月虹 〜月に虹はかからない〜


1 :嬉野 喜姫 :2009/04/15(水) 15:42:00 ID:xmoJkAYJ

『月華。君は――生きろ』

 立ちすくむ彼女にそう告げたのは、顔立ちの整った二十歳前後に見える男。

『生きるんだ。――華月』

 爆音が響き爆風が男の姿をかき消す。それでも男に触れようと手を伸ばすが、伸びない。
 まるで自分のものではなように、身体が言うことを聞かない。

 やがて――。

『さらばだ。華月』

 自分の唇から他人の声が滑り出る。それと同時に頭から何かの残骸が降り、身体のコントロールが戻った。

「焔……幽季……」
 彼女はただ泣き崩れ――そこで目が覚めた。


◇◆◇◆◇


「違う。continue fighting。to fight じゃ『戦うことを続ける』か『戦うために続ける』か分かんないでしょ?」
「あ、そか。つきちゃん、さんきゅ」
「てか、つきつき、さっき寝てなかった? 何で分かるの?」

「ん〜、なんとなく」

「また始まったよ、つきつきの『なんとなく』。
 この前3年の先輩に教えてたでしょ」
「だって、簡単なとこで悩んでたんだもん」
「積分は難問です」

 授業の合間の10分間の休憩時間だった。
 彼女――是川華月(これかわ かづき)は、いつもの通り女友達とたわいない会話をしていた。

 授業の内容など寝ていても分かる。分からないのは――どんな夢を見ていたか。
 いつも思い出せない。

 教室では滅多にないが、ベッドで寝ていた時など8割がた起きたら泣いている。
 しかし、思い出せないのだ。

 何の夢だったか。
 そして、自分の過去も。

 覚えていたのは自分の名前だけ。人が滅多に寄り付かない山中で、大爆発があった日にそこに居た。分かっているのはそれだけ。
 あとは所持品にこの学校のIDカードがあり、記録を照会したところ合致したのだ。

 だから、ここに通っている。

「じゃ、あたしもう治験だから行くわ」
「あ、気をつけてね」
 記憶喪失の治療のモデルケースとなることで奨学金ももらっており、寮で一人暮らしができている。
 だが華月は治療で自分の記憶が戻るとは思っていなかった。

 何故か、思えないのである。

「つきつき!」
 教室を出る間際、友人が大声で呼んでくる。振り返ると、
「……明日も来るんだよ」
 手を振って応えておいた。


◇◆◇◆◇


 暗い小豆色に塗られた校舎から臙脂のブレザーに身を包んだ小柄な人影が出てくる。

 もう放課となった3年生の進路決定組がちらほらと帰る中に混ざって校門まで歩くと、いつものように医大病院に向かうバスに乗る。
 終点まで乗って降りると、予想していた人物と顔を合わせた。

「月華」
「その呼び方やめてください」

 素っ気なくそう言って、男を無視して歩き始める。とはいっても向かう先は同じなので後から男が付いてきても文句を言えないのだが。

「『月華』じゃダメ?」
「…………」
「可愛いと思うんだけど?」
「…………」
「華に月ってのも悪くないと思うけど、キミは月に華だと思うよ?」

「斜虹(しゃじ)さん」
「何?」

 先に根を上げたのは華月だった。
「人の名前で遊ばないで下さい」

 そう言ったのは医大病院の裏の研究施設の入り口でだった。
 迷わず一目散に中に走って入る。

「あ! 中は走っちゃダメだよ?」
 律儀な性格をしている斜虹は夜中の人気のない場所の赤信号でも変わるまで待つ。
 人との付き合いにもこの律儀さを活かしてほしいと思いながら、華月は目的の部屋まで走った。


