僕らは決して一人じゃない


1 : :2006/11/21(火) 20:15:00 ID:mmVcnHuH

僕らの星は弱かった。
あの、俗にたこのような見た目であらわされる火星人達に侵略されて、対抗するすべもなく軍は解体した。
権力の象徴だったモニュメントは跡形も無く、いまではそこに火星の領土であることを示す赤い布になにやら流星のような、流れ星のようなファンシーな模様がついたという感じの星旗がある。
彼らの操るロボット――――ネストのまえに地球連合軍はひれ伏す他なかった。
いまだに二足歩行型の戦闘ロボットどころか、高宇宙戦闘も出来ないような科学力である僕らに、勝利を勝ち取る力はありえなかった。
それから僕たち地球人は、彼ら火星人のもとで監視されながらの生活を送り始めた――――


2 : :2006/11/28(火) 20:04:56 ID:kmnktDoJ

ぼくは学校に通えている。
通学路を歩いていると聞こえてくる、生徒達の談笑。 小鳥のさえずり。 重く響く旧型のエンジンの駆動音。

「いやあ、晴れてよかったねえ。 おてんと様が僕たちを祝福してくれているかのようだよ。」

空に浮かぶまぶしい太陽。 昨日まで振りつづけた雨の名残である、水溜りに漂うアメンボ。

「昔と違って殺風景なところが多くなったって聞くけど、世代の違う僕たちには関係ないよねえ。」

すがすがしい、マイナスイオンに激しくかける空気を満喫しながら。

「君は相変わらずクールだなあ。 冷めたご飯はまずいのだ。 元気が出る薬いる?」

気分はとてもシュールで、朝っぱらから聞きたくない声ナンバー1をBGMに。

「まあ、もしかしたらうまくアップできなくてダウンするかもしれないかもだけどねえ。 いろいろあるよ? タブにグリンにセメタジス。 あ、おなじみのスピードやマッシュルームも……」
「……君はいつもいつもいつも、何がそんなに楽しいんだい?」

さっきから人の隣をノラリクラリと歩いている女の子、幼馴染である彼女のそのにっこり顔に問うてみよう。

「うふ? やっと反応してくれたね? いやあ、君に元気というものが大いにかけていたようだからねえ。」
「だからって人に脱法麻薬進めないで欲しい、てか元気の無い理由の大半はとある女子とのあたりまえのような正面衝突のときに生まれたと思うんだけど、どうよ?」
「ふふ。 あのパンをくわえたまま話すのが実に大変でねえ。 おかげで『いやーん、なによどこみて歩いてんの!』というお決まりの文句をかんでしまったよ。」
「そのままパンだけ奪って走り去ってもよかったんだけどな。」
「やさしい少年Aにはそれが出来ないのであった。 ねえねえ、そういえば舌足らずも萌えの一つだと思うのだが、そうすれば今朝のそれは成功と思える。 オタクである君に意見を求めたい。」
「……馬鹿なこと言ってないで、ほら、学校見えてきたぞ。」
「おや? ……という間はなんだね? もしかして悩んだ? うわ、変体さんだねえ。」

否定できない自分が悲しい。 このにこにこ悪魔め。 人をこの道に引きずり込んで置いてその言い草か。
それに僕は幼馴染と衝突するより、学校に行く直前、偶然にも今日同じクラスに入る予定の転入生との衝突のほうがゲフンゲフン。
まあ、とりあえず。

「急げ、遅れるぞ彼方(かなた)。」
「言われなくともだよ。 頂(いただき)。」


3 : :2006/11/30(木) 20:29:02 ID:kmnktDoJ

ぼくたちが通う学校。 それは普通の学校ではない。 とりあえず、普通の学校で授業中に死者が出るなんて事は無いだろうと思うし。
ここはいちおう、火星人が設立した軍事施設の一つである。 地球人を立派な軍人に育成して軍にいれる気らしい―――――戦う力をわざわざ与えているようにしか思えないけど。
そしてぼくと彼方が所属している学部(?)は比較的優秀であるとされる、ネストのパイロット、その他整備士などだ。



「お姉さん、きりたんぽ一つ。」
「……君はずいぶんとマイナーなものを食べるんだね……」

時刻は昼時。 場所は学食。 ぼくは彼方とともに食事に来ていた。

「今年から二期生で、いろんな制限が解除されるからねえ。 心が踊ってつい食べたことの無いものを注文してしまったよ。」
「よくわからない理論だね。」
「君が体力馬鹿だからさ。 僕みたいに頭脳勝負であるところにいる人間で、まともな人に会ったことは無いよ? きりたんぽのおてんと様パワーに引かれたのさ。」

ちなみにいえば、昨日までぼくらは一期生だった。 二期生になれば今までの制限があらかた解除され、普段の生活がより潤う。 パイロットであるぼくには、とある点で心配なところもあるけれど。

「そういえば。 今日発表されたチーム分け、おまえいじくっただろ?」
「うふ? もちろんろん。 君と僕は離れてはいけないからね。 同じチームになるように、それと、出来るだけ優秀な人がうちに来るように仕向けておいたさ。」

二期生からは授業はチーム制になる。 一組5人のチームだ。 優秀な、それこそや彼方みたいな人物は、本来同じ一つのチームに二人といないはずだ。
それが、なんだあれは。

「なんかいも見直したけど、見知った名前のやつしかいなかったぞ。」
「ビバ! 学校の有名人大集合! みたいな感じだったねえ。」

ぼくとあと一人、無名の二人を除いた3人ともが有名人のオンパレードった。
機械整備、開発において三期生、教師達すら凌駕する彼方。 作戦指揮ではいまだ本気を出したことが無いといううわさの流れる優等生。 実戦闘での機械整備を任されたことのあるなかでは(彼方を除いて)最年少機械整備士。
……それぞれがそれぞれチームのリーダーを任されるような人物達だけだ。

「あの子がきたし、僕も開発に全力を注ぎ込めるよ。」
「情報操作したのばればれの組み合わせ……」
「そのあたりは安心だなん。 僕に逆らえば、教師でさえどうなるか知っているのだ。」

ふんぞり返る彼方。 そういえばいつぞやか『魔王』とか呼ばれていた時期があったな。 もしかしてまだ続けてたのか?

「あ、『魔王』ならもうやめちゃったのさ。 反応が一定になってきて、誰にちょっかい出しても迎撃もせずにすぐあきらめるから。 最近の若人はたるんでるねえ。」
「そりゃ最狂のハッカーに襲われたら、多分おまえの親父でも沈没するぞ。」
「つみゃんにゃい。」

きりたんぽの棒をくわえたままぼやく彼方。 今の彼女でも十分おとなしくなってきているのだ。
昔の彼方にあまりいい思い出はないのでこれからの生活に思考を向けようかな。

「そういえば、チームのみんなとはあとで寮で会うことになってるんだよな。」
「そうだねえ。 教師を僕ほどではないにしろ圧倒する彼らに、早く会いたいねえ。」


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