題名の通り純愛系アンソロジーです。
恋をテーマにした作品を考えています。
初恋、すれ違い、誰かに捧げる一途な想い・・
あなたの"純愛"を、作品化してみませんか。
僕には好きな人がいる。
その子は毎日が楽しくて楽しくて仕方がないようにしあわせに笑っていて、
それから、僕の周りにはいない、たくさんの友達に囲まれている。
その子の隣にはいつもでしゃばっている女子がいる。
控えめで自己主張が苦手なその子を利用するようにして、
でしゃばりの女はいつもその子を連れて歩く。
小柄でおとなしい風貌のその子が隣にいるから、その女の派手さがよけいに強調される。
背は低いけどスタイルは豊満で、認めるのはすごく癪だけどそいつは美人だ。
隣に立って比べられさえしなければ、その子だって充分にかわいい容姿をしてるのに…
「親友だから一緒にいるんだよ」ってその子は言うけれど。
僕にはどうしても、本当に好きでずっと一緒にいるなんて思えない。
だってその女と一緒にいるときのその子の笑顔は、ちっともしあわせそうじゃないから。
自分を引き立たせるためにそばに置かれているのに。
自分の影みたいに利用されてるのに。
そんなこと、きみだってもう気付いてるんだろ?
でもその子は強いから何も言わない。
裏切られるのが怖くて、利用されるのが怖くて、それで友達を作れない僕なんかよりも、
もっとずっと強いから、ぜったいに何も言わない。
だから僕は今日もその子の笑顔を眺める。
一瞬でも視線が合えば、その子は僕にわからないくらいほんの少し、笑ってくれる。
無理して作ったんじゃない、本物の笑顔で。
その子が、泣きながら教室から出ていった。
必死で声を抑えて、落ちる涙を拭って、
下を向きながら、誰にもばれないように泣いていたその子は教室の扉を静かに閉めた。
慰めてあげたい。励ましてあげたい。
泣いてるきみなんて見たくない。
でも、そうやって辛いものから逃げるばかりのこんな僕は、きみに声を掛けてもいい資格なんてない。
その子が泣いているのに気付いていたのは、多分、僕だけ。
誰かがその子といつも一緒にいる女の悪口を正面切って言ったことが原因らしい。
しばらく教室内の会話に耳を傾けていると、教室いっぱいに浮かんでいた悪意が少し見えた気がした。
他人との関わり合いを避けている僕は気付かなかったけれど、
その子はクラス内の大きなグループに嫌われていた。
理由はただひとつ。あの女と一緒にいるから。
僕の中で何かが爆発した。
他人の悪口を言う奴らへの道徳心なんかじゃない。あの女を庇うつもりもない。
僕の初めて抱いたそれは、その子を悲しませる奴らへの「怒り」だった。
他人のために激しい感情を抱いたことなんてなかった。
他人のために人前で涙を流したことなんてなかった。
ましてや、この僕が他人のために人を殴る日が来るなんて思ってもみなかった。
その子は、今は使われていない倉庫の中でひとり泣いていた。
中学校に入学したときからずっと、ここはその子のお気に入りの場所。
きっとそれを知っているのも、僕だけ…。