一場面集


17 :森谷 空 :2011/10/31(月) 15:03:59 ID:ncPinitkoe

約束の時間

 玉崎友哉は部屋のインターフォンを押した。小さく音が聞こえる。
 約束の二時に合わせて来たので迷惑にはなっていないはずだ。恭一のアパートは真新しく、つやがあった。
 少し待っても反応がないので友哉はもう一度インターフォンを押して待つ。聞こえるのは周囲を走る車の音だけ。
 友哉は腕時計の文字盤を確認し、二時を三分過ぎたのを確認する。ドアの脇にある窓から中を覗き込もうとするが、曇りガラスで中が見えない。依然として物音が聞こえない。もしかして出掛けているのだろうか。友哉は少し不安になるが、とりあえずドアを引いてみた。ハンドルを引くとかちゃりという音がし、やや重く緩やかにドアが開いた。
「物騒だな」
 眉を少し寄せつつ、部屋の中を軽く覗き込む。
 中は暗く空気が澱んでいた。短い通路の先に、ドアが一枚見え、わずかに開いている。
「恭一、いるのか?」
 声が薄暗い室内に吸い込まれる。ドアの先からだろうか、かすかに機械のうなる音が聞こえる。
 少ししてどさどさっと何かが落ちる音がし、がしゃんばたばたと何かを倒したような音と、足音が聞こえてきた。
「あたたた。友哉か。ごめんごめん、ちょっと熱中しちゃってて」
 奥のドアから小柄な恭一がのそのそと出てきた。ぼさぼさ頭に眠そうな目。可愛らしい外見に似合わない姿であわわわとあくびをしている。暗くてもわかる白い腹をぼりぼり掻く。
 友哉は恭一のその格好を見て思わず笑った。恭一らしいかなと思った。
「今の音、大丈夫?」
「ああ、本を倒しちゃっただけだから平気平気」
「小説はできた?」
「んー、まだまだだね。どうもうまくない」
 言いながら友哉は部屋の中に上がり、玄関のドアを閉めていく。

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 本文だけで、50分かな。
 設定が60分。
 約1時間50分。
 1080文字。
 たまには男二人もいいかなと。可愛らしい男にふふふとなっていただければ。


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