子犬と少女


1 :近藤 :2007/04/13(金) 22:00:18 ID:PmQHsJm3

皆さん初めまして。近藤というものです。
貴方がたの小説を読んでいて、すごいなと関心し、思い切って連載を始めることにしました。
家庭の都合上、更新が不規則ですので、気長にまってもらえると嬉しいです。

この物語は、人間から見放された子犬と、心に大きな傷を持った、とある少女の物語。


2 :近藤 :2007/04/13(金) 22:24:22 ID:PmQHsJm3

〜1

あの時、僕は、たしかおかあサンに見守られて、おへやを走りまわってた。
そこで、おねえチャンと、おにいチャンと沢山遊んで、一緒にご飯を食べて、楽しく過ごしていたんだ。
だけどね、気にかかることが一つあった。
それはね、日に日におねえチャンとおにいチャンが順番にいなくなることだった。
飼い主サンが言っていたところは、『動物愛護協会』だって。
処分してもらったって、言っていたけれど、何のことなのかな?

そして、とうとう僕とおかあサンだけになって、数日たったころ、夜中に突然



    暗い箱の中に閉じ込められたの。


3 :れむむ :2007/04/15(日) 14:01:26 ID:PmQHsJm3

〜2

私はつくづく捻くれた女だと思う。
だからきっと愛されないんだ。
癒璃(ユリ)って私の名前を読んでくれる人なんて学校にもほとんどいないし、家にいても、愛された事なんて一度もない。と言っても、得に生活に不自由はないし、成績も優秀だから、困る事はないのだけど。
でも、最近は自分のことを見失いそうでとても怖いときがある。
リリーが生きていたら・・・こんなことにならなかったのかもしれない・・・。
いまさら、か。リリーが死んでから何年だってるんだろう。

通学途中、私は道端にダンボール箱を見つけた。その日はあいにくの雪だった。道行く人々は、私とダンボール箱には目もくれず、さっさと歩いていく。そっと覗いてみると、目が開いたばかりの子犬がうずくまっていた。私に気付くと、尻尾をビンビン振って立ち上がった。
捨てられたの?と私が聞くと、首を傾げて、一生懸命ダンボール箱から出ようとする。キミは何にも分かってないんだね。可哀想に。
私は雪避けに差していた紺色の傘をダンボール箱に立てかけて、その場を後にした。


4 :近藤 :2007/04/15(日) 14:05:09 ID:PmQHsJm3

〜3

僕を見て、悲しそうな目をした女の子は、
僕に何か物をくれた。
寒さが薄らいだのは、変な物のおかげなのか、それとも、女の子の暖かさなのかな・・・。


5 :近藤 :2007/04/20(金) 18:12:54 ID:PmQHsJm3

〜4

学校について、授業を受ける。だが途中で飽きてしまい、ニ時間目が終ったときに保健室へとサボりに行った。
私を見て先生は嫌な顔をしたが、無視してベッドのカーテンをさっと引いた。
これもほとんど毎日の日常。
ベッドに仰向けにひっくり返ると、何か無いかとスカートのポケットをあさる。出てきたのは、犬が写った写真が一枚。
それをしばらく眺め、再びポケットに写真を突っ込む。
死んでしまったからと言って、今さら泣く事なんて無い。

・・・あの子犬・・・

私は雪がすっかり積もったアスファルトの道路を、早退を装って歩き出す。


6 :近藤 :2007/04/20(金) 18:26:02 ID:PmQHsJm3

〜5

・・・寒い。冷たい。
なんで僕こんなトコにいるの?どうして飼い主サンは迎えに来てくれないの?

ああ・・・そうか・・・自然に答えが出てきた。

 捨てられたんだね・・・。僕。


・・・お母サン・・・。


上から声がした。重たい瞼を開けると、女の子の顔がぼんやりと見て取れた。
「大丈夫?」
お母サンみたいだな・・・。優しい声。優しい顔。
安心したら、なんだか眠くなってきたよ・・・。


7 :近藤 :2007/04/28(土) 22:23:39 ID:PmQHsJm3

〜6

冷たい・・・。
子犬を抱きしめた時の一番最初にでてきた言葉がそれだった。
子犬は上手く体温調節ができないんだ・・・。
どうしよう・・・。
とにかく暖めなくちゃ・・・。


ああ・・・。
こんなに感情的になったのはいつ以来だろう・・・。
もう一生感情を表に出す事は無いと思っていたのに。


家に向っている最中にも子犬の体温は急激に下がっていく。早く・・・。早く・・・。
なんでこの子を助けたいのかは良く分からない・・・。
ただ、小さな命がここにあるってだけ思って・・・。


どうしてこんなに・・・。


8 :近藤 :2007/04/28(土) 22:37:15 ID:PmQHsJm3

〜7

・・・


あったかい・・・。




・・・あれ?
ここはどこなんだろう・・・。


この抱きかかえてる腕は誰の?
ご主人サマ?

違う・・・。誰?この子・・・。

「良かった・・・。目が覚めたのね・・・」

その少女は僕を抱きしめてくれた。そして・・・

頭に落ちてきたこの雫はなに?

これは・・・涙だ・・・。


なんで僕の事なんかで泣くのさ?
僕は・・・捨てられた‘‘ゴミ,,なんだよ?


