JUDAS


32 :アクロス=レザストロ :2007/10/21(日) 00:45:26 ID:kmnktiYc

三十章

「……ん?」
 子供が沢山居た場所───ソルは保育園と呼ぶ事にした───には先客がいた。
 緑色の長髪に、和服を着た美人。その上、スタイルが良い。
 一瞬、大和撫子を想像したが───髪が黒くないから違うとソルは否定する。
「あの〜」
「はい?」
 こちらを向いた女性の顔を見て、ソルは固まる。
 何故なら、その顔は自分のよく知っている顔だったから。

「ゼ……ルス?」

 ───そう、今まで大富豪をやっていたゼルスにそっくりな顔だった。
「ゼルス? それは兄さんの名前ですけど……」
 多少困惑しながらそう答える女性。
「兄、さん?」
「はい。ゼルス・ティルリアは私の兄です。私はエリン・グレスト」
 エリンと女性は名乗った。けど、ソルは引っ掛かった所を訊く。
「何故、ゼルスとファミリーネームが違うんだ?」
「両親が離婚して私は母親に、兄さんは父親に引き取られたんです。【デス・エンジェル】で再会しました」
 淡々と説明するエリン。ソルは納得した様に頷き、保育園の中を覗く。たくさんの子供達が遊んでいるのが見えた。
「エリンはどうしてここに?」
「子供達の世話ですよ」
 エリンは扉の前に立ち、ソルを見る。
「良かったら一緒にどうですか?」
 エリンの笑顔の申し出を受けて、ソルは思う。
(何でこの兄妹は美がこんな追求されてんだよ。不公平だ……)
 きっと両親も凄い美しい方だったんだな、とどうでもいい事を思いつつ、
「ああ、お手伝いさせてもらうよ」
 そう言って、エリンの隣にソルは並ぶ。
「それでは、行きましょう」
 エリンは扉を開く。そして、子供達の視線を一斉に受けた。
「あ〜、エリン姉ちゃんだ〜!」
「本当だ! また遊びに来てくれたの?」
 扉を開けて数秒でエリンの周りに子供達が集まっていた。
 人気が有るんだな、とその様子を見ながらソルは苦笑した。
 すると、ようやくソルの存在に気付いたのか子供が一斉にこちらを向く。
「……この人誰だー?」
「えっと、俺はソル・ディーチって……」
「わかった! エリン姉ちゃんの彼氏だ!」
 その言葉に吹き出しそうになるがソルは耐えた。
「あらあら、何を言ってるのよ。ソルは恋人未満、友達未満よ」
「それって赤の他人って事だろ!」
 自分が恋愛対象に見られてない事に少し落ち込みつつツッコミを入れる。
「それに、ソルって私の好みを180度程外しているもの」
「俺ってそんな駄目か!?」
「ふふ、冗談よ、冗談。本当は150度くらい」
「大して変わらないじゃん!」
「あら、30度の差は距離に換算すると42、195キロにもなるのよ」
「何処の駅伝だ!! しかも俺は更に×5で好みから離れてるし!」
「あら。必死ね」
 ソルは、やっぱり兄妹の性格の悪さは似ているなと心の底から思った。


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