JUDAS


1 :アクロス=レザストロ :2007/04/12(木) 15:36:00 ID:kmnktiY3

この作品は最近新小説広場が作られたのを知らないで、旧小説広場に 
書いた奴なんですが、再び書きます。いや、書き直します。
けど、あれとは一応違くなるようにします。
あれは放置状態でいきますので、間違えないようにしてください。
まだ、若輩者ですので下手ですが、頑張りたいと思います。
アドバイスしてくれる人がいましたら感想室に書いちゃって下さい。
遠慮しないで思った事を言いまくっていいです。
それでは『JUDAS』をお楽しみ下さい。


24 :アクロス=レザストロ :2007/05/26(土) 15:27:33 ID:kmnktixJ

二十二章

「……ふう、食った食った」
 ソルは頼んだ物をあっさり食べ終えて、自室でゆっくりしていた。
「……あ、この腕輪の意味聞くの忘れてた……」
 すっかり忘れてた事を聞きに、ソルは部屋を出ていった。


「……そうか。ではジェキとバーハルを連れて向かう。もう下がっていいよ」
 ロビーで、ゼルスとジェキ、バーハルが集まっていた。皆、真剣な顔をしている。
「何してんだ?」
「ああ、ソルか。ちょっと洒落にならない任務やらなくちゃいけなくなったんだ……」
 バーハルの言葉に、ソルは首を捻る。
「こりゃ、生きて帰れるか心配だよ」
「それほどやばいのか?」
 バーハルは無言で頷く。
「……なあ、俺もついていっていいか?」
「!?何言ってるの!?いくら俺達でもソルを守りきれるか……」
「いいじゃん。ついてこさせれば」
 そう言ったのは、ゼルスだ。
「その代わり、死んでもしらないよ。自分の身は自分で守ってね」
「……ああ!」
「……ゼルス様が一番相手の恐ろしさ知ってるのに、何でOKしちゃうかなぁ……」


 任務で向かう事になったのは、ルダ王国の隣にある国、シーダール国だ。この国は世界最強の騎士団『ドーリア騎士団』というのがこの国の平和を守っている。今回の任務では都市には全く近づかない。国境の近くにある村で大変な事が起きているらしい。
「……村に来たのはいいが、人っ子一人見あたらねえな」
「……村の奥から死臭がする。行ってみよう」
 ゼルスを先頭に隊列を組み、先へ進む。


「……これは!!」
 村の奥には、人の原型を留めていない死体が大量にあった。
「この傷口……間違いない」
 人はどれも切り裂かれていたり、噛み砕かれたような跡がある。
「……何か来る……」
 ソルが呟く。その時、後ろに気配がした。
「誰だっ!!」
 全員が自分の武器を取り、後ろを向く。そこにいたのは……青色の髪をした少女だった。
「……女の子……?」
 ソルは完全に油断し、武器を下ろした。それと同時に、ゼルスがソルを抱きかかえて横へ跳んだ。ソル達がいた場所を、巨大な何かが通過した。
「あれは!?」
 全身が黒で、背中には大きな翼。鋭い牙。全てを切り裂けそうな爪。
「うわ〜、ドラゴンの中で最強の『ダークドラゴン』だよ……勝てるかな?」
「今日俺は初めて恐怖を感じたよ。ドラゴンなんてどうやって倒せばいいんだよ!」


25 :アクロス=レザストロ :2007/05/29(火) 19:48:19 ID:kmnktixJ

二十三章

「普通にやっても勝ち目はないし……逃げながら考えよう!」
「その方が良さそうだね。逃げる!」
 一斉に後ろへ走る四人。それを追いかけるドラゴン。
「でも、ドラゴンなんて本当に勝てるのかよ!」
「普通のドラゴンなら希望はあったよ。でも……あれは厳しいなぁ……」
 ゼルスが後ろにいるドラゴンを見て答える。
「しょうがないね……僕が囮になろう」
「何だと!?」
「僕は光速で走れる。だからあんなのに捕まらないよ。……たぶん」
 四天王最強と呼ばれるゼルスがここまで自信が無い。それほどあのドラゴンは強いようだ。
「そんな事……」
 ソルが何か言いかけた時、ある事がソルの頭に思い浮かんだ。
「……わかったゼルス。囮は任せる」
「「ソル!?」」
 その言葉を信じられなかったのか、バーハルとジェキが同時に声をあげた。
「一つ聞く。何秒まで耐えられる?」
「何秒でも耐えられるよ」
「よしっ!ジェキ!お前も何か能力ある?」
 ソルはジェキの方を向く。
「え?ああ、一時的に自分の体を強化するのと、触れた物を鋼鉄にする能力が……」
「最高じゃん!バーハル、お前の視力は?」
 今度はバーハルの方を向いてソルが聞く。
「え、視力?両目とも5だけど」
「オーケー!ゼルス!合図するまであいつを引き寄せておいてくれ!」
「了解!」
 ゼルスはその場で立ち止まり、双剣を構えてドラゴンの前に立つ。
「君の相手は僕が務めよう。かかってきなよ!」


