Blood×Blood


9 :銀次 :2007/03/08(木) 21:33:57 ID:mmVcVLk7

〜9〜


「皆・・・・・・見て。」

 風明はおもむろに彼の右手の甲を覆っていた、手袋をはずした。するとそこには、今まで無かったはずのタトゥーのような物が描かれていた。炎をモチーフにしたような模様で、よく見れば黒ではなく濃い赤であることがわかる。
 そして、そのタトゥーらしき物は「描かれた物ではない」と自己主張するかのように、よく見れば模様の中で炎が揺らめくように色合いが移り変わっていた。

「これは、俺がケルと契約した証。・・・・・・だから昨日俺はアイツに勝てた。
 えっと・・・・・・あぁ〜・・・・・・俺説明するの苦手。やっぱりケルに頼む。出てきてくれ”猛る獄炎”。」

”猛る獄炎”。これは、風明がケルにつけた真名(まことな)だ。自分の守護者と契約を結んだ時、守護者に『真名』をつけてもらい初めて契約が完了するのだと。ちなみにケル曰く、彼自身以外にはケルベロスは居ないらしい。
彼がケルの真名を唱えると、今まで揺らめいていた炎のタトゥーから本当の炎があふれ出し徐々に形を成した。





 紫色のヨークシャテリアの子犬の姿に。





「きゃぁ〜〜!!なにこれぇ〜!?メッチャかわいい!!」


 確かにメッチャかわいい。ヤバイありえん、ホンマにケルベロスかよこいつ・・・・・・。本物のヨークシャテリアと違うのは色が紫なのと・・・・・・二足歩行してること。
 美香があまりの可愛さに嬉しい悲鳴をあげてツンツンと子犬を突っつく。

「コラッ!やめんか!突っつくな!!!オイ・・・・・・コラ!!!私はケルベロスだぞ!!っていうか風明!!!なんで俺をこんな姿にしやがったこの野郎!!」

 突っつかれたケルが精一杯跳ねながら抵抗するが、サイズ的に抵抗になってない。というより、小さい犬が二足歩行でぴょんぴょん跳ねながら、子どもの声で講義してる姿は、余計萌える。どうやら、この姿の時は普段ほど硬い口調では喋らないようだ。必死の抵抗もむなしく結局、今度は和葉に鷲づかみにされて、こねくり回される。ケルの可愛い悲鳴がしばらく部屋に響き渡ったことは・・・・・・言わずもがな。

「っえへん!それでは本題にうつるぞ。」

 せっかく美しい毛並みが、撫で回されすぎてかなり乱れている。しかも若干元気なさそうだし。懸命に平静を装うケルの小さい姿で頑張る姿を見て、太一たちの後ろで緩んだ顔がなかなか締まらない和葉と美香がいた。

「真面目な話だ。真剣に聞いてくれよ。」

 姿は子犬とはいえ、その目から漂う真剣な空気に緩んでいたほうが自然と締まる。なんたって地獄の番犬ですから。

「昨日、お前達が見た化け物。アレは現世の生き物じゃねぇ。まぁ、俺も現世の生き物じゃ無いんだがな。アレは夢の世界の生き物だ。」

 いきなり別世界とか言われて、誰も話しについていけてない。四人の頭の上にバカでかいクエスチョンマークが浮かんでいる。

「夢の世界っていうのは、生まれてくる時に持ってた力が微弱な奴が行き着く先で、力のある奴は現世で生まれる仕組みになってる。そんで・・・・・・」

「ちょっとまってくれや。アイツら確実にこっちの世界の普通の生き物より強いやろ? どこが力が微弱な奴やねん??」

 ケルの説明の間に、拓真が浮かんだ疑問をねじ込む。

「話は最後まで聞けよ。力が強い奴は現世で生まれるんだが、その力を暴走させないために全員ある足かせをつけてるんだ。その足かせってのはなお前達の体そのものだ。
肉体ってのは精神エネルギーを抑制するための器で、昨日のあいつらにはソレがない。あれは、高密度の精神エネルギーの塊だ。
ちなみに寝てるときは、体と関係なく意識が自分自身の想像力そのものになるから、精神エネルギーの世界である夢の世界にいきつくんだ。」

「高密度・・・・・・って全然微弱な力じゃないやん。」

「そうだ、そこなんだよ。夢の世界の生き物って言ったって、肉体が無くて精神そのものっていう点を除けば現世の生き物となんら変わりないはずなんだ。成長もするしいずれ寿命で死ぬ。
もちろん、あんな化け物みたいな種族は居ないはずなんだ。考えにくいが、アレは夢の生き物をあとから何か手を加えた合成獣・・・・・・つまり『キメラ』だな。」

