はじめまして、片岡 充です。
1回投稿したんですけど、こちらの不手際で、もう1度書き直すことにしました。
また、よろしくお願いします。
そこには研究所があった。
今まで関係者以外は入ったことがないといわれている研究所が。
ここは、ある中学校の一室。
担任のもたらした一言がきっかけで教室は驚愕の色につつまれていた。
その一言とは・・・「今からこのクラスだけ、授業がなくなり、社会見学に行きます。」だ。
本当は喜ぶべきことなのかもしれない。しかし、このクラスだけということがどうにも不自然だ。普通なら、学年で行動するはずなのに、他のクラスは普通に授業を行って、自分たちだけが社会見学なんて。
すると前の方の席のやつが沈黙を破って、声をあげた。
「なんで俺らのクラスだけ社会見学をするんですか?」
「それはね・・。」担任は不気味な笑い声をあげながら説明しだした。
「それは、先生が券を当てたからですよ。」
生徒たちにはさっぱり、わからない。しかし、担任は止まることなく話し続けた。
「1か月前に先生はお気に入りの雑誌で面白い応募を発見したんですよ。それは、皆さんを
そう言った後、先生は教室から出て行った。
残された生徒は自分の荷物の整理をして次々に部屋を出て行った。
そして、最後に僕も部屋を出た。
「みなさん、押さずに早く席につきなさい。席順はてきとうでかまいませんから。」
担任はバスの中で大声を張り上げている。
バスの中はというと担任が急かしたせいでみんなが慌ててバスに乗り、ほとんどの人が座れずに、うろちょろとしている状態だった。
しびれを切らした学級委員長も叫びだした。
「こらぁ、早く座りなさい。通路はせまいんだから、そんなうろちょろせずに空いてる席に早く座って。」
こうして数分後に生徒は全員席につけた。
「じゃあ、運転手さん、よろしくお願いします。」
担任がそう言うと、運転手は担任に向かって軽く頭を下げてからバスを発車させた。
こうして僕らは、研究所へと出発した。
バスに乗って、30分くらいが経過した。
担任が大声をあげた。
「みなさん、窓の外を見てください。あの大きい建物が、今日の目的の場所です。」
生徒たちは窓の外を見た。僕も窓の外へ目を向けた。
僕は驚いた。
その建物は、自分の想像よりかはるかに大きかった。色は薄い青がメインに使われていて、全体的にクールな印象があった。窓枠の部分には濃い青が使われていて、いかにも何かを研究しています、といった感じがあらわれていた。しかし、なんだか嫌な感じがする。あの建物にはなんだか近寄ってはいけない感じがする・・・。
結局、みんなに連れられて研究所の前まできてしまった。
あれだけ、来るまでは嫌だったけど今はそうでもない。
一体この建物はなんなんだ?
担任が研究所の中へと続く扉をあけた。いや、あける前に扉が開いた。
「お待ちしておりました。○○様ですね?どうぞ、中へお入りください。」
そこには、身だしなみを整えた50歳くらいの男の人がいた。その人は担任の名前を確認したかと思うと、さっさと中へはいって行ってしまった。担任や生徒は戸惑いながらもそれについて行く。
「さあ、みなさまこちらにお座りください。」
案内された場所は、きれいな部屋だった。天井からはシャンデリアがつるされていて豪華だった。そこには40人分の席が準備されており、あの男の人の指示でどんどんと生徒が座っていった。
「これで、みなさまお座りになれましたね。では、はじめに自己紹介をさせていただきます。私の名前は藤谷と申します。この建物の管理を行っています。
それでは、早速この研究所を見学する上での、注意事項の確認をさせていただきます。」
藤谷さんは、そう言ってから部屋の奥へと消えていった。
数分後。藤谷さんは大きい箱を台車に乗せて運んできた。
「それでは、今からお配りするものを身につけてください。」
藤谷さんは、箱の中から、メガネとデジタル腕時計のようなものを取り出した。そして、それを次々に生徒にまわしていった。そして、みんなが身に付けた事を確認してから、話し出した。