「うん、このくらいなら大丈夫かな。バーハル、ゼルスとドラゴン見える?」
「大丈夫、余裕で見えるよ」
 隣にいたバーハルが答える。
「で、ソル。お前に何か策があるようだが?」
「ああ、今からそれを話すよ」
 ソルは話し始めた……


「……って所かな」
「ふむ……いけるかもな」
 作戦を聞いたジェキが呟く。
「どう?やってみる?」
 ソルはジェキとバーハルの顔を交互に見る。
「……よし、やろう」
「これなら上手くいくかも……」
 どうやら二人は了解したようだ。
「さ、二人の了解も取れたし、作戦開始!」


26 :アクロス=レザストロ :2007/06/10(日) 11:44:18 ID:kmnktiYG

二十四章

「……『アレ』使えれば一発なのに……使う訳には……おっと!」
 ゼルスは紙一重でドラゴンの攻撃をかわしていた。
「この力馬鹿。素早いから厄介な事この上無いよ」


「バーハル、準備は出来た。合図を!」
「わかった!」
 バーハルは詠唱を始める。そして、足下に譜陣が浮かび上がった。
「空よ!我の意思に従え!我の言葉を力に!」
 雨雲が集まってくる。
「全てを洗い流す雨を降らせよ!」
 ポツポツと、雨が降り始めた。


「雨?バーハルからの合図かな?」
 合図だと判断したゼルスは後ろを向いて走る。ドラゴンがそのすぐ後についてくる。
「さぁ、ソルの作戦とやらを見せて貰うよ」
 その瞬間、上空にソルが現れる。
「くらえドラゴン!!」
 ドラゴンの視線はソルに移った。その瞬間にジェキが一本の木を持ってドラゴンの足下に現れる。
「我の腕よ!今こそ力の限界を超せ!」
 ジェキの腕は光に覆われる。ドラゴンは上空にいるソルに気を取られてジェキに気付いてない。
「うおおおお!!」
 ジェキはバットを振るかの様に木を振った。走って来ているドラゴンに直撃する。ドラゴンは後ろに吹き飛ぶ。これが、ソルの狙いだ。力が強い奴はその力を利用して倒す。全員の能力を使った最善の手。
「やったか?」
 着地したソルがドラゴンの様子を窺う。ドラゴンは消滅していく。
「作戦完了。ソル、ご苦労様」
「上手くいくなんて思ってなかったけどな」


27 :アクロス=レザストロ :2007/06/16(土) 12:24:57 ID:kmnktixG

二十五章

「……で、この子供はどうするんだ?」
 ソルは、倒れている子供を見る。ドラゴンの消滅と同時に倒れたのだ。
「僕達が預かるよ。……それより、そろそろここを離れないと」
 ゼルスはお姫様だっこで少女を抱える。
「何故だ?都合が悪い事でも?」
 ソルは首を捻る。その時、何処かに行っていたバーハルが帰ってきた。
「ゼルス様、貼ってきました」
「ご苦労。さ、行こうか」
 ゼルスは村の出口へ向かう。
「……何のことだ?……ま、いいか」
 三人の後ろに、ソルも続く。


