一場面集


15 :森谷 空 :2011/10/30(日) 02:32:09 ID:ncPinitkoe

秘めごと

 普段は人気のない体育館裏に、今は一組の男女がいた。
 日差しの届かない、蒸した空気の漂う中で、二人は抱き合っていた。今は昼休み。生徒たちのはしゃぐ声は遠くくぐもって聞こえる。そばにある塀の向こうから生えた木が、葉を落とし、かさかさと音をさせる。蝉がどこかで鳴いている。
 男が体育館の壁を背にし、女が男の胸に顔を、体を預けていた。男は優しく肩から垂れている女の髪を指ですき、もう片方の手で女の頭を撫でている。その様子からは二人の仲睦まじさを感じさせる。言葉はなくても構わないのだろう。二人は共にブレザーを身に着け、清潔感のある着こなしをしていた。
 風が吹き、かさかさと地面で葉が舞う。
 女がゆっくりと顔を上げ、男を見上げる。男は手を止めず、女の視線を受け止める。何秒か見つめ合っていると、女の意が伝わったのか、男がほのかに笑みを浮かべ、微かにあごを引く。女はわずかに目元を緩ませると、男の背に回していた手を引き、今度は彼の首に回した。それに合わせて男も手を彼女の背に回し、軽く抱え込むようにする。
 準備は完了したとばかりに、二人の顔は少しずつ近づいていく。男が少し顔を傾け、女も男とは反対側へ角度をつけて迫っていく。
 お互いに接触させようとしているのは、唇と唇だ。
 徐々に徐々に二人の唇が近づいていく。熱い吐息を十分に感じる距離。
 お互いの、柔らかい唇の感触を、体温を、そして漏れ出す唾液を体感する未来を頭に描いたとき。
 突如、がさがさっと乱暴に葉を踏む音が聞こえた。次いであっ、という驚く小さな声と、息を飲む空気。
 二人が反射的に顔を離し、音のした方へ顔を向けると、手を繋いだ制服姿の男女が陰から二人を見ていた。彼らも二人と同じ目的でここへ来たのだとすぐにわかる。やってきた二人は戸惑った様子で慌てて来た道へと戻っていった。
 再び二人のいる空間に静けさが戻り、蒸し暑い空気を思い出す。蝉がどこかで鳴いている。
 二人は少しの間、今起きたできごとに呆けていたが、目線を合わせるとどちらともなく笑い出した。そして女の側から軽く、男の唇へ、ちょこんと口づけをすると、二人は体を離し、何事もなかったかのように手を繋いで体育館裏から自分たちが過ごす日常へと戻っていく。
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 設定から合わせて、2時間15分くらいです。
 1200文字
 こそこそいちゃいちゃしてる二人を書いてみたくて書きました。こそこそ感が出ていればいいです。


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