マッチとゴミと不審火と


1 :塚里一 :2008/11/24(月) 20:59:03 ID:ocsFuctm

 どうも。
 前回の作品『未定』のシリーズです。
 まったり更新していくつもりです。


2 :塚里一 :2008/11/24(月) 21:02:39 ID:ocsFuctm

プロローグ

   マッチとゴミと不審火と
塚里 一 

   プロローグ


 朝起きると何やら外が騒がしかった。車のドアを閉める音やら,人の話し声やらが混ざった騒音。
時計は朝の七時。迷惑だ。私は目をこすりながらカーテンを開ける。家の前にパトカーが止まってい
る。塀の前には二十人くらいの人だかり。ゴミステーションのところだ。鏡を覗き寝癖を軽く落ち着
かせ,ガウンをはおって外に出る。
 家を出ると,お母さんが隣の加藤さんと話をしていた。「あら,のぞみちゃん」加藤さんが私に挨
拶してきた。それで気付いたのかお母さんがこっちを見る。少し困ったような表情をしている。私は
加藤さんに挨拶をしながら,お母さんに何があったのかを聞いてみた。
「放火よ。放火。誰かがそこのゴミステーションに火を付けていったのよ」右手でもみあげをいじり
ながらお母さんは言った。加藤さんが,こわいわねぇ,なんて相槌を入れている。
 どうやら,今日の朝一に加藤さんがゴミを出しに行ったところ,昨日の夜の内に出されたのであろ
うゴミが燃やされていたらしい。信じられない,とその現場を見ようとしたけれども人ごみのせいで
見えない。人を掻き分けて見に行こうと思ったけれど,やめた。二階の自室からでも見える。そう思
って私は家に入った。

 食パンを食べてから部屋に戻ると,時計は七時四五分を回っていた。パジャマを脱いで,制服に着
替える。鏡で再度,髪型を直しカバンを持つ。いつでも出発できるようにして,窓を開けて外を見た。
流石に野次馬は減ったみたいだ。赤い三角コーンが何個か並んでいて半円を描いている。その内側に
黒い服の人が3人,しゃがんだり立ったりしている。彼らの足もとが妙に黒いのは,きっとゴミが燃
えた跡なんだろう。放火ね,と納得したところで窓を閉めて学校に行くことにした。

 玄関を開けると,何やらざわついている。今度は何だ,とゴミステーションに近づいてみると,立
ち入り禁止のテープの内側に学ランを着た男の人が入ろうとしていた。それに気付いた若い刑事が咎
めるが,あんたに用はない,と軽く手を払って入っていく。その刑事は,茫然と立ち尽くしている。
その様子を見てギャラリーがどっと沸いた。
「やぁ,ヤマさん」その男の人は白髪混じりの刑事をつかまえてそう呼びかけた。あぁん,と苛立っ
た様子でその刑事が顔を上げる。一番のベテランなんだろう。そんな顔をしていた。「なんだぁ,お
前」ヤマさんと呼ばれた刑事は男の人の顔を怪訝そうに見つめてそう言った。「立ち入り禁止のテー
プが見えねぇのか,ガキはとっとと出て行け」しっしっ,と手を振って出ていくように促す。けれど,
男の人は学ランの中から白い名刺を取り出して刑事に差し出した。自分は新聞記者です,と言いなが
ら。ちらっと,年配の刑事はそれに目をやって,すぐに顔が真っ赤になった。唇がわなわなと震えて
いる。
「ん? どうしました?」そう言った直後に,男の人は殴りとばされた。
 手に持っていた名刺が私の足もとに落ちる。拾い上げて見てみると,「新聞記者 山田 聡一郎」
と書いた横に,私の通っている学校の住所と電話番号が,汚い字で書いてあった。


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