一場面集


19 :森谷 空 :2011/11/01(火) 15:07:03 ID:ncPinitkoe

あんたなんか

 天上静馬は溜息をついた。
「何なんだほんと、お前」
「こっちが何なんだって言いたいわよ。何がしたいわけ?」
 静馬の席の前に座っているのは同じクラスの倉茂友香だった。前の席の椅子を後ろに向けて静馬と向かい合っている。窓の外から野球部の掛け声が聞こえてくる。薄暗い室内に窓際にだけ光がわずかに差し込んでいる。
 静馬は椅子にだらしなくもたれかかっていた。目はいつも眠そうだ。
「別に何もしたくない」
「なら何であたしがこの前、がらの悪い連中に言いがかりつけられてるとき助けてくれたり、体育で怪我したとき介抱してくれたの?」
「あれは、別に、偶然通りかかっただけで」
「自転車置き場で自転車が倒れてるのも勝手に直してるし」
「あ、いやまあ」
「学校内にいついてる猫といつもじゃれ合って、エサあげたりしてるし」
「それは別にいいじゃねえか」
「なのに、何でそんなだらしない態度なわけ? 不良気取り? やるなら本気でやりなさいよ」
「お前に言われることじゃねえよ。これが俺のスタイルなんだ」
「中途半端なのよ、あんた。見ててイライラしてくる」
「あ、そうですか」
「なんであんたなんか――。どうしてあんたなんかを――」
「……何? 俺がどしたって?」
「いい。気にしないで、いまの」
「ん。ああ。そうか」
「どうかしてたわ、まったく」
「そうか、どうかしてたんだな、お前」
「あんたに言われたくないわよっ!」
「ってえな、殴ることね……って、殴って帰るってありかよ! 待てって」
 何だかふて腐れてツンとした表情のまま、慌てて友香が帰ろうとするので、静馬も立ち上がって後を追いかけていった。

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