「もう、そちらの先生からみなさまには説明があったとおもいますが、改めて言いますと、この研究所は仮想の世界を体験するというところです。そして、その世界をよりよく実感してもらうために開発されたのが、そのメガネ型3Dレンズです。通称、G3と呼ばれています。そのレンズを通すことによって、仮想の世界を3Dで体験することが可能となります。あと、元々メガネをつけている方もそれははずしてG3に変えてください。それは、個人によって視力を補うことなど可能ですから。
次にデジタル腕時計ですが、それはそのままのものです。普通の時計です。ただ、その時計以外の時間の表示される物の持ち込みは禁止とさせていただきます。
それでは次に、G3の蝶番、折れる部分のところを触ってみてください。」
言われたとおりにそこを触ってみると目の前にいきなり大きな地図があらわれた。
「それは、この建物内を正確にあらわした地図です。赤く光っている丸の部分がみなさまの現在いる場所です。それを使いながら、この建物のもう1つの出口へと向かってください。
あっ、まだこのゲームの説明をしていませんでしたね。これは失礼しました。みなさまに今からして頂くのは、この建物すべてを使った迷路です。ここをスタート地点とし、もう1つの出口をゴール地点とします。制限時間は5時間で、それまでにゴールへたどりつけなかったら私が迎えにいくので心配しないでください。
もう説明も聞きあきたでしょうから、早速はじまりとしましょうか。
むこうがわにある扉から、進んでいくことが可能ですので、どうぞお楽しみください。」
藤谷さんは扉の方を指さしておじぎをしてから箱を持って、どこかへと立ち去っていった。
そして、僕らも担任を中心に扉の方へと向かった。
扉をあけてみると、果てしなく黒い空間が広がっていた。
そして、そこに足を1歩踏み入れただけでその黒い空間へと引きずり込まれてしまった。
目を開けると周りには誰もいなかった。みんな同じ扉を通ってきたはずなのに・・・。
「おーい!!」
呼んでみたが悲しいだけだった。木霊が返ってくるだけで何の役にも立たない。
まず、僕は時計を確認してみた。4:45という表示がでていた。多分、残り時間のことなんだろうと思う。次に地図を開けてみた。すると、僕がいたのはスタート地点から遠く離れた廊下だった。なんでこんな遠くにいるんだ?
そんな疑問を抱えつつも、ゴールを目指して1人で歩き出した。廊下は薄暗かったが見えないということではなかった。しかし、明かりなどがなければこけそうなのでなるべく欲しい。
何十メートルか進んだところに廊下の十字路があった。その真ん中の部分に懐中電灯が落ちている。ラッキーと思ってそれを拾おうとしたら、いきなり肩を叩かれた。
「わぁぁぁぁ。」
いきなりだったので、みっともない声がでてしまった。
「そんなにおどろかなくてもいいじゃんか。せっかく、会えたのにさぁ。」
そいつの顔を見ると、健だった。
「健だったのか。おどかすなよ。」
「ごめんごめん。そんなおどろかれると思ってなかったから。」
「なんで、こんなとこにいるんだ?」
「いやぁ、たまたま歩いてきたらお前と出会えたんだよ。本当に俺は幸運だと思う。」
「ははははは。そうかもしれねえな。」
「そこの2人、俺を置いて話をすすめるなぁ!!!」
そういって、健の後方から現れたのは(航:ワタル)だった。
「なんだよ、おまえがはなさなかっただけだろ?」
健がすかさず突っ込む。
「うっ、そ、それはそうだけど。」
「ほら、否定できない。」
「うるさい、馬鹿。」
そういう、低レベルないい争いが続いた。
「そこのお2人さん。漫才はそろそろ中止していただけないでしょうか?」
頃合いを見計らって、声をかけた。
「お前はどっちがダメだとおもう?」
いきなり、2人同時に僕に質問を投げかけた。僕は話の内容なんか全然聞いてなかったし、1番はじめの話からどんどん脱線してたからよくはわからなかった。だからテキトウに、「お前ら、2人ともが悪いんじゃねぇの?」といった。
そういった瞬間にこちらもとばっちりを受けるはめになった。
「おまえ、どっちの味方なんだよ。」
「おまえはいつもそうだ。テキトウに話をはぐらかして、きっちりと結論をだせぇ。」
こういうときだけ2人は意気投合するから大変だ。
「すいませんでした。はっきり言って、お前らの低レベルないい争いの内容は聞いていませんでした。」
