「よっしゃ。ほな、そろそろ帰ろか」
「うん!」
 颯夏がいつも通りの優しい兄に戻ったことに雷夏は安心し、
 元気に頷くのだった。



 ……幼い2人の、ひみつやった。
 俺も、雷夏も、決して誰にも言わんかった。
 ……せやけど。
 LASからの使いが来て、ひみつがばれてしもうたんは、
 あれからわずか数日後のことやったな。

「……ごめんな、雷夏。兄ちゃんはもう、お前の手ぇ引いてやれんわ。俺、LASに行かなあかんようなった」

 そう言うたら、雷夏は泣きよった。
 それからや。
 雷夏が、あまり笑わんようなったのは。
 全部、俺のせいやな。
 ごめんな、雷夏。
 すぐに落とし物見っけて、帰ってくるわ。
 せやから、泣かんといて。



 そう、俺は誓ったのに。
 あれからもう、11年も経ったのに。
 未だに俺は、8歳のままや。
 俺の落とし物。
 それはな、成長と。
 雷夏……。
 お前の笑顔や。


20 :シルヴァイン :2007/03/31(土) 15:09:57 ID:n3oJtLmD

何度でも選んでやろう。

「族長!!」
大きな声で耳元で怒鳴られ、思わず総弦は耳を押さえる。
「なんだ騒々しい。傷に響くから叫ぶな。ついでに食事中だ。」
飄々と言い返し、味気のない銀狼の里での食事を食べる。
ここは族長の屋敷。多くの子供達を引き取り育てている場所。
総弦はうっかりどっきり総記をかばって大怪我をしてしまい、
療養の為一週間の予定でここに滞在していた。
もう大分傷は塞がったが。
ぎゃんぎゃん叫ぶのは異形討伐を専門とする隊に
所属していたときからの付き合いになる、直属の部下の一人。
「いい加減に身体を大事にしてください。
あなたが人をかばって大怪我をすることはないんですよ!?」
「うるせえ黙れ。総記は俺の主だ。」
「それより前に、あなたは銀狼一族の族長です!」
刹那、彼のすぐ横に、焼け付く刃が突き立った。
総弦の魔力によって放たれたものだ。
「ぎゃんぎゃんうるせえっつってんだよ。
今の俺は『銀狼調弦』より、『総弦』として過ごしてんだ。
それに大事になったら帰ってくる。それで文句を言う必要はない。
式は主を護るもの。誓いを交わしたその日から、離れることは許されない。
それに、」
彼はまさしく、獣の目を向ける。
「あいつだって100年もすりゃ死ぬんだ。そのぐらいの我侭は許せ。
それが許せねぇってんなら、この里を出ることだ。」

彼は思考する。
全てに変えても、全てを犠牲にしても、
自分は、彼がいなくなる日まで彼を選び続けるのだろうと。
それは式の本能。
主は何者にも代え難い、絶対だから。


数日の後、総弦は期日通りに里を出て、
再び自分の主の下へ帰った。


21 :小豆 :2007/04/02(月) 00:16:17 ID:ommLQAmc

あなたに惹かれて。


あなたと出逢った時。
あたしは、その瑠璃色の眼に、惹かれた。
哀しみしか映さない、その眼に。
まるで、楽しいとか、嬉しいとか。
そういう感情だけ、抜け落ちたみたいな。
その、眼に。

「初めまして! あたしは新稚世。よろしくね!!」

(……神庭瑠璃。よろしく)

あなたは、とてもとても。
重いモノを背負っているみたいだった。
あたしと似てるって、思ったの。
性格は全然違うけど。
背負っているモノの重さは、一緒だって。
あなたに惹かれて。
あたしは、あなたの前でだけは。
泣けるようになった。




あなたと出逢った頃。
私は、あなたのことを煩わしいと思っていた。
ずっと笑顔で。
悩みなんか、なさそうで。
脳天気で。
その上、私につきまとってくるようになって。
私と、正反対過ぎて。
嫌いだった。
だけど、あなたはあの日。
私に、涙を見せた。
あなたの、深い深い悲しみを見た気がした。
いつもは完璧に隠している、あなたの泣き顔、悲しみに。
私は惹かれた。

(どうして……泣くの?)

「……見捨て、られた。あたしはもう、独りは嫌。……瑠璃。あたし、恐いの……」

あなたはきっと。
私と似たようなモノを背負っている。
大切なモノを失う悲しみを。
知っている。
あなたに惹かれて。
私は、あなたの前でだけは。
笑えるようになった。


22 :シルヴァイン :2007/04/02(月) 13:22:21 ID:n3oJWHuD

さて。

雨がしとしと降り続いていた。
晴れの日が多い鳳凰特区には珍しい事だが6月、
雨季なので仕方がないだろう。
ただ彼は傘もささず、池の水面を叩く雨を見ていた。
ひょい、と視界がかげる。

振り返り、前へかかってきた長い銀の向こうに人を認める。
「何をやっとるんだお前は。風邪を引くぞ。」
「いや、別に。ただ、また嵐になると思っただけだ。
雨の日には、死ぬものが多い。」

そう言って総弦は僅かに笑うだけで、彼の主は、
彼に傘を押し付けた。


23 :小豆 :2007/04/02(月) 16:18:22 ID:ommLQAmc

君のそば。


君と出逢った時。
正直僕は、驚きました。
まっすぐで、無垢な。
汚れなど感じられない眼を。
君はしていましたから。
LASにやってくるプラダジーはみんな。
暗い顔をしているのに。
君は、明るい顔で。
ただ、好奇心だけを持っていました。

「僕は錦織唯斗です。これからよろしくお願いしますね」

「……僕は、名前がないの。忘れちゃったんだ」

君の言葉に、僕はまた。
驚きました。
君は、僕が持っていない。
僕に欠けているモノを。
持っていました。
君を汚れのない、白色で例えるなら。
僕はこの眼のような、灰色です。
だから、僕は君のそばで生きようと思ったのです。



君と出逢った時。
僕には、名前がなかった。
全部、忘れちゃったから。
だから君は、僕に名前をくれたよね。

「君の名前……深海、心にしましょうか…………」

「……うん。ありがとう、唯斗!」

僕はその名前が大好きになって。
君に呼んでもらうたび。
嬉しくなって。
君は物知りだから。
無知な僕に、たくさんのこと教えてくれたね。
僕にとって君は。
世界そのものだった。
君はいつも、僕を大切にしてくれるから。
だから、僕は君のそばで生きようって、思ったの。


24 :シルヴァイン :2007/04/02(月) 22:08:41 ID:xmoJQ4sD

雨音はさようならの呼び声。

「全く・・・どうしたんだ。」
総記は溜息と共に銀の髪を、かき乱すようにして拭く。
「お前らしくない。あんな感傷にひたるなど。」
むしろそれは俺の仕事だぞ、と笑う。
ただ彼は目を閉じて、低い声で言った。
「・・・銀狼の一族に伝わる、どこが出所だか分からん
昔話、伝承でな。
『雨の降る日には、雨雲に、雷に乗って
災厄が訪れる。災厄は邪神という形で現れ、
生きとし生けるものの心を、魂を見境なくさらってゆく。
ただその目に留まったものが、理由なくさらわれる、』と。
実際雨の降る日ってのは、生き物が死ぬ確率が高いんだ。」
はぁ?と総記は馬鹿にしたように。
「だから、なんだ?」
「雨音は別れの声、雨は別れの涙。
雨はいつでも別れを運ぶ。雨とは別れの象徴。
大切なモノが、決して手の届かないところへ行ってしまう。
それが雨の日。」
ぞく、と背筋が凍る感覚。
間違いない、今髪を拭いてやっている彼の魔力だ。
「俺の『子供達』のいくらかも、雨の日に行ってしまった。」


ようやく彼が言わんとすることを悟る。
「俺はさらわれたりせんぞ。」
「うそつけ。お前は誰にでも好かれる変な力があるだろう。
神でさえも、惹かれるんじゃないか?」
ただ総記は笑って、彼に体重を預けた。

「何度さらわれようと、俺は愛しい人への想いを忘れぬ。
ただ俺は、愛しい人の傍にあるため、何度でもここへ帰ってくる。」

愛しい人、は咲姫だけを指すのではないんだぞ、と一応念を押しておいた。
そろそろ・・・・ほら、

雨が上がる。


25 :小豆 :2007/04/03(火) 23:13:50 ID:ncPik7Qc

生きることは、辛く、悲しく。それでもお前とならば。


お前と出逢った、あの瞬間。
俺は、初めて人に。
惹かれた。
ただの、8歳のガキなのに。
俺は、惹きつけられた。
ずっと、誰も好きにならないように。
努めてきたのに。
それなのに、お前だけには。
どうしようもなく惹かれた。

「俺は柳館詩。よろしく」

「葉梨颯夏や。よろしゅうに」

お前の落とし物が成長だと知って。
俺は、思った。
待ちわびていた人間に、ようやく出逢えた、と。
最初から、気になっていたんだ。
そしてお前には、永遠の時間がある。
好きにならない理由など。
どこにもなかった。
お前となら、生きてもいいと。
初めて思えたんだ。




お前と出逢った時。
なんちゅう背ぇの高い奴やって。
俺は思うた。
ほんでお前は。
何か、おもろいもんでも見付けたような。
そんな顔をしとった。
それからずいぶん経って、俺は。
お前の落とし物が、何なんかを知った。

