ホワイトマシュマロシュガーティー


1 :たま :2006/11/20(月) 22:19:53 ID:PmQHzHkm





神様なんていないとおしえてくれたのは君。


2 :たま :2006/11/20(月) 22:22:13 ID:PmQHzHkm

一つめ    モノクロ





彼女と別れた。呆気ないものだった。
自分が「別れたい」と言えば彼女は「わかった」と言って俺の前を去った。
特に感慨深いものもなく、そこで二人を繋ぐ「恋人」という関係性はなくなり俺と彼女は赤の他人となった。
俺は人間になんの希望も期待も抱いていないが、こうもまであっさりと別れというものが出現し消滅すると些か拍子抜けするのを否めない。


だけど人間ってそんなものだ。


壁を走れないのも空を飛べないのも戦争がいつまでも終わらないのもすべて人間の思い込みのせいだと俺は思う。


出会いも別れもまた然り。


きっと、もともとそんなものどこにも無かったのだ。


+++++


ひどく寂れた遊園地。

俺が最初に抱いた感想は実に簡潔で、全体の雰囲気を表していた。…言いすぎな気もしなくはない。
それも、五年も前の話だ。

俺がこの町に来たのは五年前。当時高校生で、住んでいるところは都会といえば否定はしないが決して渋谷や池袋、新宿などのいわゆる都心、という所には属しも掠りもしない場所。
言ってしまえば都会の田舎。すごく中途半端だ。
そしてそこで産まれてそこでそこで育った俺の性格も、優柔不断で中途半端だった。これが土地柄というやつだろうか。もしかしたら土地なんて関係ないかもしれない。
そんな風にごく平均的な成績で無事義務教育を終え、高校に進学した。
そして入学式も過ぎ学校に慣れ始めたころ、親が事故に遭い二人とも亡くなった。
確かに最初は信じられなかったが特に悲しんだり後を追ったりしようという感情は一切生まれず、比較的近かった母の実家に引き取られることとなり、それなりに温厚だった祖母と祖父に高校を卒業するまで面倒を見てもらい、大学は半分自腹、半分は親の遺産で行くことになった。進学するとともに一人暮らしを始めた。

そして更に三年。今に至る。

今住んでいるのは、祖父たちのいる町から少し離れた街で、距離は電車二つ分くらい。
実際初めてここに来たのは高二の夏。友達と遊びに行き解散した後、ぶらぶら歩いていたら見つけたのがあまりにも場違いな遊園地。

最初に抱いた感想。ひどく寂れた遊園地。
つまりは、そういうことで。


+++++


「っつーか」
なにしてるんだ、俺。
とりあえず家帰って飯つくんねーと、見たいテレビに間に合わない。
まあ、別にそこまで見たいわけでもないし飯なんか食わなくてもいいのだが。
少なくともこんな場違いなところで突っ立ってるよりかは、全然有意義だと思う。
それに、ここ、目に見えてかろうじて稼動しているのは観覧車ぐらいしか見えない。
「あーもー」
髪をかき回し、地面を蹴った。
結果砂埃が舞ってひどく咳き込む。なんともかっこ悪い。
…っつーか、なんで今時コンクリートじゃねえんだよ…
地面を睨む。が、空しくなってすぐにやめる。
「……」
どうかしているのだろうか。
どうかしているのだろうか、今日の自分は。
そこそこうまくいってた彼女に別れを告げ、なぜかこんな辺鄙なところに来て、意味無く回想をして、独り言をつぶやいては奇行に走る。ほとほと虚しい。
「…」
なんとなく、虚しいついでに、遊園地に入ってみようかと足を進める。
大丈夫、金なら、ある。
変な確認をしながら、受付に向かった。


+++++


いつか、見たような、

綺麗で。大きい、

蒼い空。

…子供のころは。

何故だか―よく、夢に見たっけな。

上を向いて、そんなことを思いながら、受付に着く。
だけれど人影は見受けられず。すこし待っていたが、やがて従業員すらいないのかもしれないという結論に行き渡り、…嘆息。
…ほんと、なにやってんだろーな。
そして、帰ろうとしたとき。

「…お客様かな?」

遊園地を経営するには少し老けている、その声がして、思わず振り返る。
「あ…」
そこには、一人の老人。
と、
…鳥?
こげ茶色のした、ちっちゃい、やつ。
文長鳥ではないと思う。
その小鳥は、老人の肩にのっていた。
迷って答えられない俺を追及するでもなく、彼は笑っている。
なんとなく気まずくなって、改めて周りを見渡してみると、この遊園地はさほど大きくもなく、小さな移動遊園地くらいだった。ゲートというよりかは受付といった方がしっくりくるそれには、不釣り合いに大きく丸い文字で『ようこそ』と四文字だけがかいてある。
さらにチケット売場が見当たらない。入場無料なのだろうか。
なんとなく、おもちゃのような感じがするのを否めない。

「どうかしましたか?」
老人が、ふいに言葉を掛けてきた。
「あっ……いや…別に、なんでもない……です」
大して深くもない考え事をしていた俺は、少し焦る。
そうですか、と小さく呟いて、しかし老人は何をしているのかなどともなにも聞かずに、ただそこに立っていた。
にこやかなその顔は胡散臭いともとれるが、この人の場合は寧ろ生来のものであるような自然な笑みだ。
それは、この時代に生きている人間にとっては少なからず珍しいものだとは思う。
彼女も、そうだった。
数時間前の話の時も表情は何一つ変えず。
そのまま、別れて。
もうちょっと、手間どうかとは思ったんだけどな。……それも失礼な話か。
「…てッ」
考えていると、いきなり、老人の肩にのっていたはずの小鳥が俺の頭を小突いてきた。意外に痛い。
「こら」
少し諫めるような口調で老人は言う。
小鳥はなにもなかったかのように平然と彼の肩に戻っていった。
…ちょっとむかつくなあ。
「すいません、うちのが…。大丈夫ですか?」
「あ、ハイ」
小突かれた額はまだ少しじんじんと痛んでいたが、叫んで転がりまわるほどまでではない。というかそんなことしていたらただの笑いものだ。


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