 今まで、なにか悩んでいるかのようにうつむいて黙り込んでいた太一が口を開く。

「だいたい話はつかめてきた。まぁ突拍子の無い話しすぎてかなり面食らってるけどな。昨日のアレ見た後じゃ、何言われてもマジにしか聞こえねぇよ。
どうせアンタが言わんとしてることは、現世に居るはずの無いキメラを倒せってことだろ? 違うか?」

「・・・・・・! その通りだ。」

 ケルが驚いたように頷く。驚いているのはケルだけじゃない。和葉も美香も拓真も風明もこれほど鋭い目をした太一を見た事など無かったのだ。彼にすればケルはまだまだ信頼できない対象なのだろう。まぁいきなり現れて別世界がどうだのと話しだす二足歩行の犬を信用しろと言うほうが無理な話だが。

「俺の疑問は三つだ。まず、風明と契約して力を貸しただけで、あれだけの強さを発揮するぐらい強いアンタが何で自分自身でそのキメラを倒さないのか。
それと、夢の世界の生き物じゃ普通有り得ないほど強いあの化け物を瞬殺するアンタはなんなんだ? そもそも守護神ってのは誰にでも居るモンなのか?あんたの口ぶりだと風明以外にもこの中に憑いてる奴が居るんだろ?」

 太一が的確な疑問をなげかける。

「良いね、そっちの理解が速いとこっちも助かる。一つ目の理由は簡単だ。俺は風明の守護神として風明の中に普段居るから、勝手に外に出る事は出来ない。今も、風明が契約を執行して俺は外に出てきただろ。
三つ目の質問だが、守護神は誰にでもいるわけじゃない。だが、守護神を持ってるか持っていないかは本能的なもので嗅ぎ分けるようになっていてな、お前達全員に守護神は憑いている。それが理由で、本能的にお前達5人は惹かれあったんだ。
二つ目の質問は少し答えるのが難しいんだが、今までの話に出てきた現世と夢の世界は両方とも生前の世界なんだ。俺は、その世界で死んだ後の死後の世界の住人だ。
どっちの世界で死んでも、三つの世界に振り分けられるんだが、一つは俗に言う地獄だ。これは生前に大きな罪を犯した者が行く先で、これから先転生することは永久に無い世界だ。
もう一つは・・・・・・言葉で言い表すのは難しいが、次に転生するまでの順番待ちをする世界で、ほとんどの魂はここへおくられる。
最後の一つが俺が居た世界で、ようするに神々が住む世界だ。生前に精神エネルギーが特に強かった者がココに送られて、守護神になる資格である神格を与えられるんだ。神話に出てくる神様とか、俺みたいな空想上の生き物は、ほとんどこの世界に実際に生きているよ。」

 太一の適切な判断と質問に満足したように頷きつつケルが答える。

「それを俺達に信用させる証拠は?」

「しいていうなら、昨日みせた俺の力が証拠だ。さてと・・・・・・俺からの説明はこれまでだ。
これからお前達には守護神との契約を結んでもらう。拒否するならすれば良いが、キメラどもはお前らを執拗に付け狙うぞ。お前達からは契約はまだだが守護神の臭いがぷんぷんするからな。
長生きしたければ契約する事だ。契約せずにキメラに狙われれば、必ず一週間ともたずに死ぬ。」

 『死』・・・・・・この言葉に場の空気が凍りつく。彼が言っている事は冗談でも誇張でもなんでもないのだ。その事は、昨日のことから全員が嫌と言うほど分かっている。
 とわいえ、昨日まで普通に暮らしていた人間がいきなり
『貴方は選ばれました。これから悪者と戦ってもらいます。武器をとりますね?』
 といわれて、素直にハイといえる人などそう居ないハズだ・・・・・・が?

「話はわかった。ええで、やったるわ。どうせ死ぬなら戦って死んだほうがましやしな。それに、やられっぱなしで引き下がるんは気分悪わ。」

「俺もかまわない。怖くないといえば嘘になるが、どうやら避けてどうこうなる問題ではなさそうだ。」

「私も良いよ。なんか私の好きな分野になってきたし。」

「ウチもエエよ。なんかおもろそうやし、風明ばっかりに良い格好はさせへんでぇ!!」

 コイツら好奇心旺盛すぎだろ。自分の命はもっと大切にしなきゃダメだよ? まぁ、さすがは守護神持ちと言うべきかもしれないが。

「わかった、じゃあこれからお前達には自分達の中に入って守護神に会ってきてもらう。
全員がすんなり力を貸してくれるとは限らんが、彼らに自分の可能性を示せれば契約できるはずだ。自分自身の中では精神エネルギーそのものだから、現実じゃありえないような動きも出来るから、それらを駆使して自分をしめせ。
じゃあ・・・・・・話の続きはまたあとでだ。・・・・・・後悔・・・すんなよ?」

 そういうとケルの目がギラリと一瞬とても眩しく光り、光が消えた頃には風明も含めた5人全員が横たわっており、部屋にいたはずの子犬は、毛を数本をのこして消え去っていた。


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