突然だけど、人の生きる道筋は既に決められているものだろうか?
運命に翻弄されるなどと言ったり、占いに傾倒する人もいる。
何か途轍もなく大きな存在が僕達のその道筋に関係していて、時折気紛れに、それこそ古代のギリシャの神々のように弄ばれているのだろうか?
本のように、神様の筆によって僕や君達という存在は既に描かれていて、後はそれを眼で追うだけなのだろうか?
君は、君達はそれを否定するかい?
僕は……、まだ解らない。僕の選択によって、僕の中の何かが変えられる力が、本当にあるのか解らない。
だから、君達の意見を参考して、選択しようと思う。
君達は運命を……
>>2 肯定する。現実は残酷だ。
>>3 ――否定する。何が有ろうと変えられる。
――目が覚めた。
ボヤけた視線の先には平凡な教室に机。
教卓では冴えないバーコード禿の古典教師が、クラスの半数が寝ている中で黒板にテストでのポイントを記していた。
チャイムと共に終わる。どうやら今日の最後の授業だったようだ。
担任の到着にも関わらず、相変わらずウルサイ生徒達。
後ろからぶつけられた紙くずにイラッとしたが、後ろの席の不良に逆らう事が出来るほど、僕には力は無い。
担任によるやる気のないホームルームの終了と同時に、何事もなく終わる
バスに揺れながら帰る途中、床に座っている同じ制服の男子と車内で化粧をしている女子に不快感を覚えた。
でも、僕には何も言えない。
僕には何の力もない、ただの高校生だ。
家に帰宅する。誰も仕事でいない、ガランとした空間。
シャワーの始めの水に体を震わせ、お湯に浸かる程の気力が涌かず、そのまま浴室を後にする。
一人で、レトルトのカレーに御飯を盛り、レンジでチンをして頬張る。
何か面白いものは無いかとテレビを付ける。
馬鹿らしい、新人芸人弄りと詰らない内輪ネタ、そして食い物をゲームの景品にする番組の多さに辟易し、更に一チャンネルに変えてもニュースでは現政権を叩く事だけが丸見えの報道しかない。
もう今日一日、何もやる事がないので床につく事にした。
ベッドに入った直後、自宅の駐車場から親の車の音が聞こえてきた。
何となく、親と話すのが煩わしく感じて、寝たフリをした。
徐々に閉じてくる瞳。
何も新しい事も、心震える事もなく終わる一日。
何か、古典の授業であった
――Normal END 『変わらない日常、埋没する日々』
――目が覚めた。
ボヤけた視線の先には平凡な教室に机。
教卓では冴えないバーコード禿の古典教師が、クラスの半数が寝ている中で黒板にテストでのポイントを記していた。
……ボォとしているばかりではない。何か出来るはずだと思い、一生懸命に写してみた。
三色ボールペンでの綺麗な板書。これならテストで見返せるはずだと自画自賛。
チャイムと共に終わる。どうやら今日の最後の授業だったようだ。
担任の到着にも関わらず、相変わらずウルサイ生徒達。
後ろからぶつけられた紙くずにイラッとしたが、後ろの席の不良に逆らう事が出来るほど、僕には力は無い。
それは、本当なのだろうか?
「おい、不快だ。止めろ」
後ろを振り向いて睨むと、今までニヤニヤとしていた不良の顔が「何だよ、それくらいで、怒るなよ」と気弱に言い返しながら歪んだ。
僕の妙に大きな声にクラスの全体が静まり、その時に入ってきた担任により「今日はやけに静かだな」の一言でホームルームは終了した。
何事もなく終わる
バスに揺れながら帰る途中、床に座っている同じ制服の男子と車内で化粧をしている女子に不快感を覚えた。
でも、僕には何も言えない。
僕には何の力もない、ただの高校生だ。
そうなのか? 本当に僕には力がないのか?
「そこに座っているとお年寄りとか座れなくて邪魔ですよねぇ? それに化粧って揺れるバスの中でするものなんですかぁ?」
ギョッとして下から僕を見上げていたその男女は、鈍感なために気付かなかった周りの見下されていた視線にも気付き、気恥ずかしくなったのか、バスを本来の降車場でもないにも関わらずそそくさと出て行った。
家に帰宅する。誰も仕事でいない、ガランとした空間。
シャワーの始めの水に体を曝し、更にお湯に浸かってから、浴室を後にする。
テレビを付けようとして、ふと気付く。
僕は、本当にただの高校生だったのだろうか?
>>4 そう、ただの高校生だ。
>>5 違う、僕は……!
そう、僕はただの高校生だ。
高校生らしく、普通に明日の準備をして過ごしていこう。
そうやって、日々は回っていくのだから。
面白い事はなくても、それが真実。いつも通りの生活で僕は満足なのだから。
――Nomal Happy END 『平凡な日々、小さな満足』
違う、僕は……!