でも・・・この抱きしめてくれた身体と涙はとってもあったかい・・・。
現実だと思っていいんだね・・・。
お母サンの愛と一緒に思っていいんだよね。

僕は、その暖かな涙を舐めてあげた。

ありがとうって。


9 :近藤 :2007/05/11(金) 22:34:56 ID:PmQHsJm3

〜8

喜ぶように尻尾を振っている、腕の中の頼りないほど小さな生命。

私は、堪らなく愛おしくなって、
もうその子犬を放せなくなってしまった。
深く深く抱きしめた。

この腕から放してしまったら、この世から居なくなってしまうしまう気がする―――

それはただの私の思い込みだと思うけれど、そう思ってしまうと、どうしても、どうしても、開放する事が出来ない。この痩せた腕を放す事は出来ない。

リリーが死んだ時に、全て捨てたはずの感情が、一気に心に押し寄せてくる。それはまるで感情の洪水だとも思った。

この子犬に足りないモノ。
私に足りないモノ。
二人なら、その部分を補う事ができる?

分からないけれど、この子を救えるのであれば・・・。
私が犠牲になるのは、もう慣れきってしまっているから・・・。

この子を助けよう。

そう決意した。


外はまだ雪が降っている。


10 :近藤 :2007/05/11(金) 22:54:08 ID:PmQHsJm3

〜9





・・・イタタ、苦しいってば・・・。強く抱きしめすぎ・・・。

・・・でも、ゴミの僕をこんなにも強く抱きしめてくれるんだね・・・キミは・・・。

伝わってくるのは、まぎれもなく僕への愛情。
心臓の音がトクントクンと聞こえてくる。

この女の子に深く愛されてんだね・・・。僕。

人間って、優しいんだね。こんなにちっちゃな僕を大事に思ってくれてる。

僕は、涙が出た。

女の子が、僕を覗きこんで言った。
「泣いてるの?」

女の子はそう言って僕の涙をぬぐった。
「もう、泣かなくていいんだよ・・・。これからは私がキミを守っていくからね・・・」

女の子の瞳も潤んでいた。

ああ、そうか―――

このこが僕の、新しい、飼い主サン。


11 :近藤 :2007/05/22(火) 23:08:05 ID:PmQHsJm3

〜10

「この子を飼いたいの」

私が両親にこう言ったら、二人とも驚いた表情をした挙句、母さんの方はその場でぶっ倒れ、父さんは凄い形相で怒鳴りつけてきた。

「なに馬鹿げたこと言ってんだ!!犬なんて前に飼ったので充分だろ!!それよりも勉強しろ!!」

なに言ってんのよ。命の方が勉強より大事じゃない。

「それにそんなキタナイ犬!!まるでゴミみたいじゃない!!前の犬がやっと死んで、飼育代がうかったと思っていたのに・・・。はやく捨ててきなさい!!」

子犬はゴミじゃない。命よりも、金の方が大事なのね。

でも、私だって引き下がる訳にはいかない。

「この子にも、生きる権利は有るでしょ。この子だけじゃなくて、母さんにも父さんにも。なんで、子犬だけ生きる権利をなくさなくちゃはいけないの?ねえ、答えてよ」

犬には、生命として生きる権利がある。それをどうして人間が妨げなくてはいけないのか。

「犬コロなんて、人間より格が下だ。格が上の人間が、下の奴を捨てて何が悪い?」
「誰がそんな事決めたのよ。そんなのまやかしよ。犬は、人間よりももっと強大で、とっても強くて、何よりも優しい生き物なの」
「知るか。ンなもん」

バッチーン。


「・・・な!?キサマ。父親に向って・・・」
「ゆ・・・癒梨!?」

父さんなら分かってくれると思って説得していたというのに・・・。

もう人間は信じられない。

「・・・私一人で、なんと言っても飼い続ける。私のような心にならないように」


12 :近藤 :2007/05/30(水) 22:28:55 ID:PmQHsJm3

〜11

女の子は、さっきからずっと膝を抱えて座っている。
何か僕にできることは無いのかな・・・。

この子は、いつも死んだような瞳をしているけれど、僕に話しかけるときは、すんごく優しい瞳をするんだ。目の奥に、小さな光が宿るの。

僕は、その優しい瞳が大好きなんだ。だからいつも優しく笑っていてほしい。

でも犬の僕に出来ることはそう多くない。

それでも―――僕は・・・

‘‘癒璃ちゃん’’を幸せにしたいんだよ。


13 :近藤 :2007/07/21(土) 23:24:50 ID:PmQHsJm3

〜12



本当にこの仔はリリーにそっくりだな、だと思った。

この邪気の無い瞳も、

私を真っ直ぐ見つめてくれるところも、

リリーの生まれ変わりのような気さえしてくる。


でもどこかリリーと違う。

私のことをじっと見つめているのを見て、

おもわず ふっと笑顔がこぼれた。
いったい何時以来なのだろう。



私と子犬が失ったものを取り戻すのは
まだちょっと



先の話。


14 :近藤 :2007/07/21(土) 23:37:44 ID:PmQHsJm3

*あとがき*

えっと、こんばんは。近藤です。
子犬と少女、第一部はこれで終了です。
何とか完結までこれたのは、読者の皆様のおかげ。
本っ当に有り難う御座いました!!
次の子犬と少女第二部も、どうか宜しくお願いします!!
ではまたいつか。


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