憂鬱という名の檻


1 : :2006/11/19(日) 17:02:29 ID:nmz3oetJ

                            第一章 進上晴輝の憂鬱

 俺、進上晴輝は憂鬱だ。その理由は日常の退屈に飽き飽きしてるからだ。
海山高校に通ってる俺は毎日のように同じ道を歩き、毎日のように平凡に授業を受け、そして毎日のように友達と一緒に帰る……まあ普通の高校生なわけだが俺自身、そのなんともいえない日常が憂鬱となってしまい正直参ってしまう。

ほんと俺の日常というのはごく決まっているものである。
朝七時に起床し、洗面所で眠気がかった顔に冷水を浴びる。
朝食は日によってパンやご飯を食べその後のブラックコーヒーはかかせない。
皺だらけの学校指定の制服を着用し、歯磨きは口から泡が吹き出るまで磨き続ける。
それでも眠気がまだ覚めないので目薬を一滴ずつ左右にたらし、外へと出る。

朝の外は極めて寒い。もう十一月だ。気温は四度がもう当たり前である。
所々風も吹きだし、木々の木の葉も風には逆らえず下へと虚しく落ちてしまう。
俺も登校時は一人なのだがこれもまた凄くさみしい。

そんなさみしさを抱くのもつかの間、学校に着くと教室には思わずため息がついてしまうクラスメートがいる。
堂々と大音量でやる五人のゲーム軍団、机に吸い付いてるようにして離れない読者、ただ単にバカ騒ぎしてる人、普通に友達とワイワイ話してる人……まあ当然のこと俺もその枠に入るのだがどこかつまらない。
退屈だ。
いつも同じ繰り返し、たまには何か事件らしいことが起きてくれればいい。近くで火事があったりとか強盗にあったりとか誰かが殺されたとか上空から得体の知れない何かが降ってきてくれないかとか……もちろん世の中そんなに人の願望のままに現実になってしまうことなんてまずありえない。しかし俺としてはとりあえずこの憂鬱から解放できるきっかけが欲しいのだ。

 俺は小学校から人を観察したり好奇心のままに物事を分析、推理することが大好きだった。
家では推理物、ドラマ、ゲームは毎日の楽しみの一つだった。
そのなか推理物を読むとき俺は探偵という存在があまり好きではなかった。
むしろ気に入らなかった。
探偵なんて所詮作者の手の平に位置する存在であり、ましてや人のアラをこそこそ探りいれるなんてまるで芸がなってない。
まだ、芸として誉めるなら怪盗が一番適してると俺は思う。宝という獲物を遠くから狙い定め、計画的に仕留める……犯罪という面では許し難いことだが別の意味ではかっこいい存在だと俺は思う。
とまあそんなくだらないことをいつまでも思ってる俺である。

 十一月十八日、俺はまたその平凡な日常に向かっている。
今日こそ何か起きてくれないか、いつものように半分期待を胸に背負い込んだ。学校に着くといつもの光景が目に映る。
「よう!今日も元気―?」俺の横の席、幼馴染みでもある栖村健治が俺の肩をポンと叩き相変わらずのひょうきんな顔を見せてきた。身長は俺よりちょっと高めの一七五センチ、短髪で体系も普通で、スポーツ万能な突進タイプな人間だ。要するにあたって砕けろみたいな性格である。
どっちにしてもクラスの中の男子では彼が一番まともなほうだ。

「まあ、元気だよ。一応……」俺はあくびをしながら言った。

「お前はいつもつまんなそうだなぁ。俺なんかもういろいろ忙しくって大変なんだぜ」健治は微笑しその発言は俺にとって自慢に聞こえた。
その一つは恋人である。健治は三日に一回は自分の彼女について話題を持ち込む俺からすれば自慢ヤローというわけだ。おまけに部活も頑張っており家では家事の手伝いもしてるというなんとも尊敬しやすい幼馴染みだ。
俺はどっちかっていうと健治と対照的である。彼女なんて別につくりたいとは思わず、家事や部活なんてめんどくさいからやらない。まあだからこそ退屈なんだが俺の望む解放はいつもの日常とかけ離れてる出来事なのでそこらへんは別に興味はないのである。