「俺は……死ねないんだ。颯夏、もしかしたら、お前もそうかも知れない」

「そんなん、嫌や。俺は、嫌や……」

俺にとってのお前は。
恐怖の象徴でしかなくなってしもうた。
もしかしたらお前みたいに、死ねんかも知らん。
お前みたいに、何百年も落とし物を見付けられんかも知らん。
そう、思うてしもうたから。
せやけどもう、遅かったんや。
そん時にはもう。
俺はお前に惹かれとった。
せやから……。
俺は、お前を受け入れたんや。
お前となら、永遠に生きてもええかなって。
思えたんや……。


26 :シルヴァイン :2007/04/05(木) 11:40:11 ID:xmoJQ4sD

先生だって大変。

本日は3年に一度の正規魔術教員資格更新試験の日。
高い魔術力、優れた人物性などが試され、落ちれば勿論即資格剥奪となる。
だからフェンデラムの正規魔術教員たちも頑張って準備をしてきていて。
準教員の皆さんに励まされ、送り出された。

今は会場の五国連合本部で筆記試験を受けているところだった。

ステージ1、筆記試験。
問題数300問。

(うにゃ?わかんないや。適当かいといちゃえ。)
緋月はまたこの問題も飛ばす。
彼女は治療のみに偏った知識を持つ為に、実は・・・他はあまりわかっていない。

(システムオールグリーン、ノープログレム。
このような質問をして、何が楽しいのかねぇ。)
今日の謙治は長い金髪に蒼の瞳。眼鏡はかけていない。
彼にとっては大多数の問題が屑に等しい。
これでも一応測定不能のIQ値を持つ男なのだ。
着々と質問欄を埋めていくがしかし、
『問の150 ゼラニウムの花言葉を答えなさい』
(何だよこれ。魔術教員に全く必要ないじゃないか・・・・)
流石にこの問題には思考停止。


(あーあ・・・・・・・・)
港は多少落ち込む。合格基準がどのあたりにあるのか分からないが結構悪い点かもしれない。
魔術の試験だけでなく数問は物理や数学、地理なども混ざってくるから。
こんなことならしっかり勉強しとくんだった、と後悔。
ついでに、友が心配だ、と思う。


(あ〜!もうどうしよ・・・全然わからねぇ・・・・・)
歌燐は少々パニック。
自分が馬鹿なことは重々承知していたがこれほどとは。出てきそうで出てこない。
(う・・・・薬学のとこは全部かんたんだったから埋まったし、
計算も一応やったけど・・・・・・あー・・・・落ちたらどうしよう・・・)
そんなことを考えているうちに、頭がどんどん白に。


「それでは次です。問の200 対象の体力を徐々に削る冠位資格下位魔術、
大地属性に当たる術をお答えください。」
「カウズフィールド」
真はその障害上、魔術を使った不正があってはならないので
口頭で答え、代筆を頼む形で受験していたが、あらゆる問題にすらすら答えていく。
ただ計算は脳内で全てを行う為に中々答えを出すまでに時間がかかるが。

おやおや、と奈月は思考。
(前回に比べてグロテスクな質問が少ないですね。寂しい事です。)
前回は神獣が死ぬギリギリラインの傷を答えろやらなにやら
グロい質問が飛び交っていたものだが。
しかし彼は特につまることもなくさらさらと答えを記入。




(今年の問題も特に障害はなし、か。)
フェンデラムの誇る頭脳、剣核は特に問題なく250問目を終える。残り50問。
次の問題に目をやる。
『問いの251 暗号を解読しなさい。

11 31 62 55 55 65” 93

25 13 63 23 51 42 52 44 』

おい、と内心つっこむ。魔術から遠く離れた。
まあ数字を見るに五十音ではないかと推測、
あっけなく答えを見つけ記入する。
(ひねりが加わってきたな・・・・・)


♪混じりに記入していくのは遊凪。
遊凪、剣核は校長だが同時に魔術教員。
フェンデラムは教員が少ない為自分が落ちれば大変な事になる。
はい終了、と今年も驚異的な速さで全問終了。
しかし彼の場合面接が一番の問題になってくるのだが・・・・


第二ラウンド、実技・・・・は何も問題がないので飛ばしていいだろう。
そして最終ラウンド、面接。


フェンデラムの教員で初めに呼ばれたのは剣核。
座り、担当の試験官の質問に答える。

剣核の場合

「何故魔術教員に?」
「ただ単にフェンデラムの教員が足りないので、校長に強制的に。」

「興味のある分野はなんですか?」
「雷魔術と数学です。」

「受け持たれている分野は」
「魔術剣、1−C担任」

「趣味は?」
「剣舞鑑賞と調べ事、書き物」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえ。」

「それは何故ですか」
「阿呆でどうしようもない校長を止められるのが自分だけだと
自覚しているからです」
最後の答えには双方笑って。



緋月の場合

「何故魔術教員に?」
「うにゅ?なんとなーく受けてみたら受かっちゃった。」

「興味のある分野はなんですか?」
「神聖、治療術。」

「受け持たれている分野は」
「素敵電波系校医さん。」

「趣味は?」
「校長先生をつかって人体実験。」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえ。」

「それは何故ですか」
「静桐先生が絶対離さないから離れんなって言ったから。」
じゃ、あたしもう帰るね、と爽やかに。
試験官は毎回ながら呆れた。


奈月の場合

「何故魔術教員に?」
「自分の力を試す為です。」

「興味のある分野はなんですか?」
「神術と解剖でしょうか。」

「受け持たれている分野は」
「全学年の神術を。」

「趣味は?」
「生物の体のつくりを調べる事です。」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえ、望みません。」

「それは何故ですか」
「私を置いてくださるのは、静桐先生だけですから
切っても死なないですし。」
多少この教員は危ないのではないかとの思いを残しつつ、試験官たちは苦悩。


真の場合

「何故魔術教員に?」
「静桐先生、灘梶先生が望んでくださったからです」

「興味のある分野はなんですか?」
「地、闇魔術」

「受け持たれている分野は」
「全学年、常用魔術U」

「趣味は?」
「瞑想、じっとしている事。」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえ、拒否します」

「それは何故ですか」
「私のようなものを傍に置いてくれるのが
フェンデラム主従だけだからです。」
それでは、失礼します、と出て行く彼を見つつ、
もう少し愛想良くならないのかと思う。


港の場合

「何故魔術教員に?」
「えー・・・・友を支える為に。それ以上の理由はありません。」

「興味のある分野はなんですか?」
「地学とかー・・・水魔術とか・・・」

「受け持たれている分野は」
「常用魔術Tを全学年、2-A担任を。」

「趣味は?」
「じーっと一点に留まる事、流れる雲の観察。」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえー。」

「それは何故ですか」
「友がそれを望まないから、真紅が離してくれないからです。」
この彼、外見上何の問題もないが問診ではかなりの問題が見られる・・・と
試験官たちはやはり苦悩。


謙治の場合

「・・・・・あの、えっと?」
「僕が昏菱謙治です。とっとと始めましょう。時間の無駄だ。」


「・・・・・何故魔術教員に?」
「僕としては全国ふらふらまわって遊びたかったんだけど
 校長にスカウトされたから。」

「興味のある分野はなんですか?」
「魔道具製作。」

「受け持たれている分野は」
「全学年の製作技術、3-Bの担任。」

「趣味は?」
「日々姿を変えること、人を驚かす事。」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえ。」

「それは何故ですか」
「校長で遊ぶのが楽しいからです。」
最後の答えに試験官の顔がひきつった。


歌燐の場合


「何故魔術教員に?」
「波結先生に勧められて・・・」

「興味のある分野はなんですか?」
「薬学。」

「受け持たれている分野は」
「全学年の薬学・・・。」

「趣味は?」
「薬作ることと植物育てる事と・・・日曜大工。」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「・・・・いいえ。」

「それは何故ですか」
「遊・・・静桐先生があたしを傍においてくれるから。」
外見に反して可愛らしい彼女に驚愕。


遊凪の場合

試験官が最も恐れる人物が登場した。

「何故魔術教員に?」
「フェンデラムの教員がいないから自分でやろうと
あと世界かき混ぜるには丁度よさそうだったから」

「興味のある分野はなんですか?」
「音楽、地理、炎魔術、剣、他何でも」

「受け持たれている分野は」
「特別講義」

「趣味は?」
「可愛い相棒を虐める事、散歩、紙飛行機飛ばす事、
自堕落生活を送ること、考え事をすること、ピアノ」

「それではこの更新後、他校への転勤を望まれますか?」
「いいえ?」

「それは何故ですか」
「まだまだ校長もセンセイもやめる気がないから。」


数日後、フェンデラムの職員室に全員分の合格通知が届いた。
筆記や面接で問題があろうとも、
魔術力が常人をはるかに上回る為・・・・
現在の教員不足の中、この者たちを切り捨てるのはもったいなしと判断された為で。
「いやーよかったな皆受かって。」
「アンタが一番面接危ないぞ。筆記は満点だが。」
「ねーみてみてー。あたし面接で不適切の印押されちゃった☆」
「そこ喜ぶところじゃねぇぞ!!」
「ああ・・・私も少しスプラッタを強調しすぎましたかねぇ・・・」
「何答えたんだお前。」

そんなこんなでまた3年。同じメンバーで頑張ります。


27 :小豆 :2007/04/09(月) 10:59:18 ID:PmQHsHuF

更正。


あなたと出逢った時。
あなたはまるで、死人のような目をしていた。
心が、壊れてしまったかのような……。
プラダジーはみんな。
暗い顔をして、ここに来ると聞くけれど。
あなたほど酷く苦しんでいた人は。
そうはいないでしょうね。
だけど私は。
壊れかけたあなたを、助けたいと思った。

「初めまして。私はエリィ・キルシェアム。あなたは?」

「………………」

あなたはただ無言で。
表情を少しも変えることなく。
それでも、目だけには、哀しみを漂わせた。
まだ、心は死んでいないのだと。
私は確信した。
そのあと会長に聞いて。
あなたは耳が聞こえないのだと知った。
だから私は、あなたが立ち直れるまで。
あなたの耳になろうと、決めた……。



俺がLASの来たばかりの頃。
お前は、常に俺のそばにいてくれて。
俺の、耳になってくれて。
相手が話したことを。
わざわざ紙に書いてくれて。
だけど俺は……。
心を閉ざしたままだった。
そんな時、お前は紙に書いて。
新しい道を、示してくれた。

“ティル、あなたはこのままではいけない。……だから、読唇術をやってみない?”

