彼女返却予定日


1 :モーグリー :2009/04/19(日) 00:32:48 ID:m3knreue

「うわぁああ!!」
俺は叫びなから逃げていた。
突然やってきた〔あれ〕から。
「死んじゃえなのです〜」
〔あれ〕は、空を飛びながら巨大な鎌を振り下ろし俺を殺そうとする。
なぜ俺がこんな目にあっているのか、それはこれから始まる物語を見てほしい。


9 :モーグリー :2009/05/19(火) 20:58:18 ID:m3knreue

 「くっ、うぅ、」
俺は崖を転がり落ち、偶然あった木に掴まり速度を落として、なんとか木の葉の上で生きていた。
右腕が痛い、折れたのだろうか?
足から血が出て立とうとすると激痛が走る。
山道はもう見えない。
日がやっと暮れ始めてきた。
 「やっと見つけたですぅ」
上から〔あれ〕の声が…。
 「まったく、山道から落ちやがったせいで見つけるのに苦労したです。」
クソックソックソォオオオ!!
どうすればいいんだ!
肉体は悲鳴をあげて、立つこともままならない。
上を見ると〔あれ〕が鎌を振り下ろそうとしてた。
嘘だろ?死ぬのか?
〔あれ〕が笑みを浮かべる。
 「ゲームオーバーですぅ」
俺はとっさに左腕でポケットを探る。
あの人形があの落下の中、ポケットから落ちずにあったのは奇跡だろう。
俺はとっさに人形を掴み、

叫んだ。

 「助けてくれ!!よっちー!!」
〔あれ〕が驚愕と苦悶の表情を浮かべ始める。
俺の胸の辺りで鎌が紙一重で止まってる。
〔あれ〕が地面に膝をつき、鎌を支えにしていた。
 「に、にげ、て、ください」
よっちーなのか?いや、わかる〔あれ〕の外見だろうとよっちーだ。
 「よっちー、ごめん、動けないんだ」
 「うっ!くっ、はっ、なら、すみません岡崎君、」
彼女は〔あれ〕の顔で彼女なりに微笑み、
鎌の柄で俺を押しとばした。
俺は重力にしたがって崖を滑り落ちる。
一瞬だけ後ろを振り返ると〔あれ〕が鎌を支えに立とうとしてた。
ありがとう、よっちー
俺は心の中で彼女に、お礼を呟いた。
その後は滑り続けとうとう車道に出たところで気を失った。
気を失ってまた夢を見た。
やっぱり雲の上のようなところにいる。
 「よう!!人間!!また会ったの!!」
そして、やっぱりあの自称神のおっさんがいた。
 「1日目はご苦労だったの、朝の何も用意しないで開始した時は1日で終わるかと思ったが、なかなか根性があるでは無いか、」
誉められたのか?
 「じゃからの、ワシから褒美におぬしが寝てる間〔あれ〕も眠らしといてやったわ、ありがたいじゃろ」
神様ありがとうございます。
 「うむ、ということでさらばじゃ!!」

悪夢の1日目はこうして終わった。


10 :モーグリー :2009/05/25(月) 09:51:00 ID:m3knrDxL

二日目(日)

俺は白いベッドの上で目覚めた。
白いタイルの天井が見える。

どこだ?ここは?
俺は体を起こし、辺りを見まわす。

左手にあの彼女を模した人形を握りしめていた。
右腕は補強タイプのギブスで包帯にグルグル巻きにされている。
病院?
脚の傷も包帯に巻かれて、痛みがひいてる。
ただ、喉が乾ききっていた。
水分を補給できるものは無いかとあたりを見回す。

窓があり外を見るが、森があるだけ、
部屋には小さなタンス、扉、ベッド、イス1脚しかなかった。
俺は崖から落ちてボロボロの服ではなく、
半袖の白いカッターシャツを着て、下がズボンを穿いてなかった。
ともかく【あれ】から逃げなければと思い始めたところで扉が開いた。

