一場面集


14 :森谷 空 :2011/10/29(土) 15:23:15 ID:ncPinitkoe

目覚める

「ねえちょっと、そこのあなた」
 東堂千晴はぼさぼさ頭の少年の背をつついた。入学式後、教室でのホームルームが終わり、廊下に皆が流れ出ているところだった。千晴と彼――高杉は同じクラスだ。
 気だるい調子で高杉は振り返る。
「……なに」
「なにって。わたしが気にならない? あなた、入学式からわたしを見てないけど」
 千晴は髪をかき上げて耳にかけ、不敵に微笑む。廊下にいる生徒は彼女を見ている。
「なんか変?」
 少女を見下ろし、高杉はぽりぽりと頬を掻いている。
 千晴は目を開く。
「え? この人たちみたいにわたしに魅力を感じない?」
「……そういやそうだな。俺はよくわからない。それがどうかした?」
 あくまでも高杉の返事はは千晴に興味を持っていない。千晴はぐっと奥歯を噛みしめ、顔を赤くした。自分に興味を持たない男がいることが気に入らなかった。 
 感情的になるあまり、口をついて出てしまう。
「あんたなんか大嫌い!」
 廊下に響き渡る高い声。皆、びっくりして彼女を見ている。
 千晴はハッとした。手を口の前に持ってきて目を泳がせる。こんなこと言うつもりはなかった。高杉は大きく目を見開いたあと、呻き声を上げ、体を折り曲げていた。
 悔やんでも遅い。自分に興味を持たない男が初めてで取り乱してしまった。
 そこに、「……もっと言ってくれ」というぼそぼそとした声が聞こえてきた。高杉が顔を上げて口を開いていた。
 千晴だけでなく、様子を見守っていた生徒たちも驚いている。高杉のみ恍惚とした表情を浮かべ、千晴を見つめていた。
「もっと大嫌いって言ってくれっ。なんか俺、そう言われると気持ちいい!」
 にじり寄る高杉から数歩下がる千晴。皆は散り散りに逃げていく。傷つけるどころか、変なものを目覚めさせてしまった。千晴は引きつった笑いを浮かべていた。

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 設定からここまで、4時間くらい。
 1080文字
 自然な流れになったかどうか。思わぬ展開を書きたかったんです。


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