「……読唇術…………」

お前は、俺の為に言葉を読む術を与えてくれた。
徐々に、相手の話が分かるようになって。
俺の口数も、増えていった。
きっとお前は、俺がちゃんと相手の話を認識できない限り。
立ち直れないのだと。
分かっていたんだな。
能力を使うこと以外でも。
ちゃんと、相手と話せるんだと。
教えてくれたんだな。
俺が今、心をもち、人間として生きられているのは。
能力を封印してくれた会長と。
何より、お前のおかげだよ、エリィ。


28 :シルヴァイン :2007/04/09(月) 21:14:56 ID:xmoJQ4sD

さようならの居場所

『さようなら、謙治』

笑った君に僕は何を返す事も出来なかった。
システムオールブルー、フリーズ。
ああ、そうではないのかもしれない。
君に返すほどの語彙力がなかっただけだろう。
ただ僕が愛したのは君だった。それだけが確かな事。
世界中何もかもが色あせて見える中、
その頃の僕の世界で、色鮮やかだったのは、真紅と、漆黒と、君だけだったんだ。

さようなら、じゃあなかった。
僕が逢いたいと言えばいつでも彼は帰ってくるのだし。
ただ僕もそうそう寂しがる人間じゃないし、
沈黙や長い離別に耐えられない人間でもない。
だから、さようならでもいいのかもしれない。
彼は、いつでも僕を愛してくれるのだし。



「ねえ静桐先生。」
隣の真紅へ問いかける。今も、目に焼きつくほど色鮮やかな存在に。
「さようならは、どこへ居場所があるんでしょうか?」
僕の毎度ながらよく分からない質問に、すぐに真紅は答えてくれる。
「きっと、雨の中に、空の中に。心の奥底、冷たい闇に。」
「僕の名は、くらひしですよね。
だったら、僕の中にもさようならの居場所はあるでしょうか。」
「ああ、誰にだってあるさ。大丈夫、お前の中で彼の居場所がなくなったりはしない。」

だったら安心。
また、次の『さようなら』を言って別れようと思う。
それぞれすべき事の為に。


29 :小豆 :2007/04/23(月) 23:00:39 ID:ommLQAmc

求めたのは君。


 世界中の人間に、「神の子」として崇められる。
 そんな人生、俺はまっぴらごめんだった。
 俺はただ、ちっぽけな一人の人間として。
 誰かに、認めてもらいたかっただけなんだ……。
 叶いそうもない、願いだった。
 俺の両親でさえ、俺のことを。
 世界を救うとされる、「神の子」としてしか。
 みてくれなかった。
 周りの人間すべてが。
 尊敬と、畏怖の眼差しを俺に向けた。

 何故だ?
 俺は、人間なのに。
 人の子なのに。
 それなのに……。

 諦めかけていたんだ。
 どうしようもない、運命なんだと。
 無理に納得して、生きていこうと思っていたんだ。

 だけど……。

 世界は俺を、見捨ててなどいなかった。
 俺を認めてくれる。
 俺と普通に接してくれる。
 そんな、お前に、出会えたんだ……。


30 :シルヴァイン :2007/04/28(土) 19:23:41 ID:xmoJQ4sD

カーテンコールをもう一度


真紅は果ての果てを目指す。

真紅は果ての果てを目指し、そして果てを見る者。

人を、あらゆるモノを超越する、神の落とし子。

真紅が放つ炎は地獄の業火。

あらゆる物を許さず焼き尽くす、力ある救われぬ業火。


「だっりーなー・・・・・・」
静桐遊凪は身をひやりと冷たい風にさらしていた。
ごきごき、と疲れた首を鳴らして、敵を見る。
剣が翳されると同時、炎が起きる。
救う為でも照らす為でも探す為でも護る為でも暖を取る為でもなく
ただ焼き殺す為の力の炎。
「救われぬ喜劇に、カーテンコールをもう一度ってか。」
面白くもないのに彼は一人笑い、真紅のローブを翻して駆ける。

《炎王》 静桐遊凪  フェンデラム校長 『真紅遊戯』『最高の真紅』






漆黒は決して折れぬ、ただ傍へ居続けるもの。

ただ一人世界と自分の運命を変えるものを、世界を繰り返しながら待ち

幾度分かたれようともまた彼の傍へ立つもの。

漆黒が成る『護りの戦神』は何も求めず世界を駆ける。

戦神が放つ雷は護りの力。

怒号にも似たそれは一切の悪を許さない。一切の傷も、つけさせない。



「寄るなァ!!」
低い怒号が地を割る雷へと姿を変える。
半径一キロメートル、濃い魔力が充満し、異形が溢れ出す。
魔道警察には連絡したが、彼らが来るにはもう暫く時間がかかるだろう。
「なんだってんだ・・・・んのやろう・・・・・」
恐らくこれに関わっているのは、世界一の魔道士と名高い真紅。
「とりあえず、あいつの頭ぶん殴るのが、先か!!」
振られる剣にまとわりつくようだった雷が針のように異形を貫くそれは
離れた場所からは派手な花火に見えた。


《雷神》 灘梶剣核 フェンデラム教長 『漆黒秩序』『戦神』『気高き漆黒』 





風統べる者と水の舞い手は常に共に。

幸福なるときも苦渋の時も、死に逝く時も。

ただ二人は同じ道を行く。

風統べる者の風は手段。大切なモノを護る為の。
水の舞い手の水は希望。あらゆる物を受け入れる為の。

さて、舞いの儀を始めよう。



「咲姫、」
「まだ平気です。」
ひゅん、と風を切る音が幾重にも響く。
総記の双刀、咲夜の鉄扇が立てる音だ。
咲夜の体に負担がかかっていることは分かりきっていた。
だから総記は彼女の方に異形が行かぬよう、双刀を駆使する。
総記の刃は大切な存在を守るためにある。
民の笑顔を、未来を、健やかなる土地を、
自分の仲間であり式である彼ら3人を、
父から譲り受けた大切な魔人達を、
何も知らぬ周囲の人々を、生き物達を・・・

そして、息子達、彼女を・・・。
「傷つけられては、俺が力を欲した意味がない!!」
総記は自分に言い聞かせるように、低く叫ぶ。
「あら、私もです。」
咲夜はただ笑った。
「私が力を求めたのは、総記様のお傍にいる為です。
共に戦い、共に大切な存在を護れますようにと。」
そして、総記の背をいつも押す、水が立つ。
「よせ、といってもあなたは聞かぬのだな。」
はい、とその問いに返して。
「お約束しましたわ。いついつまでも、と。」


《風帝》 鳳凰総記 鳳凰家当主  『風統べる者』『人好き当主』『双刀乱舞』

《水姫》 鳳凰咲夜 鳳凰家当主奥方 『水の舞い手』『舞姫』『扇天女』





「総記はん・・・・・もう、辛いんです・・・・・・」

《地定》 朱雀灯明 朱雀家当主  『隻眼の守人』『地を看る者』



「静桐遊凪!!私は・・・・私は貴様を許さぬ!!」

《闇負》  ???  



「一度も後悔しない道など、間違いのない道などない・・・総記。」

《光実》 鳳凰煉喜 ご隠居  『制裁執行人』『世界が誇る神術師』



これはのろいだろうか。
許される事などない。



何が《七大称号》だ。何が頂点だ何が最高だ何が英雄だ!!
滅び行く世界すら救えやしないのに。
泣く子の一人も救えやしないのに。

消えいく目の前の命ですら救えやしないのに・・・
自分に向かい合う事も出来ないのに。


31 :小豆 :2007/05/06(日) 20:33:37 ID:PmQHsHue

1問だけをありがとう。



 とある高校の、生徒が一番多く行き交う廊下。そこの一際目立つ掲示板に、大きな紙が張り出されていた。その紙の一番上には、大きな文字でこう書かれている。

“校内学力テスト 順位発表”

 この高校では、全学年で年に一度、5教科の学力テストを行う。各教科、1問1点で計500問。そのテストは3年ともなれば、3年間すべての範囲から、しかも重箱の隅をつつくような問題まで出されるため、高得点はなかなか取れない。……普通の人間ならば。
 しかしこの年、この高校始まって以来の、高得点がたたき出された。
「……やっぱり。今年も同じ結果…………」
 その順位発表の紙の前で、ただただ立ち尽くすひとりの男子生徒。短い黒髪に、異端な蒼の眼。背はどちらかというと低い方だろうか。
 彼が見つめ続ける紙には、こう書かれていた。