  「おっ、目覚めたみたいだね」
扉からポニーテールでタンクトップの女性が入ってきた。
   「あんた名前は?」
女性はイスに座る。
  「あっ、あっ」
声がでない!?
 「ほら、水だよ、ゆっくり飲みな」
女性がペットボトルに入った水をくれ、俺はそれをがぶ飲みする。
 「ゲホッゴホッ、」
   「ほら、ゆっくり飲まないから。」
むせたが気にせず、150mgを飲み干して、話し始めた。
 「お、岡崎虹っていいます」
俺は喉の様子を確認しながら答える。
 「そうかい、アタシは林林(はやしりん)って言うんだ、とりあえず混乱しているようだから説明しようかい?」
     「お願いします。」
         「あい、わかった。」
女性はニコリと笑い、話し出した。
    「まず、あんたがなんでここにいるか言っておこうかね、
       あんたは人通りが全くない車道で傷だらけで気絶しててね。
        足から血がひどかったから、手当ての為にここ、アタシのやってる診療所に連れてきたんだ」
    「・・・はぁ」
目の前の林さんが医療関係の人にはとても見えない…。
   「あとはなにかねぇ、あっ、服は助手に調達さしてるよ、下は合うのがなかったからね。悪いね。」
      「元の服は?」
できれば元のボロボロの服だろうと着て〔あれ〕から逃げ出したかったのだが…。
   「あぁ、着れそうになかったからポケットに入ってるもん抜いて燃やしちまった」
     「えぇ!!」
燃やした!?
  「まずかったかい?」
    「まぁ…。」
俺は驚きと衝撃でまともな返事が出来ない。
  「まぁ、過ぎたことをくよくよしてても、仕方ないさ。で、あんたの事情を話してくれるかい?」
   「えーとー・・・・・」
俺は悩んだ、いったい何から何まで話していいのだろうか、【あれ】の事を話しても、無駄だろう。
逆に気が狂ったやつに見られるかもしれない
   「まず、なんで傷だらけだったのか?から頼むよ」
俺が悩んでるのを見て、林さんが質問の内容を変えてくれる。
   「えーと、山を登ってたら事故で崖から落ちまして…、それであの状態に」
俺はとりあえず簡単に端折りながら説明した。
   「崖から落ちたねぇ…、山道はもっと上の方にあるから車道まで落ちてよく生きてたねあんた」
林さんは俺をじーっと見つめる。
・・・
・・・・
不意に俺の腹が大合唱する。
林さんはイスから立ち上がり、ベッドに座る俺を見下ろし
   「はははっ、ご飯だね。もってきてやるからまってな。」
   「あ、ありがとうございます。」
俺の返事を聞いて、林さんは部屋から出て行った。
世の中には本当にこんな人がいるんだなぁ
と感じながら、ボーっと窓の外を眺める。


11 :モーグリー :2009/05/25(月) 10:05:02 ID:m3knrDxL

ん?木々の間になんか浮いた影が…。
まさか!?
影が近づいてくる。
鎌が見えた瞬間、俺はベッドから降りてドアへ走り出した。
ドアを開けると廊下が左右に広がっていた。
どっちだ!?
どちらが出口の方なんだ?
後ろの窓に振り返るともう色が見え始める。
 「どうしたんだい?そんなに慌てて」
林さんがサンドイッチをお盆にのせて訝しげに聞いてくる。
 「出口は!?出口は!?」
俺はすぐさま近寄って聞いた。
 「あ、あっちだよ。」
林さんが来た方と逆を指差した
 「ごめんくださーいですぅ」
そちらから〔あれ〕の声が…。
 「あれ?誰か来たみたいだね、これ飯ね。はーい、」
林さんが俺にサンドイッチを渡して、そっちへ行こうとする。
くそ!!
俺は膝をついて、考えこんだ。
 「んっ?どうした?」
林さんが俺の様子がおかしいことに気づいて振り向く。
 「すいませーんですぅ、入りますですよぉ」
 「あ〜、ちょっと待ってください〜。」
返事をして、こちらに振り返る。
 「どうしたんだい?そんなに血眼になって?今来た奴かい?」
出口の方であろう方を指差し聞いてくる。
 「先生〜、お客さんですよ〜。服も買ってきました〜。」
若い男性の声が聞こえた。
 「おっ、助手が帰ってきたみたいだ。で、あんたはどうしたんだい?」
俺は顔をあげて、
 「あれから逃げなければならないんです…。」
 「そうかい、」
林さんは振り返ると
 「おーい、てつ、お客さんは玄関で待たして服持ってきなー。」
 「えっ、わ、わかりましたー。」
助手の男性は戸惑いながらも返事をする。
俺も驚いた、てっきりめんどうごとに巻き込まれたくないだろうから突き出すと思っていたのに。
 「先生〜なんでお客さん待たしてるんですかぁ?」
助手のひょろひょろと細長い男性が廊下を曲がってやってきた。
 「てつ、服パス。」
 「えっ、は、はい」
男性が服を入ってるであろう袋を投げて、林さんが受け取り俺に差し出した。
 「ほら、着ながら逃げな、裏口はあっちだよ。サンドイッチは持っていきな」
林さんが玄関と逆を指差して言う。
 「はい、ありがとうございます」
俺は袋からGパンを取り出し、それを着ながら走り出した。
 「先生?なにがなんなんですか?」
 「鈍いねぇあんたは…。」
走りながら聞こえたのは二人のこんな会話だった。
廊下を曲がるとすぐに裏口が見えた。
 「やっと見つけたですぅ〜。」
上から声が…。
いた、【あれ】だ。


