なにかに本気で打ち込める人は、かっこいいと思う。
俺は、なにがしたいんだろうか。
ただ毎日なんとなく過ごして、なんとなく人と付き合っている。
友達?
そんなの、表面上だけの関係だ。
本当に困ったときに助けてくれる人なんて、周りにはいないし、
両親もいない。
こうして、こうやって考えているうちにきっと、人生って終わっていくんだ。
答えなんて見つからない。
なんのために、生きているんだろう。
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「なーにしけた顔してんの?」
桜並木の続く通学路で、少女は深くため息をつく少年の顔を覗き込んだ。
「いや、別に」
少年はぶっきらぼうに答えると、のんきな表情であくびをした。
そんな少年に、少女はにまぁ〜っと笑みを浮かべ、前を歩く少年のひざ裏を思い切り蹴った。
「うっわぁッ?!!」
通称ひざカックンをされた少年は、倒れそうになったがアスファルトの地面に片手をついてなんとか無様な転げ方をしなくて済んだのだが。
「なにするんだよシホ!!!!」
「ふんっ!キラが転校初日だってのにそんな浮かない顔してるからでしょうよ!」
「あ?!別に学校なんか興味ねぇーんだよ!」
「言ったわね!!」
そう言うと、長い桜色の髪の毛を耳の上で二つに結んだ少女、シホはスカートの中に手を入れて、なにか黒く光るものを手に取るとそれをキラに向けた。
「?!!!!!お、おいシホ…?いや、あのさ?・・・」
「なに?ビビッてんの?」
そういうシホはにんまり笑いながら手を下ろした。
彼女は、拳銃を向けていたのだ。
「それって、本物じゃぁないよな?」
本物でなくとも銃刀法違反になるのだが。
「本物だけど。それがなにか」
シホは無表情だ。
「キラ、あんたが今日から通う学校、普通って思わないで欲しいのよ」
「え?」
「そんな顔してると、殺されるわよ」
殺される?
学校で?・・・・は?
なにがなんだか分からない。
桜の花びらが、キラの頬ほかすめた。
ここは、キラが小さい頃に住んでいた街。
親の都合で15歳まではアメリカで暮らしていた。離婚をきっかけに、母親とこの街に戻ってきたのだが、母親は間もなく病気で亡くなった。
シホは、小さい頃によく一緒に遊んでいた奴で、親どおしも仲が良かった。
ただ、小さい頃は…可愛くて優しかったような気がする。
まさかこんな、拳銃を持ち歩くような女に成長しているとは…。
「ここよ。着いたわよ、学校」
色々考えているうちに、どうやら学校に着いたようだ。
シホのコネで入学できるということでこの学校を選んだのだが。
どんな学校なのかとかは全く調べてもいなかったし、場所も知らなかった。
「は?なぁ、ここ…ただの空き地だけど」
シホに案内された場所には何もなく、ただ広々とした空き地が広がっていて、草が無造作にはえている。
「入り口はこっちよ。着いてきて」
シホの後を着いていくと、空き地の中心には半径3メートル程の何かの紋章のようなものが円形に描かれており、シホに導かれて紋章の上に乗ると、
「SAA基地へ」
とシホが呟いた途端、その紋章が様々な色彩の光を放ち、2人の身を包み込んでいった。