そう言ってから、しまったとおもった。この2人に‘低レベル’は禁句だった。
2人はこちらに怒りの目をむけてから、2人で一緒に道を進んでいった。
僕はそれに溜息をついてから、2人の後をついていった。
「ちょ・・ちょ、健が・・・健が・・・・・。」
今まで僕を無視して先に進んでいた航が僕の方へもどってきた。
「えっ、なんて言った?聞こえない。」
「健が!!消えた!目の前で・・・。」
「はぁ?からかってんのか?」
「違う!!ホントに消えた。」
「からかってるんだな。おーい、健でてこいよ。おまえらがグルのことはもうお見通しだぞ。」
僕は前に向かって叫んだ。
「・・・。」
廊下からは一つの物音でさえ帰ってこない。
また、こいつらは、あほなことをしやがって。
「ほら、行くぞ、航。健は隠れているんだろ?」
「ち・・・ちがう。ホントに消えたんだ・・・。」
「もう、嘘はいいから。」
僕は航を引きずっていく形であるきだした。
数メートル進んだところで航が叫んだ。
「ここだ。ここで健が消えた!!」
「じゃあ、探すぜ。」
なにせ、ここは薄暗いから何も見えない。探すのにも一苦労だ。
「おい、健、早く出て来いよ・・・。」
「あぁぁぁ!!!」
「どうした?航。何かあったのか?」
「こ・・・これ。これを見てくれ。」
航の方に行くと、航は何かをさしていた。その方向のさきにあったのは、・・健の服だった。
服を隠してまで、隠れるか、普通?もしかして、航の言ってたこともホントだったりして。
そう考えたときに、背筋に悪寒が走った。それと、同時に航がまた叫びだした。
「た・・・助けて!!は、はやく!」
えっ。
そう思って後ろを振り向いたときには遅かった。航の姿はどこにもない・・・。
「なんでだ。」
そして、航の代わりにそこには幼い少女がいた。
髪が長く、腰ほどまである。黄色のワンピースを着ている5歳くらいの女の子である。
「お、おまえは誰だ?航をどうした?」
少女は返事の代わりにあるものを突き出した。航の服だ。僕は急いで、少女の元に駆け寄り、その服を受け取った。
「わたる・・・。」
少女は僕の手首をつかんできた。その幼い姿から想像のできないような力で。
「は、はなせ。」
僕がそう言うと、少女はもっと強くつかんでこちらを笑ってみてきた。
「一緒にあそぼ、お兄ちゃん。」
初めて少女が口を開いた。しかし、その声はどことなく憎悪に満ち溢れている。
「は、はなしてくれないかな?お兄ちゃんは急いでるんだよ。」
できるだけ、笑顔で語りかけてみる。
「やだ。はなしたら、お兄ちゃん逃げるもん。さっきのお兄ちゃんだってそうだったもん。」
航のことだ。航はこの少女に消されたんだ。そして健も・・・。この少女は危険すぎる。
「じゃあ、お兄ちゃんと鬼ごっこをしよう。まずは君が鬼ね。20秒数えてから追いかけてきてね。」
「うん。」少女は満面の笑みで、手をはなしてから、数えだした。
「いーち、にー・・・」
僕は走り出した。1番近くにある扉へむかって。しかし、まだつかない。
そうして、やっと扉が見えだした頃に、少女がきた。すごいスピードで。
「お兄ちゃん、まって。ずっとあそぼー。」
そんなの、ごめんだ。ぼくはスピードをあげて扉へいそいだ。
しかし少女が追い付いてくる。
そして扉に手がかかった瞬間、急いであけて、内側から鍵をしめた。
た、助かった。
扉はガチャガチャと言っている。しかし、鍵をしめたので少女は入ってこれない。
「お兄ちゃん、あけてよ。お兄ちゃん。」
僕は返事をせずに、ずっとその状況にたえた。荒れた息を押し殺して。
そして、扉の音はなくなった。少女もどこかへと行ってくれたのだろう。しかしいちいち確認する気にもなれない。扉の外にもし少女がいたら、僕もきっと航の二の舞になるから・・・。
僕は息がととのってから立ち上がった。次の場所へ行くために。早くゴールをするために。そして、健と航の無事を祈って。
ここはどこなのだろうか?
そう考えてから地図を開く。さっきまでの道からさほどはずれてはいなかったけどゴールよりかは少し遠くなっていた。
不幸中のさいわいだったことはあの道に戻らずとも次の道が続いていたことだった。
でも、ここは何なんだ?
