JUDAS


30 :アクロス=レザストロ :2007/10/07(日) 01:47:03 ID:kmnktiYD

二十八章

「今……なんて……」
 信じられない、というような表情でボスを見るゼルス。ジェキも同じようにしていた。
 ウィドは、完全に苛ついているとわかる舌打ちをし、バーハルは驚きこそしたがすぐに平静を取り戻し、ソルを見る。
 ソルは、ボスと周りの四人を見てとりあえず冗談ではないと理解し、一言。
「お断りします」
「!?」
 ゼルスがソルを振り向いたが、それは気にも留めない。
「四天王だかなんだか知らないけど、何が狙いなんですか? 新参者を上の地位に置くなんて、何か狙いがあるんでしょう?」
 この部屋の空気が変わろうと、それはソルの知った事ではない。
「俺が欲しいのは、地位とか金じゃない。全てを超越する、守る為の力だ」
 そう、あの時……姉が死んだ時にソルは、力が欲しいと思った。
 もう、大事な人間を死なせない為。そして、姉を殺した組織【デス・エンジェル】を滅ぼす為。
 ソルは、力を手に入れたらここを滅ぼす気だった。だが、その考えは次の瞬間に消える。
「くくく……ソル・ディーチよ、勘違いするな」
 ボスが呟いた次の瞬間───

「貴様じゃ何年経っても俺には勝てねえよ」

───この部屋を覆っていた殺気が、もっと濃くなった。
「───!?」
 肌で感じた瞬間、ソルは床に手をついていた。
(何だ……この……殺気は……!!)
 ソルを覆う感情、それは絶対の恐怖。自分の足で立つ事すら不可能だった。
「…………!!」
 言葉を発する事すら出来ない。
───逃げたい。今すぐ、この場から。
 しかし、足が恐怖で震え、這いつくばるくらいしか出来ない。
 周りを見渡すと、ゼルスは倒れそうながらも両の足で何とか立っている。少し押せば倒れてしまいそうな程、僅かな力だった。
 ジェキは片膝をつき、それでも立ち上がろうとしていた。だけど、膝は数ミリも上がらない。
 ウィドは、忌々しそうにボスを睨んでいるが、両膝をついていて、全身には汗が流れていた。
 バーハルは、手元にあった槍を地面に刺して、それを支えに立っているような状態だ。
「さぁ、ソル・ディーチ。もう一度言おう。四天王に任命する」
 ソル達を嘲笑しながら、ボスは訊いた。
「あ……」
───訊くまでもない。ソルにはもう、選択肢は一つしかないのだから。
「四天王に……ならせて……頂きます……」
 そして、殺気は一瞬で収まった。全員がその場に、座り込んだ。
 圧倒的な力の差。四天王は、ボスの足元にすら届いていなかった。


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