◇◆◇◆◇


「――おう……」

「……お目を……お開けください。女王」

「――ん……。……?」

 魘され目を開き、辺りを見回す。
 自分の部屋ではない。

 かといって医大病院の病室でもなかった。

「お待ちしておりました。女王」
 暗い荒野にぽつんと置かれた、場違いもいいところの豪華なベッドの上にひとり。横からした声に振り返り、思考を硬直させた。

 白衣を着た鼠だった。

「……今宵の来ることをどんなに待ち侘びたか。女王、我らをお導き下さい」
 手を取ってキス――したのだろう。実際は丈夫な前歯が当たったのだが。

 どうしていいか分からずに天を仰ぐと、赤い天頂に虹のかかった月が見えた。


◇◆◇◆◇


「……ん……うん……」

「月華。大丈夫だよ。目を開けて」

 優しい声に恐る恐る目を開くと、白い病室だった。
 目の前に、白衣を着た斜虹。こちらを覗き込むように立っている。

「月華は……やめてって……」
「お、意識が戻ったね」

 斜虹は時間を記録すると彼女の手を取って脈を診はじめる。

 その手に幾つもの赤い線が走っていることに気づく。

「……手……どうしたんですか?」
「君が言う?」
 皮肉気に笑い、すぐに真面目な表情に戻ると、
「大したことないよ。ちょっと質問に答えて。
 ああ、ちょっと待ってね。教授に連絡するから」

 言って電話を取って華月が目を覚ました旨を伝えている。

 華月は病室の扉に目をやり、表の磨りガラスの向こうを何かが激しく行き来していることに気づく。
「……外……誰かいるんですか?」
「ん? ああ……」

 斜虹はつかつかと扉の前に行くと、前置きもなく勢いよく開けた。
 臙脂のブレザーを着た2人の少女が傾れ込む。

「久美……雪乃……」
「つきつき、こいつから離れてぇっ!」
「食べられちゃうよっ!!」

 2人が指差していたのは斜虹。
 一方、当の斜虹はというと、どこ吹く風といった顔をしている。

「こいつ、つきつきのこと着替えさせたんだよっ!?」
「看護師さんがいるのにっ!」

 一瞬、斜虹と目を合わせ。
 思いっきり殴っておいた。


◇◆◇◆◇


「……というわけで、医療行為だよ。疾しい欲望があったわけじゃない。
 そもそも僕はショートヘアの大人な女性が好み……」

 長い黒髪の年相応の体格の少女(ただし容姿は可愛らしい)は、もう一度白衣の男を殴った。

 既に久美に雪乃も病室から追い出され、また2人きりになっていた。

「とにかく、君みたいな子供に食指は動かないから安心していい」
「棘がある言い方ですね」
「殴られる前なら事情を説明して詫びたんだけどね」

 斜虹は何かのファイルを開き、
「さ、幾つか質問するよ。

 最後はどこまで覚えてる?」

「……最後?」
 きょとんとする華月に斜虹は手にしたペンを振りながら、
「気絶したのは覚えてる?」

「……え……?」
 言われて夢の更に前の記憶を辿ってみると……思い出せない。
 そう言えば――

「夢を……見たの……」
「何時?」

 書き留めながら尋ねてくる斜虹。

「君は……夢を覚えていないんだったね。
 今回は覚えてるってことでいいかな」

 頷くと、彼も頷き、
「どんな夢だった?」

 言われ、夢の荒野と鼠を細かく語った。


◇◆◇◆◇


 3日間、意識がなかったらしい。
 寮に戻れたのはその日の夕刻だった。
「あ! つきつき、おっかえりー!」

 部屋の前で同じ寮生の雪乃が待ってくれていた。

「いきなり学校休むし、気絶したって聞いたからびっくりしたんだよー! 無事でよかったー!」
「ごめんね。もう大丈夫だから」
「つきつきはあたしが守るからね……って、そういえばあのムッツリスケベは?」

 実を言うと、寮の前まで斜虹の車で送ってもらった上に、何かあったら困るからと合鍵まで作られたのだが。
 しかしそれを言うと斜虹を弁護しなければいけないので触れずにおいた。