   第3学年 順位

 1位 稲波舜輝  500点
 2位 忽那  響  499点
 3位 ――――  412点


「舜輝。なにこんなとこで突っ立ってんだよ」
 突然、あの蒼い眼の男子生徒の背後から、声がした。彼、舜輝は振り向く。そこにいたのは、だらしなく制服を着崩したひとりの男子生徒。
「……響」
「順位発表? こんなもん見なくても、お前が1位なのは分かりきったことだろ」
 響と呼ばれた彼は、だるそうに前髪を払った。
 そう、この2人。舜輝と響こそが、異例の天才。どんな類のテストだろうが、舜輝は満点、響は満点−1点を維持してきた。
「……響。どうして君はいつも、わざと1問だけ答えを書かないの?」
 舜輝は少しだけ不服そうにして言った。それに対し響はめんどくさそうに応える。
「満点取って首席なんかになったら、色々とめんどくせぇ役とか押し付けられるだろ。俺はそれが嫌なだけだ。お前と違って、生徒会長ってガラでもねぇだろ」
 そう、彼はいつも1問だけ答えを書かない。しかも、彼が一番得意としている英語の、一番最初の一番簡単な問題を、だ。それは模試だろうが定期考査だろうが大学入試だろうが、変わらなかった。
「……偽悪なんだね、君は」
 ぼそっと、舜輝は呟く。しかしその言葉は、響には聞き取れなかった。
「なんか言ったか、舜輝?」
「ううん、何も」
 そのまま舜輝はすたすたと歩いていってしまった。そんな彼を響は追いかけたりなどしない。ただ、もう一度だけ順位をちらりと見遣る。そして。
「……1問たりとも間違えたりすんじゃねぇぞ、舜輝。俺はこれ以上、手加減なんてしてやらねぇからな」
 ふっと、嫌な笑みを浮かべると、響はその場を後にした。



 ……気づいてたよ。
 ずっとずっと、昔から。
 そう、中学の頃から。
 君はわざと、1問だけ答えを書かない。
 それは、僕の為だってこと。
 僕の夢は、並大抵のことでは叶わない。
 首席ぐらいは、守り続けなくちゃならなかった。
 だから君はわざと、1問だけの猶予を僕にくれたんだ。
 負けず嫌いの君だから、これが精一杯の。
 そして最大の、優しさだったろうね。
 ありがとう、響。
 ……だけど僕は、悔しかったよ。
 君はまだまだ、余裕だったから。
 僕は必死で、必死で、勉強していたのに。
 だから僕は、君には負けないよ。
 君が与えてくれた、1点だけのチャンスを掴むよ。
 そしていつか、君を追い越すよ。
 だから、だから……。
 その時には、全力で僕と勝負してね。

 僕はいつか、僕の全力で、君の全力を、超える。


32 :シルヴァイン :2007/05/07(月) 18:09:46 ID:n3oJtJnm

紅い世界を忘れない




「私の世界には、紅い色しか映らないんです。」
目を患った彼が笑う。
「本当言うと、灘梶先生の漆黒ですら、灰色に見えているんです。
鮮明に、鮮やかに見えるのは、赤だけなんです。」

きっと運命だろうと彼は笑った。

「私は、静桐先生の下でしか働けないんです。きっと。」



天才はガラクタでした。
天才は確かに天才でしたが、人と付き合っていけませんでした。
天才には世界の全てが遅すぎてくだらなくてつまらなくて
天才の世界で色付だったのは

真紅と漆黒と、青だけでした。

だから天才は漆黒に惹かれ青と籍を入れ友に歩み

真紅の手足となりました。



痛みに目を閉じた。
外は強い風が吹いている。

ああこんな時でさえ、思い出すのは
赤が好きだったお前。
毎日のように血を流す今、

君の声が


『剣核』




僕達は、紅い世界を忘れない。
真紅が与えてくれた世界を
永遠の苦しみの世界を忘れない。


33 :シルヴァイン :2007/05/26(土) 16:21:19 ID:n3oJWHuD

約束しよう、素直にあなたを愛す事。

かわしたゆびきり。

その言葉がどんな意味を持つのかも知らずに。

ただ、あなたと二人なら・・・・・・

どんな世界も怖くないと思えたんだ。



「咲姫。」

その、少し恐ろしいほどに細い体を抱きしめた。
あまり急ぐな、早く行ってくれるな、と願いながら。

「俺は、あなたを幸せに出来るのだろうか?
あなたは俺と来て、正しかったのだろうか?」

まだ幼さ残る彼女は、
そう、笑ってくれた。

「あらあら。困った当主様です。
自分の発言にも自分の力にも自身がもてないのですか?」
「うっ・・・・いや・・・・・」
「私は総記様を待っていたのです。
たった一つの約束を、果たしていただく為に。
それだけで十分です。答えなんて。
私がわがままに無鉄砲に、総記様を選んだのですから。」

彼女は少し困った顔をして、
背伸びで、俺の頬に口付けをくれた。

「愛しています。世界で一番というのは、思い上がりかもしれませんけれど。」

大した姫を嫁に貰ってしまったな、と俺は内心苦笑して、
彼女の細い指に、銀の環を嵌めたのだ。



「いやあの頃は俺も若かった。」
「そーか?あんまり変わらねえだろ。」
へっ、とあっさりはき捨てる総弦。
縁側で二人、いや咲夜を加えて三人、縁側でスイカを食べている。

本日は7月28日。
総記と咲夜の結婚記念日だそうで。
昨日からハルネルザードへ旅行へ行っていて、スイカを買って帰ってきたのだ。
はしゃいだ律宝は寝入ってしまい、それを部屋で六夜が世話している。

「そうですね。総記様は幾つになってもあまりお変わりありません。」
くすくすと咲夜が笑う。
「なっ!」
「ほら。顔が老けただけだろうが。」

二人から精神攻撃を喰らい、少し泣きたくなる総記。
「幾つになっても、あなたはとても魅力的な私の、風です。」
にこ、と笑顔と共に贈られた言葉に、総記も自然と笑みがこぼれた。
「ありがとう、咲姫。
あなたもいつまでも、あの頃と変わらない、大切な姫だ・・・。」
「少しおてんばで困らせたがりやな、ですね。」
「そうだな。」
くすくす、と笑う咲夜。彼女を心底愛しいと思う総記。

「・・・・・俺は髪が長いからあんた方の倍暑いんだぞ・・・・
年甲斐のない発言はやめてくれ。」
「お前がそれを言うか?」
総弦のげんなりした発言に、二人とも、笑いをこらえきれない。
そして、総記は思ったのだ。

どうか、この幸せな時間をいつまでも。





『ゆびきりげんまんー♪』
『あ、え?はあ・・・・』
『さくやは、そうきさまがだいすき。
そうきさまも、さくやのことすき?』
『え・・・あ・・・それは、大好きです。』
『だから、ずっとずっと・・・・
ずーっとずっと、いっしょ!』
『ああ・・・・昨日、咲姫のお父様が・・・』
『そう、それ!』

『『死が二人を別つまで、
      未来永劫、永久の時を、共に歩む事を誓約します。』』


34 :中人◆WYmroVkc :2007/05/30(水) 23:13:24 ID:onQHxJz3

「無駄だ。どう足掻いたとしても、生きては帰さない。」
「いや、生きて帰らなくてはならない。俺には、家族がいるから。」
 寂れた廃工場で、男が二人。
 一人は銃を構え、一人は血まみれで倒れている。

 銃を構えている男は、さっさと片付けようと、倒れている男にベレッタを突きつけているが、なぜか、引き金を引く事が出来ないでいる。
「・・・・殺さないのか?」
「・・・・・・おまえはそこまでして、生きたいのか?」
「ああ。死んだら、家族が悲しむからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 引き金を引けばいい。それで、俺の仕事は終わる。なのに、引く事を拒むようにかけている指が、震えて動かない。
 目の前にいる男は、血まみれで、付けられた傷も深い。いつ、逝ってもおかしくない、そんな状態である。

 まだ死にたくない。まだ生きたい。俺には家族がいて、愛してくれる妻がいるからだ。
 でも、傷は深いし、今も意識が飛びそうだ。

「・・・・・・何故撃たん。」
「・・・・・・・・・・・・・・さっきまで、生きたいと言っていただろ。」
「もういい。どうせ、助けられたって何時かは、もっと残酷な死に方をするんだ。なら、ここで殺せ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 なぜ、そう言う。
 俺は、震える手を押さえつけながら、思った。
 お前には家族がいる。俺には誰もいない。お前には助かれば喜ぶ人たちがいる。俺には助かっても喜ぶ人はいない。むしろ、死ねばいいと言われる。
 なのに、お前はなぜ、自ら死ぬ事を選ぶのか。

 殺せ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
 何故殺さない?殺せば、全てが終わる。お前は金をもらい、また新たに仕事が課せられる。こんなところでうじうじしてても仕方がない。
 なのに、貴様はなぜ、俺を撃たない。

「・・・・・・・・・・・さっさと殺せ。こんな事に時間はかけられないはずだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった。あばよ。」

 自分から助かる道を断つなんて、それに殺していい事と感じた事は俺は一度もない。むしろ、助けたいぐらいだ。
 だが、相手が望んだ事だ。せめて、楽にしてやろう。

 相手は、まだ、戸惑っている。撃てば済むのに。そうしているうちに、決心したのか、引き金を一本から二本に変えて引こうとしている。
 俺は、そいつに向かって、こう言ってやった。

「ありがとよ。」

 撃ち終わってから、こいつが言った、言葉を思い出していた。"ありがとよ。"撃たれて死ぬ前に言うような言葉ではない。それが、同じ職業の敵同士なら尚更だ。
 何故そう言ったのか、俺には分からない。聞こうとしても、鉛弾はこいつの脳を貫通して、既に命は絶たれている。聞く機会が永遠に断たれたというわけだ。