この建物を見た時の嫌な感じは正解だった。何かが違う、何かがおかしい。どこか変だ。でも、何かがわからない。
ここは仮想の世界。嘘がホントで、ホントが嘘。現実がつくりもので、つくりものが現実になる。何がホントで、何が嘘か判断がつかない。
じゃあ、健と航は?どうやって、少女に消された?今はどこにいる?死んだのか?でもほんとにあれは健や航の服だったか?まず、少女はどこからでてきた?
わからない。何もかも答えがない。何なんだ、ここは・・・。
そして結局は、一刻も早くゴールをするしかない、ということだった。答えがわからないなら、早くこの建物から抜け出すことが先決だろう。藤谷さんに聞くのが一番手っとりばやいがどこにいるかわからない。
よし、ぐだぐだ考えるよりも行動に移すか!!
もう何を考えてもわからなかったので、次の扉、いつのまにか目の前にまできていた扉のノブに手をかけて、ノブを思い切りまわした。
この部屋は奥に長い。地図によれば反対側にも扉があるはずなのだが、それは遠すぎて見えない。
薄暗いからというのも一理あるのだろう。
「きゃああああああ!!!」
部屋に入ってから何秒かした時に女の子の叫び声が部屋の奥から聞こえた。
そして、それに続く「ドンッ。」という何か重いものをおとしたような音。
なにが起きているんだ?
もう少し進んでいくと、その声の正体がわかった。
何メートルか先に息絶えた女の子がころがっている。自らの頭から流れた大量の血の湖の中で。そして横に大きなコンクリートの塊。そのコンクリートにも女の子のものであろう血が付着している。
あの声は女の子が頭を殴られたときに発した叫びだったのだ。それか殴られる前に味わった恐怖をあらわしたものか。まあ、多分この女の子の声で間違いはないと思う。そして、ここには女の子を殺したやつもいるはずだ。女の子の殴られている部分は後頭部。自分で殴ることは難しいだろう。あと、この距離になってやっと目の届くところに扉が見えてきたのだが、その扉が動いた気配もない。だから、犯人はこの部屋のどこかに息をひそめているに違いない。
そのほかに気づいたことといえばこの部屋に入った時から変な音がすることだった。「がしゃん、がしゃん」という金属が地面に落ちるような音だ。それが1度だけでなく、何度も何度も聞こえる。
次に気づいたことといえば、床に寝ているのはあの女の子だけではないということだった。たくさんの人が床に倒れている。
ある者は、下半身と上半身が離れた状態で血の海にいながら。
また、ある者は首の部分に10本の指の跡を残し、口からは泡をふきながら。
他にも、首を切断されていたり、頭が真っ二つに割れているものなどたくさんいた。
僕は自分に少し驚いた。なぜ、こんなにも目の前に殺された者たちがいるというのに、冷静に判断をしていられるのか?健と航が消えたときはあんなにパニックに陥っていたのに。ここが仮想空間だということをわかっているからか?でも
そのとき、僕は心臓が飛びあがるくらいびっくりした。もう10人目ぐらいに殺されていた人の顔に見覚えがあったからだ。これをきっかけに僕は殺されている者の顔を一人一人確認していった。
そして、でた答え。
殺されているひとたちは全員、自分と同じクラスの人たちだということ。
ということは殺されている人数は15人だったから、半分くらいの者が殺されたということになる。
「よけろ!」
そういわれて、僕の体は右に大きくとんだ。誰かがおしてきたみたいだ。
そして、僕の元いたところには深々と斧が突きささっていた。
「間一髪だったな。」
声がしたほうを向くと、そこには筋肉質の男が立っていた。
誰だったっけな、こいつ・・・。
「おいおい、忘れたのか?同じクラスメートなのに。残念だ・・・とこうしちゃおられない。たてるか?」
そう言って、手を差し伸べてきた。
「ああ、立てる。」
その手をつかんだ。それと同時に体が引っ張られる。
「いいか、よく聞け。ここから早く逃げるんだ。ここにはあれがいるからな。」
指をさした方向には斧を取ろうと懸命に頑張っている、貴族の家に置いていそうな暗闇の中でも銀色に光る鎧の姿があった。
「あれは、ここにいる何人もの命を奪った悪魔だ。中には誰も入ってない。あれが勝手に動いている。だから、どんな攻撃を仕掛けても死ぬ事はない。おまえも犠牲になりたくないのならここから立ち去れ。」
強い口調でそう言われた。
僕は思いついた言葉を口にする。
「おまえはどうするんだ?」
さっきの言い方だと俺だけに逃げろといっているような感じだった。
「ああ、俺はまだここにいるよ。ここは近道だから使うやつも多いしな。」
そういって、鎧のほうに目を向けた。
「そんなのどうでもいいじゃないか。一緒に逃げるぞ。」
「よくないんだな、それが。殺されたやつらにも申し訳ないし。これから死人を見るのも嫌だし。たとえここが仮想空間であったとしてもだ。だから俺はここにいる。」
僕にはこんなことは考えられない。ここが仮想だとわかっていても逃げだしたい。目の前にはこんな恐ろしいものがいるのに。
こいつはすごい。自分とは全然格が違う。
「だから、おまえはさっさと行け!早くしないと次の一撃が来るぞ。あの扉から逃げられるから、早く行くんだ!!」
「嫌だね。ここでいるよ。」
「!?早く行けっていってるだろう。」
「行かない。」
こんな、正義にみちあふれた人を誰がほっといていけるものか!!
