Blood×Blood


6 :銀次 :2007/02/17(土) 13:51:19 ID:ommLPnxD

〜6〜


バリバリバリ・・・・・・

 肉を食い破る嫌な音が耳を走る。
 食い千切る寸前で『ソレ』の姿が止まった。いや止まっているように見えた。

・・・・・・ああ走馬灯ってやつか・・・俺、死ぬのかな・・・・・・

 自慢の右腕は肉を食い破られ鮮血が飛び散り、すでに目を向けることも出来ない姿になってしまった。もう、拳も握れない。勝つ材料が無くなってしまった。いや、勝つ材料などもともとなかったのかもしれない。
 自分が死ぬと思ったときの人間の集中力は凄まじい物で、冴え渡る感覚と頭脳はむしろその恐怖を煽り立てる。全ての状況を一瞬で把握できるほどの集中力、しかしその肉体は知覚したスピードに全く付いていけず時がとまったようにすら感じる。
 『ソレ』の向こう側には、彼に庇われたおかげで、まだ傷を負っていない太一たちがみえる。
 
・・・・・・護りきれなかった・・・大切な友達を・・・

 体の大きな転校生。小学2年生の頃に引っ越してきた風明を待ち受けていたのは、子ども故に容赦の無い残酷な虐めだった。自分達と違う知らない物を受け入れられる程、子どもの心は広くないモノだ。
 そんな、風明に手を差し伸べてくれたのが太一だった。
 興味半分で虐められ、口下手でなかなか上手く喋りかける事が出来ない彼に真っ先に声を掛けてくれたのは太一だった。
 いたずらに彼を傷付けようとする子どもを、止めてくれたのは太一だった。
 暴走する自分を、体を張って止めてくれたのは太一だった。
 『人を護る時だけ、俺はこの拳を握る。握ったからには絶対護る!』そう誓いを立てさせてくれたのは太一だった。
 辛かった少年時代が頭をかける。唯一自分を止めてくれた人との誓いすら果たせない自分に苛立ちが走る。彼の腕に喰らい付く得体の知れない何かに、憎悪がよぎる。

・・・・・・負けられないんだ・・・・・・







『力が欲しいか?』







 どこからとも無く声が聞こえた次の瞬間、彼は巨大な砂丘の中心に立っていた。


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甘辛流小説家ギルドGAIA
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