阿部くんと愉快な仲間達


1 :一八十 :2009/09/11(金) 11:44:27 ID:ocsFuctm


 僕の名前は、阿部。下の名前は推して知ると良い。基本的に何の
変哲も無い平均的な人という評価を周囲でされている。自分でもそ
う思うし、まぁ、それでいいんじゃないかと思っている。
 ところが、僕の周りはそれを許してはくれない。何の変哲も無い
人の周りには、何の変哲も無い人が集まってくれれば良いのに、僕
の周りには一癖も二癖も、いや、無くて七癖という諺があるのだか
ら、七+(一とか二)癖もあるような連中しかいない。
 ――全く困ったものだ。


2 :一八十 :2009/09/11(金) 11:45:30 ID:ocsFuctm

プロローグ1

 僕の隣の席に座っているのは、羽田舞子という女性。いわゆる
「眼鏡っ娘」だ。このクラスになってからずっと彼女が隣の席に座
っている。くじ引きで席替えをしているのに、だ。以前、それとな
く彼女にそのことを話したところ、「あら。あなたには私との赤い
糸が見えないのかしら?」と聞き返された。「そんなモノは見えん
よ。羽田は見えんのか?」と聞いたところ、「勿論よ」と自分の左
手の薬指と、僕の右手の小指を指差した。何かがおかしいと思う。
 ちなみにこの羽田舞子は、学級委員長を務めている。席替えの担
当も全て彼女が引き受けているので、何らかの作為があるに違いな
い。
 ……いや、何らかの作為って、別に羽田に何かした覚えがないん
だが?

 さて、今日も登校すると、僕の席の隣にはしっかりと羽田が来て
何やら本を読んでいる。その表情がもの凄く楽しそうなので僕は、
ついついうっかり「それ何の本?」と聞いてしまう。
「これ? 原書房の『毛全書』」
「あ、そっすか」
 聞かなきゃ良かった。『毛全書』って、何を全書してるんだよ?
意味わからんし。
「面白いよ?」
「あ、そっすか。あ、俺トイレ行って来るから」
 戦略的撤退。羽田は、その本を俺に見せようと傾けてきたが、朝
からそんな意味のわからん本なぞ見たくもないわ。僕は、トイレに
行ってから直ぐには教室に戻らずに、購買の方面へ足を伸ばした。


3 :一八十 :2009/09/12(土) 20:46:31 ID:ocsFuctm

プロローグ2

「おばちゃん、負けてくれよ〜。10円で良いからさぁ」
 購買に辿り着いた僕は後悔する。来なきゃ良かった。購買で、う
まい棒を値切っているのは、安藤豊。僕のクラスメートで、学級議
長。まぁ、そんなステータスなんかどうでも良くて、とにかく何で
も値切ろうとする。ケチなのか? と思うと別にそうでもない。こ
の前は、某アニメのDVDを新品で全部買ったらしい。じゃあ、好
きなものには金に糸目はつけねぇぜ、っていうタイプかというと、
大好物らしいうまい棒を値切っていることを考えると、別にそうで
もないような気がする。
「毎日毎日、朝から馬鹿なこと言ってんじゃないの。10円値切っ
たらタダになるじゃないか!」
 おばちゃんの怒声が聞こえる。うわ、毎日これやってんのかよ。
痛いわ〜。退くわ〜。
「い〜じゃん。減るもんじゃなし」
「減るわっ!」
 あぁ。おばちゃんの怒りのボルテージが上がっていく。そろそろ
やばいかな、と思った僕は、レジのカウンターに10円を放り投げ
る。「おばちゃん、ごめんね。コイツ馬鹿だから」
「馬鹿って言うほうが馬鹿なんだよバーカ」
 安藤の反撃。僕は、黙殺する。それよりもおばちゃんの機嫌が気
になる。このおばちゃん機嫌が悪いと一日中購買を閉めるからなぁ。
 僕は、安藤を引きずって教室まで戻った。


4 :一八十 :2009/09/13(日) 21:12:00 ID:ocsFuctm

プロローグ3

「今日の天気は晴れ。時々くもり」
 黒板に胡散臭い天気予報が書かれていた。学級書記の仕業だ。名
前は、えーと何だっけ? 思い出せない。やってることが地味すぎ
て印象が薄いからなぁ。え〜と。ほんとに何だっけ?
「なぁ。書記の名前って何だっけ?」
「あん? 俺が知ってる訳ね〜だろ」
 いや、議長ならそれくらい知っといて下さいよ。コイツは、本当
に馬鹿なのか。
「羽田〜? 書記の名前って何だっけ?」
「……知らないわ」
 マジかよ。存在感無いんだなー。っていうか、今この教室にいた
ら軽いいじめになってるよなぁ。っていうか、何でそんな存在感の
ない奴が書記なんだ?
「みんな酷いな。僕の名前は、影山じゃないか」
 どこからか蚊の鳴くような声が聞こえてくる気がする。きっと気
のせいに違いないな。席に戻ろうか。


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