12 :モーグリー :2009/06/02(火) 21:34:56 ID:m3knrDxL

【あれ】は鎌を持って屋根の上に立っていた。
 「まったく、たいへんだったですぅ、待つのは嫌いなんですぅ」
俺は森に隠れるように走り出す。
日は高い。
寝たおかげ足取りは軽かったが腹が鳴る、忌々しい腹だと罵りながら走った。
さすがにサンドイッチを走りながら食うのは無理か…。
 「まちやがれですぅ〜、やっと見つけたんですからぁ!!」
【あれ】は鎌で八つ当たりに木を一気に二本ぶったぎる。
木があっさり倒れる。
鎌の切れ味に寒気がした。
すぐに森は開け、道路に出た
おし、これで走りやすくなった。
ガードレールを乗り越えて、また走る。
 「いい加減に捕まるですぅ!」
絶対に捕まるか!!
その後はただひたすらに走った。
肉体が悲鳴をあげ足がもつれそうになる、空腹が辛い、吐き気が…。
日がやっと暮れてきた。
 「この、この、まちやがれですぅ!!」
【あれ】もキレて鎌を振り回してる。
これなら…。
俺は公園に走りこみ、茂みに隠れた。
 「はぁ、はぁ、クソどこに逃げやがったですぅ!」
茂みで息を整えつつ【あれ】を見張る。
 「ちっ、隠れやがったですね、ですが無駄です。」
奴はどこからともなくなにかを取り出した。
 「ふふ、方位磁針よ、岡崎虹の居場所を示せですぅ。」
もしかしたら…、ジッと息を殺し、サンドイッチを食べながら観察する。
【あれ】がこちらを向き
 「そちらですねぇ!」
来た!
俺は茂みから立ち、横に走り出した。
 「逃がさないです!!」
やっぱりだ、あれが俺の位置を伝えているんだ…。
なら…。
空腹はマシになったが眠気が襲う頭で考える。
公園を出て、街にくり出す。
時計を見ると十二時をこえていた。

こうして、悪夢の2日目は過ぎた。


13 :モーグリー :2009/06/09(火) 20:29:23 ID:m3knreuF

三日目(月)ノーマルルート

深夜の街中を俺は走っていた。
公園を出てから一睡もしていない。
膝が震えて、口が乾ききり、内臓が悲鳴をあげていた。
 「まちやがれですぅ!!」
なのに【あれ】は追ってくる。
神様もどうやら今日は甘くないようだ。
一瞬つまづいた瞬間に耳元で風切り音がし、なにかが斬れる音が続く、しかしそれを確認する隙はない。
そうやって、自分でも驚くほど走り続けながら、なぜか俺は笑みを浮かべた。
笑みを浮かべる程の余裕なんてないのに…、
走り続けて思いついく。
さっきの方位磁針は、おそらく俺の位置を知らせるものだろう。
じゃあ、方位磁針がなければ、見つからない?

