一場面集


13 :森谷 空 :2011/10/27(木) 15:23:04 ID:ncPinitkoe

ごほうび

 何でオレがこんなことしなきゃいかんのだ。壮太は下唇をつき出していた。
 所は学校の屋上。やっと授業が全部終わって遊ぶぞーってときにアイツがオレを引っぱって台無しにしやがった。冷たい首筋をとおり、ぶるっと体がふるえる。冷えた土を触る手が痛い。
「ちょっと、曲がってるっ。花がかわいそうだよ!」
 ゲっと壮太が思ったのもつかの間、どんと体当たりを受け、右へ体勢を崩した。
「ってえな、何すんだよ沙耶香」
「壮太がへたくそだからだよっ」
 キッとひと睨みし、先ほどまで壮太が植えていた黄色い花を綺麗に植えなおす。白い指先が汚れるのもかまわず、沙耶香は丁寧に花を土を扱っている。
 環境美化委員会。沙耶香はそこに入っていて、今はほかのメンバーもいる。屋上のフェンスに沿って花壇があり、それぞれの位置で作業をしている。ただ、男手もほしいということで壮太は無理やりに連れてこられたのだった。
 どうもオレは沙耶香が苦手だ。壮太は小さく溜息をついた。
 思ったことをまっすぐに言い、行動する。それでいて嫌みを感じない。壮太はいつも翻弄されていた。
「ほらできたっ。こうやってやるんだよ」
 土のついた手で顔をぬぐう。満足げに口もと緩める沙耶香。横からの日差しもあって、その笑顔が不意にいつもより綺麗に見えた。沙耶香が不思議そうな目をした。気づいて壮太は慌てて目をそらし、「お、おう」と上ずった声で応えた。自分の心臓が不必要に鼓動を打っていることに壮太は戸惑う。
「じゃ、また様子見にくるから。いまやったみたいにやっといて」
 立ち上がり、沙耶香は自分の持ち場へ帰っていく。歩く動きに合わせてひらひらと揺れるスカートが遠ざかろうとする。
 と、数歩歩いたところで沙耶香はつまづき、べちゃと倒れこんだ。慌てて壮太が駆け寄ろうとすると、強めの風が吹きつけ、沙耶香のスカート大きくまくり上げて抜けていく。
 しっかりと見てしまった。
 水色の、横に伸びたつぶれたクマの絵を。
 ほかのメンバーが助け起こす中、壮太は動けないでいた。
 そしてこうも思っていた。
 こいつに振り回されるのもわるくないな、と。
 気がつくとすぐ目の前に顔を赤くした沙耶香がいて、「見たでしょっ!」と詰め寄っていた。
「み、見てねーよ。見るわけねーだろ!」
「ぜっっったいに見た! 見たっていうまでゆるさない!」
「だから見てねーってばっ」
 皆が見る中、二人は長いこと言い張っていた。今日も二人の元気な声が学校に響く。

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 1480文字
 約5時間
 いいことあるよってことです(笑)。ぷぷって笑っていただけたら嬉しいです。


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