「でもおまえがいると、邪魔だ。きっとすぐにやられる。」
「少しくらいなら役に立つこともできるだ・・!?」
いきなり背中を押された。
「いてて。言ったそばからそれかよ。もうどこかへ行け。」
またもや、そこには斧があった。そして、男の足からは血が一筋流れている。どうやら、僕をかばったときにできたみたいだ。
「すまん。でも行かない。」
「もうどこかへ行け!!」
僕のほうをむいて、そういった。
それが命取りになった。
「あ、あぶない!!
もう遅かった。鎧は男、いや東の首をしっかりとつかんでいた。
「かはっ!!」
東が息をはいた。鎧はそのまま
「お、まえ、名前、よ、く、思い、だせ、たな。あ、とはも、う、いい、から、早、あそこへ、いけ!!」
そういって、力なく扉を指さした。
最後まで他人を考えてくれるやつを、死においやったのはまさしく自分だ。
この罪はどんなにおもいことだろうか。
茫然として、東をみていた。何をすることもできずに・・・。
東は息絶えた。手がぐったりと垂れさがる。
鎧はそんな東は放り投げてこちらにむかってきた。
やっぱり無理だ!!ここにいる事なんて無理だ。
僕は扉めがけて走っていった。
ノブに手がかかる。急いだ。1秒が命取りになる。
やっと、扉は開いた。僕は急いで中に入る。そして鍵をしめた。
あとから、ノブをまわす音が聞こえた。でも開かない。
僕は歩きだした。ゴールへむかって。
後ろから「がん、がん」という音が聞こえた。多分鎧が斧を振り回しているのだろう。しかし、扉は鉄かなんかでできているからそんなことをしても無駄だ。
僕は、安堵した。それと同時に失望した。そして、責任感が押し寄せてきた。
自分の罪
それはとても重い。
僕はあの忌々しい部屋に向かって黙祷をささげた。
ここはどこだ?
あそこの部屋を抜けた後にたどりついた場所。
扉を開くとそこはまさに・・・
目の前に広は花畑。赤、青、黄など様々な色の花たち。その間をかけめぐる蝶。
そこからはいい香りがしてくる。
今までの部屋と比べものにならないほど明るい。
生気に満ち溢れている。
僕は知らぬ間に足を部屋にいれていた。どんどん部屋を進んでいった。
そして、立ち止まる。
目の前には、大きくそびえたつ白い時計塔。僕の目はその文字盤に釘付けになった。
普通の時計とはすこし違う文字盤。
数字が5しか描かれていない。本当は12まであるはずだ。これは・・・?