決めた。
【あれ】から逃げるだけでなく戦おうと。
 「いい加減捕まるですぅ!!」
【あれ】は最終日だからだろうか、狂ったように鎌を振り回し、周囲を切り刻んでいく。

俺はビルの建設中であろう、工事現場に忍び込んだ。
 「こんなところに入っても無駄です。」
【あれ】は防音の鉄板をバターのように切り裂き入ってきた。
息を殺し、積まれた鉄骨の影に隠れる。
雨が降ってきたようだ。
 「またかくれんぼですか?」
【あれ】は、見つけられることを確信してるためか、余裕の笑みを浮かべる。
 「ふふ、方位磁針よ」
きた!!
 「ウォオオオオ!!」
俺は落ちていた、鉄パイプを片手に【あれ】に突撃した。
 「なっ!甘いです!!」
【あれ】は方位磁針を持つ、逆の手に持ってる鎌で鉄パイプを防いだ。
 「クソ!!」
俺は防がれたのを見て後ろに飛び退く。
 「危ないですね〜」
【あれ】が方位磁針をしまう間に、工事現場の奥に走り出した。
鉄パイプを見ると、刃に当たった部分が溶けて泡立ち始めている。
マジかよ…。
改めて恐怖を覚え、鉄パイプを捨てる。
 「どこに行こうと無駄です。」
くそぅ、呼吸が…、吐き気が…。
ビルの一階にはコンクリートの支柱しかなく、上に鉄骨が四階ぐらいの高さまで組み上げられていた。
もう一度だ。
俺は、コンクリートの支柱に隠れ、【あれ】が来るのを待つ。
 「また、隠れたんですか?いい加減うざいです!!」
【あれ】は鎌をひき、
 「ハァアア!」
鎌が紫色の炎を纏い、そして【あれ】は鎌を縦に薙いだ。
えっ…、
鉄骨が二階まで組み上がっていたのが斜めに斬れて、ずれ、崩れる。
支えられてた鉄骨が、上から何十本も崩れ、降ってくる。
「うわぁあああ!!」
ビルが、コンクリートの部分を残して崩れ落ちた…。


14 :モーグリー :2009/06/16(火) 21:30:33 ID:nmz3k3PD

グロ注意

「うぅ」
 ほほに冷たいものが当たり目を覚ます。
俺は生きていた。
奇跡としか言い表せない。
とにかく周りの状況を確認する。
かすかな光が鉄骨の隙間から入ってきて、水滴が顔に当たる、
おそらく雨のせいだろう、そちらが上ということがわかる。
右下半身が鉄骨にはさまって見えないが、鉄骨の下から血がにじみ出てきているため、
重傷なのかもしれない。
感覚的にも麻痺したような感覚しかなく、水がしみるような痛みすら感じない。
逆に右腕には激痛が走っている。
見ると包帯が赤く染まり、白い骨が鋭利な状態で皮膚を突き破って出てきており、
血まみれの指が一本転がっている。
どうやら、隠れていたコンクリートの支柱のおかげで死にはしなかったようだ。
さらに、左半身はほとんど無傷。
だが、鉄骨によって動くことはできない。
 「はは・・・」
右の痛みが、強すぎて麻痺し始めた。

生きたい

生きたい

イキタイ

イキタイ

イキタイ

イキタイ

イキタイ

イキテイタイ
血が足りない頭が、死の恐怖でうまる。
 「はっ、はははは」
笑いがこみ上げた。
笑いながら横を見る。
あの人形がボロボロになって転がっていた。
 「ごめんなよっちー、助けられそうにないや」
俺は口で人形をくわえ、打撲で水色になってしまった腹の上に落とす。
動くのがツラい。
ツラいが、なぜかもう一度人形を見た。
人形は、真っすぐにこちらを見つめてくる。
 ・・・。
はは、なにやってんだろな、俺は
 「よっちー、ホントごめん、今諦めてた。」
人形に笑顔を向ける、痛みで今にも歪みそうなひどい笑顔だけど、
精一杯彼女に向けて、笑顔を向けた。
死の恐怖はもうなく、頭は冴えていた。
どうすれば、この状況を打開できる?
 「よっちーも手伝ってくれないかな?」
俺は聞こえたんだ。
かすかに彼女が『うん』と言った声を。
その声は俺の中にひらめきを与えた。
これは賭だ。
俺は腹に力をこめて
 「あははは!!あっははは!!」
大声で笑い出した。
鉄骨の屋根が、十字に斬られ左半身の拘束がゆるみ、光が入ってくる。
あまりの眩い光に、目が眩むがそこには【あれ】がいた。
 「ふふ、見つけましたです〜。バカですねぇ、自ら笑って居場所を伝えるなんて、ホント、バカですねぇ。正直時間がかかりすぎて方位磁針使うか悩みましたですぅ」
俺は狂ったように、まだ笑っていた。
 「あぁ、痛みに狂ってしまいましたですか、まぁ、いいです。死ぬです!!」
【あれ】は鎌を振り上げる

いまだ!!