「ここか?化け物が現れた村というのは」
 白い鎧を見に纏った騎士が、先程までソル達がいた村の入口に現れる。その後ろには、三百程度の兵士がいる。
「はっ!国境近くにある村というのはここしかありませんので、間違いないと思われます!」
 後ろにいた兵士の一人が答える。
「よし。第一陣!村の様子を見てくるんだ!」
「了解!」
 五十人程度の兵が村の中へ入っていく。
「ドーリア様。一つお聞きしたいことが……」
「何だ」
「はっ……村を滅ぼす程の敵を相手に、何故少数編成を?」
 その問いに、『ドーリア騎士団』の隊長、ドーリアが迷い無く答える。
「我等が大群で動いたとなれば、民は何が起きたのかと不安になる。民をわざわざ心配させる事はない」
「流石隊長です!民の事を一番に考えるなんて」
 ドーリアは憧れの的とされている。人を身分で差別する事は無く、目上の人にも対等に意見を言う。その上剣術も出来るのだ。彼は今となっては、シーダール国の国民全員から尊敬されていた。
「隊長!村の家にこんな物が貼ってありました!」
 走り寄ってきた兵から紙を受け取るドーリア。
「これは……!!」
 それには、異形の槍を持っている天使が描かれていた。
「間違いない。【デス・エンジェル】の紋章……くっ!我等はまた奴等に先を越されたというのか!」
 化け物現れる所に【デス・エンジェル】あり。紙の裏にそう書かれていた事には、誰も気付かなかった。


28 :アクロス=レザストロ :2007/07/26(木) 15:32:35 ID:kmnktixi

二十六章

「……あ、ゼルス様とジェキ様!」
 本部に帰ると、ロビーにいた子供が駆け寄ってくる。
「どうしたんだい?」
 ゼルスは笑顔で用件を聞く。
「……えっと、ボスが帰り次第新しく入った奴を連れて来いだって」
「ボスが? わかった。ありがとね」
「うん、じゃあね〜」
 子供はこっちに手を振りながら走っていった。
「……っていう事だけどソル、いい?」
 ゼルスがソルを見る。別に断る必要はないと判断したソルは頷く。
「ボスが何の用だろう……?」
 難しい顔をしながらゼルスは歩いていく。ゼルスの様子に首を傾げながらも、ソルは後に続く。


 ボスの部屋は建物の一番奥にあった。何度も曲がり、十分程でついた。
 その部屋の扉は鉄で出来ており、中から鍵をかければ破るのは至難の業だろう。
「さ、ソル。どうぞ」
 ゼルスはソルの為に道を開ける。ソルは扉を開けようと、扉に歩み寄る。
 そして、扉の前に着いた瞬間、扉が勝手に開いた。
「……え?」
 上を見上げる。そこにはセンサーのような物があった。
「これってまさか……」
 自動ドアだったのか、そう言おうとしたが、やめた。
 皆が苦笑していたのだ。聞くまでもなかったな、そう思ってソルは部屋に踏み入る。
「────!」
 瞬間、空気が変わった。空気が、とてつもなく歪んでいる。吐き気を覚える。頭痛がする。生きてる心地もしなくなってきたが、何とか耐えて中に入った。
「────くそ、何なんだよコレ……」
 ソルはどんどん中に入っていくが、不快感は消えない。それどころか段々強くなる。気を抜けば今すぐにでもその場に倒れてしまいそうな体で、奥へ向かう。
「大丈夫?」
 ソルは隣を見る。そこには心配そうな顔をしているゼルスがいた。
 そのゼルスさえも顔色が悪い。
「……ああ、大丈夫……自分の心配もしろよ……」
 まだ心配そうにしてたが、ソルは出来るだけ見ないように進む。
「……この空気いつもよりずっと歪んでる……ボスは何を……?」
 ゼルスはソルが倒れても支えられる位置を歩いていく。それに気付いたソルは少し笑みを浮かべた。


