Good bye my ...


1 :黒木 妃加 :2012/01/09(月) 11:37:28 ID:LDteQFz7


ツキシロ イオリ

ミナヅキ ココロ

ソラモト ミカド

イサツネ セナ


2 :黒木 妃加 :2012/01/09(月) 12:09:09 ID:LDteQFz7Y7



私は昔から人と関わるということが酷く苦手な性分であった。
人見知りとはまた違うもので、自分以外の人間との関わりが酷く苦痛だったのだ。
それは親も同じことで育てられている、生かされているという自覚はあったが必要以上の接触を極力しなかった。今思えばなんとも可愛いげのないクソガキである。
私が小学4年のとき、父親は外に女を作りさっさと蒸発した。母親には内緒で毎年バースデーカードや進級おめでとうとかいう文面が届いたがどうでもよかったので近所の公園で破いて捨てた。生活費も毎月50万とか100万とかでたらめな額が振り込まれた。欲しいものもないので別の口座に移して貯めた。空になったらまた何十万と振り込まれていた。
母親は父親が蒸発した五年後に事故で死んだ。轢き逃げで即死だった。四年たった今も犯人は見つからないが私には関係のないことだった。
葬式では親族や友人が私を泣きながら抱きしめた。辛いでしょう大変でしょう、うちに来ていいのよ、私を頼ってくれていいからね。全部に大丈夫だと言った。親族は期待が外れたような顔をした。結局は私の貯金が目当てだと分かると人間として酷く醜いなと思った。
母親が死んだのをテレビか何かで見たのか、父親から連絡があった。一緒に暮らさないかと。向こうは新しい家庭が出来ていた。私は丁重にお断りし高校生になるまで児童施設で暮らしていた。それでも父親からの仕送りは止まらなかった。持て余す金額は二年で五千万を越えた。後々知ったが父親は再婚後立ち上げた製菓会社が成功したのだそうだ。国民的なメーカーに成長したその会社はテレビでも取り上げられ作り笑いをする父親を私はたびたび目にした。
その父親を見る私の目は酷く侮蔑的だったことだろう。社長一家として映る二人の少年に哀れみすら感じた。私と同じ血が流れている腹違いの兄弟。驚くことに兄である少年は私の二つ年上だった。結局母親よりそちらが先だったのだ、この男は。父親が私と母親を一度捨てたと知ったら彼らはどう思うだろう。そう考えて、やめた。私と彼らは一生関わることない他人なのだと思った。私が普通に生きていけば何も困らないのだと思った。名前を聞かれた際に兄である彼はミナヅキ ココロと言った。
取り留めもないただ一個人の名前で、父親は今ミナヅキというのかとその時初めて私は知った。どうでもいいと思いテレビを消して自室の机に向かった。学力推薦で私立高校の入学が決まったのは翌日だった。


3 :黒木妃加 :2012/01/29(日) 10:39:02 ID:LDteQFz7u7

 自動施設から二駅ほど離れた場所にワンルームのアパートを借りて私は暮らし始めた。入学から二ヶ月たったけれど、施設長(タシロさんという)や施設のチビたちはちょくちょく遊びに来たりする。部屋はとても狭くなるけれどなんだか賑やかで私はそれが心地好いと思った。
 相変わらず人は嫌いだ。
 でも施設の人は好きだった。育てられてるとか思わなくていいから好きだ。友達で家族で兄弟で、他人ではあるけど距離がないのが酷く嬉しかったのだ。
里子として引き取られる子もいたけど、よく親御さんと施設を訪れていて私に会えたときなんかはみんな飛びついてくるのだ。そんな日々が続いた。

 一人暮らしに慣れ、テストも終わり、結果は当然のように上から10番以内、つまり一桁だった。奨学金制度のおかげで私は学費がかからないし天涯孤独というので返済義務がない。毎日人を観察してはバイトに明け暮れた。そんなある日のことだった。