俺は動く左手で【あれ】が斬った鉄骨を、一心不乱にぶつけた。
 「なっ!?」
【あれ】は後ろに跳び、それを回避する。
クソ…
 「まだ抵抗する気ですか!!いい加減食われろです!!」
俺はヨロヨロと人形をにぎりながら、立ち上がった。
【あれ】は鉄骨の山の上で、鎌をかまえこちらに突撃してくる、
ボロボロの体の俺にはそれを防ぐすべはない
そう…、【俺には】、


15 :モーグリー :2009/06/23(火) 19:51:47 ID:nmz3k3PD

人形をかざす。
そして、こう呟いた。
 「頼っていいよね、よっちー」
人形は輝き出し、【あれ】が動きを止める。
俺の目の前で鎌が止まる。
 「こ…うく…ん、」
【あれ】の中で彼女がもがき、俺を呼ぶ。
 「よっちー、大丈夫?」
 「やっ、ぱり…、長くは…、保ち、そうに…、あり、ません」
 「俺はどうしたら?」
 「こ、これ…を。」
彼女が方位磁針を、差し出す。
 「うん、出来ることはない?」
俺は足を引きずり、彼女に手をのばす。
 「えっと…、がんば…、れる、おまじ…、ないを…、して、くれ、ます…、か?」
 「なにかな?」
 「なま、えを…、言…、て、」
俺は一瞬驚いて目を見開いた、
そして、
彼女にさっきのように、笑顔をむけ、
 「美春…がんばれ美春」
俺は、彼女の名前を呼んだ。
 「ありが…とう、はや…く、にげ…て。」
差し出した俺の手に、方位磁針を渡して、彼女は倒れた。
俺はガラスが大量に刺さった右足を引きずり、逃げ出した。

左手に人形を握りしめて、

くそ、血が足りなくて視界がかすんできた…。
 「まだもってくれよ俺…彼女の…ために。」
工事現場の裂けるように斬られた。
防音板にもたれながら出ると、
近所の主婦だろう、それが悲鳴をあげたところで俺は倒れた。


16 :モーグリー :2009/06/30(火) 21:07:54 ID:nmz3k3PD

 「よぉ!!人間!!頑張ったな!!神様じゃ!!」
またあの雲の上にいる、そしてあの神だ。
死んでいる気分というのはこんな感じなのだろうか。
心がふわふわとした、浮遊感を感じている。
 「おぬしははあの後、救急車で運ばれての、【あれ】は病院がどれだかわからんし、
  救急車というのもわからないんじゃ、でまぁ方位磁針も無いから迷ってしまっての、
  夜中には狂乱して人間を手当たり次第に斬り始めようとしたから、【あれ】の反則負けというわけじゃ。
  良かったの!!彼女はとり返せたのじゃ!!」
…そんなあっさり?
俺のボーとした頭がそんなことをつぶやく
 「勝負ってのは山を越えたら案外あっさり付くもんなんじゃよ、
  安心するがいい、この3日間のことはワシがちょちょいといじくっておいた、
  さて、お別れの時間じゃ、」
といって神様は樫の杖で頭を叩こうと
 「待ってください!!最後に一つだけ」
意識が朦朧とするがこれだけは聞いておきたかった。
 「なんじゃ?」
  「負けていたらどうなっていたんですか?」
 「消えるんじゃ」
  「えっ?」
 「消えて、名前も忘れられるんじゃ、
  お前さんの彼女が食われた時に周りが騒がなかったじゃろ、
  そんな感じで誰にも思い出されなくなっていき、消えるんじゃ」
 「じゃあ、【あれ】も?」
 「うむ、消える。目覚めたら名前が思い出せなくなるじゃろう、これで満足じゃろ、さらばじゃ!!」


17 :モーグリー :2009/07/05(日) 13:28:00 ID:nmz3k3PD

4日目(火)