29 :アクロス=レザストロ :2007/08/27(月) 14:45:20 ID:kmnktiYL

二十七章

「……ここか……」
 ソルは歩みを止める。前を見ると、階段があった。
 ゆっくりと上を見上げる。階段の一番上は、カーテンが仕切られていて、シルエットを映し出している。が、玉座のシルエットしか映っていなく、外見は判らない。
「……ボス! これは……」
「何の真似だと訊きたいのか、ゼルス」
 気を抜けば声だけで気圧される程の威圧感を、シルエット越しにボスは放っていた。
───逆らえば殺される。ソルの本能が、そう告げていた。
「なに、只のテストだ」
「テスト……? この、敵意のこもった殺気が?」
 ゼルスが、多少怒っているように感じる。何故?
 思案しても解らない物は脳内から排除し、ボスを睨む。
「ボス……ですか。訊いておきます。何故俺を試す必要が?」
 テスト、と言ったからには俺を試す理由があったのだろう。
 そう確信したソルは少し強気に訊く。
「……それは僕も訊きたいですね。ボス、教えてくれますか?」
「……いいだろう、だが、もう一人登場してもらう」
 ソル達の後ろから、足音が聞こえてくる。急いで振り向いた先には、全身黒の鎧を着た大男が、そこにはいた。身長は190センチ後半ぐらいあるのではないだろうか。がっしりとした体つきをしている。
「ボス、何の用だ。こちらも暇ではないんだからな。早めに済ませろ」
 あの圧倒的な威圧感を放っている存在に、偉そうに話す男。
 説明を求めようと、ソルは隣のゼルスに視線を送る。……珍しくゼルスが心の底から呆れたような顔をしていた。
「彼はウィド・ギルダー。一応四天王の一人です」
 ソルの視線に気付いたのか、紹介するゼルス。
「……で、ボス。四天王、後一人は呼ばないのですか?」
 この場には、四天王三人がいることになる。ゼルス、ジェキ、ウィドの三人だ。
 ならもう一人いる筈だが……? 辺りを見渡しても他の人物はいない。バーハルがいるが、彼は四天王ではない。
「その事についてだが……、
ゼルス・ティルリア、
ジェキ・モーレイド、
ウィド・ギルダー、
そして、ソル・ディーチ!」
 今この場にいるバーハル以外のフルネームを呼び、一泊置いた後───
「お前たちを、四天王に任命する!」
───信じられない言葉を、言った。


30 :アクロス=レザストロ :2007/10/07(日) 01:47:03 ID:kmnktiYD

二十八章

「今……なんて……」
 信じられない、というような表情でボスを見るゼルス。ジェキも同じようにしていた。
 ウィドは、完全に苛ついているとわかる舌打ちをし、バーハルは驚きこそしたがすぐに平静を取り戻し、ソルを見る。
 ソルは、ボスと周りの四人を見てとりあえず冗談ではないと理解し、一言。
「お断りします」
「!?」
 ゼルスがソルを振り向いたが、それは気にも留めない。
「四天王だかなんだか知らないけど、何が狙いなんですか? 新参者を上の地位に置くなんて、何か狙いがあるんでしょう?」
 この部屋の空気が変わろうと、それはソルの知った事ではない。
「俺が欲しいのは、地位とか金じゃない。全てを超越する、守る為の力だ」
 そう、あの時……姉が死んだ時にソルは、力が欲しいと思った。
 もう、大事な人間を死なせない為。そして、姉を殺した組織【デス・エンジェル】を滅ぼす為。
 ソルは、力を手に入れたらここを滅ぼす気だった。だが、その考えは次の瞬間に消える。
「くくく……ソル・ディーチよ、勘違いするな」
 ボスが呟いた次の瞬間───

「貴様じゃ何年経っても俺には勝てねえよ」

───この部屋を覆っていた殺気が、もっと濃くなった。
「───!?」
 肌で感じた瞬間、ソルは床に手をついていた。
(何だ……この……殺気は……!!)
 ソルを覆う感情、それは絶対の恐怖。自分の足で立つ事すら不可能だった。
「…………!!」
 言葉を発する事すら出来ない。
───逃げたい。今すぐ、この場から。
 しかし、足が恐怖で震え、這いつくばるくらいしか出来ない。
 周りを見渡すと、ゼルスは倒れそうながらも両の足で何とか立っている。少し押せば倒れてしまいそうな程、僅かな力だった。
 ジェキは片膝をつき、それでも立ち上がろうとしていた。だけど、膝は数ミリも上がらない。
 ウィドは、忌々しそうにボスを睨んでいるが、両膝をついていて、全身には汗が流れていた。
 バーハルは、手元にあった槍を地面に刺して、それを支えに立っているような状態だ。
「さぁ、ソル・ディーチ。もう一度言おう。四天王に任命する」
 ソル達を嘲笑しながら、ボスは訊いた。
「あ……」
───訊くまでもない。ソルにはもう、選択肢は一つしかないのだから。
「四天王に……ならせて……頂きます……」
 そして、殺気は一瞬で収まった。全員がその場に、座り込んだ。
 圧倒的な力の差。四天王は、ボスの足元にすら届いていなかった。