 せめてもの償いで、こいつを埋めようとしていると、懐から、免許書が出てきた。普通持ってくるか?住所を見てみると、以外にも、知っているところだった。
 家族がいるといったな。悲しむと思うが、これを届けてやろう。

 死ぬ間際に言ったこれまでに感謝する言葉。
 たった一言で、奴の最後の時は止まってしまった。
 だが、他の人々にはそのことが伝えられても、奴が残した最後の時は止まらず、その人が死ぬまで永遠に動き続けるだろう。


35 :カネイリュウ◆47txxGA3 :2007/05/30(水) 23:31:47 ID:onQHxJz3

サイゴノトキ

すみません。代理を中に任せてたら、ごたごたが起きて、前のみたいに修正していないほうを投稿してしまいました。修正しても、さほど変わりませんけど。

「無駄だ。どう足掻いたとしても、生きては帰さない。」
「いや、生きて帰らなくてはならない。俺には、家族がいるから。」
 寂れた廃工場で、男が二人。
 一人は銃を構え、一人は血まみれで倒れている。

 銃を構えている男は、仕事を終らせるために、倒れている男にベレッタを突きつけているが、なぜか引き金を引く事が出来ないでいる。
「・・・・殺さないのか?」
「・・・・・・おまえはそこまでして、生きたいのか?」
「ああ。死んだら、家族が悲しむからな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 かけている引き金を引けばいい。それで、俺の仕事は終わる。なのに、引く事を拒むようにかけている指が、震えて動かない。
 目の前にいる男は、血まみれで、切り傷、銃創、打撲、付けられた傷も深い。いつ、あの世に逝ってもおかしくない、そんな状態である。

 まだ死にたくない。まだ生きたい。俺には家族がいて、愛してくれる妻がいる。
 でも、傷は深いし、今も意識が飛びそうだ。耐えなくては。

「・・・・・・何故撃たん。」
「・・・・・・・・・・・・・・さっきまで、生きたいと言っていただろ。」
「もういい。どうせ、助けられたって何時かは、もっと残酷な死に方をするんだ。なら、ここで殺せ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 なぜ、そう言う。
 俺は、震える手を押さえつけながら、思った。
 お前には家族がいる。俺には誰もいない。お前には助かれば喜ぶ人たちがいる。俺には助かっても喜ぶ人はいない。むしろ、死ねばいいと言われる。
 なのに、お前はなぜ、自ら死ぬ事を選ぶのか。

 殺せ。殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。
 何故殺さない?殺せば、全てが終わる。お前は金をもらい、また新たに仕事が課せられる。こんなところでうじうじしてても仕方がない。
 なのに、貴様はなぜ、俺を撃たない。さっさと撃て。

「・・・・・・・・・・・さっさと殺せ。こんな事に時間はかけられないはずだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった。あばよ。」

 自分から助かる道を断つなんて、それに殺していい事と感じた事は俺は一度もない。むしろ、助けたいぐらいだ。
 だが、相手が望んだ事だ。せめて、楽にしてやろう。

 相手は、まだ、戸惑っている。撃てば済むのに。そうしているうちに、決心したのか、引き金にかける指を一本から二本に変えて引こうとしている。
 俺は、そいつに向かって、こう言ってやった。

「ありがとよ。」

 撃ち終わってから、こいつが言った、言葉を思い出していた。"ありがとよ。"撃たれて死ぬ前に言うような言葉ではない。それが、同じ職業の敵同士なら尚更だ。
 何故そう言ったのか、俺には分からない。聞こうとしても、鉛弾はこいつの脳を貫通して、既に命は絶たれている。聞く機会が永遠に断たれたというわけだ。

 せめてもの償いで、こいつを埋葬していると、懐から免許書が出てきた。普通持ってくるか?住所を見てみると、以外にも、知っているところだった。
 家族がいるといったな。悲しむと思うが、これを届けてやろう。

 死ぬ間際に言ったこれまでに感謝する言葉。
 たった一言で、奴の最後の時は止まってしまった。
 だが、他の人々にはそのことが伝えられても、奴が残した最後の時は止まらず、その人が死ぬまで永遠に動き続けるだろう。

すみません。中人とは、別れた物です。漏れは。


36 :シルヴァイン :2007/06/26(火) 21:47:54 ID:nmz3m3si

ぐだぐだとした会話の中で

「ねえ、」
「ん、何?信互。」
「何してるの?」
「見ればわかるでしょー♪かき氷作ってんの。」
「なんで?」
「売るにきまってんじゃん!!金稼ぎ!!」
「・・・・・・・・」
「あ、こら!」
「いいでしょ、僕には。」
「・・・・・・・・」
「?」
「信互・・・・可愛すぎ・・・・・」
「ああこら変態!!寄るな!!」


「今日、帰り遅いって言ってたね。俺ご飯作っとくよ。何食べたい?」
「何でもいいよ。何か美味しいもの。」
「肉?魚?」
「野菜。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・うん、分かったから。肉食べたいなら肉でいいよ。」




「っ、あ、こら!!何してんの信互。」
「いや、廉弥の眼鏡ってどのぐらいの度なのかなと思って。」
「へへ、きついだろー。それないと俺殆ど目見えないんだー。
早く返してよ。」
「・・・僕のことちゃんと見える?」
「・・・うん、見えてるよ。信互の魔力波は、何よりはっきり見えてる。」


37 :小豆 :2007/07/22(日) 00:03:22 ID:ncPik7Q3

幸せな日々


「早く早く!」
「そんなに急かすなよ」

 のんびり歩く俺を、彼女が海辺で呼んでいる。
 俺が彼女の隣に並ぶと、彼女は沖を指差した。

「あれ見て。すごい……綺麗」

 彼女の視線の先にあるのは、ひとつの小さな島。
 あまり遠くないその島には、一面に白い花が咲いていた。

「あぁ……。なんて名前の花だろうな」
「真っ白……。まるで孤征みたいだね」

 そう言って笑う彼女を、俺はいつまでも眺めていたいと思った。







 それは、
 ありきたりで。
 特別で。
 そして長くは続かなかった。

 幸せな日々……。


38 :小豆 :2007/07/28(土) 23:22:10 ID:ncPikAsF




「詩、颯夏。心がどこにいるか知りませんか?」

「心なら、買い物に行くと言っていたが……一緒じゃないのか?」

「はい……。僕が仕事をしているうちに、消えてしまっていて……」

「そらそうやろ。今日は、特別な日なんやから」

「特別な日……ですか?」

「……それより、帰ってきたみたいだぞ」





――――――――――――――――――――――――――――番外編「僕の怒りは君の為だけに」




 ガチャリと扉が開けられ、中に入ってきたのは心だった。
「あ、心。お帰りなさ……ッ!?」
 言いかけたまま、唯斗は固まった。その目は大きく見開かれ、視線は心の左頬に注がれている。
「……えへへ。ただいま」
 心は苦笑いを浮かべた。わずかにつり上がったその頬には、真新しい、そして痛々しい青痣が。
「なんやそれ!?」
「ちょっと……ころんじゃって」
 颯夏の問いに、心は曖昧な笑みを浮かべて答えた。唯斗は固まったまま、動けないでいる。
「……どう見ても、殴られた跡だろ。第一、心がこけたくらいで頬をぶつけるわけがない」
 冷静に言い放ったのは、詩だ。確かに彼の言うとおり、心はこけることはあっても、そのせいで怪我をすることは有り得ないないのだ。身体能力の高い彼なら、上手く受身を取ることができるはず。
 と、それまで黙っていた唯斗が、いきなり心に詰め寄った。
「誰にやられたんです!?」
 その勢いに、心は縮こまってしまう。唯斗の表情があまりに必死なので怖いのだろう。
「……し、知らない人…………。ただ、左肩に大きな蛇の刺青があった……」
 心はうつむき、それだけを小さな声で呟いた。
「左肩に、蛇の刺青……」
 ぼそりと、唯斗は呟く。そして心から離れ、ゆっくりとドアに近づいていった。
「唯斗っ。どこに行くの……?」
 部屋を出る直前の彼の背に、心が問いかけた。唯斗は一度動きを止め、こちらを振り返る。そして、笑顔を作った。しかしその眼だけは、全く感情を映していない。
「……散歩ですよ。夕方までには帰ってきます」
 そして、部屋を出て行った。後に残された心は、しばし呆然とする。
「……キレてたな、あいつ」
「せやんな……」
 詩と颯夏の呟きに、心は慌てて2人を振り返った。
「どういうことなの? あんなの、いつもの唯斗じゃないみたいだった……」
 視線が床に落ちる。詩と颯夏は一瞬顔を見合わせ、それから心に向き直った。
「安心せぇ。帰ってくる頃には、元に戻っとるから」
「本当……?」
 不安そうに、心は詩と颯夏を見上げた。
「あぁ、大丈夫だ。……心、お前はとりあえず、セルシアのところへ行って来い。頬、冷やさないと駄目だろ?」
「うん……」
 心は悲しげに、床を見つめたまま頷いた。