「明日、学校来るよね?」
「あ、ごめん。朝から検査入ってるんだ。月曜には行けると思う」
「……そっか。あのムッツリに襲われたらすぐに電話するんだよ? 氷殺スプレーで潰してあげるからね!」

 言って去っていく雪乃の後姿を見送り、ふと自分の爪に目を落とした。

 気絶したのだそうだ。錯乱した末に。
 斜虹の手に幾条も入っていた赤い線は、自分の爪がつけたものだった。

 何故錯乱したかは分からないが、今は斜虹に申し訳ない思いがないこともない。

 ――明日、謝っておこう……。
 そう思いながらドアを開き中に入った。


◇◆◇◆◇


「これは謝らなくていいよ。事故だし」

 迎えにきた斜虹はさらりと言う。
「それより謝って欲しいのは昨日のことだよ。僕を殴ったろ?」

「あ、あれは斜虹さんが……!
 正当防衛です!」

 斜虹の車の中だった。
 信号が黄色に変わり、停車する。そういえば速度も異様に遅い。もしかしたら……
「法定速度で走ってるんですか?」
「当り前だよ?」

 却って事故の元になるような気もしないでもない。

「それより、昨夜は夢は? 見た?」
「あ、いえ、覚えていません」

「じゃあ、気絶する前の状況は?」
「いえ、研究室に入ったところまでしか……」

「そうか。映画のビデオを見せたんだ。『雄鶏ヒヨちゃん』、知ってるね?」
「すいません、そういうのには疎くて」

「君は半分ぐらい見たんだよ? 確かヒヨちゃんの友達のネズミが死んだあたりで――」

 ――死んだあたりで――

 ――死んだ――

 ――シンダ――

 ――シン、ダ……

 気がつけば、赤い空の荒野にいた。


◇◆◇◆◇


 意識が戻った時は、やはり斜虹が傍にいた。
「ああ、今回は早く意識が回復したね」

「私……あ、」
 そうだ。斜虹の話を聞きながら……
「私、また暴れたんですか?」

「いや、静かに卒倒しただけ」
 血圧を測り数値を記録する。と、隣の部屋から斜虹の上司――要するに教授らが姿を見せる。ここは付属病院ではなく研究室だった。
「で、夢は? 見た?」

「斜虹さんの車……」
「車が出てきた?」
 書き留めながら聞いてくる。

「斜虹さんの車に乗って、荒野を走っていました。ラジオからまた『女王』とか、『待ってた』とか……」
「運転していたのは僕?」
「運転席は無人で……斜虹さんはいませんでした」

「で、どこで夢は終わったの?」
「空を見て、虹のかかった月を見たら終わりました」

「そうか……これは、僕らの推測なんだけど……」
 書き留めていた手を休めて、斜虹は言う。
「君は今まで、何かが死ぬ所を見たことがないね? テレビとかも含めて」

 華月は1ヶ月ほどの記憶しか持ち合わせていなかった。それでも常識や一般教養は備わっていたので不自由はなかったが。
 思い起こすとそんな気がする。

「で、キミは死を連想させるものを見聞きすると気を失うんじゃないかと思う。
 まあ、だからこそ今すぐに死体を見せようとか思っていないから安心していい。その直後に見る夢を分析するのが先だろうしね」

 と、斜虹は腕時計を見る。つられて華月も自分のをみたが、午後1時を指していた。
「昼食にして、その後で予定してた検査をしてみよう。ちょっと時間が押してるけどね」


◇◆◇◆◇


 ――まだ、帰っていないようだ……。

 それを認識すると、彼は用意してきた封筒を郵便受けに入れた。
 外見からしても、友達が様子を見にやってきて留守だから伝言を残したと説明できる。

 そして、主導権を明け渡す。

 そこで、臙脂のブレザーを纏った少女は目を覚ました。

「あ、あれ?」
 まるで今気がついたという様子で辺りを見渡し、
「……つきつきの部屋だよ。ボケたかな……」

 いそいそと立ち去った。


◇◆◇◆◇


「月華。僕は何?」

 検査が終わるなり、別室で結果を記録していた斜虹がそう言ってきた。
 首を傾げて反応を待つと、

「さっきの検査、知っているものの映像が出たら検査の針が振れるってものだったんだよ」
 斜虹は華月の後ろの花瓶を指差し、
「その花瓶の映像も覚えがあったろ? 針が振れた。