31 :アクロス=レザストロ :2007/10/13(土) 00:38:03 ID:kmnktiYc

二十九章

「……まったく、ボスは何を考えているんだ……革命」
「俺が知る訳……」
「ジェキさんには訊いてない」
「酷いな! 革命返し!」
 【デス・エンジェル】本部のロビーでソル、ゼルス、ジェキ、バーハルの四人はトランプの大富豪をやっていた。
 結局あの後は何も無く、そのまま解散したのだ。
「俺、何かした覚えはないんだが……革命返し返し」
「まだ入って数日だしねぇ……革命8流し」
「うわ、そこで流すか……」
 何故大富豪をやっているのか。それは、四天王の今月のリーダー決めだ。
 基本的リーダーには危険なミッションが回ってくる。それを避ける為に大富豪で奮闘中なのだ。バーハルはウィドの代わりらしい。
「ソル、過去に何かしたの? 11バックのツーカード」
「その線が一番有り得そうだね。 9のツーカード」
「覚えは無いのか?」
 ジェキはテーブルに3を二枚出しながらソルに訊く。
「……俺、村から外に出た事少ししか無いしな……」
 ソルは首を傾げながらジョーカーを二枚出して流す。
「そんな目立つ事はしてませんよ……多分」
 2のスリーカードを場に出して流すソル。
「じゃあ、何が原因だ?」
「ゼルスとタメ口で話してるからじゃないか?」
「その理由はどうかと思いますけど……」
 そして、ソルが1のスリーカードを場に出した瞬間、ソル以外が固まった。
「……ちょっと待ってよソル。何でそんな手札いいの?」
「え? 俺がシャッフルして配ったんだぞ。細工してない訳ないだろ。あがりっと……」
 最後に5を出して席を立つソル。勿論、全員からの非難の視線を受けて。
「イカサマ無しなんて一言も言わなかっただろ?」
「言ってないけど……」
「じゃ、いいよな」
 ソルはこの前バーハルに連れられて見た子供が一杯いる場所へ向かうことにした。
 どうせ四天王だからって今までと変わらない。
「……でも、他の奴からの注目浴びるんだよなぁ……」
 嫉妬と尊敬、羨望の眼差しを全て受けているソル。正直、居心地が悪い。
「我慢あるのみだな……」
 廊下をこの前通った様に歩いていくソル。一度、通った道なのでほとんど迷わずに進んでいった。


32 :アクロス=レザストロ :2007/10/21(日) 00:45:26 ID:kmnktiYc

三十章

「……ん?」
 子供が沢山居た場所───ソルは保育園と呼ぶ事にした───には先客がいた。
 緑色の長髪に、和服を着た美人。その上、スタイルが良い。
 一瞬、大和撫子を想像したが───髪が黒くないから違うとソルは否定する。
「あの〜」
「はい?」
 こちらを向いた女性の顔を見て、ソルは固まる。
 何故なら、その顔は自分のよく知っている顔だったから。

