暴走センセー!


1 :りり :2007/08/21(火) 13:49:01 ID:nmz3oAQ7

 唐澤健、20歳!

特技・バスケ(運動) 苦手・勉強

榎本小学校の教師です!!


2 :りり :2007/08/21(火) 15:03:53 ID:nmz3oAQ7

桜が舞う4月の朝…時計を見ると、すでに8時を回っていた。

「やっべ!遅刻じゃん」

健はベッドから飛び起きた。
今日は榎本小学校の始業式。新任教師紹介で、健が呼ばれることになっていた。遅刻などしたら絶対に教頭が黙ってない。

健は友人に借りたスーツを身にまとい、アパートを飛び出した。

走っているうちに、「榎本小学校」と書かれた看板を見つけた。まだ門が開いている。
急いで門に入り、職員室に向かった。

「すいません!遅れました!」

「…やっと来たのね。唐澤先生」

入った途端、6人の教員の冷たい視線が刺さってきた。まぁ、当たり前だろう。

「初日から遅れて来るなんて…やる気あるんですか!?」

「…申し訳ありません!」

「それを言うなら折野先生に言ってください。あなたの代わりに始業式の資料をお作りになったんですから」

教頭が健を呆れた様子で見て、それから後ろにいた折野忠志先生を見た。健は頭を勢いよく下げる。

「すいません!ありがとうございました!」

折野は黙って自分のクラスの名簿を見ている。健のことは完全に無視だ。

「唐澤先生、もう始業式が始まります。私たちは生徒の誘導をしますから、ここで待機していてください。生徒に見つかることがないようにしてくださいよ」

「はいっ」

教頭、その他の教員が職員室から出て行った。健はホッと胸を撫で下ろす。

…俺、やってけるかな?

一瞬、頭にそんな思いがよぎった。

「…あっ、だめだろ俺!大丈夫!できる!」

一人で納得したものの、やっぱり不安が頭をよぎる。すると、職員室のドアが叩かれた。

「…誰だ?」

「失礼します」

声と共に、扉が開かれた。そこには、若い女性と小さな男の子が立っている。健は笑顔で尋ねてみた。

「どうしました?」

「あの…ここの新入生なんですけど、今日遅刻してしまって…」

「あ、大丈夫ですよ。僕も遅刻しましたから」

「え?」

「あっ…いや……あの」

「はい?」

「僕がこの子をお預かりしますよ。今他の先生方が体育館の方へ行ってしまったので」

「あ…それなら、お願いします」

「はい。お任せ下さい」

「ありがとうございます。じゃ、拓、お母さん仕事だから行くね。先生の言うことちゃんと聞くのよ」

「うん。拓、聞くよ」

「はい。じゃぁ、お願いします」

「はいっ!」

男の子のお母さんは行ってしまった。小さな男の子は、黒いランドセルをしょったまま健を見詰めている。

「名前、何て言うの?」

「…磯島拓」

「…たく、か!カッコイイ名前だなっ」

「へへっ」

拓は照れ笑いを浮かべた。健は拓の頭を撫でて、しゃがみ込んだ。

「体育館いこっか。先生と友達、いっぱいいるぞ」

「うん!」

健は拓の手を握り、ランドセルを職員室に置いて廊下に出た。

…これが、俺の初めての仕事だ!

「ねえ、お兄ちゃんは何て名前なの?」

「俺?唐澤健だよ」

「健かぁ」

お兄ちゃん。
そのとき健は、自分が先生だと思われていなかったことに気付いていなかった。

それから学校のこと、友達のこと、拓の幼稚園の頃のことなどを話しながら二人で廊下を歩いた。

健は、教頭に言われた“生徒に見つからないように”という注意がすでに頭から消えていた。


3 :りり :2007/08/22(水) 09:24:48 ID:nmz3oAQ7

体育館ではわずか六人の生徒が横一列に並んで座っていた。教員達は円を作って、話し合っている。

「教頭、唐澤はどうしてこの学校に勤務することになったんですか?俺は納得出来ません」

「折野先生…校長がお決めになったことです。私たちは何とも口を出すことはできないのですよ」

「私もおかしいと思います。教頭」

「橘先生まで…」

話というのは、健のことだった。この榎本小学校は生徒の人数が少なく、教師は校長が雇うことになっている。健は校長に相談し、雇われたのだ。しかし健は他の教員から嫌われる存在となってしまっている。