「……にしてもあのチビ、馬鹿だよな」
 薄暗い裏路地に響いた声。それはまるで、誰かを嘲るような声音だった。
「あぁ。まさか俺らにたてつくなんてな」
「一発殴ったらぶっ倒れるしよ!」
 その声に同調するように、今度は違う男達の声がした。そいつらは、大声を立てて笑う。その中の1人、リーダー格らしい男の左肩には、蛇の刺青があった。
「……その話、詳しく聞かせてくれませんか?」
 不意に、どこからか声がした。恐ろしいほどまでに冷静で、抑揚のない声。男達は、声がした方を振り向いた。そこにいたのは、ひとりの少年。
「あぁ? なんだてめぇ?」
「あなた方に名乗るような名はありません。話を逸らさないでくれますか? 僕は、“詳しく話を聞かせろ”と言ったはずです」
 一歩一歩、その少年は男達に近づいてくる。表通りから、裏路地の奥へと。
「はっ! いい度胸してんじゃねぇか、ガキ!!」
「お前もしかして、さっきのチビのオトモダチかなんかか?」
 少年、錦織唯斗は、にこりと微笑んだ。やはりその眼は、笑ってなどいなかったけれど。
「あなた方の言う“チビ”とは、一体どんな人のことなのでしょうか? 詳しく話していただかないと、判断できませんね」
 そして、ピタリと足を止めた。男達との距離は、10メートル弱といった所か。
「っとに、肝の据わったガキだな。そんなに知りてぇなら教えてやるよ! 俺らはさっき、ちょぉっと金を借りようと思って、その辺を歩いてた男と話してたんだよ」
 にやにやと笑いながら話す男。一応言葉は選んでいるのだろうが、明らかにカツアゲだ。
「せっかく穏便に話が進んでたのによぉ、そのチビは、男を庇いやがってよぉ」
「ははは! 弱いくせにな、馬鹿なガキだぜ。俺が一発ぶん殴ってやったら、あっさり倒れやがった!!」
「まぁ、男には逃げられちまったんだけどなぁ」
 男達は笑うことを止めない。唯斗の中で渦巻く、恐ろしい感情に気づきもしないで。
「1、2、3、4、5……」
 突然、唯斗が呟いた。男たちは怪訝そうな顔をする。
 唯斗は顔をあげ、極上の笑顔を浮かべた。それには、ぞっとするような殺意が秘められていた。
「……拍子抜けしましたね。心が顔に青痣なんてつくって帰って来るもんですから、どんな強者かと思えば……。弱小の飯田組の、しかも三下じゃないですか。それに、たったの5人? 馬鹿らしくて話にもなりませんね」
 唯斗の嘲るような言い方、そして彼の言葉のせいで、男達は切れた。
「あぁ!? てめぇ、俺らの組が関東で名の通った組だってことを知らねぇのか? あんまり調子乗ってると痛い目見んぞ!!」
 と、そこで、男のうちの1人、刺青の男があることに気がついた。
「おい、ちょっと待て! コイツ、錦織組の跡取りじゃねぇか!?」
 他4人は、慌てて唯斗を振り返った。彼らが浮かべる表情は、恐怖と呼ばれるものだった。
 ……そう、錦織組と聞けば、裏側の人間なら誰でも恐れをなす。何故なら錦織組とは、世界の裏側を牛耳る、極道の頂点に立つ組なのだから。
「……あなた方のような下っ端にまで顔を知られているなんて……。光栄ですね。しかし、安心してください。錦織組と僕は、もう無関係ですよ。僕は、家を捨てましたから」
 唯斗の言葉を聞き、男達は一瞬、面食らったように固まったが、すぐにまた嫌な笑みを浮かべた。
「はっ! 馬鹿じゃねぇのか、お前。黙っときゃよかったのになぁ!」
「家を捨てたてめぇなんか、ただのガキじゃねぇか!」
「そのまま大人しく跡を継いでりゃ、裏の世界のトップに立てたのになぁ!!」
 言いながら、彼らは懐からナイフを取り出した。唯斗の言動に、完全に切れてしまったようだ。しかし、唯斗は全く臆することなく、それどころか余裕の笑みを浮かべている。
「僕は、“虎の威を借る狐”になんて、なりたくありませんから。それに……」
 男の1人が、走り出した。唯斗にナイフを突きつけてくる。しかし。
「…………貴様らごとき、俺1人で十分だ」
 唯斗がぼそっと呟く。男はナイフを持った腕を唯斗に捻りあげられ、苦しそうに呻いていた。
「くそっ! 一斉にかかれ!!」
 刺青の男が叫び、4人は一度に唯斗に襲い掛かった。唯斗はそれを見て、にやりと笑う。
「甘いんだよ、てめぇらはな。極道ってのがどんなもんが、教えてやるよ」
 そう言い、そして動いた。腕を掴んでいた男の腹を蹴り上げ、気絶させると、一瞬にしてしゃがみ込んだ。そのまま勢いを殺さずに、前から来た二人の足をはらう。くるっと後ろに向き直ると、残り2人の腹に右と左の拳を打ち込んだ。
 それは、本当にわずかな時間に起こったことで。男達は、何が起こったのか理解することさえできなかった。ただ、“大の大人5人が、小柄な1人の少年に負けた”ということだけは、理解できているようだった。
 そして、地面に伏した男達を侮蔑するような目で見下ろし、彼は言い放った。
「……あいつに2度と、手を出すな。そして、お前らの組はもう、死んだと思え」
 それだけ言うと、彼はその場を立ち去ったのだった。



「あ! 唯斗!!」
 彼がLASに帰り着いて、一番最初に向かったのは、もちろん心がいるであろう自室だった。案の定そこに心はいて、唯斗が部屋に入ったことに気づくと、てくてくと近づいてきた。
「ただいまです、心」
 唯斗は笑顔をみせる。その笑顔は、先程とはかけ離れた、温かみに溢れるものだった。心はその笑顔を見て、安堵する。
「よかった……」
 ぼそっと呟いた心を見て、唯斗はわずかながら彼に申し訳なく思った。
 僕の“黒い部分”の片鱗に、怖がらせてしまいましたね……。
 できるだけ、自分では抑えたつもりだったのだ。心の前でだけは、極道としての自分をさらけ出さないように。しかし、どうしても堪えきれない怒りが、彼を怖がらせてしまったのだろう。
 ……すみません、心。でももう、大丈夫ですよ。僕はいつもの、“唯斗”ですから……。
 唯斗は心の中でだけ、彼に謝る。
「ねぇ、唯斗。今日が何の日か、覚えてる?」
 不意に、心が唯斗を見つめ、問うた。彼は始終、にこにこしている。
「今日……ですか? ……何かの記念日でしたっけ?」
 唯斗は頭の上に、はてなマークを浮かべる。そんな彼の様子を見て、心はくすりと笑った。
「今日は……唯斗の誕生日だよ」
 言いながら、心は包みを取り出した。リボンで可愛らしくラッピングされている。
 心に言われて始めて、唯斗は思い出した。彼は自分の誕生日を、すっかり忘れていたのだ。
「……よく、覚えてましたね」
 呆然と呟く唯斗。それに対し心は、とても嬉しそうに微笑んでいた。
「唯斗の誕生日だもん、忘れるわけないよ!」
 そして彼は、全く邪気のない、明るい笑顔を見せた。それに対し唯斗は、泣きそうになるのを必死でこらえ、笑顔を浮かべるのだった。
「ありがとう……ございます……っ」
「うん……!」
 そしてふたりは、幸せそうに、笑いあうのだった。








 そして後日、わずか14歳の子供によって、飯田組が壊滅されたというのは、また別の話……。


39 :シルヴァイン :2007/10/01(月) 22:40:14 ID:n3oJtLmD

かつて

かつて、真紅が敬愛し傾倒し崇拝し

尊敬した魔道士がいました。



魔道士は正義を愛し、厳格であり
ただ一人を寵愛しました。
身を切る様な冬の日に、魔道士は死にました。

真紅は魔道士の歳をとうに超えました。
真紅は魔道士をこちらに向かせたくて、彼は向きませんでした。
真紅は・・・魔道士の真似をして花言葉を語りました。

ただひとり寵愛を受けた彼は喪に服したまま刑事となり
いつの日からか白の手袋を外さなくなりました。
魔道士の愛した正義を掲げ、戦い続けました。



真紅が求めた寵愛を、その身に受けた彼と
受けられなかった真紅は

魔道士が大好きで、墓に黄色い花を供えました。
いつも、いつまでも。


40 :小豆 :2007/11/06(火) 00:01:59 ID:xmoJm4rD

血の海の中で


「……ゴホッ」
「っ! 孤征!」

 咳が止まらない。
 しかも咳をする度に、血を吐いてしまう。

「……はっ。いよいよ、死ぬのか?」
「馬鹿! あたしを置いて死んだりなんかしたら、許さないからね!」

 ……どうしてこんなことになった?
 妖魔をひとりで相手したのが悪かったのか?
 朱温と共に戦っていれば、こうはならなかったのか?