また俺はベットの上で目覚めた。
見覚えのある天井。窓から雑木林。
 「ここは?林さんのところ?」
オレはボーっとした頭で天井を眺めてた。
 「目覚めたんですか、ボーっとするでしょうが麻酔のせいですよ、
   あまりしゃべらないでください、傷口が開きますよ。」
俺の視界にあの助手と呼ばれていた、細い男性の顔が映る。
 「この指何本に見えます?」
男性がピースの手を俺の前にかざす。
 「二本」
 「意識は大丈夫ですね、先生呼んできます。」
そういうと男性は立ち上がり視界から去っていった。
誰かの声がする。
 「虹くん!!」
彼女の声がする。
 「虹くん、やっと目覚めたんですね。」
彼女がオレの視界に入ってきた。
あぁ…、
 「あれ?虹くん涙が…、えっ、えっ!?」
 「そういう、よっ、…、美春は、クマが出て、目の周りがすごい腫れてるし、涙目」
彼女は慌てて顔を覆う
 「えーと、美春。」
 「ふぁい?」
オレと目をあわせようとして、慌ててまた顔を覆う。
あぁ、動いてる…。
 「えーと、…オレはなんでここに?」
 「ふぇ?えーとね…」
それから彼女はオレがネコを助けようとしてトラックにひかれ、ここに運ばれ、
3日間眠り続けたらしい、ということを伝えた。
 「らしい?」
 「その、えっと、私の頭がおかしくなってないなら、なんですけど…。3日間って、違いますよね?」
オレは少し驚いた後、頷こうとしたが、首のキブスで頷けない。
だが、彼女には伝わったようだ。
 「ですよね、虹くんが助けてくれたんですよね。」
 「覚えてるんだ?」
彼女が頷く。
しばしの沈黙が訪れる。
 「あの…、」
 「よぉ!!青年が目覚めたって?」
彼女が口を開こうとした瞬間、扉が勢いよく開く音がし、
声からおそらく、林さんが入ってきたようだ。
 「んっ?あれ?アタシはお邪魔虫みたいだが、診察さしてもらうよ?」
彼女が慌てて俺の視界から消え、林さんが喉で笑いながら俺の視界に入る。
 「悪いね、ラブラブの時間邪魔して、アタシは林林、この診療所の独りだけいる
  医者だよ。よろしく。返事はするなよ、傷開くよ。」
あぁ、初対面ってことになってるのか…。
 「さて、仕事仕事。」
林さんは俺の布団をめくり、青いいわゆる病人服を脱がす。
 「キャア!!あわ、あわわ、」
彼女悲鳴を上げる。
チラッとそちらを見ると手で顔を覆って真っ赤になってる、けど、指の隙間から
ガッツリ視てる。
 「あん?あのこ…、そーういゆうことかい。」
林さんの顔が意地の悪そうな笑みに変わる。
まさか…。
 「ほら、嬢ちゃん、きな、へるもんじゃ無いしね。」
やめてぇえ!?
美春もちゃっかりアワアワ言いながら来ちゃったぁ!?
 「アワ、虹くんの体…、アワワワ、ハワァ」
真っ赤でショート寸前ですよ美春さん!?
林さんは豪快に笑い、
 「アッハハ!!、面白いもん、みしてもらったよ。さて、見たところ傷は塞がってきてるね、
  食事も軽いものなら食べな、3日間使ってなかった筋肉を使ってやらないといけないからねぇ」
真面目な診察を開始してるけど、美春が真っ赤でそれどころじゃ無い。
 「喋っても大丈夫ですよね。」
 「そうだねぇ…、」
体のおそらく傷口を触ってるんだろう、麻痺してるせいでよくわからないが。
 「おし、喋ってもいいよ。服はか・の・じょに着せてもらいな。」
 「へっ?ハワワワ、ぷしゅー…。」
あぁ、彼女がショートしてしまった。
 「あらあら、これじゃ、着せられそうにないね、てつ、着せてやりな、アタシはこの子を運んどくから」
助手の人が近づいてきて病人服を着せていく、
彼女はパイプイスに座らされ壁にもたれかけさせる。



取り返せたんだ…。

ホントに“日常”を取り返せたんだ。

“彼女がいる日常”を取り返せたんだ。

平凡な俺が彼女を助けてやれたんだ。

そんなことを考え、
俺は涙を流しながら眠りにつくのだった。



彼女返却予定日

     完



だと思いますか?
感想室に意見をお待ちしております。


18 :モーグリー :2009/07/15(水) 20:49:08 ID:m3knreuF

完結

そこで、日誌はちぎり取られ、この話を読むことは不可能になっていた。

               完

次回作は赤いずきんでも被ってあいましょう。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.