「俺と付き合ってくれないか」

 ミナヅキ ココロが同じ学校に居るのは知っていた。入学式の時だってミナヅキ製菓の息子が三年に居るんだってと女の子達がよく騒いでいたし、なにより彼は生徒会本部役員、その上強豪だというこの学校の空手部の主将まで勤めていたのだ。社長の息子と言うだけでここまで完璧になれるのかと思った。空手部とは言うものの背は高く線の細い…端的に言えば華奢だが顔も髪も立ち居振る舞いも綺麗な青年だった。逆に言えば印象などそれだけだった。

「その、ツキシロさんは…」

 ツキシロ。ミナヅキ。
 姓は違えど彼は私にとって事実上の兄である。唇と目が父親によく似ている気がした。この柔らかな雰囲気は母親に似たのだろうか。

「ごめんなさい。私あなたに興味ないの」

 我ながら良く言ったと思った。ドラマみたいな冷徹なセリフを吐けばミナヅキは小娘にフラれたと私に関わらなくなるだろう。それに腹違いの妹であると知られるのは面倒な気がしたのだ、私は。彼は私にとって有益になりえない。ただそれだけだった。

「じゃあ、卒業まで」
「は?」
「卒業までは、好きでいさせてほしい。
諦めたくない。君が好きなんだ。」

 純粋な目。私とは違う目。眩しかったし痛かったしなにより比べられたような気すらした。彼は私とは違うのだと実感した。それに、これから毎日、彼は私に会いに来るのだろうと私はそのとき確信してしまったのだ。
 私の兄は、私を好きだと言う。


4 :黒木妃加 :2012/01/29(日) 14:15:33 ID:LDteQFz7u7

「ツキシロは居るか」

あれから毎日毎日、ミナヅキココロは飽きることなく私の元に通い詰めてくる。正直うっとい。そして果てしなく面倒である。イサツネセナという級友が居るのだが彼女は恋愛とかいう類の話が好きな部類の人間なのでニヤニヤしては私の背中を押すのだ。(言っておくが私だって社会的に必要な対人関係くらいはなんとかなる。)

「なんですか、ミナヅキさん」

一応、立場というか、彼はいわゆる先輩という生き物だから敬語くらいは使ったりもする。

「いや、その、用はないけど…」
「帰れ」
「あっ、うそ!ある、あるから!」

酷く慌てたミナヅキはとても子供っぽく見える。役員で部長のときの凛々しさは感じられないがそれも含め、ミナヅキココロという個人なのだと思った。

「今日、よかったらうちに来てくれないか
その…君とゆっくり話してみたくて」

私がバイトがないのを彼は知っているのだ。この学校は大学まで一貫性で彼は進学の心配がなく部活も引退しているため、私のバイト先の喫茶店へ足を運ぶうえ、そのルックスで店長がすっかり気に入るわ私の彼氏と勘違いするわで私のシフトをばらしたのである。

「だめ?」
「はぁ…まあ暇だしいいですよ」

今日行かなかったらまた毎日毎日、今日は今日はと煩くなるのが目に見えている。波風が立たないうちに妥協するのが正解だろう。

「放課後、迎えにくるから」

にっこりと笑うと、廊下に居た友人(ソラモトミカドさんとかいう名前だ)と連れだって教室へ戻っていった。
正直、なぜ彼があんなに固執するか私にはよくわからない。

「ふふ、またデートか」
「またってなんだ。人聞きの悪い」
「ミナヅキ先輩一途よね」

さっさと飽きれば良いと思ったのはセナには黙っておくことにした。

「報告してね、ミナヅキ製菓のお家」
「私にそんな義理はない」
「人情ってやつよ。気になるもの」
「なんのメリットが私にあるんだ」

社長という職業なら、父親に会うこともないんじゃないかと思う。ミナヅキの母親は私を知っているけど今の妻がミナヅキの母親なら私を脅威に思ったりはしないだろう。もっとも、扱いが良いかは別として。

ミナヅキには弟が居たはずだ。名前は忘れてしまったが弟はミナヅキの母親に良く似ていた。私の母親もミナヅキの母親もよく似た雰囲気でふわふわしたというか尽くす人のタイプなのだがそんな風だ。
違ったのは不倫したかしないか位で。


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