「ミステリーな出来事起きないかなぁ」俺がそう言った途端健治はなにやら考え出した。

「じゃあ暇つぶしに俺が問題だしてやるよ」健治が言った。

「ん?ああいいよ。そうしてくれ。俺にとっての一秒一秒は長いからそうしてくれたほうが心底嬉しいよ。それでどんな問題?」俺は少し上機嫌になり健治の言葉に耳を傾けた。

「ある山の中、秀吉という二十代の男が瀕死状態になりながら歩いていました。もう少しで山から出られると思った矢先、一匹の虎が秀吉の前へと現れました。秀吉は走る力も残されてなく虎から逃れる手段はありません。秀吉は震えながら虎と睨みあってました。とそのとき、虎がなんとしゃべりだした。虎は今俺が考えてることを当てたらこの場を見逃してやろうと言いました。秀吉はその答えを汗だくになりながら言うと虎はその場から立ち去り、秀吉は山からでることができました。……さて、秀吉はなんと言ったのでしょう?」健治はにやにやしながら問題を言った。俺は少し考えたがこの答えは単純だということに気付いた。

「わかったよ。答えは……」俺が答えを言おうとしたその時、もう一人の幼馴染みの二ノ宮加那が教室に入ってきた。

「ヤッホー!」朝っぱらから出るその声は教室中に響き渡った。どちらかというと身長は少し低く大体一六〇センチくらいだろう。
髪は肩のところぐらいまであり綺麗な瞳をしている。
性格はさっきの発言から異常な元気さを持っており、マイペースで気が強い。
クラスの男子からは結構評判でよく告られるらしい。
時々は幼馴染みの俺や健治に加奈についての事を聞かされるが俺と健治二人ともどもその質問は無視している。
加奈には別に彼氏はいない。
実際幼馴染みの俺や健治でも加奈の七〇パーセントの秘密は知らないのだ。何を考えてるのか分からないとでもいうべきか……

「何してるの?」加奈は笑顔を俺たちに見せながら問いかけた。

「問題だしてもらって今その答えを述べようとしてるところ」

「じゃあ晴輝の答えを聞こうか!」健治は腕を組み傲慢な態度をとった。

「ふっ……単純な問題だったよ。答えは秀吉を襲うと思っているだ」俺は自信満々に人差し指を上にあげて言った。

「おおー大正解!よくわかったな」健治は半分わざとらしく大げさに俺を誉めた。なんか自分という存在が段々可愛そうになっていく気がする。

「だから単純だから答えられただけさ。そもそも虎の目的がわかってればいいんだからね。虎の目的は瀕死状態の秀吉を襲うこと……そう虎に言えば虎の考えてることは当ってることになり、また違ったとしてもそれは違うことに変わりはないんだからどっちにしたって秀吉は虎から逃れることができるってわけさ。なんかこの問題……ネットやテレビ番組で載ってそうな問題っぽいねぇ」俺がそういうと健治は少しおどおどしはじめ、そんな健治の姿を見た俺はその通りだと確信を抱いた。俺が一笑していると健治は慌てて返してきた。

「そ、そんなわけないじゃねぇか。これは俺が考えた問題だ。ははっまったく晴輝は……」もうこの反応で嘘だということがすぐわかる。健治のいいところは嘘が言えないことだ。まあ場によっては悪いところにもはいるんだが……

「あっそれ知ってる!この前やった番組でやってたやつでしょ?」突然加奈が口をあけた。途端に健治は硬直した。

「やっぱりなぁ」俺はため息と一緒に微笑した。証人とはこのことであるということがいかに大事なことか……健治を硬直するほどの効果を持ち、事件をやらかした犯人にとっては致命傷と一緒だということが初めてわかったような気がする。そのため俺の中では笑いがこみ上げてくる。

「加奈・・・・・・お前がそんなこと言うから結局ばれちまったじゃねぇか!」健治は半泣きし、机に寝伏せた。俺と加奈は笑い、そんな昔から変わらない健治の性格を今、思い出したような気がする。
                          第二章に続く……


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