 ……いや、違う。
 それでは駄目だ。

「……朱温」
「なに……?」
「お前に怪我がなくて、よかった」

 そうだ。
 これでいい。
 血を流すのは、俺だけで十分だ。

「……ばか」

 泣くなよ、朱温。
 俺はお前の為になら、いくら血を流しても平気だから。


41 :シルヴァイン :2007/11/18(日) 22:18:00 ID:n3oJtLmD

熱でもあるのかね。

「寒い・・・・」
静桐遊凪がぽつりとつぶやいた。
今気がついたが、結構に寒かったのだ。
だからとりあえず横にあったローブをひっつかんでかぶり、
相棒を揺すった。
「んー・・・・あと何枚だー・・・・・」
低い声が伏せたまま返る。
「あと50枚ー」
「殺す気かー。」
新しい魔道書を二人で書いているのだ。
それの既定の枚数まで、あと五十枚。
もう世も更けきって、日曜日の早朝にかかりつつある。
「剣核、」
「あ?」
「寒い。」
「術でもかけろ世界一の大魔道士さん。」
なあ、と一言、
「ねよーぜもう。眠い。」
「は?現実見て言えそういうことは。」
しーらね。と遊凪は。
「寒ぃんだ。」
ほれほれ、と剣核よりは細身、しかし力強い赤の腕が
漆黒の腕に絡まり、強くベッドの方向へ引いた。
「ちょ、おい、二人で寝るには狭いだろ」
「じゃ剣核、横へ座ってろ。」
確かに遊凪のベッドであるそれのよこには椅子があった。
溜息と共に椅子に座り込めば、遊凪は剣核の腕をひっつかんだままで
こてんと眠り込んでしまった。
ぎゅ、と強く腕が握られている。
「・・・・・・・・早く言えって・・・・」
溜息。


どうやら魔力の乱れを見るところ、校長は風邪をひいたらしい。

「熱でもあるのかね・・・・。」
剣核はただ腕を握られたまま、しばらくそうしていた。


42 :シルヴァイン? :2008/01/07(月) 13:31:47 ID:xmoJtFrD

面食らうようなそれの名は


鳳凰は太古の昔から、五族の中でリーダー格でした。
力が強いからというのではなく、
周りが畏怖したからというのでなく・・・・
自然とそうなっていくのです。
鳳凰は、太古の昔から・・・圧倒的なカリスマを持っていました。

太古の昔、五族の血をひいた青年たちは記しました。


炎の朱雀は四族の剣となり

風の白虎は四族の翼となり

水の青龍は四族の知となり

地の玄武は四族の盾となり

光の鳳凰は四族の導となることを。

そして、それぞれがそれぞれの守護者であることを。
一族が危機に陥った際は、
その身を危険にさらそうとも
必ず四族が救うことを。


その約束が果たされる時が来ました。
朱雀の剣が押し負けようとする時が。



昔、ほんのつい最近の昔。
第158代 鳳凰家当主 鳳凰煉喜
第158代 朱雀家当主 朱雀桐明
白虎家・158期壱ノ番 白虎切言

と、世界を変えられるだけの地位と才能と、心を併せ持つ、
幸いな力を携えた三人がいました。
幸いなことに三人は魔道校へと通い、生徒会長として出逢いました。
三人は約束をしました。現代へと続く、幸いな約束を。

三人が三人とも、誰も束縛しないことを。
誰かが危機にあるその時は、世界など放り出して救うことを。
笑って皆が暮らせる世を作ることを。

三人は改編魔術を作りました。
鳳凰が《制裁》を 朱雀が《鉄鎚》を 白虎が《断罪》を
それぞれがそれぞれのためになるように
友の力になるために。
天よりの視線であるそれの名をつけました。
ゆえに三人は《三天道士》と呼ばれました。


"面食らうような"と白虎が称したその出逢いは・・・・・
そう確かに運命とでもいうべきものでした。
そして今、その朱雀は、死にかけています。
今、約束は果たされるべき時を迎えました。


43 :小豆 :2008/03/05(水) 20:58:56 ID:ncPiWHtG

生徒会長=死神

 私立琉球女子高等学校。名門中の名門であり、金持ちのお嬢様たちが通うその女子校に、不審者が侵入したのは、今から数十年前のことだった。
 犯人は単独だったのだが、何せ非力なお嬢様ばかりの高校である。あっさりと生徒たちは人質にされ、犯人は教室に立てこもった。犯人が拳銃を所持していたのもあって、警察はなかなか動けず、長期戦になるだろうと思われ始めたその時、事件は急展開をみせた。



 だだっ広い部屋の中。絨毯が敷かれた床の上にあるのは、高級なデスクとイス。そこに座るのは、ひとりの女子生徒だった。彼女は長くて綺麗な黄色の髪と、髪と同じ色の大きな瞳をもっていた。肌は透き通るように白く、まるで陶磁器のようだ。
 彼女は高く澄んだ綺麗な声で、ぽつりと呟く。
「……警察には、任せておけないようですわね」
 彼女はイスから立ち上がると、傍らに置いてあった細長い布の包みを手に取った。それは彼女の身長よりも長く、見た目お嬢様の彼女には動かせそうに無い代物だった。しかし彼女は、それを両手で引き寄せると、軽々と持ち上げた。包みの中で、カシャン……と、何か硬質な物同士が触れ合う音がする。
 そして彼女は、部屋からゆっくりと出て行った。



 一方、犯人の立てこもる1年D組の教室では……。
「お前ら、騒ぐんじゃねぇぞ! 少しでも変なことしやがったら、端から殺してやるからな!」
 犯人はわめき散らしながら、近くの机を蹴り飛ばした。どうやら、かなり混乱しているようだ。生徒たちは恐怖のあまり、端の方に固まって縮こまっている。
 だが、その中のひとり、背が低くて細身の生徒が、震えながら立ち上がった。
「あ、あなたは、何が目的なんですか……? こんなことをして、ただでは済まされませんよ?」
「ああ!? お前、死にてぇのか!」
「きゃああ!」
 犯人はいきなりその生徒の髪を乱暴につかむと、銃口を後頭部に突きつけた。教室中を、恐怖が埋め尽くす。銃の冷たい感触を背後に感じながら、女子生徒は恐ろしさのあまり顔が蒼白になった。その時。
 ━━━━コンコン。
 教室の扉が、ノックされた。人質の生徒たちも、犯人も、みんなが扉に視線を向ける。ガラガラ……と、引き戸が引かれ、先ほどの黄色い髪の生徒が入ってきた。
「……お邪魔しますわ」
 にこりと微笑む彼女。その美しさに、誰もが見とれる。と、犯人は我を取り戻し、彼女に向けて叫んだ。
「な、なんだお前は!」
 それに対し彼女は、物腰穏やかに、笑顔で応えた。
「わたくしはこの琉球女子高等学校の生徒会長、光月菖蒲ですわ。……あなたを、止めに来ましたの」
 ガシャンッ!
 折りたたまれていた刃が、その姿を表す。布が取り払われたそれは、漆黒に輝く大鎌だった。
「なっ!」
 犯人は驚きの声を漏らす。その一瞬の隙に、菖蒲は大鎌を携え、犯人との間合いを一気に詰めた。
そして、その大きな鎌を振りかぶる。
 ヒュッ!
 空気を斬り裂く音が、響いた。菖蒲が狙いを定めたのは、拳銃を持つ犯人の右腕。犯人は間一髪の所で腕を引き、それを避けたのだが、そのために銃を突きつけていた生徒には逃げられてしまう。
 そしてその、一瞬あと。
「……ッ!」
 犯人は恐怖に顔をひきつらせ、静止していた。その喉元には、背後からのびる大鎌の刃が。
「……わたくしの大切な生徒たちに危害を加えるなど……わたくしにとっては、許し難いことですの

 背後から聞こえてきたのは、もちろん菖蒲の声だった。
「はっ……。何が“大切な生徒”だ。キレイゴトなんて……ッ!」
 言いかけで犯人は口ごもる。漆黒の刃が、犯人の喉に触れたのだ。菖蒲は静かに、落ち着き払った声音で言う。
「これ以上、戯言を仰るようでしたら……」
 にこり、と、彼女は麗しい微笑を浮かべて。
「……首、落としますわよ?」
 ぞっとするほどの低い声で、言い放ったのだった。
「ひっ!」
 犯人は力が抜け、そのまま床にへたり込んでしまう。菖蒲は犯人が取り落とした拳銃を、犯人の手が届かない位置まで蹴り飛ばしてから、生徒たちに温かい笑顔を向けた。
「……皆様、怪我はございませんこと?」



 そして事件は、解決した。
 後の光月一族族長、光月菖蒲の手によって。


44 :シルヴァイン? :2008/03/12(水) 12:52:47 ID:ocsFWAVk

それはすべて昔の話で

「昔、俺達の世界には皇帝がいたんだ」
真紅が語るのは、もう昔の話。
「氷の魔術を使う、皇帝だった」

「皇帝はグラルデーンの校長で、とても素晴らしい魔道士だったが……
世界中の人間が認める一番の功績がある。
それが、今この世界で活躍する多くの魔道士を育て上げたことだよ」


「名家の当主職に就いた《三天道士》鳳凰煉喜、朱雀桐明、白虎切言、
グラルデーン現校長、波結初樹、現魔道警察警視総監、一世聖、
現魔道警察西国支部長、鬼島浬…その他大勢、それに俺と」

「皇帝は人材を育てることに長けていた。
誰よりも長く生きることを望まれていたが…
60年を生き切ることなく、身を切るような寒い日に逝った」

「皇帝は早くに逝くことがわかっていたのかもしれないな。
最も寵愛したかつての生徒で、そのころ刑事となっていた、
鬼島浬に自分が持っているすべて、遺産も研究論文も何もかもすべてをやって、逝った」