途轍もない大きな存在と壁にぶち当たっていたはずだっ!
そのぶち当たった壁の傍らには仲間がいた!
「帰らないと……」
そう、これは確か、僕が昔、まだ『普通の』高校生だった頃に、帰りたいと思って望んだ日常。
ただの幻影。作られた現実。
日常への埋没が煌きに見えてしまう程、苦戦の連続で、僕自身が望んでしまった一つの空間。
何か、歯車のように惰性に委ねてしまう日々を、苦しみの果ての鎮痛剤に選んでしまった。
歯車に回されていれば痛くない。歯車同士で徐々に磨耗するのが普通の人間。
でも、僕は否定する。
「帰らないと……」
帰って、戦わないと。
錆びて、叩きつけられ、砕けてもいい。それでも一部品のまま、僕は疾駆する。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
自宅の扉を『蹴破って』、外に出て吼える。
一面に広がるのは僕の望みが消えて、真っ白になったキャンバスのような世界。
世界に果てはない。閉じ込められたままなら、それを突き破るのみっ!!
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
体の重さが千倍よりも尚多く枷を掛ける。
この白い世界に、僕の望むままの世界を描けと強制する意思の重さ。
全てを諦めろと選択を迫る無言の重圧。
それに対して、僕は……
>>2 負けた……
>>6 勝ったッ!!
世界が鏡を割ったように罅割れる。
白い世界が砕け散り、炎に塗れた戦場の世界へと舞い戻る。
僕は全ての感覚を取り戻すと、『機体』を操作して奴の前に降り立った。
全長三十キロメートル。化け物級大きさの黒いロボットは人類の敵。
地下帝国を支配していた、旧時代からの人類の敵。
三ヶ月前までは、御伽噺に過ぎなかった人類とは違う者たち。
その地下帝国の指導者『
そいつに対抗するのは、僕が乗るその巨体の約百分の一くらいの小さな蒼い巨人『
「バカなッ!? 『詠み還り』の結界を自ら破いたというのか?! 小癪なぁぁぁぁぁっ!!」
敵の幻術結界を打ち砕いた僕は、建御名方の巨拳を背中にマウントされた両手で振るう巨大な剣、
巨大な圧力にも関わらず、素盞嗚は揺るがない。だが、片方の拳を辛うじて受け止めただけで、このデカブツを倒し切るパワーはない。
そう、僕に必要なのは更なる力、仲間の存在。
足元に倒れているのは同じく僕の仲間が乗る兄弟機の『
彼らが半壊の状態で倒れていた。とりあえず機体の力の源、神力には異常は無いようで、機体は徐々に修復されている。
三位一体で最強の機体。
僕が結界に取り込まれていた中で、それでも僕が結界に負けないと思って戦い抜いた仲間達。
合体しようとしている事に気付き、そのまま踏み潰そうとする建御名方の巨大な機体。
機体のフルパワーで奴の巨拳を僅かに押し返す。
その潰されそうになる足元から素盞嗚の持つ特殊性能、次元自体の歪曲によって加速度を無視した超瞬間機動、『
そのまま素盞嗚の飛行能力、風鳴で建御名方の攻撃の届かない範囲まで後退する。
「ごめん! 遅くなった」
[ 遅いわよ、馬鹿! 馬鹿ぁ! 馬鹿ぁ…… ]
[ 御嬢、彼が帰ってきてから急に強気に戻りましたな ]
「そうなの?」
[ う、うるちゃい! うるちゃい! べ、別に心配していた訳じゃにゃいんだかりゃ!! ]
恥ずかしくなると舌足らずになる天照の乗り手の彼女、どうやら元気そうなようだ。
それにクスクスと笑い、余裕を崩さない月讀の乗り手の彼もわりと余裕そうだ。
「さぁ、それじゃ、いっちょ、あのデカぶつを倒すために……、合体しますか!」
[ うんッ! ]
[ 了解ッ! ]
「素盞嗚、天照、月讀、それぞれ合体承認! (三貴子合神:さんきしがっしん)ッ!」
素盞嗚、天照、月讀が合体し、全長が今までの三倍になった
人類のために戦おうとか、そんな、途方もない、挫けそうになりそうな決意をしたのは、今でも続いているんだ。
昔選んだ選択肢の一つは今の今まで生きている。
選択は選んだ時点で終わりじゃない。選択し続ける事もなくてはならないのだ。
「だから、これからも
体格が大きくなったせいで小さくなった十握剣の剣に、伊邪那岐の神力を流し込んで起動させる。
本来の剣の姿、伊邪那岐の四倍の大きさの
僕の、僕達の戦いはまだまだ続くのだ。
――To be continued 『選んだ戦いの日々』
His fight has not finished until he choose it.