ふたりぼっち。


1 :梨莉子-Ririko- :2009/11/15(日) 13:54:17 ID:WcuDu3nn

ギターしかない私と。
ダンスしかない貴方…

ひとりぼっちのふたりでも。
一緒にいればふたりぼっちになれる…

ねぇ…

一緒に、居よう?

一緒に、居たいよ…


2 :梨莉子-Ririko- :2009/11/15(日) 14:00:53 ID:WcuDu3nn

プロローグ

「ん………っ」


小さく小さく、ついばむような口付け。


僚は真琴の唇に自分の唇を重ねた。


二人で顔を見合わせて少し笑う。
僚は真琴をぎゅっと抱きしめ、彼女の髪の香りを楽しむように顔を寄せる。
「…くすぐったい…」
くすくす、と微笑む真琴も同じように、僚の首筋に顔をうずめた。

「まこ……」
僚は抑えることが出来ずに彼女の首筋にキスを落とす。
びり、としびれるような感覚が真琴を襲った。


3 :梨莉子-Ririko- :2009/11/15(日) 14:17:55 ID:WcuDu3nn

頭がぼーっとする…。

そんなことを思いながら、僚のキスを受ける真琴。

だが…


「……今日は、遅いから。送る」
唐突に僚は真琴の体を引き剥がし、自分はさっさと立ち上がってダウンを羽織った。

「…うん」
真琴も立ち上がりコートを羽織る。
鞄と、壁に立てかけてあったギターケースを背負う。

それを確認すると僚はさっさとキーを手に取り玄関に向かった。
真琴もそれに続く。


僚のマンションを出てからは、無言だった。
僚は真琴の少し前を一人で歩く。
僚の背中を追う真琴。

そんな微妙な距離。
それが二人の、距離だった。


4 :梨莉子-Ririko- :2009/11/15(日) 14:30:44 ID:WcuDu3nn

「じゃ、な」

駅にたどり着いたのは、僚のマンションから歩いて10分ほど経った頃だった。

真琴を振り返る。
別れのスタンバイはもう整っているようだ。

「うん、ありがとう」
そんな僚に真琴は笑顔を向けて応えた。



小さく手を振り、改札をくぐる。
そのまま真琴はホームへと向かった。


――そんな真琴の姿が見えなくなるまで見送ってから…

僚は小さく微笑んだ。


5 :梨莉子-Ririko- :2009/11/15(日) 17:41:37 ID:WcuDu3nn

真琴は、ホームにたどりついて程なくしてやってきた電車に乗り込んでいた。


ふぅ………


深く息を吐いた。


今日も、一緒にいられた…
それだけで真琴は満足だった。
本当は………
もっと一緒に居たい。
もっとそばに居たい。


でも。
彼のペースを乱したくない。
迷惑もかけたくない。

そんな思いが、真琴の行動をセーブしていた。

それでも真琴は、僚を好きで。
僚も自分を好きだと言ってくれる。

それ以上、何を望むの?

結局思考はそこにたどり着き、今日も真琴はひとり電車に揺られ家路につくのだ。



ガタン…ガタン………



心地よい揺れは真琴を落ち着かせ、僚と交わした小さな小さなキスを思い出させる。
ふふっ………

マフラーで隠れた口元に小さな笑みを浮かべ…
そっと目を瞑った。


6 :梨莉子-Ririko- :2009/11/15(日) 19:49:20 ID:WcuDu3nn

第一章

「おはよー、まこっ」

真琴に後ろから声を掛けてきたのは、クラスメイトの山下美乃里だった。

「おはよー」
挨拶を交わすと美乃里は真琴の前の机に座る。
「どしたの?元気ない?」
美乃里は真琴の顔を覗き込んで尋ねた。
「ううん…そんなことないよ」
「ふーん…ならいいけど…」
少し納得いかない表情をする美乃里だが、それ以上は追求しなかった。

美乃里は入学してから同じクラスになり知り合った。
それ以来3年ずっと同じクラスで、真琴の一番の理解者でもある。

「おはよ〜、まこ、みのっ」

美乃里がやってきてしばらく経ってから、また元気な声が二人に掛けられた。
大杉佳代。
彼女は2年のときに同じクラスになった。
真琴――大塚真琴――とは一番最初の名前順の席で前後だったので、話すようになった。

「おはよ!ってか、その『みの』ってのやめてってば」
「え?今更!おばさんたちに人気ありそうで良いじゃん、ねぇ真琴」
くすくす、と真琴は笑みだけ返す。
確かにもう2学期もそろそろ終わりを迎える。
今更ではあったが、二人のやり取りは真琴の心を和ませる。


「おはようー。みんな席に着けよ」

ガラッとドアを開けて、担任が入ってきた。
教室でざわついていた生徒たちはそれぞれの席に散り、佳代も二人から少し離れた自分の席に着く。

「――起立、礼、着席………」

一通りの朝の儀式を済ませると担任は、束になった用紙を配り始めた。

「えー、今配ってるのは、みんなの進路を先生が把握するためのものだ。最終的な進路を書いて欲しい」


憂鬱だ。
高校3年。
それぞれの道に進む、大きな分岐点。


プリントが回ってくる。
進学、就職なんて曖昧なものではなく、受験予定の大学や専門学校の名、就職先の名前を記入する欄が並ぶ。

はぁ………

と真琴は密かにため息をついた。


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