「素晴らしい魔道士だったよ。本当に。
正義の好きな人だった。自分の愛した正義を貫いた。

あの人を知っている今の魔道士はみんな………
誰ひとりの例外もなく、正義を貫こうとしているのさ」


45 :小豆 :2008/04/04(金) 00:26:38 ID:ncPiWHtG

愛に溺れる

 真っ暗な部屋の中でひとり。布団にくるまって、静かな寝息をたてる者がいた。彼は最初、穏やかな眠りに就いていたが、不意に感じたどす黒い殺気に、慌てて目を覚ます。瞬時に、いつも隠し持っているナイフを取り出すと、殺気を感じる方へと、刃を向けた。
 刹那。両者の動きが、止まった。相手の握るナイフは彼の喉元に、彼のナイフは相手の喉元につきつけられる。どちらともが微動だにできない、張り詰めた緊張感が広がった。
「……こんな夜中に、いきなり何や?」
 彼は、相手を睨みつけたまま、静かな、落ち着き払った声音で聞く。しかし相手は、言葉を返そうとしない。それにわずか、彼は苛立ちを覚えた。
「何とか言うたらどうや? ……なぁ、詩」
 名前を呼ばれ、彼にナイフを向ける相手……詩は、何の感情も浮かばない、まるでガラス玉のような目で、彼を見つめた。そして、ゆっくりと口を開く。
「……2択だ、颯夏。お前がそのナイフをおろした瞬間、俺はお前を斬り殺す。もし、それが嫌なら、お前が俺を斬り殺せ。お前が死ぬか、俺が死ぬか……分かりやすくて、簡単だろ?」
 言いながら詩は、おぞましい微笑を浮かべた。その目はやはり、笑ってなどいなかったけれど。
「相変わらず唐突やなぁ。……せやったら」
 颯夏は、詩に負けないくらい、凍りつくような笑顔をつくり。
「……俺は3択目を、作ってみよか?」
 彼はあろうことか、自分のナイフを自分の首筋へとあてた。
「な……っ!」
 これには流石に、詩も動揺を隠せない。その隙を、颯夏は待っていた。
 ナイフを握り締める詩の手を、下から蹴り上げる。詩のナイフは宙を舞い、綺麗に颯夏の手中に収まった。そして彼はナイフを2本とも、2人には手の届かない位置まで放り投げてから、改めて詩の眼を見据える。
「ほな、聞かせてもらおか。……何で、こないなことしたん?」
 ビクッと、まるで親に叱られる子供のように、詩は身を震わせた。颯夏の鋭い視線から逃げるように、彼は目を伏せる。
「……苦しいんだ。お前と、いると。離れたいのに、離れられない。……だから、どっちかが死ねば、楽になれると思った」
 詩の言葉に、颯夏は盛大なため息をついた。そして。
「ド阿呆。言うとることと感情が、ちぐはぐやないか。……そんなに泣くんやったら、最初からすな、この阿呆が」
 ぽた……ぽた……と、詩の足元には次々と水滴がこぼれ落ちる。そして彼は、崩れ落ちた。そんな詩を、颯夏は抱きしめてやる。
「……お前が苦しいんは、俺もよう知っとるわ。ほんでも、お前は俺がおらな、生きていかれへんのやろ? せやったら、多少の苦しみは我慢せぇ。苦しんで、苦しんで、苦しみ抜きぃ。俺はお前が楽んなるの、許さへんからな」
 すると詩は、涙をこぼしながらも、無理に笑って。
「……ははっ。酷いな、颯夏。……それでも俺は、お前を愛している。少なくとも、心が狂って、死んでしまいそうなくらいにはな」
「わぁっとる。……俺も、そうやしな」



 それなら2人で。
 死ぬまでその愛に、溺れてみようか。


46 :シルヴァイン的な何か :2008/04/10(木) 15:02:14 ID:WmknrckH

ぼくの せかい


桐生慧介は唸っていた。
なぜなら頭がぼんやりと熱いからだ。
それだけではない。
全身の間接が全て痛むのだ。

「うううう…」
いい加減あきらめて病院いってくださいよーと
弟子の僧達が言うのが聞こえるが、彼からすればとんでもない!事。
「た、たかだか風邪で病院なんか行けるかアホ…!!」
桐生慧介、ただいまインフルエンザ中である。



「馬鹿ですか。馬鹿なんでしょう。
注射痛いから嫌ってどんな言い訳ですかそれ?」
はーぁ、と盛大なため息と拳骨一発。
それが最愛の弟子から慧介が貰ったものだった。
「今季流行ってるインフルエンザは大人が罹ると酷いって
先生がちゃんと言ってた筈ですよ」
無論俺は接種してます、と優は言う。
「だって針って想像しただけで痛いんやもんー!
同じ理由で歯医者にも行けません!!」
「アホか貴様!!」
その返答には、優だけでなく多くの人間の言葉が重なった。
40度近い熱がある癖に、嫌に元気な男である。


続く?


47 :小豆 :2008/04/26(土) 20:00:56 ID:ncPiWHtG

あなたの望むままに

 ────え……で……。
 誰かが、大きな声で叫ぶのが聞こえる。もう、痛みは感じなくなっていたけれど、体がとてもだるい。このまま、闇に身を委ねてしまいたいくらいに……。
 ────楓!
 ああ、わたしの名を呼ぶ、この声は……。大好きな、だいすきな、あの人のものだ。



 血まみれの彼女は、ゆっくりと重たい瞼を押し上げる。最初に目に飛び込んで来たのは、自分程では無いが、それでも傷だらけの大好きな人だった。
「楓! 私が分かるか!?」
「…………ひ……らぎ、ね……さま?」
 息も絶え絶えに、楓は苦しそうに呟く。その様子に、柊はよりいっそう顔を蒼白にした。
「もうすぐ医者が来る。目をしっかり開けていろ」
 柊はそう言ったが、楓は今にも事切れてしまいそうで、いつまで保つか分からない状態だった。そんな中、息をするのも辛いはずなのに、楓はゆっくりと口を動かし、言葉を紡ぐ。
「……柊姉様。もう、痛みを感じません。どうか、このままゆかせてください。あの時あなたに拾われていなければ、間違いなく散っていたこの命です。今更、惜しむことなどありません……」
 彼女の台詞に、柊は怒鳴り声を返す。
「馬鹿なことを言うな! お前はこんなところで死んでいい人間か!?」
 しかし楓は、苦しそうに咳き込んで血を吐いた後に、ついに目を閉じてしまった。
「……楓は、柊姉様の為に死ねるなら、何も後悔しません。むしろ、本望です。あなたの為に生き、あなたの為に戦い、あなたの為に死ぬ。それが、一ノ葉楓という人間の、存在意義ですから……」
 彼女の必死な言葉にも、柊は強い語調を崩さない。
「目を開けろ、楓! お前の世界の中心が私だと言うのなら、今ここで死ぬことを私は許さん!!」
 すると楓は、もう一度目を開けた。焦点の合わない視線をしばらくさまよわせたかと思うと、柊のもとでその視点が定まる。
「……柊姉様は、どうしてわたしを生かそうとするのですか? わたしには、あなたに執着してもらえる程の価値はありません……」
「私にはお前が必要だ。死なれては困る」
 即答した柊に、楓は返す言葉が無かった。鮮血よりも赤いその瞳から、涙がこぼれ落ちる。
「柊姉様……。楓は、嵐よりも激しく、海よりも深く、あなたを愛しています。あなたに必要とされるなら、例え手足がもがれようとも、わたしは生き延びるでしょう」
「それでいい。お前が死ぬ時は、私が死ぬ時だ」
「はい……」
 そして楓は嗚咽混じりにも、力強く頷いたのだった。


48 :小豆 :2009/01/31(土) 22:57:18 ID:ncPiWAVi

数年後の君


「……どけ。邪魔や」
 鋭く睨みを利かせた俺に対し、彼は極上の笑みを浮かべて。
「断る」
 あっさりとそう言った。

 目が覚めたら、すぐ目の前に彼の顔があった。丁度押し倒されたような恰好である。何かしてくるわけではなく、ただ、俺をからかうのが目的だということは百も承知。何年も一緒にいれば、これくらいのことでは動揺しなくなってくる。数年前なら、相当焦っていただろうけど。
 平静でいられる分、彼の思う壺にはならずに済むのだが、このままでは起きれない。はっきり言って邪魔だ。
「……ええ加減にせんと殴るで」
 眉間の皺を更に濃くする。すると、彼は楽しそうに笑って。
「クイズに答えれたら、どいてやるよ」
 仕方なく、視線だけで先を促す。彼はいたずらっ子のような笑みで。
「それでは問題です。……今日は、何の日でしょう?」
 ……なるほど。目的はこれか。
 唐突に理解した。だが、問いの正解を素直に答えてやるほど、俺はお人好しでもない。
 さて、どう応えようか。
「……何だ、わからないのか?」
 無言で考え込んでいた俺に、彼はごり押しでそう言った。向けられるのは、俺を試すかのような目。この状況をこの上なく楽しんでいるその目に、俺はついに切れた。
 ドカッ。
「いッ!」
 膝で思い切り蹴り上げる。彼は苦痛に顔を歪め、腹を押さえて横に転がった。その隙に、俺はさっと起き上がる。床に転がる彼に視線を落とし、冷たく言ってやった。
「調子に乗るからそうなるんや。ど阿呆が」
 自由の身になった俺は、さっさと扉まで歩いていく。ドアノブに手をかけ、少し考え事をした後、未だに転がったままの彼を振り向いた。


 腹の激痛に耐えながら視線を動かすと、片手をドアノブにかけたまま、こちらを振り返る彼の姿が見えた。いつの間にやら、彼の背丈はだいぶ俺に近づいてきている。それでもまだ、頭ひとつ分ほどは俺の方が高いのだけれど。
 彼は俺を一瞥し、扉に向き直る。小さな溜め息がひとつ、聞こえた。そして。
「……せっかくの結婚記念日やのに、いつまで寝とるつもりや? お前も早ぅ起きてこい」
 俺に背中を向けたまま、それだけを言って部屋から出て行ってしまった。俺は腹の痛みも忘れ、しばらくぽかんとする。次第に何を言われたのか理解し、そして。
「……何だよ。覚えてたのか」
 どうしようもなく、嬉しくなった。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.