「ゼ……ルス?」

 ───そう、今まで大富豪をやっていたゼルスにそっくりな顔だった。
「ゼルス? それは兄さんの名前ですけど……」
 多少困惑しながらそう答える女性。
「兄、さん?」
「はい。ゼルス・ティルリアは私の兄です。私はエリン・グレスト」
 エリンと女性は名乗った。けど、ソルは引っ掛かった所を訊く。
「何故、ゼルスとファミリーネームが違うんだ?」
「両親が離婚して私は母親に、兄さんは父親に引き取られたんです。【デス・エンジェル】で再会しました」
 淡々と説明するエリン。ソルは納得した様に頷き、保育園の中を覗く。たくさんの子供達が遊んでいるのが見えた。
「エリンはどうしてここに?」
「子供達の世話ですよ」
 エリンは扉の前に立ち、ソルを見る。
「良かったら一緒にどうですか?」
 エリンの笑顔の申し出を受けて、ソルは思う。
(何でこの兄妹は美がこんな追求されてんだよ。不公平だ……)
 きっと両親も凄い美しい方だったんだな、とどうでもいい事を思いつつ、
「ああ、お手伝いさせてもらうよ」
 そう言って、エリンの隣にソルは並ぶ。
「それでは、行きましょう」
 エリンは扉を開く。そして、子供達の視線を一斉に受けた。
「あ〜、エリン姉ちゃんだ〜!」
「本当だ! また遊びに来てくれたの?」
 扉を開けて数秒でエリンの周りに子供達が集まっていた。
 人気が有るんだな、とその様子を見ながらソルは苦笑した。
 すると、ようやくソルの存在に気付いたのか子供が一斉にこちらを向く。
「……この人誰だー?」
「えっと、俺はソル・ディーチって……」
「わかった! エリン姉ちゃんの彼氏だ!」
 その言葉に吹き出しそうになるがソルは耐えた。
「あらあら、何を言ってるのよ。ソルは恋人未満、友達未満よ」
「それって赤の他人って事だろ!」
 自分が恋愛対象に見られてない事に少し落ち込みつつツッコミを入れる。
「それに、ソルって私の好みを180度程外しているもの」
「俺ってそんな駄目か!?」
「ふふ、冗談よ、冗談。本当は150度くらい」
「大して変わらないじゃん!」
「あら、30度の差は距離に換算すると42、195キロにもなるのよ」
「何処の駅伝だ!! しかも俺は更に×5で好みから離れてるし!」
「あら。必死ね」
 ソルは、やっぱり兄妹の性格の悪さは似ているなと心の底から思った。


33 :アクロス=レザストロ :2007/10/30(火) 18:16:30 ID:kmnktixk

三十一章

「……疲れた〜」
 エリンに一通りツッコミを入れた後、子供達と遊んでいたソル。いや、遊ばれていた方が正しいのだろうか。ソル一人で逃げる鬼ごっこや怪獣役をやらされてエリンに本気でかかってこられたり。やはり兄妹なのだろう。実力はソルの数段上だった。兄がゼルスというのもよくわかったソルだった。
「はは、情けないわねあの程度で」
「……大半はお前だ、悪魔め」
「あら、こんな可愛い私を悪魔だなんて……失礼しちゃう」
「ゼルスもしそうな返答をありがとう。兄妹そろってナルシストか」
 実際、ソルの疲れた原因はそれだけではない。子供が心配そうにソルを見上げてきた。
「ソルお兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。えっと……D−3043」
 ───この子供達は全て名前がなく、番号で呼ばれていた。
 つまり、それだけの数字と顔を覚えなくてはいけない。いくらソルでも、きつかった。
 しかも数字には規則性が無い。記憶力が完全に試されていた。
「C−5696、水持ってきてあげて!」
「は〜い」
 エリンは完璧に記憶してるのか、わざわざ指差して言っている。その後に見せる馬鹿にしたような表情がソルの心に精神的ダメージを与える。
「まったく、番号なんて面倒なだけだろ」
「そう? 覚えれば楽よ」
 子供から水の入ったコップを受け取り、飲み干す。
「……番号じゃ覚えるのがきつい。特徴が無ぇもん」
「あ、記憶力悪いからって言い訳だ〜」
「だから、俺が全員に名前を付ける!」
 そう宣言し、とりあえず水を持ってきてくれたC−5696を見る。
「えっと……お前は今日からミネードだ!」
「みねーど? ……うん、わかった」
「じゃあ、お前はシャール。お前はソリアで、お前が……」
 さっき遊んでた時に考えていたのかと思うほどテキパキと名前をつけていくソル。それを見て少し唖然としてたエリンは苦笑する。
「じゃ、私も手伝おうかしら」
「おっ、頼むぜ。そろそろ名前が無くなって来てるから」
「わかった、じゃあ君は……子供A!」
「待て!!」
 いろいろふざけたネーミングをしたエリンを止める。
「何よソル。あ、いい名前すぎた?」
「それがいい名前なら『ああああ』でもいい名前だ。真面目に付けろ」
「わかった! ボク、子供Aだね!」
「落ち着けぇぇぇ!! 鵜呑みにするなぁ!!」
 そのまま受け入れてしまいそうな子供を止めたソル。この子供達は素直すぎた。



 数十分が経ち、ようやく全員の名前が付け終わった。あの後もエリンの変なネーミングを止めようとしたり、子供がそれを受け入れそうになるのは何とか阻止した。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.