 でも……僕の写真には無反応だったね?」

「え? あの、でも……その……」

「僕が嫌い?」
「はい」

 即答に斜虹が脱力する。

「でも、私みたいな小娘、眼中にないんだからいいじゃないですか」
「……守ってやらないぞ……」
「え?」

 斜虹は疲れたような様子で、
「いや、いい。とにかく今日は追検査するから。ここに泊まれる?」
「はい。構いませんけど……」
 どうせ雪乃らには月曜まで戻れないと言ってあるし、誰が困るでもない。

 変な夢を見ても斜虹らの助けがあるしと思い、華月は快諾した。


◇◆◇◆◇


「……あれ?」

 翌日の夕方。斜虹に付き添われ学生寮の自室のドアを開けようとして宛名のない封書が入っていることに気づく。

「友達から?」
「……さあ……」

 斜虹に答えつつ封を切り――彼女の意識はそこで途絶えた。

 封書の中身は、真っ赤に染まった紙だった。


◇◆◇◆◇


 また――赤い空と荒野。

 彼女は真っ赤なドレスを纏い、真っ赤なロッドを持っていた。

「来たね。月華。待っていたよ」

 声に驚き振り返ると、真っ白なロッドと冠の、見知った顔がこちらに歩み寄ってきていた。

「さあ、これを。僕と共に不死の最奥を見よう」

 彼は、真っ赤なティアラを手にそう言った。


◇◆◇◆◇


「気がつい――」

 意識が戻ってその顔を見るなり、彼女は彼の頬を打っていた。

 身体が熱い。激しく息が切れ、動悸がする。
 そのくせ、冷水を浴びせられたように寒かった。

「…………月華」
「その名前で呼ばないでっ!!」

 意識が明滅する中そう叫ぶと、斜虹は冷静に、
「変な夢を見たの?」

「……ゆ……め……?」

「見たんだね。どんな夢だった?」
 冷静に言う斜虹に、華月はようやく状況を認識する。

 あの赤い紙を見て倒れたのだ。

「……あ……ごめんなさい。私……」
「錯乱して夢と現実が区別できなくなったんだろ? いいよ。
 それよりどんな夢だったの?」

「そ、その……」
 リアルな知り合いにあんな言動をさせてしまった夢を、つっかえながらも華月は打ち明けた。


◇◆◇◆◇


「ユキぃぃぃいいッ!!」

 大きく叫び、その声に驚いて華月は目を覚ました。

「つきつき……だいじょぶ?」
 呆気に取られた様子で雪乃が訊いてくる。隣には久美もいた。

 あれから1週間。結局は見えるものは見てみようということになり、華月は研究室に泊まって死を連想させるもので眠りに落ちる日々が続いていた。

「ユキって、ゆきちーのこと?」

「……え……」

 ここ最近で変化はあった。荒野の夢は最初に赤い紙を見た時以来見なくなり、代わりに魘される夢を見るようになった。
 だが……夢の内容は覚えていない。

「月華。こっちに来て」

 逆行催眠で夢の内容を思い出させるのだ。

「あの……これって効果あるんですか?」
「ん? 何も知らないような反応が出てるけど?」

 さらりと言う斜虹に脱力する。

「それじゃ意味ないんじゃ……」
「まあ、何か出てくるかもしれないし……ね」

 と、華月の友人2人を振り返り、
「今日はもう帰った方がいいよ」
「はーい」


◇◆◇◆◇


「つきつき、待ってたよ!」

 寮に帰るなり飛びつかれた。

「雪乃? ずっとここで待ってたの?」
「斜虹さんがケータイにもうすぐつきつきが帰ってくるって入れてくれたんだ!」

 小柄な雪乃は華月の首にぶら下がるようにしながら、
「ねえ、上がっていい?」

 言って、許可を得て華月の後ろについて部屋に入った。