「遅刻するし、俺たちより若いのに礼儀がなってないし…困りますよ」

「そうですよ!ねぇ椎名先生」

「…私は別に」

「そ…そうですか」

橘が椎名に話しかけると、いつもの冷静な口調で返された。少し寂しそうな橘に対して、椎名はずっと無表情。2人が黙っていると、教頭が口を開けた。

「…とにかく、唐澤先生が何かやらかさぬよう皆さんでフォローするんですよ。悪いイメージが出たら、廃校にもなりかねませんからね」

「はい」

「…教頭先生!」

教員達の返事と同時に、教頭を呼ぶ声がした。声のする方を見ると、健がいる。その隣には男の子がいた。教頭は慌てて健の元へ向う。

「唐澤先生!外へ出なさい!」

「えっ?」

「新しい先生だぁ!」

1人の生徒が立ち上がった。それにつられて、他の5人の生徒も立ち上がる。そして嬉しそうな表情で、健の方へ走ってきた。

「えっ?なにっ?」

「ねえお兄ちゃんなんて名前?」

「まどか、お兄ちゃんじゃなくて先生だろ!」

「先生じゃないよー!お兄ちゃんだよっ」

「え……何?」

…お兄ちゃん?先生なんですけど…キミたち。

健が突っ立っていると、椎名がきた。

「みんな、さっきの場所に戻りなさい」

椎名は無表情のまま言った。生徒達は慌てて元の場所へ走っていく。怖がっているようだ。

「…あんた」

「はいっ!?」

「教頭に職員室から出るなって言われたでしょ。何で守らないの」

「すいません!」

「…あんた謝ってばっかだね」

「…え?」

「たけるー…」

急に健の名前が呼ばれた。拓が呼んだのだ。

「なに?」

「この先生怖いよぉ…」

「えっ?」

椎名を見た。無表情の顔が少し歪んでいる。拓の顔と椎名の顔を交互にみると思わず吹き出しそうになったが、堪えた。

「…唐澤先生!こっちへ来て下さい!」

「あ…はい!」

拓の手を放そうとした。しかし、拓は放そうとしてくれない。

「たく、俺が来るまでこの………すいません、名前何ですか?」

健は椎名に視線を向けた。相変わらずの表情と口調で彼女は答えた。

「椎名」

「あ…たく、…椎名先生と待ってて」

「やだ。怖いもん」

「怖くねえよ。椎名先生美人じゃん。知ってるか?美人には笑わない顔のが似合うんだぜ」

「びじん…?って何?」

「ま、いいよ!とにかく椎名先生と待ってて!いい先生だから大丈夫!」

健はそういうと、教頭の方に走った。拓は椎名の方に走って、椎名をじっと見詰めた。

「磯島拓です」

「あら、ちゃんとした子ね。私は椎名梢です。よろしくね、拓くん」

椎名は少し笑みを浮かべて、拓の目をしっかり見た。

「椎名先生、笑ったぁ…たけるの言ったこと間違ってるよ!」

「え?」

「びじんには笑った顔のが似合うよ!」

「…そう?」

2人は健を見た。そこには教頭に怒鳴られて、頭を何度も上げ下げする健の姿があった。しかし、健の顔は笑っている。椎名はまた少し微笑む。

「たける、笑ってるよぉ?」

「変なお兄ちゃんね」

「そうだね」

健が笑っている理由は…
椎名梢がとても美人だったからだ。


novel plaza system
甘辛流小説家ギルドGAIA
produced by COLUN.