「ええ、聞こえるでしょうか?」
いきなりどこからか声が聞こえた。
「聞こえるのであれば、大きな声で返事をください。」
「あ、はいっ!」
「聞こえますね、お返事ありがとうございます。こちらは藤谷です。××様、時計の確認は今までしましたか?」
どこからかわからないけれど藤谷さんは僕の名前を読み上げいきなり質問をしてきた。
そういえば、僕は時計の確認を1度もしていなかった。
「いいえ、してませんでした。」
「やはり、そうでしたか。では、目の前の時計をご覧ください。今、その時計が指している時刻がこのゲームの残り時間となっております。それを参考にお進みください。」
時計の時刻は3:00。ということは残り3時間となったわけだ。
僕はここではじめて自分のつけていた時計を見た。同じ時刻を指している。
「ありがとうございます、藤谷さん。このゲームに夢中で気づいていませんでした。」
「それはよかったです。こんなことをした甲斐がありましたね。これからもゴールを目指して頑張ってください。しかし、ここはいい場所すぎましたね、あなたの考えにそぐわない。少し改良をほどこしておくことにしましょう。では。」
それからは何も聞こえないようになった。いくら呼んでも返事がかえってこない。
目の前の時計塔もいつのまにか消えていた。まあ、
僕はもう1度地図を広げた。この部屋をまっすぐにいけば次の部屋への扉があるらしい。
よかった、ここは何もない部屋で。あんなにおそろしくなくて。
僕は目を閉じて、今までにあったことをすこし考え直してみた。最初の健と航、あの少女、東、鎧、出来事としては少ないが、時間があれほど経過したのにも納得がいく。
!?
なんだ?
目を開いたら、あの楽園が嘘のようなことになっていた。花という花は枯れて、ひらひらと優雅にとんでいた蝶は地面に落ちている。そしてそのかわりに、毒気をおびたような色の蛇がよくうごいていた。1匹だけではない、何匹もだ。その蛇がどんどんこちらへとむかってくる。
気持ちが悪い。それは見ているだけで吐き気のする光景だった。
僕は走り出した。あの蛇にかまれると死ぬ気がしたからだ。
しかし、蛇も負けやしない。巧みな動きで、体をくねらせ、すごいスピードで追いかけてくる。
なんで、あの楽園がこんなことに!
今日、走るのは何回目だ!!
もうスタミナが切れてきた。今までにも何度も走ったから。しかし、蛇のスピードはかわらない。
もう扉は見えているのに!あれだけ苦労して逃げてきたのに、ここでおわるなんて嫌だ!!
もうすこしだ、もうすこし。扉まであともうちょっと・・・。
思いっきり目を瞑った。
バタン
後ろの方で扉の閉まる音がした。最後の方はどうしたのかよく覚えていない。でも逃げ切れたことに間違いはないらしい。
「はぁ、はぁ。」
呼吸が荒い。
本当に今日は何度も走ったので疲れた・・・。
その後、僕は壁にもたれて体力が回復するのをまった。
あの子は一体次はどんな動きを見せてくれるのだろうか?
楽しみだ。
この世界は本当にいい。
何でも実現させることが可能なのだから。
G3に仕込んでおいた、あれが役に立った。
あとは、実現させるだけ。
そして、どんどん落としていくだけ・・・。
さぁ、見せておくれ。
君の落ちぶれようを。
秀才といわれる君の・・・。
ああ、僕の頭はおかしくなりそうだ・・・。
なぜ、僕の前ばっかりであんな不思議なことが起こる?
他の人たちはどこにいったんだ?
ここは、いったい何なんだ?
一体・・いったい・・・。
次は何の部屋だ?
目の前の扉をあけてみると、なんのへんてつもない空間だった。
ただ違うとすれば階段があるだけ・・・。
それ以外は何にも置かれていなかった。
そして、もうほかに扉もなかったので、残された道は階段を上るしかなさそうだった。
僕は幾分か心配をした。
今までもまんまと騙されて、ひどい目にあったからだ。
・・・。
階段の前まで歩いてみたが何にも起こらなかった。それこそ不思議なくらいに。
でも、それは幸運なことだろう。
僕は階段を上るスピードを知らず知らずのうちにあげていた。
・・・しかし、そんな思いが間違っていたことに気づくのはすぐ後のことだった。
「おーい!!誰かいないのか?」
耳をすましてはみるが、返事はかえってこない。
まさか他のやつらも殺されてしまったのだろうか?
東や健たちみたいに・・・。
というより、あと制限時間はどれくらい残っているんだろう
廊下を歩きながら、デジタル腕時計を確認してみた。
2:45。
あと2時間以上も残っている。
そうこうしているうちに、次の扉が見えてきた。
もしかしたら、あそこに誰かいるかもしれない。
そう期待してノブに手をかけた。