「久美はどうしてる?」

 言いながら部屋に入り荷物を下ろすと、雪乃が後ろ手にドアを閉めた。

「ねえ、月華。『ブライツ』って知ってる?」

 途端、確かに背筋が凍りついた。

「ベンターとクレイドの共生関係によって構築される、不死の一族……」



 5分後。

 部屋の中で倒れた少女2人を、白衣を着た男が見下ろしていた。


◇◆◇◆◇


 ――幽季……焔……

 赤い天の荒野。華月は――いや、月華は全てを手中にしていた。

 ブライツという不死の者たちがいた。彼らは寄生体であるベンターとそれを宿したクレイドの総称で、人の世界に紛れて生き続けていた。
 長い長い時を。

 焔というリーダーが一族を裏切り、滅ぼすまで。

 彼女もその一人だった。彼女は幽季(ユキ)というベンターを宿したクレイドで、焔に可愛がられていた。

 そう――焔は幽季を完全に消滅させ寄生関係を消滅させるという方法で、彼女一人を生かしたのだ。

 その焔が目の前にいた。白い冠を被り、白いロッドを持って。

「焔……私……」
「女王。我と結ばれよ。
 共に不死の最奥を」

 彼が発した言葉に、身体が拒否を示す。

「あなた……焔じゃない!」

「そう。その人は僕じゃない」

 振り返れば、もう一人が立っていた。

 白衣を着た――斜虹が。


◇◆◇◆◇


「それは、ただの不死を望む魂だよ」

 つかつかと華月に歩み寄ると、赤いロッドを手に取り投げ捨てた。

「キミが不死の一族の最後の一人と知って、キミに寄生して不死を得ようとしているんだよ。
 今は君の友達に寄生してる」

 真っ赤なドレスを着た華月の手を取り、歩み去ろうとする。

「……女王……不死を……不死を……」

「キミは知らないね。不死がどんなに残酷なものか。
 月華もその残酷さに耐えられず、『死ねる』ヒトに戻りたいと願っていたんだ。

 さあ、行こう。華月。
 空を見て。空を見れば僕の力で現実に戻れる」

「……違う……」

 華月は、ゆっくりと首を振った。
「あなたも焔じゃない……焔は……死んだのよ?」
「ご名答」

 斜虹はにこりと微笑み、
「分かる? こうして直接話すのは初めてだね。

 僕は、朧だよ」

 朧――焔に寄生していたあの朧か。

「生きて――たの?」

「キミを守りたいと願う焔の最後の心が、僕を人間に寄生させたんだ。
 ……もっとも、このなりじゃあ長くは生きられないけどね」

 もう一度、空を見ろと朧が言う。
 斜虹の姿をした魂を見つめた。

「……? 華月?」

 あろうことか、華月は朧の手を振りほどき、斜虹の姿をした魂を抱きしめた。

「華月?」

「私、残る」

 一瞬、沈黙が落ちた。

「何言って――」
「言ったでしょ?」

 華月は顔だけで振り返り、微笑んだ。

「あなたのこと、好きじゃないの」


◇◆◇◆◇


「……あ〜あ、どうする、焔?」

 斜虹は一人呟きながら車のドアを閉めた。

「……って言っても、いないもんは答えようがないか」

 月華を――いや、華月を守る。そのために彼は焔から離れ、見守りやすい人間に取り入りその人格を奪った。

 しかし――今となっては全て無に帰した。華月は肉体と精神が分離され、精神は夢の住人となった。



「……月に虹は、かからないもんなぁ」

 そういえば、残った華月は微笑んでいた。




◇◆◇ THE END ◇◆◇
 


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