あれ


1 :関内流 :2006/10/08(日) 01:33:13 ID:uHoJnLWF

『あれ』を巡る争いは、とどまることを知らない。
しかし、決して表舞台に出ることはない。
なぜなら、『あれ』は隠された存在だからだ。いや、隠さなければいけない存在なのだ。
『あれ』を知ることは、もう普通の生活を送れない、ということなのだから。
求める先に何があるのか。それを知ることができるのは、一体どれほどいるのだろうか。

その少年は、ただ巻き込まれただけの、その少年は、それを知ることができるのだろうか。


2 :関内流 :2006/10/08(日) 13:10:48 ID:uHoJnLWF

運命は右に曲がる

裏道を通ろう。
何となくそう思って、僕は右に曲がった。
右に曲がる理由は特にない。
気分なんてのはいつも気まぐれだ。
そこに法則を見いだそいなんてのは、心理学者や哲学者の仕事だ。
でも、それが僕の運命を変えることになるなんて、この時は考えもしなかった。
だってそうだろう?
右に曲がったその先で、エセ錬成術士と到達者が、人外の戦いをしてるなんて、考え付くわけがないんだ。


3 :関内流 :2006/10/08(日) 13:50:25 ID:uHoJnLWF

第1話:耳を塞ぎたくなる光景

ここの裏道を通る人は滅多にいない。
五年ぐらい前ならば、この道は商店街が並び活気があった。
けど、中心にそびえていた巨大なビルが潰れてから、そこの商店街は経営に行き詰まるようになり、後を追うように潰れていき、今では全ての店にシャッターが降りている。
たぶん、時代の流れというやつなのだろう。
それ以来、ここに人が来ることはなくなった。
不良がたむろしても不思議じゃないのだけど、何故かそういう人種も寄り付かない。
理由はわからないが人が来ない。
ここは、そういう道になっていた。


4 :関内流 :2006/10/08(日) 14:07:09 ID:uHoJnLWF

そういう道を僕は歩いている。
帰宅部の身分なので、未練たらしく残らずにさっさと帰る。居残りで勉強をするほどのガリ勉でもないし。
いつもなら一緒に帰る幼馴染みも、日替わりの当直とやらで残って仕事をしている。
たまについてくる馴れ馴れしい親友もいない。
だから、今日は珍しく一人だ。
一人だからこそ、この道を通れるんだけど。
だらだらと歩いていると、先の方から話し声が聞こえてきた。
この道はゴーストロードとして有名で、通るのは奇人変人と相場が決まっている。
声は、ビルが潰れた後のどでかい空き地から聞こえてくる。


5 :関内流 :2006/10/08(日) 14:17:56 ID:uHoJnLWF

一体どんな変人だろう、と自然に興味がわいてくる。
どうせ空き地は通り道だし、横目でちらっと見てやろう。
声はどんどん近くなり、何を話しているのかもわかるようになってきた。
「…を…るんだ…」
「…な…だろうな…」
「…ぼけるな!貴様…」
…言い争ってるのか?
それなら、余計なトラブルはごめんだ。早足で通りすぎよう。
空き地がどんどん近づいてくる。そして、声も大きくなっていき、はっきりと聞こえるようになった。
「私はここまで来たのだ!こんな所で引きさがれん!」
「止めておけ。お前の手にはあまるものだ」


6 :関内流 :2006/10/08(日) 14:57:09 ID:uHoJnLWF

「うるさい!さあ、早く見せてみろ、『あれ』を!」
…あれ?
「無理だ。お前に『あれ』は教えられない」
…随分抽象的だな。
あれってのは、何かの代名詞なのだろうか。
興味をそそられ、空き地を通り過ぎずに立ち止まり、角から覗き込む。
空き地には三人居た。
一人は割腹のいい社長のようなおじさん。
一人は銀色の髪をした気だるそうな青年。
言い争っているのはこの二人だろう。
そしてもう一人、言い争いには加わっていない、髪の長い綺麗な女の人がいる。
一体、どういう関係なのか、全く想像できない…。


7 :関内流 :2006/10/11(水) 01:14:01 ID:uHoJnLWF

「…そうか。ならば、力づくで聞くとしよう」
社長さんがいかにもな悪役のセリフを吐く。
しかし、体格から考えても二十代と殴り合いはできないだろう。
まさか拳銃とかを持ち出すんじゃないだろうな…。あるいは黒服集団か?
すると、社長は懐に手を入れた。
もしかするともしかするのか…!?
しかし、期待…じゃなく予想に反し、取り出したのはジッポライターだった。
社長さんはカチッと蓋を開け、シュボッと火を付けた。
だが、煙草や葉巻きのたぐいは持っていない。
すると、社長さんはその火の付いたジッポを唐突に投げた。


8 :関内流 :2006/10/12(木) 21:28:32 ID:uHoJnLWF

辺りは剥き出しの地面であり、草一本生えていない。
燃え移るようなものはないはずだった。
だが―
(広がっていく…?)
地面に落ちたジッポの火は消えず、円上に燃え広がっていく。さらに、火は円の中を巡り、記号のようなものを表した。
手品…を披露するような雰囲気じゃないな。あれは一体…。
「アウル、ソルギアン」
社長の声に反応するように、火の付いた地面が周りの地面を巻き込みながら盛り上がっていく。
盛り上がった地面から腕が、頭が、足が生えてくる。そして、巨大で―ゆうに五メートルはあるだろう―いびつな人が形作られた。


9 :関内流 :2006/10/15(日) 01:16:13 ID:uHoJnLWF

「なっ…」
思わず声に出してしまった。いや、この光景を冷静に見れる奴なんてそうはいないはず。だから、僕の反応はごく自然なものだ…と思う。
銀髪、社長、女の人が同時にこっちを見る。
「何で、ここに…」
「ふん。一般人か」
「あ…」
と、各人違った反応を見せる。
だけど、どうやら僕の出現は社長にとってはどうでもいい存在らしく、すぐに標的を戻す。つまり、銀髪の青年へと。
「イエル!」
土の巨人が銀髪へと向かう。
巨人が鈍重に拳を振り下ろす。
銀髪の人はまだ僕を見続けていて、全く見ていない。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.